珠數じゆず)” の例文
新字:珠数
臥床ふしどの跡を見、媼が經卷珠數じゆずと共に藏したる我畫反古ほごを見、また爐の側にて燒栗を噛みつゝ昔語せばやとおもふ心を聞え上げぬ。
婆奴等ばゝあめら、そつちのはう偸嘴ぬすみぐひしてねえで、佳味うめものつたら此方こつちつてう」先刻さつきくび珠數じゆずいた小柄こがらぢいさんが呶鳴どなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
首に珠數じゆずけた百姓らしい中年の男女が、合乘車あひのりぐるまの上に莞爾にこ/\しつゝ、菊石あばた車夫しやふに、重さうにして曳かれて來るのにも逢つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なかがらすの障子しようじのうちには今樣いまやう按察あぜち後室こうしつ珠數じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやとおもはるゝ、その一ツかまへが大黒屋だいこくやりようなり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「して、それは殿様奥様のお頼みでござりまするか。又、あなた方の御相談でござりまするか。」と、住職は珠數じゆず爪繰つまぐりながら不安らしく訊いた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてその少女しようじよくびにはちひさいいしたま珠數じゆずにしてかざつてありました。なんといぢらしいことではありませんか。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「あゝおいしい。もう珠數じゆず切つたからはあとの事は知りまへんで。三田公、今晩は夜どほし飮みまほういな。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
さげ合羽かつぱの穴より鮫鞘さめざやの大脇差を顯はし水晶すゐしやう長總ながふさ珠數じゆずを首に懸し一の男來懸きかゝりしが此容子ようすを見るより物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
淨瑠璃じやうるりの文句の通り、覺悟の經帷子きやうかたびら、首には水晶の珠數じゆずをかけて、そのまゝ舞臺に押し出せさうな晴小袖、男の方もそれに劣らず、錢に飽かして死出の晴着だ
それがまた飾氣かざりけのないスカァトの、黒い毛織の服や、のりつけの麻衿カラアや、ひたひからかき上げられた髮やそれに尼僧のやうな黒い珠數じゆずの紐と十字架の飾りの、極端に質素な樣子の爲めに
都大路みやこおほぢに世の榮華をつくすも、しづ伏屋ふせやあぜ落穗おちぼひろふも、暮らすは同じ五十年の夢の朝夕。妻子珍寶及王位さいしちんぱうおよびわうゐ命終いのちをはる時に隨ふものはなく、野邊のべより那方あなたの友とては、結脈けちみやく一つに珠數じゆず一聯のみ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
珠數じゆず爪繰つまぐるをつねとする。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
鐘を叩くか珠數じゆずを揉むかするであらう。狸が腹鼓を打つたのが、拍手のやうに聞えたのではあるまいかとも思つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かれ小柄こがらぢいさんで一寸ちよつとばあさんかへりみて微笑びせうしながらいつたのである。かれのどへ二ぢゆうにした珠數じゆずいてた。かれこゑおそろしくおほきかつた。ばあさん
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
巾着切とかたりの仲間——天滿七之助の身内十何人を珠數じゆずつなぎにして、江戸つ子達にやんやと喝采を送られた錢形平次と八五郎は、町奉行村越長門守ながとのかみ樣小梅の寮に招かれ
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ、あたら美形びけい月花つきはなにそむけて、何時いつぞともらずがほに、るや珠數じゆずかれては御佛みほとけ輪廻りんゑにまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
篦棒べらぼう以前めえかたのことなんぞ、外聞げえぶんりい、らなんざこんで隨分ずゐぶん無鐵砲がしよきなこたあしたが、こんでをんなにやれねえつちやつたから」とくび珠數じゆずいたぢいさんがそばでそれを呶鳴どなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)