居室ゐま)” の例文
茶室がかつた居室ゐまの庭先きには、八つ手なぞを植ゑ込んで眺めを妨げてあるけれど、大きな葉の間から麥畑や草の家がチラ/\と見えた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
四邊あたり壁間かべには隙間すきま列國れつこく地圖ちづけられてあるなど、流石さすが海軍士官かいぐんしくわん居室ゐま見受みうけられた。
川地は黙つてスイと起ちつ「吾妻、居室ゐまへ来給へ、一盃いつぱい飲まう——骨折賃も遣らうサ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
夫人ふじん居室ゐまあたる、あまくしてつやつぽく、いろい、からきりはないたまどしたに、一人ひとりかげあたゝかくたゝずんだ、少年せうねん書生しよせい姿すがたがある。ひと形容けいようにしてれいなり、といてある。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
当時に有名なうての番匠川越の源太が受負ひて作りなしたる谷中感応寺の、何処に一つ批点を打つべきところ有らう筈なく、五十畳敷格天井がうてんじやうの本堂、橋をあざむく長き廻廊、幾部いくつかの客殿、大和尚が居室ゐま
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
白衣びやくえ淺黄あさぎの袴の平服になつて、居室ゐまの爐の前に坐つた道臣は、ポン/\と快い音のする手を二つ鳴らしてお駒を呼んだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こと小形こがたの「フランネル」の水兵服すいへいふくを、裁縫係さいほうがゝり水兵すいへいめいずるやら、いろ/\取計とりはからつてれる、其間そのまに、大佐たいさより命令めいれいのあつた吾等われら居室ゐま準備じゆんび出來できたので、其處そこみちびかれ
主人あるじ居室ゐま迷出まよひいでて、そゞろに庭を徜徉さまよひしが、恐しき声を発して、おのれ! といひさま刀を抜き、竹藪に躍蒐をどりかゝりて、えいとぎたる竹の切口きりくちなゝめとがれる切先きつさきまろべる胸を貫きて
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「さうだすか、わたへ等もしつかり疲勞くたぶれましたなア。まア緩然ゆつくり一服しまへう。」と、道臣は稍どぎまぎしながら言つて、先きに立つて居室ゐまへ入つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其處そこ各自めい/\が、かの親不知おやしらず子不知こしらずなみを、巖穴いはあなげるさまで、はひつてはさつつゝ、勝手許かつてもと居室ゐまなどのして、用心ようじんして、それに第一だいいちたしなんだのは、足袋たび穿はきもので、驚破すは
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
父は大きな廣い家の内の、四疊半一室ひとま居室ゐまに定めて、其處で食事をすれば睡眠もするし、客も引くといふ風であつた。其の四疊半は茶室仕立に出來てゐて、眞ん中に爐が切つてあつた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
まあ、おそろしいところからくらゐはなれたらうとおもつて怖々こは/″\振返ふりかへると、ものの五尺ごしやくとはへだたらぬわたし居室ゐま敷居しきゐまたいで明々地あからさま薄紅うすくれなゐのぼやけたきぬからまつて蒼白あをじろをんなあしばかりが歩行あるいてた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
玄關の次ぎに八疊の居室ゐまがあつて、其處には疊一枚もあらうかと思はれるほどの、大きな長火鉢が据ゑてあつた。其の前に角力取りの場所蒲團のやうなものを敷いて、太政官は胡座をかいてゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其處そこ婦人ふじん居室ゐまなのである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)