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質素
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じみ
ふりがな文庫
“
質素
(
じみ
)” の例文
晩方少し
手隙
(
てすき
)
になってから、新吉は
質素
(
じみ
)
な晴れ着を着て、古い鳥打帽を被り、店をお作と小僧とに
托
(
あず
)
けて、和泉屋へ行くと言って
宅
(
うち
)
を出た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
質素
(
じみ
)
な浴衣に昼夜帯を……もっともお太鼓に結んで、紅鼻緒に白足袋であったが、冬の
夜
(
よ
)
なぞは
寝衣
(
ねまき
)
に着換えて、浅黄の
扱帯
(
しごき
)
という事がある。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
質素
(
じみ
)
な縞の着物に、黒繻子の帯、何か役の都合で、必要もあるかと用意してある自前の衣裳——町家のかみさんにでも扮するときしか、用のないものだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
というのは、この神様が、他の神様よりは広大な構えを持っておりながら、表がかりが、いかにも
質素
(
じみ
)
なのが、多少お角さんの気を腐らせたのかも知れない。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奥様は
外
(
そと
)
の
御歓楽
(
おたのしみ
)
をなさりたいにも、小諸は
倹約
(
しまつ
)
な
質素
(
じみ
)
な処で、お茶の先生は上田へ引越し、
謡曲
(
うたい
)
の師匠は
飴
(
あめ
)
菓子を売て歩き、見るものも聞くものも
鮮
(
すくな
)
いのですから
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
光源氏
(
ひかるげんじ
)
、すばらしい名で、青春を盛り上げてできたような人が思われる。自然奔放な好色生活が想像される。しかし実際はそれよりずっと
質素
(
じみ
)
な心持ちの青年であった。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
此處
(
こヽ
)
一つに
美人
(
びじん
)
の
價値
(
ねうち
)
定
(
さだ
)
まるといふ
天然
(
てんねん
)
の
衣襟
(
えもん
)
つき、
襦袢
(
じゆばん
)
の
襟
(
えり
)
の
紫
(
むらさき
)
なる
時
(
とき
)
は
顏色
(
いろ
)
こと
更
(
さら
)
に
白
(
しろ
)
くみえ、
態
(
わざ
)
と
質素
(
じみ
)
なる
黒
(
くろ
)
ちりめんに
赤糸
(
あかいと
)
のこぼれ
梅
(
うめ
)
など
品
(
ひん
)
一層
(
いつそう
)
も
二層
(
にそう
)
もよし
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
なかに唯一人
質素
(
じみ
)
なフロツクコートを着て、苦り切つた顔をしてゐる男があつた。皇太子はそれを見ると、後を
振
(
ふり
)
かへつた。後には父君のジヨオジ陛下が立つてゐられた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それに父の代から私の家はこういう
質素
(
じみ
)
な暮しをしていたものだから、昔の習慣をそう急に改めるのもと思っていたからさ。ちょっとマジャルドーにも相談しにくかったものだからね
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
倹約な
巴里
(
パリイ
)
の女が外見は派手であり
乍
(
なが
)
ら粗末な
質
(
しつ
)
の物を
巧
(
たくみ
)
に仕立てるのと
異
(
ちが
)
つて、
倫敦
(
ロンドン
)
の女は表面
質素
(
じみ
)
な様で実は
金目
(
かなめ
)
の
掛
(
かゝ
)
つた物を身に着けて居る。
唯
(
た
)
だ惜しい事に趣味が意気でない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
母親
(
はゝおや
)
は五十ばかり、
黒地
(
くろぢ
)
のコートに
目立
(
めだ
)
たない
襟卷
(
えりまき
)
して、
質素
(
じみ
)
な
服姿
(
みなり
)
だけれど、ゆつたりとして
然
(
しか
)
も
氣輕
(
きがる
)
さうな
風采
(
とりなり
)
。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
御親類の御女中方は、いずれも
質素
(
じみ
)
な御方ばかりですから、
就中
(
わけても
)
奥様御一人が目立ちました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夏の初めにお銀と一緒に、通りへ出て買って来た
質素
(
じみ
)
な柄の一枚しかないネルの
単衣
(
ひとえ
)
の、肩のあたりがもう日焼けのしたのが、体に厚ぼったく感ぜられて見すぼらしかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
雀のやうに
質素
(
じみ
)
な
扮装
(
みなり
)
をして、そしてまた雀のやうにお
喋舌
(
しやべり
)
をよくするものだとばかし思つてゐる
向
(
むき
)
が多いやうだが、女流教育家といつた所で
満更
(
まんざら
)
そんな人ばかしで無いのは
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
伯父
(
おぢ
)
さま
喜
(
よろ
)
んで
下
(
くだ
)
され、
勤
(
つと
)
めにくゝも
御座
(
ござ
)
んせぬ、
此巾着
(
このきんちやく
)
も
半襟
(
はんゑり
)
もみな
頂
(
いたゞ
)
き
物
(
もの
)
、
襟
(
ゑり
)
は
質素
(
じみ
)
なれば
伯母
(
おば
)
さま
懸
(
か
)
けて
下
(
くだ
)
され、
巾着
(
きんちやく
)
は
少
(
すこ
)
し
形
(
なり
)
を
換
(
か
)
へて三
之
(
の
)
助
(
すけ
)
がお
辨當
(
べんたう
)
の
袋
(
ふくろ
)
に
丁度
(
てうど
)
宜
(
よ
)
いやら
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
祝言なぞもごく
質素
(
じみ
)
にほんの内輪だけでやることにいたしました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
粋で、品の
佳
(
い
)
い、しっとりした
縞
(
しま
)
お召に、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の丸帯した
御新造
(
ごしんぞ
)
風の
円髷
(
まるまげ
)
は、見違えるように
質素
(
じみ
)
だけれども、みどりの黒髪たぐいなき、柳橋の
小芳
(
こよし
)
であった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
神様といふものは随分費用のかゝるものだが、その中で
新教
(
プロテスタント
)
の神様は
質素
(
じみ
)
で倹約で
加之
(
おまけ
)
に
涙脆
(
なみだもろ
)
いので
婦人
(
をんな
)
には愛される
方
(
ほう
)
だが、余りに
同情
(
おもひやり
)
があり過ぎるので、時々困らせられる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
伯父さま喜んで下され、勤めにくくも御座んせぬ、この
巾着
(
きんちやく
)
も半襟もみな頂き物、襟は
質素
(
じみ
)
なれば伯母さま懸けて下され、巾着は少し
形
(
なり
)
を換へて三之助がお弁当の袋に丁度
宜
(
よ
)
いやら
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そっと
輿入
(
こしい
)
れをして、そっと儀式を済ますはずであった。あながち金が惜しいばかりではない。一体が、目に立つように晴れ晴れしいことや、
華
(
はな
)
やかなことが、
質素
(
じみ
)
な新吉の性に
適
(
あ
)
わなかった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
人に与うる私の全体の印象が沈欝であって——
質素
(
じみ
)
で
燻
(
くす
)
んで言葉が
流暢
(
りゅうちょう
)
でなく……つまり一口に言って
瀟洒
(
シック
)
とか典雅とか
俊敏
(
スマート
)
とか、あるいは軽快とか
洒脱
(
ユーモラス
)
といったようなパッとした社交的の洗錬さを
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
洋行中ずつと
被古
(
きふる
)
したらしい、古い
麦稈
(
むぎわら
)
帽でひよつくり神戸に帰つて来た島村氏は、以前と同じやうな
質素
(
じみ
)
な
身装
(
みなり
)
だつたが、精神生活においては、もう
往時
(
むかし
)
の抱月氏ではなかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
むかし
笠置
(
かさぎ
)
の
解脱
(
げだつ
)
上人が、
栂尾
(
とがのを
)
の
明恵
(
みやうゑ
)
上人を訪ねた事があつた。その折明恵は
質素
(
じみ
)
な
緇衣
(
しえ
)
の下に、
婦人
(
をんな
)
の着さうな、
緋
(
ひ
)
の勝つた派手な下着を
被
(
き
)
てゐるので、解脱はそれが気になつて溜らなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
質
常用漢字
小5
部首:⾙
15画
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
“質”で始まる語句
質
質問
質子
質朴
質屋
質入
質物
質樸
質店
質実