トップ
>
大店
>
おおだな
ふりがな文庫
“
大店
(
おおだな
)” の例文
平次の
強靱
(
きょうじん
)
な記憶力は、日本橋本銀町の浅田屋——江戸長者番付の小結どころに坐る
大店
(
おおだな
)
の騒動を忘れているはずもなかったのです。
銭形平次捕物控:119 白紙の恐怖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
下谷長者町に、筆屋幸兵衛という、
筆紙商
(
ふでかみしょう
)
の
老舗
(
しにせ
)
がある。千代田城のお
書役
(
かきやく
)
御書院番部屋に筆紙墨類を入れている、名代の
大店
(
おおだな
)
だ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
さすがは
大店
(
おおだな
)
の旦那だ、お前達とは了見が違うぜ。俺が行って話をすると、そいつあ啓次の方がいけねえって、さんざん小言をくってた。
黒点:――或る青年の「回想記」の一節――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
前置きは長くなったが、そのほとりの
大店
(
おおだな
)
は、夕方早くから店の格子を入れてしまう。この格子は特長のあるいいものだった。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「
大店
(
おおだな
)
の若旦那だから、大方そんなことでしょうね」と、云いながら半七は少し考えていたが、やがて又しずかに云い出した。
半七捕物帳:63 川越次郎兵衛
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
十徳を着た
宗匠体
(
そうしょうてい
)
、船頭らしい男、
角鷹眼
(
くまたかまなこ
)
の町人、堅気な
大店
(
おおだな
)
の旦那ぜんとした者など、雑多な階級の色を集めていますが
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
銀座の××宝石商は、東京でも屈指の
大店
(
おおだな
)
で、時価八十万円の首飾りが、一夜盗賊のために盗み去られたのであります。
紫外線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
その場から連れて戻って、
否応
(
いやおう
)
なしに、
旦
(
だん
)
を
説付
(
ときつ
)
けて、たちまち
大店
(
おおだな
)
の手代分。大道稼ぎの猿廻しを、
縞
(
しま
)
もの揃いにきちんと取立てたなんぞはいかがで。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのなかには急に
落魄
(
らくはく
)
した人間が多く、倒産した商人とか、道楽のはてにおちぶれた
大店
(
おおだな
)
の主人とか、もっとしばしば浪人者がいるというぐあいであった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし、今度の一揆じゃ、中津川辺の
大店
(
おおだな
)
の中には多少用心した家もあるようです。そりゃ、こんな騒ぎをおっぱじめた百姓仲間ばかりとがめられません。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「何某の
大店
(
おおだな
)
の表看板を打ち
毀
(
こわ
)
して、芝の
愛宕山
(
あたごやま
)
へ持って行ってあったそうな。不思議なこともあるものだ」
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
いずれ富貴繁昌の
大店
(
おおだな
)
であろう。蔵開の日には一家の者を蔵に入れる慣例でもあると見えて、家格の順か、年齢順かによって順々に孫の男の子を蔵へ入れる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
小いところから仕上げて大きくなって行った、
大店
(
おおだな
)
の成功談などに
刺戟
(
しげき
)
されると、彼女はどうでも
恁
(
こう
)
でもそれに取着かなくてはならないように心が
焦
(
いら
)
だって来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
隣家の土蔵との
庇間
(
ひあわい
)
から、すべり入って、暗がりを、境の板塀を
刎
(
は
)
ね
越
(
こ
)
すと、奥庭——この辺によくある、
大店
(
おおだな
)
の空家を買って、そのまま、米問屋をはじめたわけなので
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
宅へ帰ってどうすると云うあてもないので、銀座通りをぶらぶら歩き、
大店
(
おおだな
)
のガラス窓の中を覗いてみたり雑誌屋の店先をあさってみたり、しばらくはほとんど何事も忘れていた。
障子の落書
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
三流四流の商店でも
潔
(
いさぎよ
)
しとはしないのに、夕日屋ともいわれる
大店
(
おおだな
)
がそれをやり出すに至っては、その窮し方の烈しさに腹も立たないで、涙がこぼれる——と噂をするものもある。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
藩か
大店
(
おおだな
)
かの「公費」で遊学したという学生も、絶無に近かったものと思われる。
淡窓先生の教育
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
石町
(
こくちょう
)
で、大光斎といわれる
大店
(
おおだな
)
の人形師、その家つき娘の、末起の母親おゆうはそりゃ美しかった。色白で、細面ですらりとした瘠せ形で、どこかに、人の母となっても
邪気
(
あどけ
)
なさが漂っていた。
方子と末起
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
寧ろ下町の
大店
(
おおだな
)
の主人、商人風の好紳士、と云つたやうに見受けた。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
朱
(
しゅ
)
とお
納戸
(
なんど
)
の、二こくの
鼻緒
(
はなお
)
の
草履
(
ぞうり
)
を、
後
(
うしろ
)
の
仙蔵
(
せんぞう
)
にそろえさせて、
扇
(
おうぎ
)
で
朝日
(
あさひ
)
を
避
(
さ
)
けながら、
静
(
しず
)
かに
駕籠
(
かご
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
で
)
たおせんは、どこぞ
大店
(
おおだな
)
の
一人娘
(
ひとりむすめ
)
でもあるかのように、
如何
(
いか
)
にも
品
(
ひん
)
よく
落着
(
おちつ
)
いていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
大店
(
おおだな
)
の旦那とでも云いたいような、人品と骨柄とを備えていた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
中へ入ってみると、なんとなく
顛倒
(
てんとう
)
して、
大店
(
おおだな
)
らしい日頃の節度もなく、奉公人たちはただうろうろと平次の一行を迎えるだけです。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大門通りも大丸からさきの方は、長谷川町、富沢町と大呉服問屋、
太物
(
ふともの
)
問屋が
門並
(
かどなみ
)
だが、ここらにも西陣の帯地や、
褂地
(
うちかけじ
)
などを扱う
大店
(
おおだな
)
がある。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
きっと知らねえ者が見たら、あっしは人間が
粋
(
いき
)
にできていやすから、さしずめ
大店
(
おおだな
)
の若旦那、お嬢様はその許婚。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「宗様、宗様」と村中の者に言われて育って来た奉公人の眼中には、
大店
(
おおだな
)
の番頭もあったものではなかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「いそってえ名前だそうだ」六助が云った、「ゆうべは四十くらいにみえたが、今夜は五つ六つ老けてみえる、自分では
大店
(
おおだな
)
の旦那らしいことを云っていたっけ」
秋の駕籠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と云うのは
彼
(
か
)
のお葉、こいつなかなか食えない奴で、この一件を知ったから黙っていない。相手は
大店
(
おおだな
)
の若旦那株だから、
嚇
(
おど
)
かせば金になると思って
啖
(
くら
)
い付きました
半七捕物帳:63 川越次郎兵衛
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほどなく、きれいな
楊柳
(
ようりゅう
)
並木の繁華街の一軒に、
古舗
(
しにせ
)
めいた
大店
(
おおだな
)
の間口が見える。
朱聯金碧
(
しゅれんこんぺき
)
の看板やら
雇人
(
やといにん
)
だの客の出入りなど、問わでも知れる
生薬問屋
(
きぐすりどんや
)
の店だった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子供がよく遊びに来るので、近しくしていた向うのある
大店
(
おおだな
)
の通い番頭の
内儀
(
かみ
)
さんも、その子供をつれてやって来た。この内儀さんは、叔母が存命中ちょくちょく芝居を見に行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この町人の一行はかなり
贅沢
(
ぜいたく
)
な身なりをして、
垢抜
(
あかぬ
)
けのしたところ、どうもこの辺の
小商人
(
こあきんど
)
とは見えない。そうかといって、しかるべき
大店
(
おおだな
)
の旦那とか、素封家とかいうものとも見えない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女隠居は、六十前後、かつては日本橋あたりの
大店
(
おおだな
)
の主人の囲い者だったそうで、下女一人を使って、つつましく暮しておりました。
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大店
(
おおだな
)
や金持ともなれば、世間に知られたくないようなないしょ事が、二つや三つはあるもんだ、金で済むことなら世間に恥をさらすことはねえからな、その記事を
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お城に近い日本橋
両替町
(
りょうがえちょう
)
(現今の日本銀行附近)にかなりの
大店
(
おおだな
)
であった、書籍と両替屋をかねて、町役人も勤めていた小熊という家もその数には
洩
(
も
)
れなかった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
伊豆伍
(
いずご
)
は、
身上
(
しんしょう
)
二十五万両と言われる神田三河町の
大店
(
おおだな
)
だ。一
代分限
(
だいぶんげん
)
で、
出生
(
しゅっせい
)
は越後の
柏崎
(
かしわざき
)
だという。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あの
御店
(
おたな
)
へ通うように成ったのも小父さんの世話であった。午睡で
皺
(
しわ
)
になった着物にも
頓着
(
とんじゃく
)
せず、素朴で、
関
(
かま
)
わないその
容子
(
ようす
)
は
大店
(
おおだな
)
の帳場に坐る人とは見えなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
貧乏はしても、
大店
(
おおだな
)
ふうに、家族は多かった。後家は六十に近い年であったが、江戸でも
草分
(
くさわけ
)
の
老舗
(
しにせ
)
を、自分の代でつぶしては、先祖へも申しわけがないと思うのだった。
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おみよの兄という人が
下町
(
したまち
)
のある
大店
(
おおだな
)
に勤めていて、その兄の方から月々の仕送りを受けているのだと母のおちかは
吹聴
(
ふいちょう
)
していたが、その兄らしい人が
曾
(
かつ
)
て出入りをしたこともないので
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小店
(
こだな
)
には、日々に
空家
(
あきや
)
が
殖
(
ふ
)
えて、
大店
(
おおだな
)
は日に日に腐ったまま立ち枯れて、人の住まなくなった楼の
塗格子
(
ぬりごうし
)
や、
褪
(
さ
)
め果てた水色の
暖簾
(
のれん
)
に染め出された大きな
定紋
(
じょうもん
)
が
垢
(
あか
)
づいてダラリと下った
風情
(
ふぜい
)
を見ると
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
日本橋の
大店
(
おおだな
)
の若旦那との間に、——私が十六の時生んだ
娘
(
こ
)
でした。お店に置くのが面倒で、月々仕送って頂いてここに置きました。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
土一升、金一升の土地に、杉の森という名はおかしいようだが、杉の森
稲荷
(
いなり
)
の境内は、なかなか広く、表通りは木綿問屋の
大店
(
おおだな
)
にかこまれて、社はひっそりしていた。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
名高い
大店
(
おおだな
)
の御隠居と唄われて、一代の栄華を
極
(
きわ
)
め尽したような婦人も、いかに寄る年波と共に、下町の空気の中へ沈みつつあるか——こういう話を娘達にも聞かせた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「うちは
大店
(
おおだな
)
だし、二十六にもなる娘を嫁にやるとなれば、軽くやっても二百両や三百両はかかるだろう、それを百両で片がつくんだし、娘は初めて男の味を知るわけだ」
あすなろう
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
呉服問屋の
山善
(
やまぜん
)
は、間口十八
間
(
けん
)
、雇人も何十人といる
大店
(
おおだな
)
だが、賊は、堀留川の裏河岸から、石垣づたいに住居へ押し入り、主の善兵衛や妻に重傷を負わせ、召使の幾人かは
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何も、あたしをチヤホヤしてくださる方は、鈴川の殿様ばかりとはかぎりません。鍛冶屋の富五郎さんだって、それから当り矢の店へ来てくだすった
大店
(
おおだな
)
の若旦那やなんか……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
京橋具足町の
金物屋
(
かなものや
)
、和泉屋の店さき。間口の広い
大店
(
おおだな
)
にて、店さきの土間にも店の左右の地面にも、金物類が沢山に積んである。上のかたには土蔵の白壁がみえて、鉄の大きい天水桶もある。
勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
金之丞さんも身内には相違ありませんが、縁が遠くなりますし、それに、あの通り弱い方で、
大店
(
おおだな
)
を切り廻す方じゃございません。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
娘に、油町の
辻新
(
つじしん
)
という
大店
(
おおだな
)
の
権助
(
ごんすけ
)
を養子にして
舂米屋
(
つきごめや
)
をさせ、自分たちは二階住居をしていた。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
老舗
(
しにせ
)
の
骨董屋
(
こっとうや
)
とか武家、
大店
(
おおだな
)
などに限り、安い仕事はいっさい断わるというふうであった。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まるで彼は、いながらにして江戸中の
大店
(
おおだな
)
の資本を、五本の指で動かしているといっていい。それほど売れている男なのだ。金の流れの裏に巣くっている、
蜘蛛
(
くも
)
のような存在である。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
この人は一切の主権を握る相続者ではないとのことであったが、しかし堅気な
大店
(
おおだな
)
の主人らしく見えた。でっぷり肥った番頭も
傍
(
かたわら
)
へ来た。池の
鯉
(
こい
)
の塩焼で、主人は私達に酒を勧めた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大
常用漢字
小1
部首:⼤
3画
店
常用漢字
小2
部首:⼴
8画
“大店”で始まる語句
大店向
大店然
大店舗