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海棠
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かいどう
ふりがな文庫
“
海棠
(
かいどう
)” の例文
すなわちまず
海棠
(
かいどう
)
を
羞殺
(
しゅうさい
)
して牡丹を
遯世
(
とんせい
)
せしむる的の美婦と現じて、しみじみと親たちは木の
胯
(
また
)
から君を産みたりやと質問したり
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
木蓮や
沈丁花
(
じんちょうげ
)
や
海棠
(
かいどう
)
や李が咲いていたが、紗を張ったような霞の中では、ただ白く、ただ薄赤く、ただ薄黄色く見えるばかりであった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右側の
障子
(
しょうじ
)
をあけて、
昨夜
(
ゆうべ
)
の
名残
(
なごり
)
はどの
辺
(
へん
)
かなと眺める。
海棠
(
かいどう
)
と鑑定したのははたして、海棠であるが、思ったよりも庭は狭い。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長い花ぶさをうなだれ、花べんの胸をひろげて、物思いに沈んだような
海棠
(
かいどう
)
のすがたは、とうてい少女のものではありません。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
落葉松
(
らくようしょう
)
、
海棠
(
かいどう
)
は十五六の少年と十四五の少女を見る様。紫の箱根つゝじ、
雪柳
(
ゆきやなぎ
)
、紅白の椿、皆真盛り。一重山吹も咲き出した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
北国
(
ほっこく
)
の暗い空も、一皮
剥
(
むけ
)
たように明るくなった。春雨がシトシトと降る時節となった。
海棠
(
かいどう
)
の花は
艶
(
つやっ
)
ぽく
綻
(
ほころ
)
び、八重桜の
蕾
(
つぼみ
)
も柔かに朱を差す。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
海棠
(
かいどう
)
はいつでも雨を待つている花であつた。あでやかな色に一杯の憂をためて、上を向かないで、いつもうつむいて、雨を待つてる花であつた。
雑草雑語
(新字旧仮名)
/
河井寛次郎
(著)
雨を帯びたる
海棠
(
かいどう
)
に、廊下の
埃
(
ほこり
)
は鎮まって、
正午過
(
ひるすぎ
)
の早や蔭になったが、打向いたる式台の、
戸外
(
おもて
)
は
麗
(
うららか
)
な日なのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔からいい古した通り
海棠
(
かいどう
)
の雨に悩み柳の糸の風にもまれる
風情
(
ふぜい
)
は、単に日本の女性美を説明するのみではあるまい。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その夜、呂布は
貂蝉
(
ちょうせん
)
の室へはいった。見れば、貂蝉は
帳
(
とばり
)
を垂れ泣き沈んでいる。どうしたのかと訊くと、
海棠
(
かいどう
)
の雨に打たれたような瞼を紅にはらして
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我国には昔から「雨に悩める
海棠
(
かいどう
)
」という形容がある。この時のさだ子が私に与えた印象位、この言葉にしつくりあてはまつたようすを私は今まで見たことはない。
殺人鬼
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
そうして彼女の死のためにひとに忘れられてからからになってる西洋
海棠
(
かいどう
)
に水をかけてやった。鳩がいつものとおり餌をひろいにきていた。晴れて暑い夕べであった。
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
うす紅の
海棠
(
かいどう
)
は醒めやらぬ
暁夢
(
ぎょうむ
)
を蔵して真昼の影をむらさきに織りなし、その下のたんぽぽの花は
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
視線のゆくところにあの
海棠
(
かいどう
)
の鉢がほんのり赤い花びらをもって置かれてあるように思います。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
桜
媚
(
こ
)
び
海棠
(
かいどう
)
酔った我膳の前の春はたちまち去って、
肴核
(
かうかく
)
狼藉
(
ろうぜき
)
骨飛び箸転がるの
秋
(
とき
)
となった。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
老婆は王を案内して家の内へ入った。白く塗った壁が鏡のようにてらてらと光って、窓の外には花の咲き満ちた
海棠
(
かいどう
)
の枝が垂れていて、それが室の内へもすこしばかり入っていた。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
入口から垣うちに添うて
花卉
(
かき
)
草木を繁く植え込み、晩春の木の芽の鮮やかさ、
蘇
(
よみがえ
)
る古葉の色つやの照りの間に、
海棠
(
かいどう
)
のようなあどけなくも艶に媚びた花の色をちら/\と覗かせて
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
杉の木の二、三本あった庭には、赤坂からもって来た、
乙女椿
(
おとめつばき
)
や、紅梅や、
海棠
(
かいどう
)
などが、咲いたり、
蕾
(
つぼみ
)
が
膨
(
ふくら
)
んだりした。清子の大好きな草花のさまざまな種類が、植えられたり種を
播
(
ま
)
かれたりした。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
四月十三日 日曜日、大雨の中を妙本寺に
海棠
(
かいどう
)
を見る。
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
寺崎広業筆の
海棠
(
かいどう
)
の花である。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
が
更
(
ふ
)
けている。——夜はまだ明けず、雲も地上も、どことなく薄明るかった。庭前を見れば、
海棠
(
かいどう
)
は夜露をふくみ、
茶蘼
(
やまぶき
)
は
夜靄
(
よもや
)
にうな
垂
(
だ
)
れている。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お貰いに行くのも結構ですが、今日は二人で遊びましょう。色々の花が咲きました、桜に山吹に
小手毬
(
こてまり
)
草に
木瓜
(
ぼけ
)
に
杏
(
すもも
)
に
木蘭
(
もくらん
)
に、
海棠
(
かいどう
)
の花も咲きました」
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
悄然
(
しょうぜん
)
として
萎
(
しお
)
れる
雨中
(
うちゅう
)
の
梨花
(
りか
)
には、ただ憐れな感じがする。冷やかに
艶
(
えん
)
なる
月下
(
げっか
)
の
海棠
(
かいどう
)
には、ただ愛らしい気持ちがする。椿の沈んでいるのは全く違う。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この流派の
常
(
つね
)
として極端に陰影の度を誇張した区劃の中に
夜
(
よる
)
の
小雨
(
こさめ
)
のいと
蕭条
(
しめやか
)
に
海棠
(
かいどう
)
の
花弁
(
はなびら
)
を散す小庭の
風情
(
ふぜい
)
を見せている等は、誰でも知っている、誰でも喜ぶ
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
またお藤のなさけも感ぜぬではないが、あの娘は仕合に勝って取ったのだと思うと、咲きほこる
海棠
(
かいどう
)
のような弥生の姿が、四六時中左膳の隻眼にちらつく——恋の丹下左膳。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
外川先生の
祈祷
(
きとう
)
で式は終えた。一同記念の撮影をして、それから遺髪と遺骨を岩倉家の
菩提寺
(
ぼだいじ
)
の妙楽寺に送った。寺は小山の中腹にある。本堂の
背後
(
うしろ
)
、一段高い墓地の大きな
海棠
(
かいどう
)
の下に
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さあれ、その艶姿は、
海棠
(
かいどう
)
が持ち前の色を燃やし、
芙蓉
(
ふよう
)
が葉陰に
棘
(
とげ
)
を持ったようでなお悩ましい。いってみれば、これや
裏店
(
うらだな
)
の
楊貴妃
(
ようきひ
)
ともいえようか。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
床に
海棠
(
かいどう
)
がいけてあった。春山の
半折
(
はんせつ
)
が懸かっていた。
残鶯
(
ざんおう
)
の
啼音
(
なきね
)
が聞こえて来た。次の部屋で足音がした。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし認めらるると云うのは説明されるとは一様でない。桜と
海棠
(
かいどう
)
の感じに相違のあるのは何人も認めている。その相違を説明しろと云われるとちょっとできにくい。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何しに? と見ていると、寺院の庭の
巨
(
おお
)
きな
海棠
(
かいどう
)
の木に
繋
(
つな
)
いであった一頭の黒駒のそばへ立ち寄り、自身、口輪をつかんで、広間の正面まで曳いて来た。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……鏡に映ったあなたのお顔! どこに一点美しかった昔の面影がございましょう? 昔のお顔は満開の
海棠
(
かいどう
)
、今のお顔は腐った
山梔
(
くちなし
)
、似たところとてはございません。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
花ならば
海棠
(
かいどう
)
かと思わるる幹を
背
(
せ
)
に、よそよそしくも月の光りを忍んで
朦朧
(
もうろう
)
たる
影法師
(
かげぼうし
)
がいた。あれかと思う意識さえ、
確
(
しか
)
とは心にうつらぬ間に、黒いものは花の影を踏み
砕
(
くだ
)
いて右へ切れた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、
海棠
(
かいどう
)
の花みたいな耳たぶを、噛むでもなく
舐
(
ね
)
ぶるでもなく、歯で
弄
(
もてあそ
)
びながら
囁
(
ささや
)
いた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
空に向かって
捧
(
ささ
)
げているし、
海棠
(
かいどう
)
の花は、悩める美女に
譬
(
たと
)
えられている、なまめかしい色を、
木蓮
(
もくれん
)
の、白い花の間に
鏤
(
ちりば
)
めているし、花木の間には、
苔
(
こけ
)
のむした
奇石
(
いし
)
が、無造作に置かれてあるし
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
赤に白く
唐草
(
からくさ
)
を浮き織りにした
絹紐
(
リボン
)
を輪に結んで、額から髪の上へすぽりと
嵌
(
は
)
めた間に、
海棠
(
かいどう
)
と思われる花を青い葉ごと、ぐるりと
挿
(
さ
)
した。黒髪の
地
(
じ
)
に
薄紅
(
うすくれない
)
の
莟
(
つぼみ
)
が大きな
雫
(
しずく
)
のごとくはっきり見えた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
姫は十六、七か、まだ
初々
(
ういうい
)
しい。高氏の伏し目になったすぐ前に、
海棠
(
かいどう
)
のような耳を隠した黒髪の
簾
(
すだれ
)
と白い襟あしが見えていた。……で、彼もあわててその三ツ指へ礼儀を返した。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“海棠”の意味
《名詞》
海棠 (かいどう)
ハナカイドウの別名。
ミカイドウの別名。
(出典:Wiktionary)
“海棠(ハナカイドウ)”の解説
ハナカイドウ(花海棠、学名:Malus halliana)は、バラ科リンゴ属の耐寒性落葉高木。別名はカイドウ、スイシカイドウ、ナンキンカイドウなど。春に淡紅色の花を咲かせる花木として、各地で植栽される。
(出典:Wikipedia)
海
常用漢字
小2
部首:⽔
9画
棠
漢検1級
部首:⽊
12画
“海棠”で始まる語句
海棠色
海棠林檎
海棠詩屋