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些事
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さじ
ふりがな文庫
“
些事
(
さじ
)” の例文
しかし著者の意はその辺の
些事
(
さじ
)
になくして、蕪村俳句の本質を伝えれば足りるのである。読者
乞
(
こ
)
う。これを
諒
(
りょう
)
してこれを取読せよ。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
孔子の衣食住の
些事
(
さじ
)
をさえ記録している『論語』に、一語も言及せられておらぬという事実は、十分重大視せられてよいのである。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
市井の
些事
(
さじ
)
、奉行職の眼からはすなわち天下の一大事とみているのが、忠相であった。忠相は、何となくこの磯屋の一件が気になった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
で。犬の沙汰などは
些事
(
さじ
)
とするも、万が一、さる
密
(
ひそ
)
か
事
(
ごと
)
が公となってはまずい。あとの処理はこの憲房にまかせられ、早うここを
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、大事の前の
些事
(
さじ
)
としてなるべく気にすまいと思ったが、身体中に
漲
(
みなぎ
)
る感覚的不快さをどうともすることができなかった。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
私たちの役割に残されたものは何があるかと思うようだが、幸いに因縁があったからコカワラヒワの一
些事
(
さじ
)
を記録して置こう。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
従って、身辺の
些事
(
さじ
)
に関するたわいもないフィロソフィーレンや、われながら幼稚な、あるいはいやみな感傷などが主なる基調をなしている。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
実は何でもない日常の
些事
(
さじ
)
をも一々解剖分析して前後表裏から考えて見なければ気が済まない二葉亭の性格が原因していた。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
崇拝する——人生の
些事
(
さじ
)
の中にも偉大を考える禅の考え方が茶道の理想となる——道教は審美的理想の基礎を与え禅道はこれを実際的なものとした
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
が、この
市井
(
しせい
)
の一
些事
(
さじ
)
らしい「揚羽のお艶」の噂が、飛んだ
凄
(
すさ
)
まじい事件に発展しようとは、銭形平次も思い及ばぬことだったに違いありません。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
斧をどこで手に入れるか、というようなことに至っては、てんで問題にもならないような
些事
(
さじ
)
であった。これほど容易なことはなかったからである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
彼の丁寧周密、一
些事
(
さじ
)
たりとも粗略にしなかった夫の気質を熟知している夫人の胸中には、次の如き思想が往来した。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
例えば、私は今から三日以前、
即
(
すなわ
)
ち一月三十一日の夜、君の家の中で君の身辺に起ったあらゆる
些事
(
さじ
)
を、寸分の間違いもなく君に告げることが出来る。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
髪が、
丸髷
(
まるまげ
)
に結つてある事は、かう云ふ
些事
(
さじ
)
に無頓着な先生にも、すぐわかつた。日本人に特有な、丸顔の、
琥珀
(
こはく
)
色の皮膚をした、賢母らしい婦人である。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かく動揺されるときは、さなきだに思慮
分別
(
ふんべつ
)
の
熟
(
じゅく
)
せぬ青年はいよいよ心の
衡平
(
こうへい
)
を失い、
些事
(
さじ
)
をも
棒大
(
ぼうだい
)
に思い、あるいは反対に大事を
針小
(
しんしょう
)
に誤る傾向がある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
日常の
些事
(
さじ
)
でも、I'll bet. You bet your life. I'll match you でなくては、気がすまないとみえて——。
字で書いた漫画
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
性格を上手にかく人は、これ
程
(
ほど
)
烈
(
はげ
)
しい事件の下に主人公を置かないでも、淡々たる尋常の
些事
(
さじ
)
のうちに動かすべからざる
其人
(
そのひと
)
の特色を発揮し得るものである。
『煤煙』の序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
いかんせん、巨人は
侏儒
(
しゅじゅ
)
の役を演じ、広大なるフランスは好奇にも
些事
(
さじ
)
を事とする。策の施しようはない。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
曳くばかりが受け持ちではない飲食
起臥
(
きが
)
入浴
上厠
(
じょうし
)
等日常生活の
些事
(
さじ
)
に
亘
(
わた
)
って面倒を見なければならぬしこうして佐助は春琴の幼時よりこれらの任務を担当し
性癖
(
せいへき
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
些事
(
さじ
)
といえば些事だが、都会に育ったものには、これこそほんとに想像も出来ないことであろう。それはこの部落では決して便所で紙を使わないということである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
彼の闘争は世界の大戦闘の一部をなしていた。彼の敗北は
些事
(
さじ
)
であって、すぐに回復されるものだった。彼は万人のために戦っていたし、万人も彼のために戦っていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
まるで問題にならない
些事
(
さじ
)
のようにも考えられたし、また、その反対に、そういう事態になるような国情だからこそ、かえって軽視できない、というふうにも考えられた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
併乍ら小生と雲如とは
自
(
おのず
)
から具眼の人は弁別致し
呉
(
くれ
)
候間、此等之一
些事
(
さじ
)
には不平を抱き候儀は小生に
於
(
おい
)
ては毛頭御座無く候。唯々雲如之世間狭く相成る可く気の毒の儀に御座候。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
確かに交際社會では日常の
些事
(
さじ
)
に過ぎないだらう——しかし、彼が現在の滿ち足りた氣持ちと、この
舊
(
ふる
)
い
建物
(
たてもの
)
と、それをめぐるものゝ中に新らしく
甦
(
よみがへ
)
つた悦びを話してゐたときに
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
たまたま背後の支配霊達が、
何等
(
なんら
)
かの通信を行うことはありても、その内容は通例
末梢
(
まっしょう
)
的の
些事
(
さじ
)
にとどまり、時とすれば取るに足らぬ
囈語
(
げいご
)
やら、とり止めのない
出鱈目
(
でたらめ
)
やらでさえもある。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
母となつて現実に触れて行く事実は世の中に有りあふれた日常の
些事
(
さじ
)
である。
文壇一夕話
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
小夜子は切り出したが、それはほんの女同志の友情の一
些事
(
さじ
)
にすぎなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
但馬守
(
たじまのかみ
)
も
流石
(
さすが
)
に、そんな
些事
(
さじ
)
に
對
(
たい
)
して、一々
死刑
(
しけい
)
を
用
(
もち
)
ゐることは
出來
(
でき
)
なかつたが、
掏摸
(
すり
)
なぞは
從來
(
じうらい
)
三
犯以上
(
ぱんいじやう
)
でなければ
死刑
(
しけい
)
にしなかつたのを、
彼
(
か
)
れは二
犯
(
はん
)
或
(
あるひ
)
は
事
(
こと
)
によると
初犯
(
しよはん
)
から
斬
(
き
)
り
棄
(
す
)
てて
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
この句の如き事柄は前の二句に
比
(
くら
)
べてむしろ
些事
(
さじ
)
であるけれども、作りものらしい痕跡がなくって、自然の趣を得たことにおいては遥に上位に位しているのである。好句の一たるを失わない。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
然し勿論そんな
些事
(
さじ
)
を
歯牙
(
しが
)
に掛ける秀吉では無い。秀吉が氏郷を遇するに別に何も有った訳では無い、ただ
特
(
こと
)
に之を愛するというまでに至って居らずに
聊
(
いささ
)
か冷やかであったというまでである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
再三述懐して居られるので、最初私はひどく意外に感じたのであるが、後になると、馬鹿正直の私は、一挙手一投足の労に過ぎなかったあんな
些事
(
さじ
)
を、それほどまで恩に感じていられるのかと
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
胎教とて、妊娠時にも、坐作進退の
些事
(
さじ
)
より、一切の心得について一向厳正なれとのみ教え、
而
(
しか
)
して女子に対してかくの如き要求をあえてする男子の所行
如何
(
いかん
)
と顧みるに、甚だ
放縦不羈
(
ほうじゅうふき
)
である。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
人
(
ひと
)
或
(
ある
)
ひはわが
輩
(
はい
)
のこの
意見
(
いけん
)
を
以
(
もつ
)
て、つまらぬ
些事
(
さじ
)
に
拘泥
(
こうでい
)
するものとし
或
(
ある
)
ひは
時勢
(
じせい
)
に
通
(
つう
)
ぜざる
固陋
(
ころう
)
の
僻見
(
へきけん
)
とするものあらば、わが
輩
(
はい
)
は
甘
(
あま
)
んじてその
譏
(
そしり
)
を
受
(
う
)
けたい。そして
謹
(
つゝし
)
んでその
教
(
をし
)
へを
受
(
う
)
けたい。
国語尊重
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
一、一
些事
(
さじ
)
一
微物
(
びぶつ
)
につきてもなほ比較的に壮大雄渾なる者あり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「それなのに、なぜ、この
度
(
たび
)
のような
些事
(
さじ
)
に、お心を労し、あまつさえ、その職も御一身も、自ら破り去るような短慮な道をえらばれるか」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、この
市井
(
しせゐ
)
の一
些事
(
さじ
)
らしい『
揚羽
(
あげは
)
のお艶』の噂が、飛んだ凄まじい事件に發展しやうとは、錢形平次も思ひ及ばぬことだつたに違ひありません。
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この一
些事
(
さじ
)
の中にも、霊魂不滅の問題が隠れているのではないかという気がする。(大正十一年十一月、渋柿)
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
けれどもこれらの詳細は、それを
些事
(
さじ
)
と言い去るのは誤りであって——人生のうちに些事はなく、植物のうちに
瑣末
(
さまつ
)
なる葉はない——それは皆有用なことである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
茶道いっさいの理想は、人生の
些事
(
さじ
)
の中にでも偉大を考えるというこの禅の考えから出たものである。道教は審美的理想の基礎を与え禅はこれを実際的なものとした。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
だが、極めて神経質で、学徳をも人格をも累するに足らない
些事
(
さじ
)
でも決して看過しなかった。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼女はいつも長々とクリストフに夢の話をした。そのちょっとした
些事
(
さじ
)
を忘れても、幾時間もかかって思い出そうとした。ただ一つの事柄も彼に聞かせないではおかなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
復讐の挙が江戸の人心に与えた影響を耳にするのは、どんな
些事
(
さじ
)
にしても、快いに相違ない。ただ一人
内蔵助
(
くらのすけ
)
だけは、僅に額へ手を加えたまま、つまらなそうな顔をして、黙っている。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
多くの読者はあるいは自分の郷里ばかりの一
些事
(
さじ
)
なりと考えられるか知らぬが、小児が土筆を
袴
(
はかま
)
の部分から二つに折って、そっと元の通りに
挿
(
さ
)
して置いて、どこで続いだかを
中
(
あ
)
てさせる遊戯は
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
今までは気にも留めなかった
些事
(
さじ
)
が、一々意識に上ぼるであろう。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
光秀はさっきからそんな
些事
(
さじ
)
に迷っていたのだった。事務に
過
(
あやま
)
ちないことにも思案のかかるほど彼の
明晰
(
めいせき
)
なあたまもこよいは少し
労
(
つか
)
れていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは自分の趣味
嗜好
(
しこう
)
が時代に遅れたという事実を証明する以外になんらの意味もない
些事
(
さじ
)
ではあろうが、この一些事はやはりちょっと自分にものを考えさせる。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この
巷
(
ちまた
)
の一
些事
(
さじ
)
が銭形平次の勘を裏切らずに、翌々日は思いも寄らぬ大事件になって現れました。
銭形平次捕物控:084 お染の歎き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
記憶のうちに下らない日付を針で止めることばかりをやってる
些事
(
さじ
)
収集家らは、前世紀一七七〇年頃、コルボーにルナールというシャートレー裁判所付きの二人の検事が
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
孔子いわく「人いずくんぞ
廋
(
かく
)
さんや、人いずくんぞ
廋
(
かく
)
さんや」と。たぶんわれわれは隠すべき偉大なものが非常に少ないからであろう、
些事
(
さじ
)
に自己を
顕
(
あら
)
わすことが多すぎて困る。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
しかしこの数年間彼は、職務上のいろんな煩わしい
些事
(
さじ
)
や、同僚または生徒との間の不正や不公平や不愉快などから、しだいに多く心を奪われていった。彼は気むずかしくなった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“些事”の意味
《名詞》
細かく、つまらないこと。
(出典:Wiktionary)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
事
常用漢字
小3
部首:⼅
8画
“些事”で始まる語句
些事小事