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陥穽
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おとしあな
ふりがな文庫
“
陥穽
(
おとしあな
)” の例文
旧字:
陷穽
さっきから言うとおり、須弥壇の下に、設けの
陥穽
(
おとしあな
)
が、お前さんを待って、口を開けていますからね——なあに、怖いことはない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
田と田のあいだに
陥穽
(
おとしあな
)
を設けて、かれらの進入を防ぐことにしたので、象の群れは遠く眺めているばかりで、近寄ることが出来なかった。
中国怪奇小説集:10 夷堅志(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
網を張っておいて、鳥を追立て、
引
(
ひっ
)
かかるが最期網をしめる、
陥穽
(
おとしあな
)
を掘っておいて、その方にじりじり追いやって、落ちるとすぐ
蓋
(
ふた
)
をする。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其跡は犬よりも少し大きく、
且
(
かつ
)
蹼
(
みずかき
)
があるので足の指の間が切れていないという。或時老人が熊を捕る目的で一丈五尺
許
(
ばか
)
りの
陥穽
(
おとしあな
)
を掘って置いた。
奥秩父
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
何かしら
陥穽
(
おとしあな
)
が用意されているのではないかと考えたが、そんなことを顧慮している余裕はなかった。ただ京子の安否が息苦しい程気遣われた。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
またその
陥穽
(
おとしあな
)
は雪山の谷間よりも
酷
(
ひど
)
いものがあるであろうけれども、そういう
修羅
(
しゅら
)
の
巷
(
ちまた
)
へ仏法修行に行くと思えばよいと決心致しました。その歌は
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
浅草で興行中のサーカスの愛嬌者、狒々男が評判の『鉄の処女』を演じている最中、
陥穽
(
おとしあな
)
から脱け損い、心臓を剣で突き刺れて即死したというのだ。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
六七人力を併せると、四枚の
御影
(
みかげ
)
を畳んだ井桁は何んの苦もなく取り払われて、石畳の上に
陥穽
(
おとしあな
)
のように、空井戸は真黒な口をポカリとあきました。
古城の真昼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
はたしていつのまにか梯子はとりはずされて、下には、あやしい
陥穽
(
おとしあな
)
が
伏
(
ふ
)
せてあるようす、ほかに出口はむろんない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが、
陥穽
(
おとしあな
)
だ。罠だ、或は逃避所だ。人は
獣
(
けだもの
)
を真似て、
四匍
(
よつば
)
いで競争する……公然と。なぜなら、それが人情だから。そしてそれが商売となっている。
操守
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
陥穽
(
おとしあな
)
にお八重は落ちたのであった。頼母は壁際に佇んだまま、陥穽の口を見詰めていた。すると、その口から男の半身が、
妖怪
(
もののけ
)
のように抽け出して来たが
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
草原の草を縛り合わせて通りかかった人を
躓
(
つまず
)
かせたり、田圃道に小さな
陥穽
(
おとしあな
)
を作って人を
蹈込
(
ふみこ
)
ませたり、夏の闇の夜に路上の
牛糞
(
ぎゅうふん
)
の上に蛍を載せておいたり
重兵衛さんの一家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
幸子は
俄然
(
がぜん
)
眼の前に
陥穽
(
おとしあな
)
が開いたような気がした。今では
却
(
かえ
)
って妙子は度胸を
据
(
す
)
えてしまい、幸子の方がすっかり興奮させられて、上ずった声を出していた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども、僕は
如何
(
どう
)
しても悪運の
児
(
こ
)
であったのです。
殆
(
ほとん
)
ど
何人
(
なんびと
)
も想像することの出来ない
陥穽
(
おとしあな
)
が僕の前に出来て居て、悪運の鬼は
惨刻
(
ざんこく
)
にも僕を突き落しました。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
片足をふみ外した
陥穽
(
おとしあな
)
から、わたしはそつくり月の裏側をみた。さる人はニツケル製の湖水が光つてみえるといふ。足穂の天文学。いづれにしろ、無稽のいひぐさ。
希臘十字
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
……彼女は暗黒の現実世界に存在する、底無しの
陥穽
(
おとしあな
)
である……最も暗黒な……最も戦慄すべき……。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
或る時など小学校随一の悪戯者が校門近くの道路に
陥穽
(
おとしあな
)
を掘つて友達をいぢめやうとしたのを学校の垣根の蔭で眺めた私はそれをさへ先生や友達に知らせる気持になれない。
小学生のとき与へられた教訓
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
十四郎兄弟は、
陥穽
(
おとしあな
)
を秘かに
設
(
しつら
)
えて置いて、猟人も及ばぬ豊猟を常に占めていたのである。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
まるで
陥穽
(
おとしあな
)
にでも落とすようにして、はめ込んでしまうのは、それや神仏の責任だわ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「おう、敬二君か。これは
陥穽
(
おとしあな
)
なんだよ。○○獣をこの穴の中におとしこむんだよ」
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
材木と材木の間には道路工事の
銀沙
(
ぎんさ
)
の丘があり、川から舟で揚げるのだが、彼女は朝飯前にそこで
陥穽
(
おとしあな
)
を作り、有合せの板をわたして砂を振りかけ、子供をおびき寄せたりしていたが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その晩、
磯臭
(
いそくさ
)
い空気のこもった
部屋
(
へや
)
の中で、
枕
(
まくら
)
につきながら、
陥穽
(
おとしあな
)
にかかった獣のようないらだたしさを感じて、まぶたを合わす事ができなかったと君は私に告白した。そうだったろう。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
イヤに
即
(
つ
)
かず離れずの曲芸気取り、その落ち込む当然の運命はきまったものだ、好奇の一歩手前は、堕落の
陥穽
(
おとしあな
)
というものだ、ドチラが先に落ちたか、後に落ちたか、ドチラがどう
引摺
(
ひきず
)
ったか
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
シキへ
抛
(
ほう
)
り込まれるには若過ぎるよ。ここは人間の
屑
(
くず
)
が抛り込まれる所だ。全く人間の
墓所
(
はかしょ
)
だ。生きて
葬
(
ほうぶ
)
られる所だ。一度
踏
(
ふ
)
ん
込
(
ご
)
んだが最後、どんな立派な人間でも、出られっこのない
陥穽
(
おとしあな
)
だ。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼の堕ちて行ったデカダンスとは、中野の友人の言うような「無為」の
陥穽
(
おとしあな
)
のそれでもなく、
寧
(
むし
)
ろ結局
狂人
(
きちがい
)
にでも成って終を告げるより外に仕方のないようなそんな
憂鬱
(
ゆううつ
)
な性質のものであった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
陥穽
(
おとしあな
)
にかけた上、
膏血
(
こうけつ
)
を絞りとるもので、最も不埒な悪徳と云うべきだ
兵士と女優
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オン・ワタナベ
(著)
今松は自分で自分を
陥穽
(
おとしあな
)
の中へ陥していたのだ。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
ガラガラと、引き戸になっている、
陥穽
(
おとしあな
)
への入口が、あいたらしく、やがて、
顧
(
かえり
)
みられぬ女のやけ腹な、おこりッぽい調子で
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
一方は
陥穽
(
おとしあな
)
に入れようとして問いかける。一方はその陥穽の底から
引繰
(
ひっくり
)
返すような答をする。なかなかその手段の
劇
(
はげ
)
しいことは想像の及ぶところでない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
手負い
猪
(
じし
)
に最後のとどめを刺す深い
陥穽
(
おとしあな
)
を用意して。その陥穽の底にはドキドキする剣を何本も植えつけて。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
立上がって戸口の方へ探り寄ろうとすると、床板の釘が抜けていたものか、それとも、
陥穽
(
おとしあな
)
の仕掛になっていたものか、足の下の板が一枚、パッと跳ね返ると
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼らの一人大石誠之助君がいったというごとく、今度のことは嘘から出た
真
(
まこと
)
で、はずみにのせられ、足もとを見る
暇
(
いとま
)
もなく
陥穽
(
おとしあな
)
に落ちたのか、どうか、僕は知らぬ。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
この畑で猪を捕るために掘ってある
陥穽
(
おとしあな
)
のなかに小さい狐が一匹落ちて迷っているのを発見して、番人の七助とあたかもそこに来あわせた佐兵衛、次郎兵衛、弥五郎
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もちろん、
宣賛
(
せんさん
)
、
郝思文
(
かくしぶん
)
のふた手も連れて。——ところが、すでにこれが宋江の術に落ちていたものだった。——関勝は途中でとつぜん馬もろとも
陥穽
(
おとしあな
)
にころげこんだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……俺は……俺は
現在
(
いま
)
、何かしらスバラシイ
陥穽
(
おとしあな
)
の中に誘い込まれているのじゃないか……。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どしんと深い
陥穽
(
おとしあな
)
へ
叩
(
たた
)
き落され、穴の底から、高い所をガヤガヤ笑いながら通って行くナオミや、熊谷や、浜田や、関や、その他無数の影を
羨
(
うらや
)
ましそうに見送っているのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「大逆人の相ではない。むしろ
真面目
(
まじめ
)
で誠忠で、一本気の人間の人相だ」なおつくづく見守ったが、「ははあ美男で年が若い、恋の
陥穽
(
おとしあな
)
に落ち込んでいるな? そういえば命宮に
蔭影
(
かげ
)
がある。 ...
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして、そうなると、そこに待っていたものは、彼らの
尻
(
しり
)
を引ったたいた
鞭
(
むち
)
が、こしらえて待っていた
陥穽
(
おとしあな
)
であった。いよいよ彼らは、現実に牢獄の
塀
(
へい
)
に
打
(
ぶ
)
っ突からねばならなくなったんだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
世のならわしにも従わず、
親戚
(
しんせき
)
の勧めも
容
(
い
)
れず、友人の忠告にも耳を傾けず、自然に逆らってまでも自分勝手の道を歩いて行こうとした
頑固
(
かたくな
)
な岸本は、こうした
陥穽
(
おとしあな
)
のようなところへ
堕
(
お
)
ちて行った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
陥穽
(
おとしあな
)
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ははあ、これだな、お初の奴が、ガラガラと開けたのは——つまり、ここから壇の下に潜ると、
陥穽
(
おとしあな
)
になるわけなのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
私はこの按摩を日頃
贔屓
(
ひいき
)
にしてよく呼んでいた位で、決して殺人の動機になる様な恨みがあった訳ではなく、それに、表面上は右に
陥穽
(
おとしあな
)
のあるのを避けさせようとして
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
涯
(
はて
)
しもなく漫々たる黒土原と、数限りない砲弾の穴が作る氷と泥の
陥穽
(
おとしあな
)
の連続。その上に縦横ムジンに投出されている白樺の
鹿砦
(
ろくさい
)
。砲車の
轅
(
ながえ
)
。根こそぎの
叢
(
くさむら
)
の大塊。煉瓦塀の
逆立
(
さかだ
)
ち。軍馬の屍体。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこには野菊や
桔梗
(
ききょう
)
が咲き乱れて、秋の蝶がひらひらと舞っていた。二人は手を
把
(
と
)
って睦まじくあるいて来ると、草の中には
陥穽
(
おとしあな
)
でもあったらしい。衣笠のすがたは忽ち消えるように沈んでしまった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
知っていて、
陥穽
(
おとしあな
)
に首を突っ込むにゃ当たらないもんなあ
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
アハハハ——、爆薬なんか使ったら、わし達が
木端微塵
(
こっぱみじん
)
じゃ。マアよく考えて見給え。ここを抜け出す唯一の手段は、わし達が落ちて来たあの天井の
陥穽
(
おとしあな
)
の蓋を開くことじゃ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
舞踏狂らしいお
垂髪
(
さげ
)
の女学生が、私たちの立っている窓のすぐ下に、肩まで手が這入るような砂の穴を掘って、ボール紙の王冠と、松の枯れ枝を利用しながら、小さな
陥穽
(
おとしあな
)
を作りかけているのが
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
(アア、あれが
陥穽
(
おとしあな
)
の口なんだな。俺は敵の罠にかかってしまったのだな)
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
……
陥穽
(
おとしあな
)
と知りつつ陥らずにはいられない……。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「おれは彼女のために、
陥穽
(
おとしあな
)
にはまったのではないか」
女妖:01 前篇
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“陥穽”の意味
《名詞》
落とし穴。
人を陥れる計略。
(出典:Wiktionary)
“陥穽(落とし穴)”の解説
落とし穴(おとしあな)は、罠の一種である。陥穽(かんせい)とも言う。地面に穴を掘ってそれを隠蔽し、穴の上を通ろうとする動物を落とそうとするものである。その有り様から転じて、他者を陥れる策略なども「落とし穴」「陥穽」と呼ぶ。
(出典:Wikipedia)
陥
常用漢字
中学
部首:⾩
10画
穽
漢検1級
部首:⽳
9画
“陥”で始まる語句
陥
陥落
陥入
陥没
陥込
陥欠
陥阱
陥擠
陥滅
陥隔