下階した)” の例文
ひとへに寄縋よりすがる、薄暗うすぐらい、えさうに、ちよろ/\またゝく……あかりつてはこの一點ひとつで、二階にかい下階した臺所だいどころ内中うちぢう眞暗まつくらである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手欄てすりより下階したのぞきて声を張上げ店番を呼立たり。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「し……下階したに……下階にいる」
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
そう言えば、全校の二階、下階した、どの教場からも、声一つ、しわぶき半分響いて来ぬ、一日中、またこの正午ひるになる一時間ほど、寂寞ひっそりとするのは無い。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
給金きふきんをのこらず夜具やぐにかける、くのが二枚にまいうへへかけるのが三枚さんまいといふ贅澤ぜいたくで、下階した六疊ろくでふ一杯いつぱいつて、はゞかりへきかへりあし踏所ふみどがない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……お二階にかい病床びやうしやうを、ひさしぶりで、下階した八疊はちでふえんさきで、かぜひやゝかな秋晴あきばれに、どうふをがりながら
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……清葉が下階したへ下りて、……近所だからね、自分の内へ電話を掛けて、おんなにいいつけて、通りへ買いに遣った、タングステンが、やがて紙包みになって顕れて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二階へ返って、小座敷へ坐直る、と下階したで電話を掛けます。また冷評ひやかすだろうが、待人の名が聞える。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まことに分秒電火の働き、一散に下階した駈下かけおりて、先刻忍びし勝手口より、と門内にのがれ出づれば、米利堅産種メリケンだね巨犬おおいぬ一頭、泰助の姿を見て、すさまじく吠えいだせり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
連樣つれさまつ——と下階したから素頓興すとんきようこゑかゝると、「みんなるかい。」と紅葉先生こうえふせんせいこゑがした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……案内者あんないしややとはれるものが、なにらないまへ道案内みちあんないたとふもなにかのえんおもふ。人一倍ひといちばい精出せいだしてさがさうからしづかにやすめ、と頼母たのもしくつて、すぐにまた下階したりた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お米さん、下階したに座敷はあるまいか。——炬燵に入ってぐっすりと寝たいんだ。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私も余程よっぽど寝苦しかったと見えます——先にお話しした二度めに目を覚ましますまで、ものの一時間とはなかったそうで——由紀の下階したからとおして見たのでは——余り判明はっきり見えるので
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざつしたばかりで、すゝもほこりものまゝで、まだ雨戸あまどけないでくくらゐだから、下階した出窓下でまどした、すゝけたすだれごしにそなへよう。お月樣つきさま、おさびしうございませうがと、かざる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
和田わださんがまだ學校がくかうがよひをして、本郷ほんがう彌生町やよひちやうの、ある下宿げしゆくとき初夏しよかゆふべ不忍しのばずはすおもはず、りとて數寄屋町すきやまち婀娜あだおもはず、下階した部屋へや小窓こまど頬杖ほゝづゑをついてると、まへには
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下階したの病室を済ました後、横田の田畝たんぼを左に見て、右に停車場ステイションを望んで、この向は天気が好いと、雲に連なって海が見える、その二階へ、雪洞ぼんぼりを手にした、白衣びゃくえの看護婦を従えて、真中まんなかに院長夫人。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
持って、下階した女房おかみさんの中へ寝に行きました、……一度でも芸者と遊んで、そのくらいな事が分らない。——さあ、ちゃんとして見て頂戴、サの字が見えない? 姉さんにない?……ええ、じれったい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下階したではどっと笑う声、円輔はきっと見得をして
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)