びき)” の例文
「へん。貴様きさまら三びきばかり食いころしてやってもいいが、おれもけがでもするとつまらないや。おれはもっといい食べものがあるんだ」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その代りにその土の下から小さな蝉が何びきも何疋も這い出して来て、その樫の木に掴まって、夜が明けてから日の暮れるまで
ツクツク法師 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
土手の方からさっと来たが、都合三輛か、それあるいは三びきか、三びきか、つばめか、兎か、見分けもつかず、波の揺れるようにたちまち見えなくなった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
揃えなけりゃ。是非お買いなさいよ、一びき買うといいんだから、今年の秋迄には是非お買いなさいよ。男は大島に限るわ。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
びきの馬が勢よく飛び上つて居る図がらのいのを、また街を通る人々が賞めて行きました。私は少し自分のがけなされたやうな悲みを感じました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
猫は横っちょにそべって、首をもたげ眼を半開きにして喉を鳴らしながら、生れたばかりの三びきの仔猫に、薔薇色の乳房をしゃぶらせていたのであった。
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
波に打上げられた海月魚くらげが、硝子が熔けたように砂のうえに死んでいた。その下等動物を、私は初めて見た。その中には二三びきの小魚を食っているのもあった。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大きな火事で、家が百も焼けて、犬が千びきも死んだ、とまじめな顔で云った。本当だ、と念を押して云うので、乳母に聞いてみたらまったく根もないことだという。
剥製の箱は素敵に大きなもので、シャモアの立派なのが三びき、シュネーフーンに狐やフュレーなどは、冬毛と夏毛をわけて、山草をあしらった大きな台にのせてある。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
「きょうも又妙にむしむしするじゃないか。僕の所には蚊が二三びきいてうるさくてしようがない」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
では近道を教えてあげよう、……ここから真っ直ぐに北へ行くと、千びきという谷川さ。それをさかのぼると盆の沢、そこを突っ切ると一本松、太い松の木が生えてるのさ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、あやまるには及ばんさ。だが、わしはおまえ方の、兄弟贔屓びいきで言いおるんじゃ。どうして、これほど立派なおとこびきが、食うや食わずでいなければならぬかと……」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝行って見ると、枝の尖端せんたんありが二、三びきずつついていて、何かしら仕事をしている。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
チャラピタはさう大きくはないけれど運よくもう三びきもとつてゐるので、やきもきして何んとか、かんとか、うまいことを言つて、チャラピタといつしよにかうとしましたが
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
しかし老人、この日は好運に恵まれて、見る/\大きな磯魚を三びきまで釣り上げた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
第一海水がなぜ薬になるかと云えばちょっと海岸へ行けばすぐ分る事じゃないか。あんな広い所に魚が何びきおるか分らないが、あの魚が一疋も病気をして医者にかかったためしがない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからお前が国へ帰るのにわたしも何ぞ骨折の礼をしなくっちゃアならないが多分の事も出来ないが、百両やる積りだ、それから忰が十両、お内儀かみさんが十両、番頭が千びき、店の者中で千疋
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たからはなんでも千というかずをそろえてつものだそうた。奥州おうしゅう秀衡ひでひらはいいうまを千びきと、よろいを千りょうそろえてっている。九州きゅうしゅう松浦まつうら太夫たゆうゆみを千ちょうとうつぼを千ぼんそろえてもっている。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
江戸の方からそこへかつがれて来たのは、三びきの綿羊だ。こんな木曾山の中へは初めて来たものだ。早速さっそく半蔵はお民を呼んで、表玄関の広い板の間に座蒲団ざぶとんを敷かせ、そこに父の席をつくった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さてその頃には、三びきのゴーゴンが棲んでいました。
僧都 真鯛まだい大小八千枚。ぶりまぐろ、ともに二万びきかつお真那鰹まながつおおのおの一万本。大比目魚おおひらめ五千枚。きす魴鮄ほうぼうこち鰷身魚あいなめ目張魚めばる藻魚もうお、合せて七百かご
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
びきは年も同じなら大きさも大てい同じ、どれも負けず劣らず生意気で、いたづらものでした。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
と、斜めならず、その労をねぎらい、なお庫内の黄金五十きんと絹一万びきを賞として贈った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして胸毛をでた。胸毛は熊のように濃かった。またすねの毛とくると信じられないほどであった。夏になると、そのみっしり生えた脛毛の中でいつも二三びきの蚊が悲鳴をあげていた。
秋の駕籠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
高がのみの千びきや二千疋でよくまあこんなに現金な真似が出来たものだ。人間世界を通じて行われる愛の法則の第一条にはこうあるそうだ。——自己の利益になる間は、すべからく人を愛すべし。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云われて源次郎は取上げて見れば金千びき
むこうの山に、猿が三びき住みやる。中の小猿が、もの饒舌しゃべる。何と小児こどもども花折はなおりにくまいか。今日の寒いに何の花折りに。牡丹ぼたん芍薬しゃくやく、菊の花折りに。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
びきは年も同じなら大きさも大てい同じ、どれも負けずおとらず生意気で、いたずらものでした。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分はその蚊帳かやを釣って貰って早くとこ這入はいった。するとその蚊帳に穴があって、が二三びき這入って来た。団扇うちわを動かして、それをはら退けながら寝ようとすると、隣のへやの話し声が耳についた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この三びきの狼をどうしましょう?
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きっとなって、(教えません、そんな事では——不可いけません、)と言われたが。蛇です、蛇です、蛇です、三びき
尤もそのときは残ったものもわづかでした。からすさぎとはくてうとこの三びきだけだったのです。
林の底 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
たたみの左右に、はら/\と音するは、我を襲ふ三びきほかなるが、なほ、とおばかり。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「うん。さっぱりして気持ちがいいね。」三びきは萱の刈跡にやって参りました。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしたら、きのこの上に、ひょっこり三びきの小猿があらわれて腰掛こしかけました。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
山兎やまうさぎが二三びき、あとを追ふやうに、おどつてけた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おまけに水平線すいへいせんの上のむくむくした雲のむこうから鉛いろの空のこっちから口のむくれた三びきの大きな白犬によこっちょにまたがって黄いろのかみをばさばささせ大きな口をあけたり立てたりし
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
びきはぽかぽか流れて行くやまなしのあとを追ひました。
やまなし (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)