じょちゅう)” の例文
数多たくさん抱えているじょちゅう達は、それぞれ旦那衆だんなしゅうのおともをして屋根船に乗り込んで、隅田すみだの花見に往っているので家の中はひっそりしていた。
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
嫂のよこしたじょちゅうが阿英を呼びに来た。珏は阿英をやるのが厭であったからおもしろくなかった。阿英は婢を先に帰して後からゆくことにした。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「さきほどは有難うございました、どうも雨がひどいものですから、じょちゅうに傘を執りに往ってもらって待っているところでございます」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
景は感謝して帰り、その金のうちから十余金さいて、ある縉紳しんしんの家にいるじょちゅうを買って細君にしたが、その女はひどく醜くて、それで気が強かった。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
左側の料理場らしい処から男の声がすると小柄こがらじょちゅうが出て来たが、あがる拍子にみると、左の眼がちょとうるんだようになっていた。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一人のむすめじょちゅうれて、枝に着いた梅の花をいじりながら歩いていた。それは珍らしい容色きりょうで、その笑うさまは手にすくってとりたいほどであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
省三は不思議に思ってじょちゅうの声のした方を見た。昨日の朝銚子ちょうしで別れた女が婢の傍で笑って立っていた。女は華美はで明石あかしを着ていた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
じょちゅうげなんあやまちをしでかして、主婦に折檻せっかんせられるような時には、嬰寧の所へ来て、一緒にいって話してくれと頼むので、一緒にいってやるといつもゆるされた。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
村を逃げだした由平は、足のむくままに吉田よしだへ往って、其処の旅宿へ草鞋わらじを解いた。宿のじょちゅうは物慣れた調子で由平を二階の一間へ通した。
阿芳の怨霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
孝廉は帰ってじょちゅうをやって連城にかしずかした。王はそれを聞いて訴え出た。官吏は賄賂を受けて裁判を王の勝にした。喬は憤って死のうとしたが、どうすることもできなかった。
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
しかし、道夫はそんなことよりも早く下宿へ帰って、寝ぼけているじょちゅうにはかまわず、台所から酒を持って来てじぶんかんをして飲みたかった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鄭はそれをもっともの事であるとして、景の着ている敗れた綿入をかえさし、数日間めてやった。それは夜半ごろであった。景が寝ようとしているとじょちゅうが来て二十余金を置いていった。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「さきほどはありがとうございました、どうも雨がひどいものですから、じょちゅうに傘を取りに往ってもらって、待ってるところでございます」
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そっと起きてのぞいてみると、三、四人の女郎むすめが地べたへ敷物を敷いて坐り、やはり三、四人のじょちゅうがその前に酒と肴をならべていた。女は皆すぐれて美しい容色きりょうをしていた。一人の女がいった。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
老婆が蟇の両足を左右の手に別べつに持つとじょちゅうが前へ来た。その手にはコップがあった。女はそのコップを老婆の持った蟇の下へやった。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その細君はえんといってすこぶる美しい女であったが、ある夜自分の内室いまにいると一人の若い強そうな男が外から不意に入って来て、剣に手をかけて四辺あたりを見まわしたので、じょちゅうばあやは恐れて逃げてしまった。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
間もなく女は燈を持って入ってきたが、その後ろから壷を提げて従いてきたじょちゅうは、酒と食物を出して陳に喫わした。陳はせきこんで訊いた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
午が来て家内同志で飯をっていた。主翁ていしゅの九兵衛が空になった茶碗を出すと、その傍にいたじょちゅうがお給仕の盆を差しだした。
蠅供養 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秀夫はそのじょちゅうにビールの酌をしてもらいながら、琵琶びわいていたきれいな婢のことを聞こうと思ったが、それはまりがわるくて聞けなかった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
瓢屋のじょちゅうは川獺の悪戯いたずらをする晩を知っていて、お座敷が終って歌妓達が近くもあるし、川風に吹かれて逢引橋の袂から河岸縁かしっぷちを帰ろうとすると
築地の川獺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、思っていると、やがて下駄の音が縁側えんがわへ近づいて、障子しょうじいてる処からじょちゅうが入って来た。婢は手に何か持っていた。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
じょちゅうを呼びますと、何か、もすこしおあいそもできましょうが、めんどうでございますから、どうか召しあがってくださいまし、私も戴きます」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
真澄ますみはその晩も台所へ往って、酒宴さかもりの後しまつをしているじょちゅうから、二本の残酒のこりざけと一皿のさかなをもらって来て飲んでいた。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秀夫は後戻あともどりをして牡蠣船の前からまた新京橋のほうへ往って最初の場所に立って見た。きれいじょちゅうは琵琶を持っていた。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それをじょちゅうが知って大声を立てたところであった。太郎左衛門は女房の枕頭に坐って夢を見ている人のようにしていた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「じゃ、まいりましょう、何も心配しないのが好いのですよ、今はどこにもじょちゅうが足りなくって困っている時ですから、幾等いくらでも奉公口はあるのですよ」
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女は迎えに出てきたじょちゅうに言いつけて酒の準備したくをさした。女はすこし離れている間に濃艶な女になっていて、元のようなおどおどした可憐な姿はなかった。
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
年増のい姿がはっきり道夫の眼に見えた。それは勝浦の旅館で知りあったじょちゅうにそっくりの好ましい姿であった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山田は伊沢に酒をぐつもりで銚子ちょうしを持ってみると冷たくなっていた。じょちゅうはもう傍にいなかった。山田は手を鳴らした。山田も伊沢もかなり酔うていた。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長吉はいやなものを吐きだすように云ってから口をつぐんだ。短冊たんざくのような型のあるあか昼夜帯ちゅうやおびを見せたお鶴が、小料亭こりょうりやじょちゅうのような恰好かっこうをして入って来た。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこへ一方のふすまいて眼の大きな年増のじょちゅうが入って来た。婢はお時と云うのであった。お時は二本の銚子を手にしていた。お時は丹前たんぜんに愛想笑いをした。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「よし、それじゃ、婆あの分は、おいらが代筆をしてやる」筆のことを思いだして、「筆がないな、じょちゅうを呼ぼうか」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その生れた子供は毎日のようにじょちゅうの手に抱かれて、正午比ひるごろと夕方家の前へ出ていた。子供はひいひい泣いている時があった。通りかかった知己しりあいの者がくと
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
帰ろうと思ったのですが、それがみょうですよ、やっぱりどうかしてたのですよ、そこは時どき往ってますから、じょちゅうも知ってるのですよ、お千代ちよと云う婢が
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
太郎左衛門は二人の女をれて、じぶんの家へ帰り女房やじょちゅうに云いつけて二人の世話をさした。二人は江州ごうしゅうから来た者でわかい方の女は色の白いきれいな顔をしていた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主翁ていしゅじょちゅうが出て来てこのわかい旅人を愛想よく迎えた。婢は裏山から引いたかけいの水を汲んで来てそれを足盥あしだらいに入れ、旅人の草鞋擦のした蒼白い足を洗ってやった。
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「奉化の者で、お父さんは州判をしてたと言ったよ、湖西にじょちゅうと二人で暮してると言うのだ、そうかなあ」
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
婢は暗い庭のなかを走って奥の縁側えんがわからかけあがった。平三郎も続いて奥の縁側えんがわへあがった。じょちゅうへやの中へ体を隠した。平三郎もそれを追って部屋の口へ往った。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはひとりは印半纏しるしばんてんを着た料理番のようなわかい男で、ひとりは銀杏返いちょうがえしったじょちゅうのような女であった。
料理番と婢の姿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
じょちゅうなり何なりにして、私をお傍へ置いてくださいますまいか、そのかわり、私は親の残してくれた金三十両持っております、それをあきない資本もとでにお使いくださいまし
山姑の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大塚は古井戸に落ちた話から、猿にたすけられた話を女房やじょちゅうなどに聞かせていた。そして、何かの拍子に行灯の傍を見ると、白い大猿が前足をついて坐っていた。
忘恩 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「へんなことを聞くようですが、私達は、幾人おります」と云うと、じょちゅうはちょと老妓の顔を見てから
とんだ屋の客 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
素性すじょうを聞くともと奉化県ほうかけん州判しゅうはんむすめで、姓は、名は麗卿れいきょうあざな淑芳しゅくほうじょちゅうの名は金蓮きんれんであると云った。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
倉知夫人は務の帰ったあとで、そのころよく出入している株式の仲買店にいると云うわかい男と奥のへやで話していた。と、じょちゅうが来て山岡正義と云う方が見えたと云った。
白っぽい洋服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あれは牛込うしごめの飯島と云う旗下の娘で、死んだと思っておりましたが、聞けば事情があって、今ではじょちゅうのお米と二人で、谷中の三崎に住んでいるそうです。私はあれを
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
家を逃げだして東京へ出てから一二軒じょちゅう奉公をしているうちにある私立学校の教師をしている女と知己しりあいになって、最近それの世話で某富豪の小間使に往って見ると
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「奥様は、あなたの帰りがおそいと云って、じょちゅうさんと二人で、承天寺の方へ探しに往ったのですよ」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その傍には道伴みちづれになって来た主婦の妹と云うわかい女と、さっきの小間使のようなじょちゅうが立っていた。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
枕頭まくらもとで己を起しているような女の声がするので、真澄は何か用事が出来てじょちゅうが起しに来たのではないかと思って眼を開けてみた。それは丘の上で見つけた壮い女であった。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
何人たれかによさそうなうちを聞いてはいろうと思っていると、温泉宿のじょちゅうらしい女が前を往くので
火傷した神様 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)