口惜くちをし)” の例文
これぎりむなしく相成候が、あまり口惜くちをし存候故ぞんじさふらふゆゑ、一生に一度の神仏かみほとけにもすがり候て、此文には私一念を巻込め、御許おんもと差出さしいだしまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
蒙り候事口惜くちをしき次第に存じ奉つり候右新藤市之丞なるもの住所ぢうしよ相知あひしれ候へば私し虚言きよげんに之なきむね御分り相成べき儀に付何卒御威光ごゐくわう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それをおうらまをすのではない。嫉妬ねたみそねみもせぬけれど、……口惜くちをしい、それがために、かたきから仕事しごと恥辱ちじよくをおあそばす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ依然いぜんとして無能むのう無力むりよくざされたとびらまへのこされた。かれ平生へいぜい自分じぶん分別ふんべつ便たよりきてた。その分別ふんべついまかれたゝつたのを口惜くちをしおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
然るを先生余を目して先生の態度の不眞面目なるを甚しく攻撃するものとなす、馬鹿々々しとて思ひ捨てんにはあまりに口惜くちをしく此の一文を草するに至りぬ。
おもふにはゝがつゝをもてといひしゆゑ、母の片足かたあしを雪の山かげにくらひゐたるおほかみをうちおとして母のかたきはとりたれど、二疋をもらししはいかに口惜くちをしかりけん。
第一の所化 (一歩前に踏み出し乍ら)やれ、口惜くちをしや、南蛮寺の妖術めにばかされておぢやつたとは。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
たゝんとするに左の足痛みて一歩も引きがたしコハ口惜くちをしと我手にもみさすりつして漸やく五六町は我慢したれどつひこらへきれずして車乘詰のりづめの貴族旅となりぬ雨は上りたれど昨日きのふ一昨日をとゝひも降り續きたる泥濘ぬかるみに車の輪を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
無念とはうか、口惜くちをしいと謂はうか、宮さん、僕はお前を刺殺さしころして——驚くことは無い! ——いつそ死んで了ひたいのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
受るも口惜くちをしと父樣はとてもうかまれまじきにより私しこと早々さう/\江戸えどへ參り實否をうけたまはり自然此書中の如くに候へばほねを拾ひ御跡おんあととぶらひ申さんと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おもふにはゝがつゝをもてといひしゆゑ、母の片足かたあしを雪の山かげにくらひゐたるおほかみをうちおとして母のかたきはとりたれど、二疋をもらししはいかに口惜くちをしかりけん。
この腰元ははるといひて、もとお村とは朋輩なりしに、お村はちようを得てお部屋と成済なりすまし、常にあごて召使はるゝを口惜くちをしくてありけるにぞ、今く偶然に枕を並べたる二人ににんすがたを見るより
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御贔負にしてゐやはつたのか、ほんまに口惜くちをしいと、みなで云ふてまつせ。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
奉公に出さん事も口惜くちをしけれども外に工面くめんの致し方なく此上は一人の口をへらすより外なしと近所きんじよの口入を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのしつは当時家中かちうきこえし美人なりしが、女心をんなごころ思詰おもひつめて一途に家を明渡すが口惜くちをしく、われ永世えいせい此処このところとゞまりて、外へはでじと、その居間に閉籠とぢこもり、内よりぢやうおろせしのちは、如何いかにかしけむ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同業者のこれにかかりては、逆捩さかねぢひて血反吐ちへどはかされし者すくなからざるを、鰐淵はいよいよ憎しと思へど、彼に対しては銕桿かなてこも折れぬべきに持余しつるを、かなはぬまでも棄措すておくは口惜くちをしければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
……對手あひて百日紅さるすべりだと燒討やきうちにもおよところやなぎだけに不平ふへいへぬが、口惜くちをしくないことはなかつた——それさへ、なんとなくゆかしいのに、あたりにしてはなりひろい、には石燈籠いしどうろうすわつたあたりへ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)