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か
ふりがな文庫
“
曾
(
か
)” の例文
新字:
曽
何時の間にか私は
貪
(
むさぼ
)
るように見入っていた。私は
曾
(
か
)
つてこれと似た感情を持ったことがある。それは一昨年刑務所へ行っていたときだった。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
平和主義を抱ける洋人某、
曾
(
か
)
つて余と「八犬伝」を読む。我が巻中に入れたる揷画、
腥
(
なま
)
ぐさき血を見せざる者甚だ
尠
(
まれ
)
なり。
想断々(1)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
私の記憶によれば、
曾
(
か
)
つて斯様な精神状態を覚えたことは、これまで必ずしもなかつたとは言へないものを感じてはゐる。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
極
(
きま
)
り
羞
(
はづ
)
かしさうに離れて行くのも好い気持ではなかつたが、それよりも
左褄
(
ひだりづま
)
を取つてゐた
曾
(
か
)
つての自分に魅力はあつても
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして博士の背後には、
曾
(
か
)
つてこの研究室の中へは這入って来たことの無い病院詰の若い医者達が、幾人も立っていた。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
いずれもそれらの文字は
曾
(
か
)
つて自分と親しんでいた文字であるのに……Bは自分を自分で解することが出来なかった。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ご自分の見たところの物を語らず、ご自分の
曾
(
か
)
つて読んだ悪文学から教えられた言葉でもって、戦争を物語っている。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
成程
(
なるほど
)
これは薄禿げた得体の知れない人物、本人は文士と名乗って居りますが、
何処
(
どこ
)
の雑誌へも新聞へも、
曾
(
か
)
つて名前の出たことの無い宇佐美六郎です。
青い眼鏡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ああ、私は今でも、
曾
(
か
)
つて恋人と呼んだ彼女の
姿体
(
すがた
)
をハッキリと思い出すことが出来る、しかし、それも、
不図
(
ふと
)
女優などの顔を思い出した時のような
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
曾
(
か
)
つて
然
(
そ
)
う言い出したことのない弥吉を、児太郎は自身にひきあてて、悲しげに
打棄
(
うちすて
)
るような調子でしりぞけた。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
曾
(
か
)
つて両手を
頭
(
かしら
)
に敷き、仰向けに
臥
(
ふ
)
しながら天井を
凝視
(
みつ
)
めて初は例の如くお勢の事をかれこれと思っていたが
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これは
曾
(
か
)
つてわが
輩
(
はい
)
が「
國語尊重
(
こくごそんちよう
)
」の
題下
(
だいか
)
でわが
國
(
くに
)
の
國號
(
こくがう
)
は
日本
(
にほん
)
であるのに、
外人
(
ぐわいじん
)
の
訛傳
(
くわでん
)
に
追從
(
つひじう
)
して
自
(
みづか
)
らジヤパンと
名乘
(
なの
)
るのは
國辱
(
こくじよく
)
であると
論
(
ろん
)
じたのと
同
(
おな
)
じ
筆法
(
ひつぱふ
)
で
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
今まで
曾
(
か
)
つてそんなことを考へたことはなかつた。いや、今の瞬間だつて考へたとは云へまい。たゞ、それは閃いて、捉へにくい影を落して通り去つただけだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
数右衛門の
曾
(
か
)
つて人に
汚
(
けが
)
される事をゆるさないものに、その口汚い
唾
(
つば
)
が、ぴりっと触れたらしかった。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
注意すべきことは、深山木の胸の傷口が、そのえぐり方の癖とも云うべきものが、
曾
(
か
)
つての初代の胸のそれと酷似していたことが、のちに取調べの結果分って来た。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
曾
(
か
)
つて主人持ちであったものがことにひどい。犬と猫とでは犬の方がひどい。要するに人間に
諂
(
へつら
)
って暮らすことに慣れて来たものほど落ちぶれ方がみじめなのである。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
町の
藝妓
(
げいこ
)
や娘たちからは、旅役者の
市川鯉三郎
(
いちかはこひざぶらう
)
が
曾
(
か
)
つて受けたほどの人氣が小池の一身に集まつた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
そういう自分もこの秋はじめて薬師寺の塔を仰いだ以外には、
未
(
いま
)
だ
曾
(
か
)
つて夜の寺を歩いたことはなかった。昼でなければ古寺を訪れてはいけないというわけはなかろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ロンドンで
曾
(
か
)
つて有名だった老女優の隠退後の邸宅が
先
(
ま
)
ず行手に在る。其の黒く塗られた板塀について曲るとだらだら坂になり、丘の上のメリー皇后の慈善産院の門前へ出た。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
さうして自分のした事に権威がなくなる。
曾
(
か
)
つては私もその道をたどつたのだ。さうして誤解されて怒つたけれども、その誤解は当然であつた。通るべき道は避くることは出来ない。
感想の断片
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
その男——わが檻の前に立ち、熱心にこっちを
覗
(
のぞ
)
いているその男——その男の顔、肩、肉づき、手足、全体の姿、そのすべてがなんと
曾
(
か
)
つての本来の私そっくりであったではないか。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
御米
(
およね
)
は
何
(
ど
)
う
云
(
い
)
ふものか、
新橋
(
しんばし
)
へ
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
、
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
紹介
(
せうかい
)
されたぎり、
曾
(
か
)
つて
叔父
(
をぢ
)
の
家
(
うち
)
の
敷居
(
しきゐ
)
を
跨
(
また
)
いだ
事
(
こと
)
がない。
向
(
むかふ
)
から
見
(
み
)
えれば
叔父
(
をぢ
)
さん
叔母
(
をば
)
さんと
丁寧
(
ていねい
)
に
接待
(
せつたい
)
するが、
歸
(
かへ
)
りがけに
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
曾
(
か
)
つて二月半ばかりを暮して見たリモオジュの町はずれ、羊の群の飼われている牧場、見覚えのある手前の方の樹木から遠く岡の上に立つサン・テチエンヌの寺院の高い石塔までが
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それも、ある
甲斐
(
かひ
)
のないものを甲斐あらせようとしてゐるやうな、一所懸命な調子であつた。私は未だ
曾
(
か
)
つて人工呼吸法といふものを見たことがなかつたけれど、今ふとそれが頭に浮んだ。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
曾
(
か
)
つて之を争ひしが為めにワルレンスタインは悲苦の境界に
沈淪
(
ちんりん
)
したり。マクベスは間接に道徳に抵触したる所業をしたり。天神記の松王は我愛子を殺したり。娘節用の小三は義利の刀に
斃
(
たふ
)
れたり。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
そのG師の禪房に
曾
(
か
)
つて圭一郎は二年も寄宿し、G師に常隨してその教化を蒙つてゐた關係上、上京すると何より眞つ先きにG師に身を寄せて一切をぶちまけなければ
措
(
お
)
けない心の立場にあつたのだ。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
素
(
もと
)
より、この文学史を以て独占の舞台などゝせん心掛あるにはあらず、
斯
(
か
)
く断りするは、
曾
(
か
)
つて或人に誤まられたることあればなり、余は学生として
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
灰色の漠然とした大きな影! 目もない、口もない、鼻もない巨人がBの
枕許
(
まくらもと
)
に立った。
曾
(
か
)
つて、Bが、Kの室に入りかけた時、
後方
(
うしろ
)
に立った影であった。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ある男の不潔きはまる存在を、
曾
(
か
)
つてこのやうな根の深さで、いとひ、そして憎んだことがありえたらうか。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
曾
(
か
)
つておれののを拾いあげたように、その子供らにつまみ上げられるだろう——だからいいかげんにしろ。
しゃりこうべ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
しかも片目足なえという不具者だ。いまだ
曾
(
か
)
つてどこの国からもこんな使者は迎えたことがない。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曾
(
か
)
つて、主任から、個性を殺せと説教されました。そうして個性は主任を殺せと説教しました。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その異様な老人の姿を見て、当然私は
曾
(
か
)
つて初代が見たという不気味なお爺さんを思い出した。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「百両盗んで五両か十両を貧乏に施こし、あとの九十何両を飲み食いや悪遊びに
費
(
つか
)
って、義賊面もねえものだ」と
曾
(
か
)
って平次が腹を立てたのは、この仲間のことだったのです。
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼が
曾
(
か
)
つて、
殆
(
ほとん
)
ど感じたことのなかつた、求めても得られず、また求めようともしなかつた女性への思慕——彼は胸元をひきしぼられるやうな甘い悲哀にだん/\ひたつて行つた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
曾
(
か
)
つてネネの美しき容姿については一言もいってはいなかったではないか。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
曾
(
か
)
つては軍治の母親がやつて来たり、又途中まで送つて行つたりしたことのある河沿ひの小路を、幾と軍治は何が何やら解らずに突走つた。路に小石が沢山出てゐて、下駄をとられさうになつた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
中村孤月氏が
曾
(
か
)
つてした平塚明子論に於いて
平塚明子論
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
そして手頼りなくしまいには子供のないことが、夫婦きりであることに
曾
(
か
)
つてない羞恥さえかんじさせた。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この世界には
曾
(
か
)
つて沈静あることなく、時として運動を示さゞるなく、日として代謝を告げざるはなし。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
曾
(
か
)
つて新鳥越に榮華を
誇
(
ほこ
)
つた、菱屋の番頭をしてゐて溜め込んだと言はれ、元手が非常に潤澤な上、金藏は年に似ぬ締り屋で、女房を貰つて、一人口ふやすのが惜しさに、下女一人
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
曾
(
か
)
つては、将軍の台覧にも供え、元禄年中の城主
柳沢吉保
(
やなぎさわよしやす
)
も、
垂涎
(
すいせん
)
措
(
お
)
かなかったといわれる——
土佐光吉
(
とさみつよし
)
の歌仙図に
近衛信尹
(
このえのぶただ
)
の
讃
(
さん
)
のある——紙数にすればわずか十二、三枚の薄い
帖
(
じょう
)
だった。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曾
(
か
)
つて無かったほど愛しています。早くあの「ポツダム宣言」の約束を全部果して、そうして小さくても美しい平和の独立国になるように、ああ、私は命でも何でもみんな捨てて祈っています。
返事
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
月下に白く銀を砕いて、緑の草を分けて、走っている水の音である。女は、未だ
曾
(
か
)
つてかかる流れを、この森の中に見出したことがなかった。しばらくその水音に耳を傾けて、仕事をやめていた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
が、母親の返辞は意外にも娘の耳もとに、
曾
(
か
)
つて聞いたことがないほど冷たくむしろ意地悪くきこえた。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「国民之友」
曾
(
か
)
つて之を新題目として詩人に勧めし事あるを記憶す、
寔
(
まこと
)
に格好なる新題目なり、彼の記者の常に
斯般
(
しはん
)
の事に
烱眼
(
けいがん
)
なるは吾人の
私
(
ひそか
)
に畏敬する所なれど
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
君は、長沢伝六と同じように——むろん、あれほどひどくはないが、けれども、やっぱり僕の価値を知らない。君は、僕の『つぼ』をうったことは
曾
(
か
)
つてないのだ。倉田百三か、山本有三かね。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこでは
曾
(
か
)
つて見たこともないこの巣窟にありがちな慘忍な形式で、すべての女を墮落させるための拷問のやうな折檻が、いま、ありありと隣の室に行はれてゐるやうに思はれて
蒼白き巣窟
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
ポープの楽天主義の如きは蓋し所謂解脱したる楽天にして、其
曾
(
か
)
つて唱ひし詞句に
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
かれの前から半町ほどさきから、かれが
曾
(
か
)
つてきき覚えのある唄い声がきこえてきた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
“曾(
曽
)”の解説
曽(そう、曾)は、漢姓のひとつ。『百家姓』の385番目。
2020年の中華人民共和国の第7回全国人口調査(国勢調査)に基づく姓氏統計によると中国で32番目に多い姓であり、805.85万人がいる。一方、台湾の2018年の統計では第17位で、338,779人がいる。
(出典:Wikipedia)
曾
部首:⽈
12画
“曾”を含む語句
曾祖母
曾祖父
曾孫
未曾有
曾遊
木曾路
長曾我部
木曾川
木曾街道
曾富騰
長曾我部盛親
曾呂利新左衛門
下曾根
宇曾利山
小木曾
曾祖父様
何曾
伊曾保物語
伊曾保
達曾部
...