さめ)” の例文
この瓦版を柏原を振出しにして、さめ、番場、高宮こうみや越知川えちがわ武佐むさ、守山、草津と、大声をあげあげ呼売りをして歩きました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やすきにつこうとしたそしりはあるとしても、それはさめきらぬ婦人の無自覚から来た悲しい錯誤であると言わなければならない。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
愛知川えちがわ、小野、四十九院、摺針すりばり番場ばんばさめ柏原かしわばら。そして、伊吹のふもとまで、つつがなければもう近い。しかし、遠いここちでもあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
訳し終ると「神おろし」の女がさめた時のようにけろりとして何もかも忘れてしまう、女の頭は浅いものであるから、無理もない事であろうと思う。
ダンセニーの脚本及短篇 (新字新仮名) / 片山広子(著)
此方こっちも床へ這入りは這入ったが、ぎこちなくって布団の外へはみ出す様、お園はウンともスンとも云わないから、なんだか極りが悪いのでえいさめて来て
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
依卜昆垤児ひぽこんでるの夢と喜斯的里ひすてりーの夢は多く自分の身を困め、心臓病者の夢は短くしてさめる時には瀕死の苦あり、小児の腹中に虫湧く時は睡眠中驚き醒むること多し
(新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ひとりは目をさめしゐて搖籃ゆりかごを守り、またあやしつゝ、父母ちゝはゝの心をばまづ樂しますことばを用ゐ 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
伊丹屋いたみやの娘だと仰有おっしゃいまして、眼のさめるようなお美しい方が、駕籠でお見えでございます」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あら不思議、たしかその声、是もまださめ無明むみょうの夢かとこすって見れば、しょんぼりとせし像、耳をすませばかねて知るもみの木のかげあたりに子供の集りてまりつくか、風の持来もてくる数えうた
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
叫喚あっと云ってふるえ出し、のんだ酒も一時にさめて、うこんなうちには片時も居られないと、ふすまひらき倉皇そうこう表へ飛出とびだしてしまい芸妓げいぎも客の叫喚さけびに驚いて目をさまし、幽霊ときいたので青くなり
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
てもさめても余の思想はこの国土こくどより離れざりしなり、まことにや古昔こせきのギリシヤ人は現世を以て最上の楽園と信じ、彼らの思想は現世外にいでしこと実にれなりしとは、余も余の国を以て満足し
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「すこし酒がさめたようだ、あるならもうすこし飲みたいのですな」
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
置てもどりしにぞお花は早速さつそくせんじてのまするに其夜の明方頃になり友次郎は夥多敷おびたゞしくはきけるが夫より大いにねつさめすや/\とねむる樣子なるにぞお花は少しは安堵あんどせしに其翌日より友次郎の右の足に大きさ茶碗ちやわん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
伊増いますの明神とかいって、古来相当にうたわれないところではなかったけれど、番場ばんばさめ、柏原——不破の関屋は荒れ果てて、という王朝時代の優雅な駅路の数には
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
きのうからの降り足らぬ雨雲が、なおさめや伊吹の山地を閉じていて、むしむしする。かと思えば、六月半ばの陽がカンとつんぼになりそうなほど照りつけて、馬さえうごきたがらない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ば言ひ出してひよなさわぎに成たりと酒も何處どこへかさめゆきいろ戀路こひぢ消果きえはててこはそも如何にとあきれ果十方に暮て居たりしが忠兵衞はにげもされねばこれまち給へお光殿御番所へ駈込かけこんでも外事ほかこと成ぬ大事の一でう人の命に關る事先々とく勘考かんがへてと言紛いひまぎらすを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
最初から、若い者たちの、やかましい品定めを冷淡にあしらって、何とも言わなかった中老のさめが、はてしのない水かけ論に、我慢のなり難い言葉で、こう言い出しました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此表このへう、十四五日うち、世上物狂ものぐるひも、酒酔之しゆすゐのさめたるごとくに(後略)
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取出し煙草たばこくゆらせ居たりしが九郎兵衞は彌々いよ/\ゑひが廻りしきりにほく/\居眠ゐねふるつひに其所へ正體しやうたいもなく打臥うちふしたり依て惣内お里は夫に當惑たうわくなし何かゑひさめる藥はなきやと考へしに惣内は不※ふと心付此宿外れに藥種屋有ば夜中ながらも呼起よびおこして早々藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ホホホホ、さめさま、あなたは銀杏加藤の奥方に、それほど御贔屓ごひいきでいらっしゃるくせに、そのお行方ゆくえさえ御存じないの……だから、五年前のことは当てにならないと申しました」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
瀬田の唐橋からはしを渡って草津、守山、野洲やす、近江八幡から安土、能登川、彦根、磨針すりはり峠を越えて、番場、さめ、柏原——それから左へ、海道筋をそれて見上げたところの、そらこの大きな山が胆吹山だ
「七条のさめの近藤勇のところへ招かれて行ったのだ」