如何いかん)” の例文
予は教育に於ては素人しろうとなれど、日本国民を如何いかに教育すべきか、換言せば教育の最大目的は如何いかんとの題下だいかに一げん述べてみようと思う。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また体質の如何いかんにかかわらず他の新しい婦人との触接に由って享楽しようとする欲望、或学者のいわゆる性欲上の好新欲が男にある。
私娼の撲滅について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
御身おんみの位地として相当の準備なくてはかなはず、第一病婦の始末だに、なほきがたき今日の場合、如何いかんともせんやうなきを察し給へ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
わしの寿命は、この十月の戌の日の戌の刻につきることがわかっておるのじゃから、わしの力としては、もはや如何いかんとも成しがたい。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
村人も事情を知って大いにあさ子に同情したが、如何いかんともすることが出来ず、あさ子の精神異常は一日一日に増して行くのであった。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
我十六歳にして三州小豆坂あずきざか初陣ういじんして以来五十余戦、未だ鬨の声ばかりで鶏軍した覚えがない。諸軍力をあわせずして如何いかんぞ勝とうや。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それを遠まきにして、群集の大円陣。いかなピストルの威力も、敏捷な早業も、この肉の壁に向っては如何いかんともすることは出来ない。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、すべてを押し流す「時」の流も、すでに時代を超越したこの毛利先生ばかりは、如何いかんともする事が出来なかったからであろうか。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
従って往時の画家の持っていた処の大和魂とも申すべき画家の気位いが衰弱して行く情けなさは如何いかんともする事が出来ないのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
さわれかくては人生の失敗者たるの否運に会するを如何いかん。人生を愛する以上、神を保ちおりて難問題の解決に当らなくてはならない。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
また、獲り方の如何いかんで味も変る。岐阜の人は鵜に呑ませたのが一番いいと言って、年々歳々うるさいまでに自慢を繰り返している。
鮎を食う (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
メリー号のゆくえは如何いかん? いまごろ乗組員たちは何をしているのであろうか、サケ料理をたべそこなった三千夫少年はどうなったか。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こんな工合であるから論文の価値は結局少しも絶対的なものでなく、全く相対的に審査員の如何いかんによって定まる性質のものである。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
若党までも使う屋敷で、用人その他の見えないのは如何いかんという批評もあったが、これは原作にも無理があるのだから致し方がない。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自然の力は盲目で如何いかんともなし難いから、これに対してはこれらの効果を観察し、解明し説明するほか何事をもなし得ないからである。
「拙者とて酔興で他国を流浪しているわけではない、行くも、とどまるも、それはおのおの生れついた身の運不運、如何いかんとも致し難い」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
例えば読書生が徹夜勉強すれば、その学芸の進歩如何いかんにかかわらず、ただその勉強の一事のみを以て自ら信じ自ら重んずるに足るべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「無益な籠城は、いたずらに城内の民を苦しめるばかりであろう。我らすら降ったものを、汝らの手で如何いかんとする気か。犬死すな」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはお雪の性質の如何いかんに係らず、窓の外の人通りと、窓の内のお雪との間には、互に融和すべき一の糸のつながれていることである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その友達がまた品物の如何いかんにかかわらずむやみに価切ねぎり倒す癖を有っているので、彼はただ歩くために少なからぬ時間を費やさされた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漢武帝、成吉汗ジンギスカン等は、その眼中に映じ来る他国を一々民族の如何いかんを問わず征服するという、古代の帝国主義者であったのである。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
一体、日本人には、事実の如何いかんを顧みないで、勝手次第な独断説を唱え、それがさも明白な事実であるかの如くに説く癖がある。
陳言套語 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
このモダーンガールというものの好みの審美的考察は如何いかんかくその美しさの種類は、「洋風」の美しさが基本となっている。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
もししかりとすれば、その理由を目的物の社会的地位、もっと具体化して言えば人とその物との関係如何いかんに求めて見るのが順序であろう。
親族関係、交友の如何いかんさ。何、友達の事なんぞ、大した条件ではないよ。結婚をすれば、処女時代の交際は自然にうとくなるです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「帰るのはやすい。だが、またはずかしめを見るだけのことではないか? 如何いかん?」言葉半ばにして衛律が座にかえってきた。二人は口をつぐんだ。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「風の色」という言葉は、ちょっと説明しにくい。青葉を吹く風に秋を感じ得る者だけが、この「風の色」の如何いかんを解し得るに過ぎない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
其れが芸術品として成上った時に於て、果して若やかな感じ即ち愉悦の情を見る人に与うるかゞ作品としての価値如何いかんである。
若き姿の文芸 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただしたいていの国が許し得るところの、死亡以上に出ずる出生の超過の如何いかんによって、それが異る程度は同一でなかろうが。
然るに如何いかんせん、これを平地に報ずる道なく、さればとて猛烈なる吹雪の中を下らんことは、到底一、二人の力を以て為し得べきにあらず
此の意を持して国民性を説く、(此の点につきてはみだりに作家のみ責むべき理由なしとするも)意やし、言の不妥なるを如何いかん
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
のこるところは其考案そのこうあん實施じつし如何いかんといふてん歸着きちやくする。しか其實施そのじつし一時いちじ數十萬圓すうじゆうまんえん年々ねん/\十萬圓じゆうまんえん費用ひようにて出來でき程度ていどである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
知らず燕王のこれに対して如何いかんの感を為せるを。たゞ燕王既に兵を起したたかいを開く、巍のことばしと雖も、大河既に決す、一葦いちいの支え難きが如し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また蕪村が俳句の中に漢語を取り入れた如く、外国語の語法でも日本化することができるかも知れない。ただ、その消化如何いかんにあるのである。
国語の自在性 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
然るに各藩の執政者にして杞憂きいうある者は法を厳にし、戒をきて、以て風俗の狂瀾をさへぎり止めんと試みけれども、遂に如何いかんともする能はず。
このことは、まことに如何いかんともしがたいことで、師匠没後早々にもこうした感情を少しでも互いにいだいたことは悲しむべきことでありました。
胴を輪切るか真っ向を割り付けるか、伎倆うで如何いかん躰形たいけいの如何、呼吸の緩急によって変化縦横! が、どっちみち恐ろしい。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かく申さば一方にて「すらだにも」の如きを許し、他の方にて「も」の一字を蛇蝎だかつ視するは如何いかんとの不審起り可申候。それは左の如き次第に候。
あきまろに答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人間界の中にある一種の自然現象であって、如何いかんとも致し難い。そういうことを、頭で考えることは、科学者にもできる。
動力革命と日本の科学者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
之を表はすべき文学は如何いかん。蓋し心に思ふより口に言はるゝなりとは思想界に於て正当に来るべき順序にして思想は必ず脩辞しうじの前に来る者なり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
即ちチベット語と屁の交るところの結果の如き、これは散文の能力によっては如何いかんとも表明することが不可能ではないか。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
と一二度虚空をつかんで苦しみましたが、奥方はそのまゝ息は絶えましたから如何いかんとも致し方がございませんが、この事は表向にも出来ません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
民権を主張するものにことごとく調和論派ならんや、王権を弁護するもの豈にことごとく専制論派ならんや、ただその論拠の如何いかんを顧みるのみ。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
いわゆる知らず知らず帝の則に従う、これなり。これ、これをという。そのすでに化するに及んでは、人これを如何いかんともすべからざるものなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
小父おぢさんの帰りはとつかはと馬車に乗りてはねばならぬ我宿わがやどの三ぜん冷飯ひやめしに急ぎ申候まうしそろいますなは如何いかん前便ぜんびん申上まうしあそろ通り、椽端えんばた日向ひなたぼつこにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
天下の将軍の相を持ち、これを成就する実力を持つもの、それは御辺じゃ。兵を挙げられるなら、日本国を治め給う日も近いことと存ずるが如何いかん
そうして、自然界における関係の如何いかんは別として、意識の世界にあっては、酸味は甘味と渋味との中間にあるのである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
その経歴の節、長州の村田四郎左衛門と申す人に面会致し候節、「何らの訳にて天下を経歴いたし候か、その趣意如何いかん
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
著者の如きもまたその不運な一人であって、自ら自己の非芸術を感じながら、しかも如何いかんともすることができないのだ。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
病気の平癒如何いかんかかわらず、むしろ病気をさえ忘れて本願にひれ伏したとき、薬師信仰は全しといえるのではなかろうか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)