墜落ついらく)” の例文
突然、馬は車体に引かれて突き立った。瞬間、蠅は飛び上った。と、車体と一緒に崖の下へ墜落ついらくして行く放埒ほうらつな馬の腹が眼についた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
垂木たるきは、年寄としよりのおもみさえささえかねたとみえて、メリメリというおととともに、伯父おじさんのからだ地上ちじょうっさかさまに墜落ついらくしたのでした。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでは、猿田の操縦していった新宇宙艇が、墜落ついらくしてきたのであろうか。一行は非常な興味をもって、これを砂中さちゅうから掘りだしてみた。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ラランの悪知慧わるぢえ有名いうめいなもので、ほかのとりがうまくんでるのをると、近寄ちかよつては自分じぶんとがつた嘴先くちさきでチクリとして墜落ついらくさせてしまふのだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
もし手をはなしたら、弾丸のように地上に墜落ついらくして、からだはめちゃめちゃになってしまうでしょう。身の毛もよだつ、いのちがけの曲芸です。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けわしいがけ中腹ちゅうふくを走っている列車は、それと同時どうじすうしゃくの下にいわをかんでいる激流げきりゅうに、墜落ついらくするよりほかはない。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
幾何きかや物理や英語、それだけでもいまでは異国人のように差異ができた、こうして自分が豆腐屋とうふやになりだんだんこの人達とちがった世界へ墜落ついらくしてゆくのだと思った。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いつどこに墜落ついらくしようも知れぬとあって、いずれも二の足、三の足を踏むばかり……この間に、石火の剣闘にみだれかけた左膳の呼吸も平常に復して、肩もしずかに
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あまり多くの人々をせていた橋は、その重みにえずして墜落ついらくし、今まで死者を嗤っていた人達の多くが、溺死をすると云う筋で、作者の群衆に対する道徳的批判を
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大地震だいぢしん出會であつて屋外おくがいへの安全あんぜん避難ひなんはない場合ばあひは、家屋かおくつぶれること、かべ墜落ついらく煙突えんとつ崩壞ほうかいなどを覺悟かくごし、また木造家屋もくぞうかおくならば下敷したじきになつた場合ばあひ考慮こうりよして
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何か黒い小さなものがその屋根の頂きからころころと転がって来ては、ひさしのところから急に小石のように墜落ついらくして行くのだった。しばらく間を置いては又それをやっている。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「知ってたよ。墜落ついらくするかも知れない。墜落したらしたで、それもいいじゃないか。そう思って乗ったんですが、やはりだめだ。こわかったね。だからぼくはあんたに名刺を渡した」
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
すんでに墜落ついらくしようとしていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あとからあとへと、このあわれな敗走者はいそうしゃの姿が、メリー号のてすりをのりこえて、むこうに墜落ついらくしていくのが、光弾の照明下に見られた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんとも形容のできない悲痛な咆哮が天井にこだましたかと思うと、組み合った二人のからだは、降りしきる雪紙の中を、ともえに回転しながら、舞台の上に墜落ついらくした。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしは、はっきりとくも言葉ことばみみにきくことができました。けれど、わたしは、それにしたがわなかったのです。いしからあしはずすと、谷底たにそこ墜落ついらくして、ひだりりました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、彼の身体は曲った真油の背の上で舟のようにっていた。と、次の瞬間、彼はにじられた草の緑が眼につくと、反耶に微笑ほほえ不弥うみの女の顔を浮べて逆様さかさま墜落ついらくした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
明治四十二年めいじしじゆうにねん八月十四日はちがつじゆうよつか姉川大地震あねがはだいぢしんおい倒潰とうかいた、田根小學校たねしようがつこう教場きようじようである。讀者どくしや墜落ついらくした小屋組こやぐみが、其連合そのれんごうちからもつていかに完全かんぜんさゝへられたかをられるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ぼくはくやしいやら、腹が立つやらでね、すぐ追っかけようと思ったんだが、カモシカ号墜落ついらくのときにひどく腰をぶっつけて痛くて立ちあがれないんだ。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また洋風建築物ようふうけんちくぶつにては墜落ついらくしかけた材料ざいりよう氣附きづかれる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ああ、警笛けいてきだ。まぎれもなく、のぼり電車の警笛だ。次第次第に、叫音きょうおんれるように大きくなってくるではないか。彼は墜落ついらくするように階段を駆けくだった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういう言葉の終るか終らないうちに、一同の立った足許がグラグラとゆらめき、あッと思う間もなく、身体の中心がはずれて、ガラガラと奈落ならく墜落ついらくしていった。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何と言ってミチ子をなだめたものだろうかと眼の前に立つミチ子の肩をつかまえようとしたときに、佐和山女史墜落ついらくの音をききつけた所員が方々からドヤドヤと駈けつけた。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いいえ、アノ一昨晩いっさくばん、この部屋で寝ていますと、水素乾燥用の硫酸りゅうさんの壜が破裂をしたのです。その拍子ひょうしに、たなが落ちて、上にっていたものが墜落ついらくして来て、頭を切ったのです」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ガチャリッ」と硝子ガラスの破れる音が隣室りんしつですると、屋根から窓下にガラガラッと大きな物音をさせて墜落ついらくしたものがある。ソレッというので一同はドアを押し開いて隣室に飛びこんだ。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おかしいな。こんなに高度をさげてどうするのだろう。墜落ついらくしているのだろうか」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのときパイプがけて、動かなくなり、そのままこの無引力空間に漂い始めたんだ。一方、旧型きゅうがたの宇宙艇はこの衝突で跳ねとばされて、その勢いで月世界へ墜落ついらくしていったものだろう
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あっという間に、四少年は、傾いた板の間からすべり落ちて、下へ墜落ついらくしていった。さっきはちゃんとしていた階段が方々ではずれていたので、少年たちはどこまでも下へ落ちていった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この前きみが浅草公園あさくさこうえんの小屋の中で、綱わたりをしていたときに、きみはいつもりっぱに、らくらくとあの芸当げいとうをやりとげていた。ところが最後の日、きみは綱わたりに失敗して墜落ついらくした。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
奈落へ墜落ついらくすれば、どっち道、死あるのみである。
墜落ついらくだ。早く機から外へ出ろ……」
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)