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彼方此方
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あっちこっち
ふりがな文庫
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彼方此方
(
あっちこっち
)” の例文
それと同時に
彼方此方
(
あっちこっち
)
の小屋から夢を破られた者共が起きて来て、忽ち陣中の騒ぎになったが、その混雑が彼には一層都合がよかった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
又金を一つ処へ仕舞って置いて知れると悪いと思いましたから、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へお金を片附けて仕舞って置きまして、
些
(
ちっ
)
とずつ出して使い
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
昼食後そのまゝ
彼方此方
(
あっちこっち
)
で話し込むことだ。或日、僕の近所の連中は社長を問題にした。社長が食堂へ顔を出したのである。
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と千浪は素直に立ちかけたが、勝手をしらぬ家のこととて、そこから庭下駄をはいて屋敷の庭でも
彼方此方
(
あっちこっち
)
と
彷徨
(
さまよ
)
っているより外なかったのである。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは
唐人
(
とうじん
)
の姿をした男が、腰に
張子
(
はりこ
)
で作った馬の首だけを
括
(
くく
)
り付け、それに
跨
(
またが
)
ったような格好で
鞭
(
むち
)
で尻を叩く真似をしながら、
彼方此方
(
あっちこっち
)
と駆け廻る。
梵雲庵漫録
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
▼ もっと見る
何しろ松竹系といえば、帝劇を除いて東京の有名な劇場は皆そうなのですから、一時は米斎君も
彼方此方
(
あっちこっち
)
の芝居を掛持で、随分お忙しかったようです。
久保田米斎君の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……それから
既
(
もう
)
十一
年
(
ねん
)
、
其時
(
そのとき
)
になァ
單身立
(
ひとりだち
)
をさっしゃりましたぢゃ、いや、
眞
(
ほん
)
の
事
(
こと
)
、
彼方此方
(
あっちこっち
)
と
駈𢌞
(
かけまは
)
らッしゃって
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
しばらく私が立って眺めていると、小牛は繋がれたままでぐるぐると廻るうちに、地を引くほどの長い綱を
彼方此方
(
あっちこっち
)
の楢の幹へすっかり巻き付けて
終
(
しま
)
った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
佐渡屋は無気味に鎮まり返って奉公人達は
彼方此方
(
あっちこっち
)
に一と塊りになり、半分は眼顔で話して居りました。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼方此方
(
あっちこっち
)
へ往って、何処の家の風呂でもおかまいなしに
覗
(
のぞ
)
き込んで泣いていたが、
終
(
しま
)
いには空の
浴槽
(
ゆぶね
)
の中へ
裸体
(
はだか
)
で入っていたり、万一これをさまたげる者でもあると
風呂供養の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
土手の上、松の木蔭、街道の曲り角、往来の人に怪まるるまで
彼方此方
(
あっちこっち
)
を
徘徊
(
はいかい
)
した。もう九時、十時に近い。いかに夏の夜であるからと言って、そう遅くまで出歩いている
筈
(
はず
)
が無い。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
彼方此方
(
あっちこっち
)
マゴマゴして、小倉
中
(
じゅう
)
、宿を
捜
(
さが
)
したが、
何処
(
どこ
)
でも泊めない。ヤット一軒泊めて
呉
(
く
)
れた所が薄汚ない宿屋で、
相宿
(
あいやど
)
の
同間
(
どうま
)
に人が寝て居る。スルト
夜半
(
よなか
)
に
枕辺
(
まくらもと
)
で小便する音がする。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
菊太の出来るだけの弁舌を振って、
彼方此方
(
あっちこっち
)
、
実入
(
みいり
)
の悪かった田の例をあげる。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は、先刻から酒席の間を、
彼方此方
(
あっちこっち
)
と廻って、酒宴の興を取持っていたが、
漸
(
ようや
)
く
酩酊
(
めいてい
)
したらしい顔に満面の微笑を
湛
(
たた
)
えながら、藤十郎の前に改めて
畏
(
かしこ
)
まると、恐る恐る
酒盃
(
さかずき
)
を前に出した。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お客は二人
連
(
つれ
)
だったそうで、それから
彼方此方
(
あっちこっち
)
へと
最
(
も
)
う一人芸者を掛けて見たらしかったが、何しろもう時間が一時過ぎているので、とうとう出来ず仕舞いになって、玉ちゃんだけ一人のお客へ出て
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
まだ大事そうに懐に入れていた
筍
(
たけ
)
の皮包を取り出すと、それを木戸口や、五味箱の上や、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へ持って行ってウロウロした。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「何か正業についてくれると宜いんだが、大きなことばかり言って
彼方此方
(
あっちこっち
)
飛んで廻って歩いて、
真正
(
ほんとう
)
に兄弟泣かせだよ」
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
角右衞門は出掛けまして、三角から深川を
彼方此方
(
あっちこっち
)
と三日の間捜しましたが、とんと心当りもなく、鼻の穴を黒くして、埃だらけになって帰ってまいりました。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼方此方
(
あっちこっち
)
の
修羅場
(
しゅらじょう
)
に起っていた刃音や呻きや
矢弦
(
やづる
)
のひびきも、次第に減って来た。そして今はただ口々に
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「今日は盆のことでございますから、
彼方此方
(
あっちこっち
)
おまいりをして、
晩
(
おそ
)
く帰るところでございます」
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
家の中をぐるぐる
一
(
ひ
)
と廻りすると、紺野という助手と、その仲間の者でしょう、
彼方此方
(
あっちこっち
)
を叩き廻ったり探し廻ったりしながら、二人の少女を険悪な眼で、ジロリジロリと眺め廻しております。
向日葵の眼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
看守は、雑役の働く手先につれて
彼方此方
(
あっちこっち
)
しながら
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ぬるぬると
脂
(
あぶら
)
の湧いた
掌
(
てのひら
)
を、髪の毛へなすり着けたり、
胸板
(
むないた
)
で押し
拭
(
ぬぐ
)
ったりしながら、己はとろんとした眼つきで、
彼方此方
(
あっちこっち
)
を見廻して居た。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
会社の方も卒業前に
定
(
きま
)
ったので、
彼方此方
(
あっちこっち
)
であぶれた連中とは違う。現在は押しも押されもしない。そういうことをそれとなく先生に通じてある。
ロマンスと縁談
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私もそれから
彼方此方
(
あっちこっち
)
と見物も致しましたが、私は此の様に
肥
(
ふと
)
ってますもんですから、股が
縮
(
すく
)
むようで何だかがっかり致しますので、それから何でございますね
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その頃、
彼方此方
(
あっちこっち
)
から戻ってきた村の者は、もう百名を越えていた。床下や、
藪
(
やぶ
)
の中に逃げこんでいた者も、次第に出て来て、彼らの団結は、強大になるばかりだった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松蔵は何かに突き当って困ったような顔をしながら石垣を降りて往ったが、其のうちに
彼方此方
(
あっちこっち
)
から松蔵の傍へ人夫たちが来はじめた。人夫の中には
鉄鎚
(
かなづち
)
を手にした者もあった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼方此方
(
あっちこっち
)
鮮血にさえ彩られた、島幾太郎こと兇賊の首領大谷千尋、
切
(
しき
)
りに警官隊の中を漁って居りましたが、やがて、文士宇佐美六郎とは似もつかぬ、秀俊
慧敏
(
けいびん
)
な名探偵、花房一郎の顔を見ると
青い眼鏡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
寛一君はその晩返事を
認
(
したた
)
めにかゝったが、
動
(
と
)
もすると自分の苦情が先立つのに気がついた。
彼方此方
(
あっちこっち
)
で叱られて、考えて見ると馬鹿々々しくなる。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
久し振に女房の眼を
偸
(
ぬす
)
んで、
彼方此方
(
あっちこっち
)
を乗り
廻
(
まわ
)
せると云うことだけでも、愉快でたまらないのであった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
どうも江戸はえれえ
怖
(
おっ
)
かねえ所で、なか/\
好
(
い
)
い所だと云うのは嘘でがんす、側から/\火事が
追掛
(
おっか
)
けて来て、
彼方此方
(
あっちこっち
)
逃𢌞って、漸くのこんで
帰
(
けえ
)
ってめえりやしたが
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人は
彼方此方
(
あっちこっち
)
と小鳥を追っているうちに、鷹がそれたので、それを追って往った。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして何となく今朝は、
欣
(
よろこ
)
びごとでもあるらしい
生々
(
いきいき
)
した眸を、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へやって
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
好い年をして課長にもなれず、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へ行って、ペコ/\している。然う思ったら、尊敬する気になれなかった。
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
これから先きは飢えて死ぬより外に仕様がないと覚悟を
極
(
きわ
)
め、何うか知れないように
淵川
(
ふちかわ
)
へでも身を投げて死のうと思って、日の暮れるまで
彼方此方
(
あっちこっち
)
とうろ/\歩いて
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
路端などに咲いている花の色香を振り返ったりして、晩春の長い一日を
彼方此方
(
あっちこっち
)
と幸福そうに歩いていたこの二人は、定めし不思議な取り合わせだったに違いありません。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と口々に云う声が、
血眼
(
ちまなこ
)
の中を駈けあるいて、
彼方此方
(
あっちこっち
)
に、家探しが始まっていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夢遊病者のようになって
彼方此方
(
あっちこっち
)
歩いていて、やっと気が
注
(
つ
)
いて帰って来たところで、女房の直が大きな古狸と
睦
(
むつ
)
まじそうに飯を食っているので、棍棒を
執
(
と
)
って飛びこむなり狸を撲り殺した。
狸と同棲する人妻
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
津島さんが会社の倶楽部へ姿を現すと後進が
彼方此方
(
あっちこっち
)
から寄り
群
(
たか
)
る。頗る人気が好い。衣食足って大悟一番しているから、片言隻句
真
(
まこと
)
に能く凡俗に通じる。
小問題大問題
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「それが何処と云って、
極
(
き
)
まった所がある訳じゃなく、
彼方此方
(
あっちこっち
)
を泊り歩いているんですよ」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
親父が死ぬと
彼方此方
(
あっちこっち
)
で世話をする者があると死んだ親父に済まないから旦那なんぞを取るのは厭だと云うねえ、それを
強
(
たっ
)
て勧めるから旦那を取るけれども若い
好
(
い
)
い男は取らないねえ
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『——そう改まるな。今日呼んだのはほかじゃないが、武器講の一件だ。弱ったのう。
彼方此方
(
あっちこっち
)
から、矢の催促はまずよいとして、余り長びくので、近頃は、そちに対して、種々な取沙汰だ』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人は行燈の燈で
彼方此方
(
あっちこっち
)
を見まわったが、別に怪しいこともないので、其の夜は其のままにして寝たが、朝になって住職が本堂へ往ったところで、
其処
(
そこ
)
の天井裏から生なましい血が滴っていた。
義猫の塚
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし可なり得るところがあった証拠に、中等教員の検定試験を
出色
(
しゅっしょく
)
の成績で通過して、忽ち
彼方此方
(
あっちこっち
)
から引っ張り凧になった。猪股先生は辞を低うして
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
これで
却
(
かえ
)
ってサバサバして、今日からは仕事も
捗
(
はかど
)
るであろうし、夜ものんびり寝られるであろう。それでも彼女は、裏の空地へ出て行って、雑草の中を
彼方此方
(
あっちこっち
)
掻
(
か
)
き分けながら
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
高根晋齋は勝五郎の世話で
両児
(
ふたり
)
を
漸
(
ようよ
)
う片附けましたから、是れよりお若の身を落付けるようにして遣ろうと心配いたして、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へ縁談を頼んでおきますと、江戸は広いとこでげすから
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
筑阿弥は、とうもろこしの中を、
彼方此方
(
あっちこっち
)
、
恐
(
こわ
)
い
目
(
め
)
をして歩いて来た。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「新聞の活字を
彼方此方
(
あっちこっち
)
から切り集めて
貼
(
は
)
ったんですよ。成功しましたね。
未
(
ま
)
だ電気が来なくて薄暗いから」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
白っぽいホームスパンの
上衣
(
うわぎ
)
の下に
鼠
(
ねずみ
)
のスウェーターを見せて、同じ鼠のフランネルのパンツを
穿
(
は
)
いた高夏は、狭い室内で
彼方此方
(
あっちこっち
)
荷まとめをするあいだも絶えず葉巻を手から口へ
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼方此方
(
あっちこっち
)
のお社は、鳥が来て、屋根を突ッつくものだから、雨が
漏
(
も
)
っているようだし、
廂
(
ひさし
)
の壊れているところだの、曲っている燈籠だの——どうしてこれがそんなに大切な所と見えるかい? え
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方此”で始まる語句
彼方此處