トップ
>
鶫
>
つぐみ
ふりがな文庫
“
鶫
(
つぐみ
)” の例文
十月になると山鳥だの
鶫
(
つぐみ
)
だのがうんとこさ獲れるんだよ、そのまた
美味
(
うま
)
いったら、……三度三度、あたしゃ幾日食べても飽きないね。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
他の一方には、
饒舌
(
じょうぜつ
)
な
雀
(
すずめ
)
や
喉
(
のど
)
を鳴らす
山鳩
(
やまばと
)
や美声の
鶫
(
つぐみ
)
が群がってる古木のある、古い修道院の庭の、日の照り渡った静寂さがたたえていた。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
鳥の中でも、
鵲
(
かささぎ
)
とか、
樫鳥
(
かけす
)
とか、くろ
鶫
(
つぐみ
)
とか、鶫とか、腕に覚えのある猟師なら相手にしない鳥がある。私は腕に覚えがある。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
チチコフは再び眼をあげて、またしても太い腿と恐ろしく長い口髭を持ったカナリスや、ボベリーナや、籠の中の
鶫
(
つぐみ
)
を眺めた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
その晩、かえってくると師匠はからすみだの、
海鼠腸
(
このわた
)
だの、
鶫
(
つぐみ
)
の焼いたのだの、贅沢なものばかりいい塗りの膳の上へ並べて晩酌をはじめた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
▼ もっと見る
串差
(
くしざ
)
しにして
炙
(
あぶ
)
る小鳥のにおいは広い囲炉裏ばたにみちあふれたが、その中には半蔵が
土産
(
みやげ
)
の一つの
加子母峠
(
かしもとうげ
)
の
鶫
(
つぐみ
)
もまじっていると知られた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一つ二つ
鶫
(
つぐみ
)
が鳴きはじめ、やがて堡楼の彼方から、美しい歌心の湧き出ずにはいられない、
曙
(
あけぼの
)
がせり上ってくるのであった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そのかはり、秋、
鶫
(
つぐみ
)
のとれる時分に是非いらしつて下さい。その時分には、よく東京のお方がお見えになります、といふ。
炉辺
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
生きとし生ける
鵯
(
ひよ
)
や百舌、
鶫
(
つぐみ
)
のたぐひ、木々の枯葉に驚く声も、けけつちやう、ちやうちやう、きいりきいりと親まる。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
の
鶫
(
つぐみ
)
じゃないけれど、どうも縁あって池の前に越して来て、鯉と隣附き合いになってみると、目の前から引き上げられて、
俎
(
まないた
)
で輪切りは
酷
(
ひど
)
い。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
盥
(
たらい
)
の中でシャツを洗ったり、
鶫
(
つぐみ
)
のように口笛を吹きながら
靴
(
くつ
)
をみがいた。ベルリオーズの言葉でみずから慰めた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
はしばみの高い頂の枝にもはや田の上に下りて来ぬ春の
鶫
(
つぐみ
)
が枝がくれに、幾声も高く
油囀
(
あぶらさえず
)
りの最中であった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雀が耳ざわりな音でしか鳴らないのに、
鶫
(
つぐみ
)
の類が甘美な、心をそそるような声で鳴くこともわかった。
フランケンシュタイン:02 フランケンシュタイン
(新字新仮名)
/
メアリー・ウォルストンクラフト・シェリー
(著)
そして彼がそれを見てゐるうちに、窓につみ上げてある青葉の枝に止つてゐた一羽の
鶫
(
つぐみ
)
が唄ひ始めた。
春の心臓
(新字旧仮名)
/
ウィリアム・バトラー・イエイツ
(著)
けれども小さいもの、鳥でいえば、
鶫
(
つぐみ
)
とか
鶉
(
うずら
)
とか
雀
(
すずめ
)
とか、魚でなら、いわしとかあじとかいいますものは、
獲
(
と
)
りたて、または締めたてでなくては
美味
(
うま
)
くありません。
日本料理の基礎観念
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「みゝずという奴は、眼も耳も無い癖に、
敏
(
さと
)
い奴でね、お嬢さん。土から首を出しかけているときにねえ、
鶫
(
つぐみ
)
の鳴き声が聞えると、ちゅっと、こう首を縮こますのですよ」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
棘
(
いばら
)
や木の枝が、こう、ご婦人の寝乱れ髪って工合に繁っていて、そのなかには
鶫
(
つぐみ
)
もいれば虎もいる。そいつを
藪
(
やぶ
)
のそとからぶっ放す……檻のなかの獣を撃つより楽なもんです。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おれは木の頂上に
鶫
(
つぐみ
)
の群れがいっぱいに止まっているのを見ていると——一本の木ではない、たくさんの木に止まっているのだ——そうして、みな声を張りあげて歌っているのだ。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
美濃から信濃にかけては秋に入ると、
鶫
(
つぐみ
)
の売買が盛んであるが、好いオトリの何年かを飼い馴らしたものは、ただの仲間の
麹漬
(
こうじづけ
)
になる鶫の、何千羽を集めたよりも高い価を持っている。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一所に
櫟
(
くぬぎ
)
の林があった。新芽を吹いたばかりであった。そこで
鶫
(
つぐみ
)
が啼いていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
先ず大別すれば三通りの焼き方がありまして、雀、
田鴫
(
たしぎ
)
、
鶫
(
つぐみ
)
、
椋鳥
(
むくどり
)
、
雲雀
(
ひばり
)
、
水鶏
(
くいな
)
、
鵯
(
ひよ
)
、
金雀
(
ひわ
)
、カケス、
山鴫
(
やましぎ
)
、山鳩、鴨、小鴨、
雁
(
がん
)
、牛、羊なぞはあまり焼き過ぎない方が良いとしてあります。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
青い
鶫
(
つぐみ
)
が食卓にのぼりだすと、聖餐式のやうに澄んだ夜ごとが、
展
(
ひら
)
ける…
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
僅
(
わずか
)
に其処に常住する
鴉
(
からす
)
——これもこの大きな松の梢の茂みの中に見る時おもひの外の美しい姿となるものである、ことに雨にいゝ——季節によつて往来する
山雀
(
やまがら
)
、
四十雀
(
しじゆうから
)
、
松雀
(
まつめ
)
、
鵯
(
ひよどり
)
、椋鳥、
鶫
(
つぐみ
)
沼津千本松原
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
若しそれ、風絶えて空曇りたる寒き日の暮れ近く、
鶫
(
つぐみ
)
の餌をあさりながら空庭に散り積った落葉をがさりがさりと踏み歩む音の寂しさに至っては、恐らくは古池の水に蛙の飛び入る響にも劣るまい。
写況雑記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
砂利しける十楽院上陵の阪道の杉の木立に
鶫
(
つぐみ
)
むれとぶ
閉戸閑詠
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
例えば瑠璃、きびたき、黒
鶫
(
つぐみ
)
などと。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
鶫
(
つぐみ
)
鳴く葡萄園に導きたい。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
そら
聖
(
ひじり
)
、あかづら
鶫
(
つぐみ
)
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
今も
鶫
(
つぐみ
)
が来て啼くか
沙上の夢
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
ごく薄く条のようになり、布を引くように、——しかし天も地もすっかり明けはなれて、森の中ではしきりに
鶫
(
つぐみ
)
が鳴きはじめた。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのかはり、秋、
鶫
(
つぐみ
)
のとれる時分に是非いらしつて下さい。その時分には、よく東京のお方がお見えになります、といふ。
炉辺
(新字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
皿
(
さら
)
についたのは、このあたりで
佳品
(
かひん
)
と聞く、
鶫
(
つぐみ
)
を、何と、
頭
(
かしら
)
を
猪口
(
ちょく
)
に、
股
(
また
)
をふっくり、胸を開いて、五羽、ほとんど丸焼にして
芳
(
かんば
)
しくつけてあった。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鶫
(
つぐみ
)
は、林の中に帰ることを急いでいた。くろ鶫は、例の
喉
(
のど
)
を押しつけたような叫び声を
頻
(
しき
)
りにあげていた。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
黐
(
もち
)
や網で捕れる
鶫
(
つぐみ
)
、
鶸
(
ひは
)
の類はおびたゞしい數でした。雀などは小鳥の部にも數へられないほどです。子供ですら馬の尻尾の毛で雀の
羂
(
わな
)
を造ることを知つて居ました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
すり切れた服と
埃
(
ほこり
)
だらけの
靴
(
くつ
)
のままで構わない、と言い出した。それでも彼は
鶫
(
つぐみ
)
のように口笛を吹いて管絃楽の各楽器を
真似
(
まね
)
ながら、自分で服を着替え靴をみがいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そしてこの性を抜いた豪華の
空骸
(
なきがら
)
に向け、左右から両側になって取り付いている二階建の小さい長屋は、そのくすんだねばねばした感じから、
鶫
(
つぐみ
)
の
腸
(
わた
)
の塩辛のようにも思う。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ボベリーナのそばの、すぐ窓際には、鳥籠が一つ懸っていて、黒っぽい地に白い斑点のある
鶫
(
つぐみ
)
が一羽その中からのぞいていたが、それがまた、ソバケーヴィッチによく似ていた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
鶫
(
つぐみ
)
や鳩の類が沢山とれた。ただ、烏と小さな目白の類とを、父は決して撃たなかった。
楠の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そうして彼の獲物袋には、
鶸
(
ひわ
)
、
鶫
(
つぐみ
)
、
獦
(
かり
)
などがはち切れるほどに詰まっていた。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二人がかりで大騒ぎをして三十郎に
足洗
(
すすぎ
)
をつかわせると、手を取らんばかりにして囲炉裏のそばへ連れて行き、それ飯を
焚
(
かし
)
げ、風呂を沸かせ、柿の葉鮨でもつくらんか、糀漬の
鶫
(
つぐみ
)
をいださんか
生霊
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鳥などは食に飢えているために、ことに簡単な方法で捕えられた。二、三日も降り続いた後の朝に、一尺か二尺四方の黒い土の肌を出しておくと、何の餌も
囮
(
おとり
)
もなくてそれだけで
鵯
(
ひよどり
)
や
鶫
(
つぐみ
)
が下りてくる。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
今日も
鶫
(
つぐみ
)
が
沙上の夢
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「今夜はお酒を召上りません? お
美味
(
いし
)
そうな
鶫
(
つぐみ
)
が買ってあるのですけど、……なんだか沈んでいらしって淋しいわ」
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
トントントントンと
俎
(
まないた
)
を打つのが、ひっそりと聞えて
谺
(
こだま
)
する……と
御馳走
(
ごちそう
)
に
鶫
(
つぐみ
)
をたたくな、とさもしい話だが、四高(金沢)にしばらく居たことがあって
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鶫
(
つぐみ
)
の群れが、
牧場
(
まきば
)
から
還
(
かえ
)
りに、
柏
(
かしわ
)
の
木立
(
こだち
)
の中で、ぱっとはじけるように散ると、彼は、眼を慣らすために、それを狙ってみる。銃身が
水気
(
すいき
)
で曇ると、袖でこする。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
鶫
(
つぐみ
)
のとれる季節で、半蔵は途中の加子母というところでたくさんに鶫を買い、六三郎と共にそれを旅の中食に焼いてもらって食ったが、余りの小鳥まで荷物になって
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
町の周囲は皆、牧場と丘陵だった。花咲いた
灌木
(
かんぼく
)
の中には、
鶫
(
つぐみ
)
のうれしげな鳴き声が、快活な明朗なフルートの小合奏をしていた。クリストフの
不機嫌
(
ふきげん
)
は間もなく消えた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
肉皿
(
アントレ
)
には
鶫
(
つぐみ
)
を差し上げようと思っているのですが、実はその鶫なるものはまだ
糸杉
(
シープレス
)
の
頂
(
てっぺん
)
の巣の中で眠っているのです、なにしろね、鶫なんてやつは
目覚
(
めざと
)
いからこうやって、子守歌でも聴かせて
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
赤い
鶫
(
つぐみ
)
が飛んで行った
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今日も
鶫
(
つぐみ
)
が
雨情民謡百篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
“鶫”の意味
《名詞》
(つぐみ)スズメ目ツグミ科ツグミ属の鳥一種。
(出典:Wiktionary)
鶫
漢検1級
部首:⿃
20画
“鶫”を含む語句
黒鶫
異鶫