“未曾有:みぞう” の例文
“未曾有:みぞう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治8
岡本綺堂4
海野十三4
島崎藤村4
福沢諭吉4
“未曾有:みぞう”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 演劇史 各国の演劇4.9%
歴史 > 日本史 > 日本史3.5%
哲学 > 東洋思想 > 日本思想2.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「ははは、構わん、遣れ。あの花売は未曾有みぞう尤物ゆうぶつじゃ、また貴様が不可いけなければわしが占めよう。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
梵施王の第一大臣この夫婦を招き音楽を聴くに未曾有みぞうにうまいから、乞食をやめさせ自邸に住ましめ扶持して琴を指南せしむ。
よろしい、それでは一つ、しんじつ未曾有みぞう、雲散霧消の結末つくって、おまえのくさった腹綿を煮えくりかえさせてあげるから。
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)
幕末維新の時代は、政治的にこそ未曾有みぞうの活躍時代であったれ——文学的には、このくらいくだらない時代はありませんでした。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長句の用ゐ方など古今未曾有みぞうにて、これを詠みたる人もさすがなれど、この歌を勅撰集に加へたる勇気も称するに足るべくと存候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
また大阪に取つても前古未曾有みぞうの盛運に向はんとするのをこれぎりで挫折してしまふのは惜しい事ではあるまいか。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかも、時は、正月でもあったし、大宝八幡を中心として、おそらく未曾有みぞうな混雑と活況が、この土地を沸きかえしたことであろう。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薬師如来の未曾有みぞうの光りを、根源において湧出ゆうしゅつせしめたものは、所詮しょせん白鳳の祈りに他ならないであろうから。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
全世界は挙げて未曾有みぞうの戦国状態に突入しつつある——頑鈍一事の世に奉ずるに足るものなきをうらみつつも
おそらくこれは盛典としても未曾有みぞう、京都から江戸への御通行としても未曾有のことであろうと言わるる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さながらにじのごとき色さまざまな光景をも想像し、この未曾有みぞうの行幸を拝する沿道人民の熱狂にまで
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし一方、聚楽第じゅらくだいにいる秀次は、これらの未曾有みぞうの大作業がはかどって行くに従ってどう云う感じを抱いたであろうか。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
めた翌日から急に脊中せなかが軽くなって、肺臓に未曾有みぞうの多量な空気が這入はいって来た。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「かくも、未曾有みぞうな御奉公を事実の上にあらわし得たあなたは、まことに、うらやましいお立場である」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聖武天皇が幼少の頃より、未曾有みぞうの「文明開化」の影響のもとに生育されたことは申すまでもなかろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
市内の電車がこのありさまであるから、それに連れて省線の電車がまた未曾有みぞうの混雑を来たしている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長句の用い方など古今未曾有みぞうにてこれを詠みたる人もさすがなれどこの歌を勅撰集ちょくせんしゅうに加えたる勇気も称するに足るべくと存候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
今度の未曾有みぞうの大戦乱の今までに、天体の不思議な怪異が各軍の迷信を誘った例も決して少なくない。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
日本にも大きな戦争があり、世の中のすべてがあわただしく変化したが、世界にも未曾有みぞうの惨劇があり、欧洲おうしゅう文化に大混乱を来たした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とにかく、今は我国は未曾有みぞうの非常時局に直面しているのであるから、取りえずは、日本意識に眼覚めた科学などに注意を向ける暇はないはずである。
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
この国未曾有みぞうの仏法を興隆した聖徳太子とは、厩戸皇子の諡号しごうにほかならない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
焼け死ぬる思い。苦しくとも、苦しと一言、半句、叫び得ぬ、古来、未曾有みぞう、人の世はじまって以来、前例も無き、底知れぬ地獄の気配を、ごまかしなさんな。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とにかく全部で十四人の人数の出ていることに、勅撰集としては未曾有みぞうのことであった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
桟敷の手摺りをたたく者がある、しまいにはときをつくってはやし立てるという未曾有みぞう騒擾そうじょうを演出したので、他の観客もおどろかされた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「もし、あれが成るあかつきには、古今未曾有みぞうの大城市が、地上に実現されましょう」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
警察当局とを未曾有みぞうの昏迷の渦巻に巻込んでいるが、更に又、最近に前記森栖校長の信仰かざりし天主教会内にて、意想外の怪事件を派生し、関係者一同を層
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大体においてこの三種に分つべき人々に由って未曾有みぞうの混乱状態を引起しています。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
総員四万名に余る未曾有みぞうの大宇宙遠征隊の目的は、ここになかばを達したのだ。この至るところにあるムビウムを、どんどん採集して地球に持ち帰ればいいのだ。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、痛手の急性の現われは何といっても、この春財界を襲った未曾有みぞう金融きんゆう恐慌きょうこうで、花どきの終り頃からモラトリアムが施行しこうされた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
江戸の方を見ると、参覲交代廃止以来の深刻な不景気に加えて、将軍進発当時の米価は金壱両につき一斗四、五升にも上がり、窮民の騒動は実に未曾有みぞうの事であったとか。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
加ふるに印刷業の発達は一般の学問にいちじるしき進歩を与へたるが如く、俳諧もまたこれによりて都鄙遠境に波及し、たちま未曾有みぞうの盛運に達するを得たり。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
自分の大英断と、部下の大猛烈と、ふたつの合致からここに現出された未曾有みぞうな光景を、その夜、夜半頃には、信長も自身、山上へのぼって来て、まざまざと眼に見ていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかれども、今や『国富論』の公刊をさることまさに百四十年、たまたま世界未曾有みぞうの大乱起これるを一期として、諸国の経済組織はまさにその面目を一変せんとしつつある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
或は古今未曾有みぞうの長篇になるだろうという腹はその当時から決めていた。
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところで人類科学史上未曾有みぞうの大事件たる原子爆弾の研究に、こういう企てを試みることすら、いささかドン・キホーテ的であったことが、今度のアメリカの発表でよく分った。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
翌六日昼九つ時(正午)人数引揚申候。前代未曾有みぞうの大珍事に御座候
それが未曾有みぞうの素早さで、あとからあとから人間に押し寄せて来た。
世界の変革と芸術 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
一か月以上も続いた「ええじゃないか」のにぎやかな声も沈まって行って見ると、この国未曾有みぞうの一大変革を思わせるような六百年来の武家政治もようやくその終局を告げる時に近い。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
咸臨丸ソレカラ私が江戸に来た翌年、すなわち安政六年冬、徳川政府から亜米利加アメリカに軍艦をるとう日本開闢かいびゃく以来、未曾有みぞうの事を決断しました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かつてあやしむ者なきこそ古来未曾有みぞう奇相きそうなれ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
為世は晩年にその子にみな先立たれ、それから未曾有みぞうの大乱に遭遇し、そして吉野朝と京方との対立が持久的状態にふみ入ろうとするところまでに見て死んだのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
ヘンデルの英国における発展は未曾有みぞうのものであった。外国人にして王室作曲官となり、アン女王の御覚え目出たいにつけても、ハノーヴァ王家に対する気まずさがないではなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
全く四谷のようなとこでは、未曾有みぞうの事だったのかも知れない。
四谷、赤坂 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
烏滸おこがましゅうござりますが、従って手前どもも、太夫様の福分、徳分、未曾有みぞうの御人気の、はや幾分かおこぼれを頂戴いたしたも同じ儀で、かような心嬉しい事はござりませぬ。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されどなお近来未曾有みぞう大獄たいごくにて、一度に総数を入るる法廷なければ、仮に六十三名を九組ここのくみに分ちて各組に三名ずつの弁護士を附し、さていよいよ廷は開かれぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
翌々貞享じょうきょう三年、芭蕉は未曾有みぞうの一句を得たり。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
既記の地に本邦未曾有みぞうとも云う大西洋建築を起工せり。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「一寸参堂仕りたく候えども、大兄の消極主義に反して、出来得る限り積極的方針をもって、此千古未曾有みぞうの新年を迎うる計画故、毎日毎日目の廻る程の多忙、御推察願上そろ……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今度の使節の上京はそれとは全く別の場合で、異国人のために建春門を開き、万国公法をもって御交際があろうというのだから、日本紀元二千五百余年来、未曾有みぞうの珍事であるには相違なかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かくて、今や世界は未曾有みぞうの速力と混乱が到来した。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
未曾有みぞうの大事件は、刻々こくこく近づきつつある。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中津藩においては古来未曾有みぞうの大事件、もしこの事をして三十年の前にあらしめなば、即日にその党与を捕縛ほばくして遺類いるいなきは疑をれざるところなれども、如何いかんせん
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こんなに景気のよい新年は未曾有みぞうであるといわれた。
正月の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから——それからは未曾有みぞうの激戦である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私は遠くさかのぼりて道具の人類進化史上における地位をかんがえ、転じて近代における機械の偉大なる効果を思うごとに、今の時代をもって真に未曾有みぞう難遭なんそうの時代なりとなすを禁じ得ず。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「筑州こそ、不遜ふそんなれ。いつのまにか、父の臣たる分を忘れ、父の遺臣に、賦課ふかを申しつけ、未曾有みぞうの築城を急ぐ上に、この身を邪魔あつかいにして、近頃は、何ひとつはかろうて来ぬ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古今未曾有みぞうなものであったといわれた。
続いてウィルヘルム・エルンスト公爵は、バッハの教会音楽改革計画を支持し、バッハはここに根城ねじろえて、古今未曾有みぞうの対位法形式の創造者としての彼の天分を伸ばすことが出来たのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
百貨店の片腕事件が未曾有みぞうの珍事であった上に、被害者が若い娘であること、加害者が非常に曖昧なこと、その上一寸法師の怪談までそろっているのだから、あのセンセーションを巻起したのは誠に当然だった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
宿場宿場で人足の肩継かたつぎをするので、交代の手間を費やさないため、早駕よりも前に、足達者なのが一人、絶えず先へ先へと駈けているので、未曾有みぞうな江戸の事件は、疾風はやてのように東海道へ伝わった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この古今未曾有みぞうの荘厳な大歓迎は、それは丁度、コルシカの平民ナポレオン・ボナパルトの腹の田虫を見た一少女、ハプスブルグの娘、ルイザのその両眼を眩惑げんわくせしめんとしている必死の戯れのようであった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
森有礼等にりて廃刀論、廃帝論、男女同権論の如き日本歴史に未曾有みぞうなる新議論を遠慮会釈なくき立てしが如き、中村敬宇先生が自助論を飜訳し耶蘇教の洗礼を受けしが如き、皆是れ前例なく先蹤せんしようなく
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
「なにせい昨今、洛内の人口は、古今未曾有みぞうかただとかいっとるの。しぜん往来も気が荒うなるのじゃろ。つい道すら譲れん意地張りになるとみえる。あとで供のやつらを叱りおこう。道誉どの。お腹を立てまい」
こう続けざまに芝居を見るのは私の生涯しょうがいにおいて未曾有みぞうの珍象ですが、私が、私に固有な因循いんじゅん極まる在来の軌道をぐれ出して、ちょっとでも陽気な御交際おつきあいをするのは全くあなたのせいですよ。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この深さで広袤こうぼう実に百二十哩という、前古未曾有みぞうの大渦巻が大円を描いて轟々ごうごうえ狂っている物すごさ、恐ろしさ、すさまじさというものを皆様は一体御想像になり得るものでありましょうか?
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
葬儀は藩葬とされて、国主の名代も立ち家中の諸士も列し、漂泊流寓ひょうはくるぐうの一剣士としては、未曾有みぞうの盛儀の下に行われたが、その折、法要万事は大淵だいえんがさしずしたが、引導の役は、弟子の春山が執った。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
未曾有みぞうの喜びの
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まんまとそれを自分のくふうのごとくによそおいながら、将軍家に披露ひろうしましたものでしたから、松平伊豆守が右門に小田切久之進のその素姓を物語ったごとく、新規お旗本にお取り立てという古今未曾有みぞうの出世となったわけで
烏滸おこがましうござりますが、従つて手前どもも、太夫様の福分ふくぶん徳分とくぶん未曾有みぞう御人気ごにんきの、はや幾分かおこぼれを頂戴ちょうだいいたしたも同じ儀で、やうな心嬉しい事はござりませぬ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
勿論それと知れたのは後のことで、そのときは何だか判らず、ただ立派な古い碁盤だと思っただけでしたが、なんにしても女の生首を碁盤に乗せて、武家の門前に晒して置くなどは未曾有みぞうの椿事で、世間でおどろくのも無理はありません。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
円本時代というのは改造社の創案で日本の出版界に大洪水を起さしめたものである、大菩薩峠もその潮流に乗じて大いに売り出した、出版者としての神田君も素晴らしい活躍をした、そこで印税としても未曾有みぞうの収入を見たという次第である
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
八日には少し善くて、その後また天気工合と共に少しは持ち合ふてゐたが十三日といふ日に未曾有みぞうの大苦痛を現じ、心臓の鼓動が始まつて呼吸の苦しさに泣いてもわめいても追つ附かず、どうやらかうやらその日は切抜けて十四日も先づ無事
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
一生一代の対局に二度も続けてこのような手を以て戦った坂田の自信のほどには呆れざるを得ないが、しかし、六十八歳の坂田が一生一代の対局にこの端の歩突きという棋界未曾有みぞうの新手を試してみたという青春には、一層驚かされるではないか。
可能性の文学 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それも最初の間はさながらにこうした未曾有みぞうの満員状態を面白がっているような盲目的な拍手に蔽われて、言葉がよく聞き取れなかったが、そのうちに群集のドヨメキが静まると、やがて若々しい朗らかな声が隅々までハッキリと反響し初めた。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つい一昨日入手したブエノスアイレス特電によれば、未曾有みぞうの悪気流と闘って四十日間の滞空に堪え、いかなる濃霧の中でも発着することのできる成層圏用大型飛行艇の建造が、この目的のために、目下着々米国で準備を進めつつあるということであるし
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
惟光これみつ良清よしきよらは、自身たちの命はともかくも源氏のような人が未曾有みぞうな不幸に終わってしまうことが大きな悲しみであることから、気を引き立てて、少し人心地ひとごこちのする者は皆命に代えて源氏を救おうと一所懸命になった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かれとしては未曾有みぞうのことには、さっきこうしてっぴるまひょいと裏門からはいって来たのだが、いかなる妖術ようじゅつを心得ているものか、誰ひとり家人にも見とがめられずに、植えこみづたいに奥へ踏みこんで、突如この茶室のそとに立ったのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
下山にかかる時には、一番先へクロス、その次がハドウ、その次がハドス、それからフランシス・ダグラス卿、それから年を取ったところのペーテル、一番終いがウィンパー、それで段〻降りて来たのでありますが、それだけの前古ぜんこ未曾有みぞうの大成功を収め得た八人は
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今さら、極東への道をあけるために進んで来た黒船の力が神戸こうべ大坂の開港開市を促した慶応三、四年度のことを引き合いに出すまでもなく、また、日本紀元二千五百余年来、未曾有みぞうの珍事であるとされたあの外国公使らが京都参内当時のことを引き合いに出すまでもなく
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは福地桜痴ふくちおうち居士がさきに一部の小説として春陽堂から発行したものを更にみずから脚色したもので、居士の作中ではあまり上出来の物とも思われなかったが、団十郎の大口屋暁雨や八百蔵の釣鐘庄兵衛などが大好評で、近年未曾有みぞうともいうべき大入りを占めた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼がその様な、謂わば未曾有みぞう悪企わるだくみを考えつくに至った一つの重大な動機は、M県の菰田の地方では、一般に火葬というものがなく、殊に菰田家の様な上流階級では、猶更なおさらそれをんで、必ず土葬を営むにきまっているという点にりました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
承久の変に於ける不臣を敢てした鎌倉幕府が、かくも強大になつたことは、悲しむべきだが、武士の統制機関が出来るだけ、強大となつて、将に来らんとする皇国未曾有みぞうの危機たる蒙古襲来に当らうとしてゐたことは、北條氏が、無意識の裡に行つてゐたせめてもの罪滅ぼしであらう。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
真田信仍が天王寺口で歩兵の槍で以て伊達だての騎馬で鉄砲に勝ちたるを未曾有みぞうの事と持て囃すが、似た事もあって、南チリへ侵入したスペイン最上の将士を撃退して、二百年間独立を全うしたアウカインジアンは、同じく短兵もて西人の騎馬鉄砲にちしを敵も歌に作って称讃した。
扨而さて此の二日の大地震は前古未曾有みぞうにて、御同樣杖とも又柱ともたよりに致居候水戸の藤田戸田之兩雄も搖打ゆりうちに被逢、黄泉よみぢの客と被成候始末、如何にも痛烈之至り、何事も此ぎりと旦暮あけくれ愀悒しういう嗟嘆さたん相極め居候、御深察可下候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
婦人の地位を高尚にするの新案は、あたかも我が国未曾有みぞうの家屋を新築するものにして、我輩もとより意見を同じうするのみならず、敢えて発起者中の一部分を以て自らる者なれども、満目まんもく焔々えんえんたる大火の消防にわしくして、なお未だ新築にいとまあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「死ぬ前に、一言ひとことにして白状せられよ。つまり金博士よ。あの未曾有みぞう超々大戦果ちょうちょうだいせんかこそ、金博士が日本軍に対し、博士の発明になる驚異きょうい兵器を融通ゆうずうされたる結果であろうという巷間こうかんの評判ですが、どうですそれに違いないと一言いってください」
こういう間に、京都では、秀吉施主のもとに、盛大未曾有みぞうの信長法要が着々と行われ、為に、全国の人心は一時そのことにあつめられたかの如きかんをなしたし、それに伴う秀吉の中央的存在と名声とはいよいよもって、北辺に自負する豪強勝家をして、なすべきことの“断”と“急”とを思わせて来たのだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後、真二は顔に悪性の腫物はれものが出来たので遂に大学で未曾有みぞうの難手術をやり、とうとう切ってしまった。そうしないと真一までが死んでしまうおそれがあったからだ。真一君が流浪の旅にのぼるようになったことなどは説明するまでもあるまい。僕は君を大学へ連れていって、アルコール漬になっている真二君の首を見せたいと思うよ。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)