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寸毫
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すんごう
ふりがな文庫
“
寸毫
(
すんごう
)” の例文
戦場は天地を一宇の堂とした大きな修行の床ともいえる。月に白い謙信の
面
(
おもて
)
には、
寸毫
(
すんごう
)
といえども、敗けたという色は見えなかった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今井が病気で死んだ事に対しては、
寸毫
(
すんごう
)
の責任も無いけれど、彼が在世中に、親友の一人として、僕は何程の力を致したであろう。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
私の名は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、師匠漆検校様のお名前に拘わります、仔細あって、禁断の項に打った鍼には、
寸毫
(
すんごう
)
の間違いも御座いません、御奉行様
禁断の死針
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
試みることによって連句の芸術的価値に
寸毫
(
すんごう
)
も損失をきたすような恐れのないことは別に
喋々
(
ちょうちょう
)
する必要はないであろうと思われる。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私はその一事については
寸毫
(
すんごう
)
も彼を疑っていない。が、同時に私も当初においては彼を熱愛していたことを、認めて貰いたいのである。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
ただ少なくとも陸中五葉山の
麓
(
ふもと
)
の村里には、今でもこれを聴いて
寸毫
(
すんごう
)
も疑い
能
(
あた
)
わざる人々が、住んでいることだけは事実である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
人民にしていかにその
驥足
(
きそく
)
を伸ばさんとするもあにそれ得べけんや。ゆえに政府のほかに力を致すの余地は
寸毫
(
すんごう
)
も存せざるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかしこの真理を一六六〇年にスチェアート家は
寸毫
(
すんごう
)
だも知らず、一八一四年にブールボン家は念頭に浮かべだにしなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼は
朝夕
(
あさゆう
)
静寂な谷間の空気を呼吸しても、
寸毫
(
すんごう
)
の感動さえ受けなくなった。のみならずそう云う心の変化が、全然彼には気にならなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今頃は
死出
(
しで
)
の山路で峠越しでもやっておらなければならなかったが、幸いなるかな、身に
寸毫
(
すんごう
)
の傷だも負わずして、危うき一命を取り止めた。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
自分たち夫婦の、生活態度の違いを、抽象的に批評したり主張したり、そんなことで実生活が
寸毫
(
すんごう
)
も変化しないことを、伸子は経験で知った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし
寸毫
(
すんごう
)
の油断もない。襲って来たら開いて一
閃
(
せん
)
、抜く手も見せじと大刀膝わきに引きよせておいて、じろりと十人の目の動きを窺いました。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
穏かでないと言って、こいつのことだから、
寸毫
(
すんごう
)
も危険性はないことはわかっているが、何かよくよくの喜びが出来たに相違ないと思いました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
凡
(
およ
)
そ裁判には、
寸毫
(
すんごう
)
の私をも挟んではならぬ。西方を拝するのは、
愛宕
(
あたご
)
の神を驚かし奉って、私心
萌
(
きざ
)
さば
立所
(
たちどころ
)
に神罰を受けんことを誓うのである。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
われ等の神と、彼等の神とは、そこに
寸毫
(
すんごう
)
の相違もない。ただその神性が、一層よく発揮されて居る丈である。兎に角理性が最後の審判者である。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
拒絶されようなどとは
寸毫
(
すんごう
)
も疑わず、確信そのもののような少年たちの顔を見て、それだけで私は自分の敗北を認めた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
わたくしは自ら制しがたい獣慾と情緒とのために、
幾度
(
いくたび
)
となく婦女と同棲したことがあったが、避姙の法を実行する事については
寸毫
(
すんごう
)
も怠る所がなかった。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と見る/\風に従つて、皆消えつつ、やがて、一輪、
寸毫
(
すんごう
)
を
違
(
たが
)
へざる十七日の月は、壁の
面
(
おもて
)
に
掛
(
かか
)
つたのである。
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
不幸にして私は音楽の世界を
寸毫
(
すんごう
)
も自分のものにしていないので、これはどうすることも出来ず、やむなく言語による発散放出に一切をかけている次第です。
詩について語らず:――編集子への手紙――
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
此
夏中
(
なつじゅう
)
は開け放ちたる窓より聞ゆる物音に悩まされ
候事
(
そろこと
)
一方
(
ひとかた
)
ならず色々修繕も試み候えども
寸毫
(
すんごう
)
も
利目無之
(
ききめこれなく
)
夫
(
それ
)
より
篤
(
とく
)
と熟考の末家の真上に二十尺四方の部屋を
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なぜでしょうか……それにはまず、吾々は艇長に対し
寸毫
(
すんごう
)
の敵意さえもなかったことが云われます。それに吾々は、万が一の幸運の際のことも考えねばなりません。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
愛は私の個性を
哺
(
はぐ
)
くむために外界から奪い取って来る。けれどもその為めに外界は
寸毫
(
すんごう
)
も失われることがない。例えば私は愛によってカナリヤを私の
衷
(
うち
)
に奪い取る。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一蔵は、涙の中から、じっと、眼を据えて、斉彬の表情の、
寸毫
(
すんごう
)
の動きでも、見逃すまいとしていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
寄生木の大木将軍夫妻は、篠原良平の大木将軍夫妻で、余の乃木大将夫妻では無い。余は厳に原文に
拠
(
よ
)
って、如何なる場合にも
寸毫
(
すんごう
)
も余の
粉飾
(
ふんしょく
)
塗抹
(
とまつ
)
を加えなかった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
妙に期待めいたものは
寸毫
(
すんごう
)
もなく、狂おしくも
無慙
(
むざん
)
な、苦しみを伴なった思い出なのではあるが……
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
寺田屋事件以後は藩士尊攘派にたいしては
寸毫
(
すんごう
)
も容れるところのなかった薩藩が、最初の親英藩となるや、文久以来犬猿もただならぬ長薩拮抗の歴史に邪魔されながらも
尊攘戦略史
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
重ね重ね、私がぱちんと電燈を消したということは、全く私の卑劣きわまる
狡智
(
こうち
)
から出発した仕草であって、
寸毫
(
すんごう
)
も、どろぼうに対する思いやりからでは無かったのである。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
また居士は山を製造することを
頻
(
しき
)
りに唱道したが、それも晩年になって、自然を
寸毫
(
すんごう
)
も偽わることは大罪悪なりといった言葉から推すと、自ら否定したものともいえるのである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
新一の大胆不敵にしてしかも
寸毫
(
すんごう
)
の錯誤なき活動は望月少佐を驚歎せしめた。彼はこの怪屋の構造を
諳
(
そら
)
んじ、どこにどんな見張りがいるかを、掌を指すがごとく知り尽していた。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかるに、大脳作用に至りては、醒覚の間は
寸毫
(
すんごう
)
も休息をなさず。ゆえに、一定の時間労働せし後は、一定の時間回復の休息を取らざるべからず。この休息は、すなわち睡眠なり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
今でも塾にはコンな風が
遺
(
のこっ
)
て、生徒取扱いの法は塾の規則に従い、不法の者があれば会釈なくミシ/\
遣付
(
やりつ
)
けて
寸毫
(
すんごう
)
も
仮
(
か
)
さず、生徒に不平があれば皆出て行け、
此方
(
こっち
)
は何ともないと
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
これには今もって毛頭の偽りもなければ
寸毫
(
すんごう
)
のからかい気分もない。
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
平生性欲の獣を放し飼にしている生徒は、この triumviri の前では
寸毫
(
すんごう
)
も仮借せられない。中にも、土曜日の午後に白足袋を
穿
(
は
)
いて外出するような連中は、人間ではないように言われる。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
まして読者を茶化す思いは
寸毫
(
すんごう
)
といえども無いのである。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「予告の文句は非常に簡単だが、私に復讐するという意味には
寸毫
(
すんごう
)
の疑もない。見給え、これが大川が死ぬ一週間前に私が受取った予告だ」
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ございまする。——ここ数ヵ月は、
四辺
(
あたり
)
も無事でございますが、それがし自身の気もちは、まだ
寸毫
(
すんごう
)
も、戦陣から
解
(
と
)
かれてはおりません」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし今は不幸にも
寸毫
(
すんごう
)
の教訓さえ発見出来ない。この逸事の今のわたしにも多少の興味を与えるは
僅
(
わず
)
かに下のように考えるからである。——
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
拒絶されようなどとは
寸毫
(
すんごう
)
も疑わず、確信そのもののような少年たちの顔を見て、それだけで私は自分の敗北を認めた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
実に、
寸毫
(
すんごう
)
といえども意趣遺恨はありません。けれども、未練と、
執着
(
しゅうぢゃく
)
と、
愚癡
(
ぐち
)
と、卑劣と、悪趣と、
怨念
(
おんねん
)
と、もっと
直截
(
ちょくせつ
)
に申せば、狂乱があったのです。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
故意に自分を
圧
(
お
)
しつけようとしている
景色
(
けしき
)
が
寸毫
(
すんごう
)
も先方に見えないのにこちらは何となく感じてくる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかも治者と被治者とが全く相反した要求によって律せられている点に於ては
寸毫
(
すんごう
)
も是正されてはいないのだ。神と人とは合一する。その言葉は
如何
(
いか
)
に美しいだろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
前代の英雄や偉人の生い立ちに関しては、いかなる
奇瑞
(
きずい
)
でも承認しておりながら、
事
(
こと
)
一
(
ひと
)
たび各自の家の生活に交渉するときは、
寸毫
(
すんごう
)
も異常を容赦することができなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
たしかにこちらに対して
寸毫
(
すんごう
)
も好意を持っていないものの態度、しかも、
篤
(
とく
)
と闇を透して見れば、覆面をして長い二つの、
触
(
さわ
)
らば斬るものをさして突立っているのですから
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
悍馬
(
かんば
)
を慣らす
顛末
(
てんまつ
)
は、もちろん編集の細工が多分にはいってはいるであろうが、あばれるときのあばれ方はやはりほんとうのあばれ方で
寸毫
(
すんごう
)
の芝居はないから実におもしろい。
映画雑感(Ⅲ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
皮肉や
諷刺
(
ふうし
)
じゃないわけだ。そんないやらしい隠れた意味など、
寸毫
(
すんごう
)
もないわけだ。
多頭蛇哲学
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一 読書思索観察の三事は小説かくものの
寸毫
(
すんごう
)
も怠りてはならぬものなり。読書と思索とは剣術使の毎日道場にて
竹刀
(
しない
)
を持つが如く、観察は武者修行に
出
(
い
)
でて他流試合をなすが如し。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
余りに幼稚なるお芝居気に富んでいる事である。
彼
(
か
)
の
寸毫
(
すんごう
)
の微と
雖
(
いえど
)
も逃すことのない
透徹
(
とうてつ
)
その比を見ざる大学者の頭脳と、此度の所謂犯罪事実なるものとを比較する時
吾人
(
ごじん
)
は
如何
(
いかん
)
の感があるか。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
後で
洗矢
(
あらいや
)
で掃除をしてしまえば、それには
寸毫
(
すんごう
)
の痕跡も
止
(
とど
)
めないのだ。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
破るからアトを
張
(
はっ
)
て置きなさいと云うようにして、
寸毫
(
すんごう
)
も
仮
(
か
)
さない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
敵ありと、大物見の合図あらば、すぐ押太鼓を鳴らし、
寸毫
(
すんごう
)
乱れをみせるな。組頭どもは、勝家が
麾
(
き
)
の手もとに眼をあつめよ
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“寸毫”の意味
《名詞》
寸毫(すんごう)
極めて僅(わず)かなこと。ほんの少し。「毫」は「細い毛」の意。専ら「寸毫も」「寸毫の…も(「…」は名詞)」の形で、かつ否定語「ない」「ず」を後ろに伴って用いる。
(出典:Wiktionary)
寸
常用漢字
小6
部首:⼨
3画
毫
漢検1級
部首:⽑
11画
“寸”で始まる語句
寸
寸分
寸法
寸隙
寸々
寸暇
寸時
寸断
寸志
寸白