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掻消
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かきけ
ふりがな文庫
“
掻消
(
かきけ
)” の例文
廻廊へ出たと思うと、四郎の影も、手下どもの影も、谷間を風に捲かれて落ちる枯葉のように、たちまち、その行方を
掻消
(
かきけ
)
してしまう。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貴婦人が、
衝
(
つ
)
と立つと、蚊帳越にパッと
燈
(
あかり
)
を……
少
(
わか
)
い女は
這
(
は
)
ったままで
掻消
(
かきけ
)
すよう——よく一息に、ああ消えたと思う。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
博士は
卓子
(
テーブル
)
の蔭から半身を出して見送ったが……亡霊の姿は
煖炉
(
だんろ
)
の処で、急に
掻消
(
かきけ
)
すように見えなくなって
了
(
しま
)
った。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
成程、榮三郎を坐らせて居た座蒲團だけが、部屋の眞ん中に冷たく殘つて、その上に居る子供の姿は
掻消
(
かきけ
)
しでもしたやうに見えなくなつて居るのです。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
絶間
(
たえま
)
なく鳴りひびく蓄音機の音も、どうかすると
掻消
(
かきけ
)
されるほど
騒
(
さわが
)
しい人の声やら皿の音に加えて、煙草の
烟
(
けむり
)
や
塵
(
ちり
)
ほこりに、唯さえ頭の痛くなる時分
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
耆婆扁鵲
(
ぎばへんじゃく
)
の神剤でもとても
癒
(
なお
)
りそうもなかった二葉亭の数年前から持越しの神経衰弱は露都行という三十年来の希望の満足に
拭
(
ぬぐ
)
うが如く忽ち
掻消
(
かきけ
)
されて
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
すると、その可愛い狸の仔の姿は
掻消
(
かきけ
)
すやうに消えてしまひました。そして、森はまた元の
真闇
(
まつくら
)
になりました。
馬鹿七
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
鍛冶屋
(
かじや
)
の薄暗い軒下で青年がヴァイオリンを練習していた。往来の雑音にその音は忽ち
掻消
(
かきけ
)
されるのだが、ああして、あの男はあの場所にいることを疑わないもののようだ。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
高く懸る水蒸気の群は、ぱつと薄赤い反射を見せて、急に
掻消
(
かきけ
)
すやうに暗く成つて了つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
首を延べて
眴
(
みまは
)
せども、目を
瞪
(
みは
)
りて眺むれども、声せし
後
(
のち
)
は黒き影の
掻消
(
かきけ
)
す如く
失
(
う
)
せて、それかと思ひし木立の寂しげに動かず、波は悲き音を寄せて、一月十七日の月は白く愁ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
姿は
朦朧
(
もうろう
)
として
掻消
(
かきけ
)
す如く見えなく成りましたから、伴藏は戸棚の戸をドン/\叩き
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
娘は
柴折戸
(
しおりど
)
のところへ来ると今雨戸のところに立って見送っていた、私の方を
振返
(
ふりかえ
)
って、
莞爾
(
にっこり
)
と挨拶したが、それなりに、
掻消
(
かきけ
)
す如くに
中門
(
ちゅうもん
)
の方へ出て行ってしまった、この
後
(
のち
)
は別に来なかったから
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
一寸
(
ちよいと
)
躓
(
つまづ
)
いても
怪我
(
けが
)
をするのに、
方角
(
はうがく
)
の
知
(
し
)
れない
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
で、
掻消
(
かきけ
)
すやうに
隠
(
かく
)
れたものが
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
やう
筈
(
はづ
)
はないではないか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
けれど余りにも、優しかった兄、弟思いな兄、また力と
恃
(
たの
)
んでいた兄に、
突忽
(
とっこつ
)
と、
現
(
うつ
)
し世の姿を眼の前から
掻消
(
かきけ
)
されてしまったので、多感な謙三郎は
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この夕立の
大合奏
(
サンフォニー
)
は
轟
(
とどろ
)
き渡る
雷
(
いかずち
)
の
大太鼓
(
おおだいこ
)
に、強く高まるクレッサンドの調子
凄
(
すさま
)
じく、やがて優しい
青蛙
(
あおがえる
)
の笛のモデラトにその
来
(
きた
)
る時と同じよう忽然として
掻消
(
かきけ
)
すように
止
(
や
)
んでしまいます。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのうちに、ポッと浮いて見えたかと思う大島が
掻消
(
かきけ
)
すように隠れた。あだかも金を
費
(
つか
)
って身を
悶
(
もだ
)
えながら帰って行く山本さんに
対
(
むか
)
って、「船旅も御無事で」と
告別
(
わかれ
)
の挨拶でもするかのように……
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お金の方やお桃の方のように忽然として姿を
掻消
(
かきけ
)
し、死骸もわからずになるのかも知れないといった、恐ろしい予感と恐怖に、兎もすれば、沈み勝ちになるのを
何
(
ど
)
うすることも出来なかったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:10 暴君の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
体がぶるぶるッと
顫
(
ふる
)
えたと見るが早いか、
掻消
(
かきけ
)
すごとく
裸身
(
はだかみ
)
の女は消えて、一羽の大蝙蝠となりましてございまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袖
(
そで
)
で
雪洞
(
ぼんぼり
)
の
灯
(
ひ
)
をぴつたり
伏
(
ふ
)
せたが、フツと
消
(
き
)
えるや、よろ/\として、
崩折
(
くづを
)
れる
状
(
さま
)
に、
縁側
(
えんがは
)
へ、
退
(
しさ
)
りかゝるのを、
空
(
そら
)
なぐれに
煽
(
あふ
)
つた
簾
(
すだれ
)
が、ばたりと
音
(
おと
)
して、
卷込
(
まきこ
)
むが
如
(
ごと
)
く
姿
(
すがた
)
を
掻消
(
かきけ
)
す。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
可
(
よし
)
、
何
(
なん
)
とでも言へ、
昨日
(
きのふ
)
今日
(
けふ
)
二世
(
にせ
)
かけて
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
んだ
恋女房
(
こひにようばう
)
がフト
掻消
(
かきけ
)
すやうに
行衛
(
ゆくゑ
)
が
知
(
し
)
れない。
其
(
それ
)
を
捜
(
さが
)
すのが
狂人
(
きちがひ
)
なら、
飯
(
めし
)
を
食
(
く
)
ふものは
皆
(
みな
)
狂気
(
きちがひ
)
、
火
(
ひ
)
が
熱
(
あつ
)
いと
言
(
い
)
ふのも
変
(
へん
)
で、
水
(
みづ
)
が
冷
(
つめた
)
いと
思
(
おも
)
ふも
可笑
(
をか
)
しい。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、目にも留まらぬばかり、
掻消
(
かきけ
)
すがごとくに見えなくなった。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無惨
(
むざん
)
の
状
(
さま
)
に、ふつと
掻消
(
かきけ
)
した
如
(
ごと
)
く
美
(
うるは
)
しいものは
消
(
き
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
掻
漢検準1級
部首:⼿
11画
消
常用漢字
小3
部首:⽔
10画
“掻”で始まる語句
掻
掻巻
掻込
掻合
掻廻
掻口説
掻取
掻分
掻乱
掻上