せい)” の例文
これが家中の大多数で、潮あい次第で、時にはかん阿諛あゆし、時にはせいくみし、流れにまかせていかださおさすようにうまくその日その日を渡ってゆく。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元洋もまた杉田門から出た人で、後けんと称して、明治十八年二月十四日に中佐ちゅうさ相当陸軍一等軍医せいを以て広島に終った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
道心は人心じんしんのその正を得たる心と王陽明おうようめいは説いたが、せいを得るとは、人欲じんよくのまざらないところで、つまらぬ感情のなきをいうところであると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「政治のせいせいであります。あなたが真先に立って正を行われるならば、誰が正しくないものがありましょう。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
陸軍軍医せいの藤井氏と東京音楽学校助教授のたまき女史との離婚が、新聞紙の上で趣味の相違から生じた離婚だとか、陸軍と芸術との衝突だとか大袈裟おおげさに報道せられ
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
その表面のみにても、これを日本の事態に比して大いに異なる所あるを発明し、大いに悟りて自ら新たにし、儒流洒落しゃらくの不品行を脱却して紳士のせいに帰すべきはずなるに
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かくして彼の心にかかつらふ事あれば、おのづから念頭を去らざる痛苦をもその間に忘るるを得べく、もとより彼はせいを知らずして邪を為し、を喜ばずしてを為すものにあらざれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
軍正ぐんせいうていはく、(二一)軍中ぐんちうにはせず。いま使者ししやす、((軍法ニ))なにふ』と。せいいはく、『ざんたうす』と。使者ししやおほいおそる。穰苴じやうしよいはく『きみ使つかひこれころからず』
学の権威けんいについて云々うんぬんされては微笑わらってばかりもいられない。孔子は諄々じゅんじゅんとして学の必要を説き始める。人君じんくんにして諫臣かんしんが無ければせいを失い、士にして教友が無ければちょうを失う。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すなわち彼はヨブもまた罪の結果なる災禍にくるしめるものとなし、死せる子はうべからず、少くとも生ける汝はせいに帰り義を行い以て物質的恩恵の回復を計れと勧めるのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここにかかげたる訳語はわれの創意にかかる。訳語妥当だとうならざるは自らこれを知るといえども匆卒そうそつの際改竄かいざんするによしなし。君子くんし幸にせいを賜え。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
もし人情なるせまき立脚地に立って、芸術の定義を下し得るとすれば、芸術は、われら教育ある士人の胸裏きょうりひそんで、じゃせいき、きょくしりぞちょくにくみし、じゃくたすきょうくじかねば
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またひと建築けんちく本義ほんぎは「實」であるとふかもれぬ。いづれがせいいづれがじやであるかは容易よういわからない。ひと心理状態しんりじやうたい個々こゝことなる、その心理しんり境遇きやうぐうしたが移動いどうすべき性質せいしつもつる。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
これにはにしてせいなる一場の物語がある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちから」は「せい」に逆ふべき。
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
醒めよ、われは、日月のはたを高くかかげ、暗黒の世に光明をもたらし、邪を退しりぞけ、せいを明らかにするの義軍、いたずらに立ち向って、生命いのちをむだに落すな
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに反し、人心とは道心のそのせいうしなったところで、我田引水がでんいんすい的に勝手しだいの理屈りくつを案ずる心理動作どうさで、自己の感情によりて万事を判断する心である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
家来せいなるあり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
僕がしばしば引用する Be just and fear not(せいを守りておそるることなかれ)
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
せいに照らし、正を史にみ、一系の天子をあきらかにし、一体の国土を、民心に徹底せしめる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せい。こう二態は、軍隊の性格で怪しむに足りません。しかし要心は必要でしょう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)