かぶ)” の例文
但し弾機ばね一個不足とか、生後十七年、灰色のぶちある若き悍馬かんばとか、ロンドンより新荷着、かぶおよび大根の種子とか、設備完全の別荘
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
千両ばこ、大福帳、かぶ、隠れみの、隠れがさ、おかめのめんなどの宝尽くしが張子紙で出来て、それをいろいろな絵具えのぐで塗り附ける。
大根やかぶや人参や里芋などの野菜物に、五升ばかりの米と小豆と胡麻ごまと、ほかに切った白い餅が、かなりたくさんあった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「この芋の山はどうだい!」そこは青物市場で、白い大根や、かぶや、赤い芋が、山のように積みあげてありました。
庭のすみござの上に、鶏やこひふなや芋やかぶなどが、山のやうにつみ重ねてあつて、そのまはりに犬達が並んでゐます。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
半蔵もそれを言って、串魚くしうおに豆腐のつゆ塩烏賊しおいかのおろしあえ、それに亭主の自慢なかぶと大根の切り漬けぐらいで、友人と共に山家の酒をくみかわした。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
双子の大根かかぶかと思うとオッパイだ。オッパイが空をとんで、手がもがいてる。小さい太陽、蝶もとんでる。このオッパイがお寺の吊鐘よりも大きい。
安吾巷談:11 教祖展覧会 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
馬鈴薯のみならずかぶ人参にんじんにも応用が出来るそうだから、我邦でも軍隊の炊事などに使えば便利かと思われる。如何にも米国人のこしらえそうな器械である。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
軽く手をつや、そのくらに積めるままなるかぶ太根だいこ人参にんじんるい、おのずから解けてばらばらと左右に落つ。駒また高らかに鳴く。のりつけほうほう。——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もと六、七銭だったかぶ十二三銭、ホーヨークリーム八十銭だったのを三十銭価上げ、一番はじめ、50. s。
彼が、軍を移駐して、ある地点からある地点へ移動すると、かならず兵舎の構築とともに、附近の空閑地にかぶ蔓菁まんせいともよぶ)の種をかせたということだ。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に完全に洗いこするので、ねぎは輝き、かぶは雪のように白い。この国の市場を見た人は、米国の市場へ持って来られる品物の状態を、忘れることが出来ない。
別に茄子なすでも人参にんじんでも玉葱たまねぎでも日本葱でも莢隠元さやいんげんでも白瓜しろうりでも胡瓜きゅうりでも西洋牛蒡せいようごぼうでも日本牛蒡のく若いのでも十六ササギでもキャベツでもかぶでも何でもそんな物を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
つるをたぐって、さつまいもの太いのを三本ばかり掘り取り——行きがけの駄賃といっては済まない、水気たっぷりのかぶを一株、根こそぎ引きぬいて、さっと表道へ引上げる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かぶ玉菜たまなと百姓を満載したFORD——フォウドは何国どこでも蕪と玉菜と百姓のほか満載しない——や、軽業かるわざ用みたいにばかにせいの高い自転車や、犬や坊さんや兵士や、やがて
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
……カステラを喰べ散らすやら、かぶ大根だいこんを噛んで吐き出すやら、なかんずく、人参と来ましたら、一倍と好みがやかましく、ありふれた長人参では啣えてみようともいたしませぬ。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玉菜たまな赤茄子あかなすねぎ玉葱たまねぎ大根だいこんかぶ人参にんじん牛蒡ごぼう南瓜かぼちゃ冬瓜とうがん胡瓜きゅうり馬鈴薯ばれいしょ蓮根れんこん慈姑くわい生姜しょうが、三つ葉——あらゆる野菜に蔽われている。蔽われている? 蔽わ——そうではない。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
中部地方では二月涅槃ねはんの日にヤセウマという長い団子をこしらえ、または同じ月にオネヂと謂うものを作る日もあったが、是も後にはねじり団子には限らず、かぶ胡蘿蔔にんじん等の野菜類まで
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
迷亭にがんが食いたい、雁鍋がんなべへ行ってあつらえて来いと云うと、かぶこうものと、塩煎餅しおせんべいといっしょに召し上がりますと雁の味が致しますと例のごとく茶羅ちゃらぽこを云うから、大きな口をあいて
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
他に少しばかりジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ豆、かぶを作った。
かぶの葉に濡れし投網とあみをかいたぐり飛びかへ河豚ふぐを抑へたりけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「地大根」と称えるは、堅く、短く、かぶを見るようで、荒寥こうりょうとした土地でなければ産しないような野菜である。お雪はそれを白い「練馬ねりま」に交ぜて買った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それはどこか野兎に似た顔つきで、彼女の言葉にのこっている田舎の訛りとともに、乙女を描くならかぶでも添えて描きたい感興をおこさせる人柄なのであった。
日々の映り (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
かぶらすしとて、ぶり甘鹽あまじほを、かぶはさみ、かうぢけてしならしたる、いろどりに、小鰕こえびあからしたるもの。ればかりは、紅葉先生こうえふせんせい一方ひとかたならずめたまひき。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とかく青い物の栄養に欠けがちな陣中食に、このかぶはずいぶん大きな戦力となったにちがいない。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右の下には薩摩芋と、一種のかぶとに四本の木の脚をつけて、豚みたいな形にしたものがある。
第三十四 かぶのスープ は大きい蕪を四つばかり皮をいて小さく切ってやわらかに湯煮ます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かぶ、トマト、胡瓜など、日本人向きの清浄野菜をつくっている坂田という青年が、中野の市場まで荷を出しに行った帰り、サト子が離屋を借りている植木屋の門の前で牛車をとめ
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その畑にさつまいもらしいのと、かぶと、大根とが作られてあるのを見る。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かぶの葉に濡れし投網とあみ真昼間まつぴるまひきずりて歩む男なりけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……な、宮重大根が日本一なら、かぶの千枚漬も皇国無双で、早く言えば、この桑名の、焼蛤も三都無類さ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かぶのスープ 冬付録 病人の食物調理法の「第三十四 かぶのスープ」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
タブ……タブ……物懶ものうく海水が船腹にぶつかり、波間にかぶ、木片、油がギラギラ浮いていた。彼方に、修繕で船体を朱色に塗りたくられた船が皮膚患者のように見えた。鴎がそのほばしらのまわりを飛んだ。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
蟻にはもとより、かぶにならず、大根にならず、人参にならず、黒いから、大まけにまけた処が牛蒡ごぼうです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かぶにくッつけてさ、それ、大かぶにありつく、とか云って、買手が喜ぶものだそうだ。いや、これは串戯じょうだんよ。船はちゃんころでも炭薪すみまきゃ積まぬというのが唄にもある。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桃、栗、柿、大得意で、烏やとびは、むしゃむしゃと裂いてなますだし、蝸牛虫まいまいつぶろやなめくじは刺身に扱う。春は若草、なずな茅花つばな、つくつくしのお精進……かぶかじる。牛蒡ごぼう、人参は縦にくわえる。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)