大略あらまし)” の例文
停車場ステーションもいつの間にか改築される、山の手線の複線工事も大略あらまし出来上って、一月の十五日から客車の運転は従来これまでの三倍数になった。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
何方どっちにしても、これは大問題だ。君は大略あらまし分っているだろうから、今夜は一つ腹蔵ないところを話してくれ給え
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
竹山の親しく見た野村良吉は、大略あらまし前述まへの様なものであつたが、渠は同宿の人の間に頗る不信用であつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『イヤ、まつた意外ゐぐわいです。』とわたくし進寄すゝみよつた。かゝ塲合ばあひだから、勿論もちろんくわしいことかたらぬが、ふね沈沒ちんぼつからこのしま漂着へうちやくまでの大略あらましげると、大佐たいさはじめて合點がつてんいろ
今宵こよいこそ幸衛門にもお絹お常にも大略あらまし話して止めても止まらぬ覚悟を見せん、運悪く流れだまあたるか病気にでもなるならば帰らぬ旅の見納めと悲しいことまで考えて
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
黒の紋羽二重の紋着もんつき羽織、ちと丈の長いのを襟を詰めた後姿。せがれが学士だ先生だというのでも、大略あらまし知れた年紀としは争われず、髪は薄いが、櫛にてらてらとつやが見えた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何うしても谷間田は経験が詰んで居るだけ違います今其意見の大略あらましを聞てほと/\感心しました(荻)そりゃなア何うしても永年此道で苦労して居るから一寸ちょっと感心させる様な事を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
で私はこれから其不思議な恋愛悲劇の大略あらましに就いて物語りの筆を進めようと思う。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とゞろかし末世まつせ奉行のかゞみと成たる明斷めいだんちなみて忠相ぬしが履歴りれきとその勳功くんこう大略あらましとを豫て傳へきゝ異説いせつ天一ばうさへ書記かきしるして看客かんかくらんそなふるなれば看客此一回を熟讀じゆくどくして忠相ぬしが人と成りはらにを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども姫から大略あらまし仔細わけを聞くと、大きな口を開いて笑い出した——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
わが眼の前に絶えず彷彿ちらつく怪しの影を捉えて、一心不乱に筆を染めた結果、うやらうやらしんを写し得て、大略あらまし出来しゅったいした頃、丁度ちょうど私と引違ひきちがえての別荘へ避暑に出かけた貴族エル何某なにがし
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして其の時薫から女給の生活について、大略あらまし話をきいた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
今日は家の者はみんな御機嫌が悪い。乃公の顔を見ると白い眼をする。お島の談話はなしによると、乃公のお蔭で大略あらまし出来かけていた下話したばなし全然まるきり毀れて了ったのだそうだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
寄附金といわれて我知らずどきまぎしたが「大略あらまし集まった」とわずかに答えて直ぐわきを向いた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
大佐たいさこうまさ朝日島あさひじま出發しゆつぱつせんとする瞬時わづかまへ震天動地しんてんどうち大海嘯おほつなみために、秘密造船所ひみつざうせんじよ倉庫さうこくだけて、十二のたる流失りうしつしたことから、つひ今回こんくわい大使命だいしめい立到たちいたつたまで大略あらまし
山の手線の複線工事も大略あらまし済んで、案の通り長峰の掘割が後に残った。このごろは日増しに土方の数を加えて、短い冬の日脚ひあしを、夕方から篝火かがりびを焚いて忙しそうに工事を急いでいる。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
鼠色の雲の中へ、すっきり浮出したように、薄化粧のえんな姿で、電車の中から、さっ硝子戸がらすどを抜けて、運転手台にあらわれた、若い女の扮装みなりと持物で、大略あらましその日の天気模様が察しられる。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で老師は引き返したが心の中には岩石ヶ城の大略あらましの図形が出来上がっていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「その大略あらましを話してくれ給え。僕達はこれから受けるんだから、参考にする」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
然し今でも真夜中にふと眼をますと酒も大略あらまし醒めていて、眼の先を児を背負おぶったお政がぐるぐる廻って遠くなり近くなり遂に暗の中に消えるようなことが時々ある。然し別に可怕おそろしくもない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
是非ぜひかたらねばならぬその大略あらましだけをこゝしるしてかう。
ははあ、商売も大略あらまし分った、と思うと、其奴そいつ
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と安部君は級友の銘々伝めいめいでん大略あらまし果した。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)