板戸いたど)” の例文
ねやこゑもなく、すゞしいばかりぱち/\させて、かねきこえぬのを、いたづらゆびる、寂々しん/\とした板戸いたどそとに、ばさりと物音ものおと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その部屋の一方の壁に、大むかしの、どこかの寺院の杉の板戸いたどが、一まいたててあります。むかしの名人がかいた豹の絵です。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
など打返うちかへそのむかしのこひしうて無端そゞろそでもぬれそふ心地こゝちす、とほくよりおとしてあゆるやうなるあめちか板戸いたどうちつけのさわがしさ、いづれもさびしからぬかは。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、かれがひきょうな声をうわずらしたせつな、狩屋建の板戸いたどひさしッぱになって、メキメキと飛びちった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貨車かしゃ横腹よこばらにある大きな板戸いたどの、すきまをもれていましがた上がったと思われる月がさしこんできたのであった。自分は、なんというわけもなくいさみたった。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
奥山おくやま真木まき板戸いたどおとはやいもがあたりのしも宿ぬ 〔巻十一・二六一六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
枕を削る山颪やまおろしは、激しく板戸いたどひしぐばかり、髪をおどろに、藍色あいいろめんが、おのを取つて襲ふかとものすごい。……心細さはねずみも鳴かぬ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二階には、がんじょうな板戸いたどをはめた部屋があり、しかも、その板戸には、大きな錠まえがついているのです。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あたかなによ、それ畜生道ちくしやうだう地獄ぢごくを、月夜つきようつしたやうなあやし姿すがた板戸いたど魑魅魍魎ちみまうりやうといふのであらうか、ざわ/\とそよ気色けしきだつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
腹話術師はその小屋の前にくると、トランクをおろして小屋の板戸いたどを、とん、とんとんとん、とん、とんとんとん、とへんなちょうしをつけてたたきました。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
板戸いたどひとつがまちの、みせの八でふ古疊ふるだたみ眞中まんなかつくゑいて對向さしむかひに、洋燈ランプひたひ突合つきあはせた、友達ともだち二人ふたりで、くに地誌略ちしりやくふ、學校がくかう教科書けうくわしよんでた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのとき、大賞堂のおくのほうの物置部屋の板戸いたどが、ソーッとひらいていました。そして、その中から、若い女があらわれました。みんな店のほうへいって、そのへんには、だれもおりません。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
台所と、この上框あがりがまちとを隔ての板戸いたどに、地方いなか習慣ならいで、あしすだれの掛ったのが、破れる、れる、その上、手の届かぬ何年かのすすがたまって、相馬内裏そうまだいり古御所ふるごしょめく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おびき、きぬぎ、板戸いたどうへいましめた、のありさまは、こゝにふまい。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はた板戸いたど遠灯とほともしあぜ小提灯こぢやうちんかげひとみとめざりしこそさいはひなりけれ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)