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視詰
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みつ
ふりがな文庫
“
視詰
(
みつ
)” の例文
その恋しさに身を
懊
(
じ
)
らしながら、自分の運命を他人に
委
(
ゆだ
)
ねて、時計の針を
視詰
(
みつ
)
めているということは、考えて見てもたまらないことです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
併し、貞子はどうしたのか立っては行かないので、私は仕方なく又立って行ってその扉をあけた。そして私はすぐに峻の靴先を
視詰
(
みつ
)
めていた。
秋草の顆
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
左の手を出して……お
母
(
ふくろ
)
が
二歳
(
ふたつ
)
三歳
(
みッつ
)
の子供を愛するようにお菊の肩の処へ手をかけて、お菊の顔を
視詰
(
みつ
)
めて居りますから
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、最後に現れたお志保の顔が、彼の目をじーっと
視詰
(
みつ
)
めてにっこり笑った。それを見ると、庸介もおもわず同じようににっこりとした。そして
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れて
此処
(
こゝ
)
を
通
(
とほ
)
りかゝると、
今
(
いま
)
、
私
(
わし
)
が
御身
(
おみ
)
に
申
(
まを
)
したやうに、
沼
(
ぬま
)
の
水
(
みづ
)
は
深
(
ふか
)
いぞ、と
気
(
き
)
を
注
(
つ
)
けたものがある。
此
(
こ
)
の
四手場
(
よつでば
)
に
片膝
(
かたひざ
)
で、
暗
(
やみ
)
の
水
(
みづ
)
を
視詰
(
みつ
)
めて
居
(
ゐ
)
た
老人
(
らうじん
)
ぞや。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
嗚呼、いまは、はや嘆かむにもよしなし、向日葵の花の誇りは
朝
(
あした
)
の露に滅び、夜鳥の瞳に映えし
銀
(
しろがね
)
の月光、また海のあなたに沈みて、闇に踊る青衣の悪魔は地に伏してわが方を
視詰
(
みつ
)
むのみなり
嘆きの孔雀
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
此人の近作を読んで非常に敬服して教えを乞いに来たようにいうと、先生畳を
凝
(
じっ
)
と
視詰
(
みつ
)
めて、あれは
咄嗟
(
とっさ
)
の作で、
書懸
(
かきかけ
)
ると親類に不幸が有ったものだから、とかいうような申訳めいた事を言って
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
三人は無言で、それぞれの間を隔てている水の面を
視詰
(
みつ
)
めていると、水面が又少し高まって、天井との間の空間が三四尺ぐらいに縮まった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
睨みつけるような眼で私達学生席の方を
視詰
(
みつ
)
めながらも、その口元には絶えず微笑を含んでいるのであったが、併しそれは何処となく凄味のある微笑で
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と云われて、忠平は祖五郎とお竹の顔を
視詰
(
みつ
)
めて居りました。忠平は思い込んだ
容子
(
ようす
)
で
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
熟
(
じつ
)
と
視詰
(
みつ
)
めて、
茫乎
(
ぼんやり
)
すると、
並
(
なら
)
べた
寐床
(
ねどこ
)
の、
家内
(
かない
)
の
枕
(
まくら
)
の
両傍
(
りやうわき
)
へ、する/\と
草
(
くさ
)
が
生
(
は
)
へて、
短
(
みじか
)
いのが
見
(
み
)
る/\
伸
(
の
)
びると、
蔽
(
おほ
)
ひかゝつて、
萱
(
かや
)
とも
薄
(
すゝき
)
とも
蘆
(
あし
)
とも
分
(
わか
)
らず……
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
へ
掻巻
(
かいまき
)
がスーと
消
(
き
)
える
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「なに、
好
(
い
)
いです
明日
(
あした
)
買って来るから」、と
矢張
(
やっぱり
)
壁を
視詰
(
みつ
)
めた儘で。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
初子は
呆
(
あき
)
れた顔をして、穴の明くほど庄造を
視詰
(
みつ
)
めていたが、何と思ったか黙って二階へ上って行って、直ぐ
段梯子
(
だんばしご
)
の中段まで戻って来ると
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そんなとき、青の耳は、
微
(
かす
)
かながらに動き出すのだった。その暗い眼は、空間のどこかにただ向けられているのではなく、何かを
視詰
(
みつ
)
め出しているようだった。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
視詰
(
みつ
)
めて、夫人は
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私が一心に
視詰
(
みつ
)
めていると、彼女の肌に燃える光りはいよいよ明るさを増して来る、時には私の
眉
(
まゆ
)
を
灼
(
や
)
きそうに迫って来る。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼女は朝刊から眼を離して部屋の隅を
視詰
(
みつ
)
めていた。そして、彼女は二三カ月以前に、電車の中で、自働扉に指を噛まれたと言って血を流していた男のことを思い出していた。
指
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
どうした訳か今しがたまで
機嫌
(
きげん
)
の
好
(
よ
)
かった女房が、
酌
(
しゃく
)
をしようともしないで、両手を
懐
(
ふところ
)
に入れてしまって、真正面からぐっと此方を
視詰
(
みつ
)
めている。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
雄吾は、佐平爺の顔を
視詰
(
みつ
)
めていた眼を、静かに伏せた。同時に顔色が真っ蒼になった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
どうした訳か今しがたまで機嫌の好かつた女房が、酌をしようともしないで、両手を
懐
(
ふところ
)
に入れてしまつて、真正面からぐつと
此方
(
こちら
)
を
視詰
(
みつ
)
めてゐる。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は言いながら女給の手の指を
視詰
(
みつ
)
めた。
蒼々
(
あおあお
)
しく痩せた細い魅力の無い指だった。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
雪子も最初はその
無躾
(
ぶしつけ
)
な視線を不愉快に感じるのみであったが、やがて、男が何か訳があって自分を
視詰
(
みつ
)
めているのではないか、と思うようになった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼女は洗面器の中の、すっぽんを
視詰
(
みつ
)
めながら、首を出すのを待った。すっぽんの
生血
(
なまち
)
を取るのには、その首を出すのを待っていて、鋭利な刃物でそれを切るのだと教えられていたからであった。
指
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
私は
暫
(
しばら
)
くあっけに取られて、彼女の顔を穴の開くほど
視詰
(
みつ
)
めながら、「ははあ、此奴、為替の来たのが分ったんだな、それで捜りを入れているんだな」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
平六の出鱈目な踊りは、
酷
(
ひど
)
く受けてしまった。一同は平六から眼を離さなかった。その中で万だけは、仮装の福禄寿の方を
視詰
(
みつ
)
め続けていた。すると福禄寿は、またも銀の杯を袖の中に持ち込んだ。
手品
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その谷あいの秋色は
素晴
(
すば
)
らしい眺めであったけれども、足もとばかり
視詰
(
みつ
)
めていた私は、おりおり眼の前を飛び立つ
四十雀
(
しじゅうから
)
の羽音に驚かされたくらいのことで
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
西谷はそして、机に向って本を読み続ける代りに、娘と何か話をしているようなことが多くなった。時には、私の仕事場へ来て、何時までも何時までも私の手先を
視詰
(
みつ
)
めているようなことがあった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
お秋とお花とがびっくりしたように黙って泣き顔を
視詰
(
みつ
)
めているので、少しきまりが悪くなって応接間からテラスへ逃げて来て、まだしくしくと
噦
(
しゃく
)
り上げながら
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
美津子は寝床の上へ起き上がって
凝
(
じ
)
っと父親の顔を
視詰
(
みつ
)
めた。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
じーっと光子さんの顔
視詰
(
みつ
)
めてますと、夫もやっぱり同じ恐怖に襲われたらしゅう、白い粉薬手エの上に載せたまま、私の手エにある薬の色と見比べるみたいにして
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は黙って、ただ、女の白い顔を
視詰
(
みつ
)
めていた。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そのあと暫く、幸子は再び火を
視詰
(
みつ
)
めながらひとり考え込んでいた。なるほど、カタリナが結婚したと云うことは、妙子がわざわざそれを知らせに立ち寄るだけの価値はある。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何も
彼
(
か
)
も分っているらしいのが不思議であったが、ふと、眼の前をきらりと落ちたものがあるので、
訝
(
あや
)
しみながら振り仰ぐと、母が涙を一杯ためてあらぬ方角を
視詰
(
みつ
)
めていた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二人は珍しくも面と向って互の眼の中を
視詰
(
みつ
)
めながら話しているのであるが、そのぎごちなさを隠そうとして殊更つけつけと物を云いながら細巻の
金口
(
きんくち
)
を輪に吹いている妻の様子を
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
暫くベッドへ仰向けに
臥
(
ね
)
てじっと天井を
視詰
(
みつ
)
めていたが、そうしていても、一方の窓からは富士の頂が、他の一方の窓からは湖水を
囲繞
(
いにょう
)
する山々の起伏が、彼女の視野に這入って来た。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ときどきリリーの眼を
視詰
(
みつ
)
めながら、
悧巧
(
りこう
)
だと云っても小さい獣に過ぎないものが、どうしてこんな意味ありげな眼をしているのか、何かほんとうに悲しいことを考えているのだろうかと
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
慕
(
した
)
ったのであろうが佐助は春鶯囀を弾きつつどこへ魂を
馳
(
は
)
せたであろう触覚の世界を
媒介
(
ばいかい
)
として観念の春琴を
視詰
(
みつ
)
めることに慣らされた彼は聴覚によってその
欠陥
(
けっかん
)
を
充
(
み
)
たしたのであろうか。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
石崖から屋根にいたる間をいつ迄も
視詰
(
みつ
)
めていたことであろうが、やがて、ふと気が付いたのは、石崖の一番下の、土に接しているあたりに、或る一箇所だけ
苔
(
こけ
)
の
剥
(
は
)
がれている部分があった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夫はうその薬飲んで寝た
真似
(
まね
)
してるのん違うやろかと、そない思たら、飲んだ風して放ってしまおとしますねんけど、光子さんいうたらそんな
胡麻化
(
ごまか
)
しささんようにじッと手もと
視詰
(
みつ
)
めてて
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
病人は矢張背中を此方に向けて壁の一点を
視詰
(
みつ
)
めたまま、そう云っていた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その関係は私自身の影に
於
(
お
)
いても同じであった。じっと
彳
(
たたず
)
んで自分の影を長く長く
視詰
(
みつ
)
めていると、影の方でも地べたに
臥転
(
ねころ
)
んでじっと私を見上げている。私の外に動くものはこの影ばかりである。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「なあそやないか?」と夫は涙で光ってる
頬
(
ほ
)
べた
視詰
(
みつ
)
めながら
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
見るともなく
視詰
(
みつ
)
めて何か考えているような眼つきである。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
視
常用漢字
小6
部首:⾒
11画
詰
常用漢字
中学
部首:⾔
13画
“視”で始まる語句
視
視線
視凝
視入
視力
視野
視察
視下
視界
視守