揉手もみで)” の例文
二番番頭が揉手もみでをしながら「この度は、何とも、はや」と悔みのようなことを言って絹一匹金一封を添えたものを置いて帰りました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
暖簾のれんをくぐったところをズブ六になった中間体が無暗にポンポンいうのを、亭主がおさえておいて、取ってつけたような揉手もみで
と、揉手もみでをするのです。筋肉質の確りした中老人で、柔弱だつたといふ伜の菊次郎に比べて、これはまた、武家あがりと言つた恰幅かつぷくです。
『あの染之助さんが、是非一寸ちょっと奥さんにお目にかかりたいと云うのですが、……』と、モジモジ揉手もみでをしながら云うのでした。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と、一斉にひき受けてから、しばらくがやがや手分けの評議をしていたが、やがて一名の代表者が前へ出て、揉手もみでをしながら
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
健は待つてましたと言はぬ許りに急に難しい顔をして、霎時しばしじつと校長の揉手もみでをしてゐるその手を見てゐた。そして言つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ほかの折助が、これもまたワザとらしい身ぶりと声色で、揉手もみでをしながら、お銀様の方へとかたまって来るのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
婆さんは一人で、きかぬ気らしく頭振かぶりを振りながら言い続けるのである。私は、揉手もみでをせんばかりに、はいはいして
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
昔は弱者には同類の親しみを寄せ、強者に空うそぶいてゐたが、近頃はあべこべで、強者に同類の親しみを寄せ、揉手もみでをしてオアイソ笑ひを浮べる。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
天守てんしゆうへから御覧ごらんなされ、太夫たいふほんの前芸まへげいにござります、ヘツヘツヘツ』とチヨンとかしらげて揉手もみでふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
びっくりして王様が剣へ手をかけながら起き返っていると、裾の方に、だんだら縞の着物を着た一寸法師が揉手もみでをして、お追従笑いをしながら立っている。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
三左衛門は僧をうしろにしないようにと用心して草履ぞうり穿いた。若党は揉手もみでをして立っていた。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『それこそ大事だいじ證據しようこひとつである』と王樣わうさま揉手もみでをしながら、『さらば陪審官ばいしんくわんに——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「何故つて……」男は一寸揉手もみでをした。「実をいふと、貴女あなたに惚れつちまつたのでさ。」
揉手もみでをすることも教えられ、われながらあさましかったが、目立って世帯じみてきた友子のことを考えると、婦人客への頭の下げ方、物の言い方など申分ないとめられるようになった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
番頭が、金離れのいい庄吉へ、揉手もみでをして御叩頭した。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
彼は、実直らしく揉手もみでをしながら、応接間へ通つた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ゴリラは柄にもなく揉手もみでをせんばかりである。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お縫揉手もみでをしながら
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、揉手もみでをするのです。筋肉質の確りした中老人で、柔弱だったという伜の菊次郎に此べて、これはまた、武家あがりと言った恰幅かっぷくです。
チョーク縞の、すごいダブルのスーツを着たヘンリ清水という紳士は、むかし下町の商人がやったような、いかにも古風な揉手もみでをしながら
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ヂュプラは名優がアンコールされたときの態度のように少し首を傾げ上目使いに揉手もみでしながら気取って答礼をしている。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
難有ありがとう様で、へい、」と前掛まえかけの腰をかがめる、揉手もみでひじに、ピンとねた、博多帯はかたおび結目むすびめは、赤坂やっこひげと見た。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
砕けた腰がまたはまると、揉手もみでをして取りつき、右が入って抱き込んだかと思うと、勝手が悪いと見えて捲き直してみたり、諸差もろざしになったから、もうこっちのものと思っている途端に
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
客の部屋の閾際しきいぎわ揉手もみでをしている時とは別人のように口汚く
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町人平次——お上の御用を勤めてゐるには相違ありませんが、武士の髷切り騷ぎには、内々揉手もみでをして喜んで居るのでした。
入交って亭主柏屋金蔵、揉手もみでをしながらさきに挨拶に来た時より、打解けまして馴々なれなれしく
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せんぶりの千太は呆気あっけにとられて、気味悪そうにもじもじと揉手もみでをしながら
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
揉手もみでしながら、亭主は縁へ退さがりかけた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
池上に向い揉手もみでをして
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
町人平次——お上の御用を勤めているには相違ありませんが、武士の髷切り騒ぎには、内々揉手もみでをして喜んで居るのでした。
「ああ、かたじけのうござります。何たる、神様か、仏様か、おかげで清く死なれまする。はいはい、わたくし風情にここと申す住所すみかもござりませぬ。もう御暇おいとまを下されまし。」と揉手もみでをしつつ後退あとじさり
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
揉手もみでをして、また平伏した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎はまた、揉手もみでをして喜んで居ります。有名な美人に逢つて見るのを、役得と心得て居る八五郎です。
沓脱くつぬぎそばうづくまつて、揉手もみでをしながら、圖々づう/\しいをとこで、ずツとかほ突出つきだした。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八五郎はまた、揉手もみでをして喜んでおります。有名な美人に逢って見るのを、役得と心得ている八五郎です。
沓脱くつぬぎかたはらうづくまつて揉手もみでをしながら、※々づう/\しいをとこで、づツとかほ突出つきだした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四十そこ/\、まだ用人摺れのする年ではありませんが、主人大村兵庫の脂切あぶらぎつたのと違つて、ひどく氣の弱さうな菊内は、御用聞風情の前に揉手もみでをして居るのでした。
柔和やわらかなちっとも気取きどりっけのない四十ぐらいな——後で聞くと主人だそうで——質素な男が出迎えて、揉手もみでをしながら、御逗留ごとうりゅうか、それともちょっと御入浴で、といた時、客が、一晩お世話に
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
谷五郎はさう言つて揉手もみでをするのです。いかにも男を賣る稼業らしい豪快な感じのする男でした。
「へい、殿樣とのさまへ、御免ごめんなせいまし。」としりからげのしまつた脚絆きやはん。もろにそろへてこしかゞめて揉手もみでをしながら、ふとると、大王だいわう左右さいう御傍立おわきだちひとつはちたか、こはれたか、大破たいは古廟こべうかたちめず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八五郎が揉手もみでをしながら入つて來たのは、この季節にしては生暖かい、曇り日のある朝でした。
と腰をかがめ、揉手もみでをして、ひたすら頼めどいっかなかず
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
揉手もみでをしながら喜ぶ八五郎。若い女を仲に挾んで、神田明神下から深川西町への道々、ポツリポツリと語る女の言葉を綜合して、平次は事件の輪郭だけでもまとめて行きます。
「へい、四階しかいでございます。」と横に開いて揉手もみでをする。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甚助は口の過ぎたのに氣が付いたものか、揉手もみでをし乍ら尻込みをして居ります。
と亭主は前へ出て、揉手もみでをしながら
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庭に降りて昨夜ゆふべ勘七の刺された場所を見て、そこから一間ほど先にある庭木戸の輪鍵の具合などを見てゐると、主人の宗助は揉手もみでなどをしながら後ろから鬼瓦おにがはらのやうな顏を出すのでした。
伝九郎は揉手もみででびたびたお辞儀する。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
佐助は臆病らしく揉手もみでをしながら、考え考え三郎兵衛のために弁ずるのです。