“海棠:かいどう” の例文
“海棠:かいどう”を含む作品の著者(上位)作品数
国枝史郎5
吉川英治4
夏目漱石3
野村胡堂1
岡本かの子1
“海棠:かいどう”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 伝記 > 日本4.2%
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 伝説・民話[昔話]3.3%
文学 > 文学 > 文学理論 作法1.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
花ならば海棠かいどうかと思わるる幹をに、よそよそしくも月の光りを忍んで朦朧もうろうたる影法師かげぼうしがいた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔からいい古した通り海棠かいどうの雨に悩み柳の糸の風にもまれる風情ふぜいは、単に日本の女性美を説明するのみではあるまい。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
木蓮や沈丁花じんちょうげ海棠かいどうや李が咲いていたが、紗を張ったような霞の中では、ただ白く、ただ薄赤く
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床に海棠かいどうがいけてあった。春山の半折はんせつが懸かっていた。残鶯ざんおう啼音なきねが聞こえて来た。次の部屋で足音がした。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
海棠かいどうのようなあどけなくも艶に媚びた花の色をちら/\と覗かせて、行人から快い倦怠を誘い出し、また
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
白く塗った壁が鏡のようにてらてらと光って、窓の外には花の咲き満ちた海棠かいどうの枝が垂れていて、それが室の内へもすこしばかり入っていた。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
海棠かいどうはいつでも雨を待つている花であつた。あでやかな色に一杯の憂をためて、上を向かないで、いつもうつむいて、雨を待つてる花であつた。
雑草雑語 (新字旧仮名) / 河井寛次郎(著)
そうして彼女の死のためにひとに忘れられてからからになってる西洋海棠かいどうに水をかけてやった。
妹の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
何となく私にはまだ眠っていらっしゃらない気がする。視線のゆくところにあの海棠かいどうの鉢がほんのり赤い花びらをもって置かれてあるように思います。
杉の木の二、三本あった庭には、赤坂からもって来た、乙女椿おとめつばきや、紅梅や、海棠かいどうなどが、咲いたり、つぼみふくらんだりした。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
雨を帯びたる海棠かいどうに、廊下のほこりは鎮まって、正午過ひるすぎの早や蔭になったが、打向いたる式台の、戸外おもてうららかな日なのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我国には昔から「雨に悩める海棠かいどう」という形容がある。この時のさだ子が私に与えた印象位、この言葉にしつくりあてはまつたようすを私は今まで見たことはない。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
冷やかにえんなる月下げっか海棠かいどうには、ただ愛らしい気持ちがする。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何しに? と見ていると、寺院の庭のおおきな海棠かいどうの木につないであった一頭の黒駒のそばへ立ち寄り、自身、口輪をつかんで、広間の正面まで曳いて来た。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、カサルスは、自分の写真に署名して、佐藤君に託してよこした。私は、佐藤君から、それを受けとると、返礼に小さな絵を贈った。寺崎広業筆の海棠かいどうの花である。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
赤に白く唐草からくさを浮き織りにした絹紐リボンを輪に結んで、額から髪の上へすぽりとめた間に、海棠かいどうと思われる花を青い葉ごと、ぐるりとした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
落葉松らくようしょう海棠かいどうは十五六の少年と十四五の少女を見る様。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
またお藤のなさけも感ぜぬではないが、あの娘は仕合に勝って取ったのだと思うと、咲きほこる海棠かいどうのような弥生の姿が、四六時中左膳の隻眼にちらつく——恋の丹下左膳。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その夜、呂布は貂蝉ちょうせんの室へはいった。見れば、貂蝉はとばりを垂れ泣き沈んでいる。どうしたのかと訊くと、海棠かいどうの雨に打たれたような瞼を紅にはらして、
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本堂の背後うしろ、一段高い墓地の大きな海棠かいどうの下に、
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
木蘭は、その大輪の花を、空に向かってささげているし、海棠かいどうの花は、悩める美女にたとえられている、なまめかしい色を、木蓮もくれんの、白い花の間にちりばめているし
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
四月十三日 日曜日、大雨の中を妙本寺に海棠かいどうを見る。
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
桜と海棠かいどうの感じに相違のあるのは何人も認めている。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
海棠かいどう酔った我膳の前の春はたちまち去って
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
朧月おぼろづきけている。——夜はまだ明けず、雲も地上も、どことなく薄明るかった。庭前を見れば、海棠かいどうは夜露をふくみ、茶蘼やまぶき夜靄よもやにうなれている。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫は十六、七か、まだ初々ういういしい。高氏の伏し目になったすぐ前に、海棠かいどうのような耳を隠した黒髪のすだれと白い襟あしが見えていた。……で、彼もあわててその三ツ指へ礼儀を返した。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お貰いに行くのも結構ですが、今日は二人で遊びましょう。色々の花が咲きました、桜に山吹に小手毬こてまり草に木瓜ぼけすもも木蘭もくらんに、海棠かいどうの花も咲きました」こう云ったのは弁才坊。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すなわちまず海棠かいどう羞殺しゅうさいして牡丹を遯世とんせいせしむる的の美婦と現じて、しみじみと親たちは木のまたから君を産みたりやと質問したり、「女は嫌いと口にはいうて、こうもやつれるものかいな」などと繰りたり
そのそばに置いた寝屋ねや雪洞ぼんぼりの光は、この流派のつねとして極端に陰影の度を誇張した区劃の中による小雨こさめのいと蕭条しめやか海棠かいどう花弁はなびらを散す小庭の風情ふぜいを見せている等は
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まばらな人家のあいだに空き地がひろがって、うす紅の海棠かいどうは醒めやらぬ暁夢ぎょうむを蔵して真昼の影をむらさきに織りなし、その下のたんぽぽの花は、あるいはほうけあるは永日ののどかさを友禅ゆうぜんのごと点々といろどっているけしき……いつの間にやら、春はどこにでも来ていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お泣きなさいまし園女様、悲しいお顔が涙のために、二倍悲しくなりましょう。……お驚きになったのでございましょうね。それで泣かれるのでございましょうね。……鏡に映ったあなたのお顔! どこに一点美しかった昔の面影がございましょう? 昔のお顔は満開の海棠かいどう、今のお顔は腐った山梔くちなし、似たところとてはございません。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)