なまづ)” の例文
いや、いさんだのさふらふの、瓜井戸うりゐどあねはべたりだが、江戸えどものはコロリとるわ、で、葛西かさいに、栗橋北千住くりはしきたせんぢゆどぢやうなまづを、白魚しらをつて、あごでた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ずつと往昔むかしは江戸の両国川にはなまづといふものは一ぴきむでゐなかつたのを、いつの年か大水が出て、それからのちは鯰があの川でれるやうになつた。
それがだんだんかわつててきました。おたまじやくしになつたのです。男蛙をとこかへるはそれをみると氣狂きちがひのやうになつておこりだしました。なまづをうんだとおもつたのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
付よ其方そなたは餘り正直過しやうぢきすぎるゆゑなり早々御酒のかんを付なまづ燒乾やきからしを煮付につけにして上よと申付るに彌助は諾々はい/\と云ながら酒のかんを付肴をこしらへて出しければ武士は大いに機嫌きげんなほいと愉快氣こゝろよげに酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なまづ
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
おどろかすと聞しがそれへは詣でず此宿このしゆくより上の諏訪はまだ三里もありときけばなり正午ひる少し過るころ下諏訪の温泉宿龜屋に着く一浴して快と賞し鯉なまづなどにて小酌しながらさても今日半日のつかれの恐しさよ小敵と見て侮りたる故此敗このはいは取りしならん是よりは愼みて一里の道も百里を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
二百十日にひやくとをか落水おとしみづに、こひふななまづすくはんとて、何處どこ町内ちやうないも、若いしうは、田圃たんぼ々々/\總出そうでさわぐ。子供こどもたち、二百十日にひやくとをかへば、ふな、カンタをしやくふものとおぼえたほどなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夜食やしよくぜんで「あゝあ、なんだいれは?」給仕きふじてくれた島田髷しまだまげ女中ねえさんが、「なまづですの。」なまづ魚軒さしみつめたい綿屑わたくづ頬張ほゝばつた。勿論もちろん宿錢やどせんやすい。いや、あつものはず、なまづいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
洒落しやれではなしにおどろいた。みなとまへなまづさら、うらなつておもふに、しけだなあ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
顔色かほいろあをざめたすみ法衣ころもの、がんばり入道にふだうかげうすさも不気味ぶきみ和尚をしやうなまづでもけたか、とおもふたが、——く/\の次第しだいぢや、御出家ごしゆつけ、……大方おほかた亡霊ばうれい廻向えかうたのむであらうとおもふで、功徳くどく
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はあ、よもや、とはおもふたが、矢張やつぱなまづめがせたげな。えゝ、らちもない、とけて、また番人ばんにんぢや、と落胆がつかりしたゞが、ばんもう一度いちどく、とつともよるけても、何時いつもかげうつらなんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)