旭日あさひ)” の例文
紅き石竹せきちくや紫の桔梗ききょう一荷いっかかたげて売に来る、花売はなうりおやじの笠ののき旭日あさひの光かがやきて、乾きもあえぬ花の露あざやかに見らるるも嬉し。
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ナポリへと志し給はゞ、明後日は旭日あさひのまだサンテルモ城(ナポリ府を横斷する丘陵あり、其いたゞきの城を「カステル、サンテルモ」といふ)
その翌朝早く眼が覚めて窓の辺から外を眺めると、雪山の間から登りました旭日あさひの光が大塔だいとう金輪こんりんに映じて居る様は実に美しいです。また一首
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
女子おなごの世に生れし甲斐かい今日知りてこの嬉しさ果敢はかなや終り初物はつもの、あなたは旅の御客、あうも別れも旭日あさひがあの木梢こずえ離れぬ内
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここにさんとして輝くのは、旭日あさひに映る白菊の、清香かんばしき明治大帝の皇后宮、美子はるこ陛下のあれせられたことである。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかして余再び彼に帰し、彼再び我に和し、旧時の団欒だんらんを回復し、我も彼の一となり、彼をして旭日あさひの登るがごとく、勇者のねむりより醒めしがごとく
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
信長は一隅の柿の木の下にたたずんで旭日あさひにてらてら耀かがやいている真っ赤な実の、枝もたわわな姿に眼をまされていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行く/\旭日あさひ未だ昇らず、曉露げうろの繁きこと恰も雨のごとし。霧は次第に東山とうざんより晴れて、未だ寢覺ねざめに至らざるに、日影は早くも對岸の山の半腹に及びぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
春の野に迷ひ出でたはつい昨日きのふ旭日あさひにうつる菜の花に、うかるゝともなく迷ふともなく、廣野ひろのまく今日けふまでは。思へば今日けふまではあやしく過ぎにけり。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
特に風のない静かな夜のうちに出来、翌朝旭日あさひに輝いていることが多い。新雪表面に出来た場合にはスキー家たちが「葉雪」という特殊な名前で呼んでいる。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
旭日あさひの広大なる光はほとばしって、それら荒々しい者どもの頭に火をつけたかのようだった。舌の根はゆるみ、冷笑や罵詈ばりや歌声までが大火のように爆発した。
それに材は檜で、只今、出来たばかりのことで、木地きじが白く旭日あさひに輝き、美事でありました。
旭日あさひの昇ってくる方角に、目に見えぬ蓬莱ほうらいまたは常世とこよという仙郷の有ると思う考えかたは、この大和島根やまとしまねを始めとして、遠くは西南の列島から、少なくとも台湾の蕃族ばんぞくの一部までに
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此時このときまつたけて碧瑠璃へきるりのやうなひがしそらからは、爛々らん/\たる旭日あさひのぼつてた。
木之助は従兄いとこの松次郎と組になって村をでかけた。松次郎は太夫さんなので、背中に旭日あさひつるの絵が大きくいてある黒い着物をき、小倉こくらはかまをはき、烏帽子えぼしをかむり、手に鼓を持っていた。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
紫に明け渡る夜を待ちかねて、ぬっと出る旭日あさひが、おかより岡をて、万顆ばんか黄玉こうぎょくは一時に耀かがやく紀の国から、ぬすみ来たかおりと思われる。この下を通るものは酔わねば出る事を許されぬおきてである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七兵衛が去った後の裏庭は閑静しずかであった。旭日あさひの紅い樹の枝に折々小禽ことりの啼く声が聞えた。差したるかぜも無いに、落葉は相変らずがさがさと舞って飛んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
人間元より変な者、目盲めしいてからその昔拝んだ旭日あさひの美しきを悟り、巴里パリーに住んでから沢庵たくあんの味を知るよし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「そうさ、イギリスみたような強い国だ。イギリスでも驚くほど強くなった国で、旭日あさひの昇るごとくにこの頃は万国に名が輝いて、良人うちのひとは新聞を読んでそういう事を知って居る」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一天万乗ばんじょうの大君の、御座ぎょざかたわらにこの后がおわしましてこそ、日の本は天照大御神の末で、東海貴姫国とよばれ、八面玲瓏れいろう玉芙蓉峰ぎょくふようほうを持ち、桜咲く旭日あさひの煌く国とよぶにふさわしく
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
岩にかれ、旭日あさひにかがやいて、むせび落つる水のやや浅いところに家鴨あひる数十羽が群れ遊んでいて、川に近い家々から湯のけむりがほの白くあがっているなど
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よしやあたたかならずとも旭日あさひきら/\とさしのぼりて山々の峰の雪に移りたる景色、くらばかりの美しさ、物腥ものぐさき西洋のちり此処ここまではとんで来ず、清浄しょうじょう潔白頼母敷たのもしき岐蘇路きそじ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その当時の大阪は摂津大掾せっつだいじょうがまだ越路こしじの名で旭日あさひの登るような勢いであり、そのほかに弥津やつ太夫、大隅おおすみ太夫、呂太夫の錚々そうそうたるがあり、女義には東猿とうえん末虎すえとら長広ながひろ照玉てるぎょくと堂々と立者たてものそろっていた。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もとにほ旭日あさひはヒマラヤの
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
市郎がしゅくを抜けて村境むらざかいに着いた頃には、旭日あさひすで紅々あかあかと昇った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)