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胡散
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うさん
ふりがな文庫
“
胡散
(
うさん
)” の例文
女の人数を聞いたりする客を
胡散
(
うさん
)
臭いと見るのは当り前だ。
駈
(
か
)
け出しの刑事みたいだが、気のきいた風紀係はそんな
科白
(
せりふ
)
は吐かない。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
見ず識らずの女が夜ちゅうに人の店へあがり込もうというのは、なんだか
胡散
(
うさん
)
らしいとも思ったが、お徳はもう三十を越している。
半七捕物帳:44 むらさき鯉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
渠は唸る樣な聲を出して、ズキリと立止つて、
胡散
(
うさん
)
臭く對手を見たが、それは渠がよく遊びに行く郵便局の小役人の若い細君であつた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「ぼくはただ桝本をつけてきただけだ。あいつ、
胡散
(
うさん
)
な人物だと思って目を離さなかったんだ。ここに舟木がいようとは思わなかったよ」
五階の窓:06 合作の六(終局)
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
国枝氏は
胡散
(
うさん
)
らしく、相手の顔をジロジロ眺めながら、暫く思案していたが、やがてヒョイと気がついた様に元気な声を出した。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
平次は
克明
(
こくめい
)
に二度目の調べを始めたのです。その後から
胡散
(
うさん
)
の鼻をふくらませて、弁慶の小助がついて来たことは言うまでもありません。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男「
私
(
わっち
)
は斯んな
胡散
(
うさん
)
な
形姿
(
なり
)
をしてえるから、怪しい奴だと思おうが、私は伊皿子台町にいる船頭で、荷足の仙太郎という者です」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
胡散
(
うさん
)
な捨て子が三人もあっちゃ、どうやらいわくがありそうだから、とち狂っていねえで、はええところしたくをしろといってるんだよ」
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
多分、そんなような、
胡散
(
うさん
)
な者を、たった今眼前に於て、感得したればこそ、彼はかくも
一目散
(
いちもくさん
)
に走り過ぎたものと思われる。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「まあ、さうなの。」
女房
(
かない
)
は皿をとりあげて、ちらと中をあらためて見てゐたが、すぐ目をあげて
胡散
(
うさん
)
さうに
良人
(
をつと
)
の顔を見た。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
往来の人々が、何か
胡散
(
うさん
)
臭い目つきでこちらを眺める気がして私は、いつまでも窓から顔を出していることも出来なかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「へへへ、でもお寂しそうに見えますもの……」と
胡散
(
うさん
)
くさい目をしながら、「何は、金之助さんは四五日見えませんね?」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
そうして改めて
土耳古
(
トルコ
)
美人を
胡散
(
うさん
)
くさそうに眺めた後、レザールにそっと囁いた。しかしレザールにはその美人が怪しい曲者とは見えなかった。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし、返事をする代りに、道路の方を見遣って、そこに孔子の車を見つけると、もう一度
胡散
(
うさん
)
臭そうに子路の顔を見た。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
こないだうちから
胡散
(
うさん
)
な奴が、この
祝家荘
(
しゅくかそう
)
にうろついているから用心しろと、山荘からもお
触
(
ふ
)
れが出ていたところだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
瑠璃光は、いやしい
奴僕
(
ぬぼく
)
の風俗をした、
二十
(
はたち
)
あまりの薄髯のある男の顔を、
胡散
(
うさん
)
らしく見守って居たが、何心なく受け取った文の面に眼を落すと
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「私、わたしです」というと、潜戸をそっと半分ほど開けながら母親が
胡散
(
うさん
)
そうに外を
覗
(
のぞ
)
くようにして顔を出した。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「そうもいかないさ。お国だって、さしあたり行くところがないんだからね。」と新吉は
胡散
(
うさん
)
くさい
目容
(
めつき
)
をして
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
おとなしく立っている女ばかり数人の私たちでさえ、いやな気がしてじっと一つところにはいられなかったほど、
胡散
(
うさん
)
くさい背広の男たちにつきまとわれた。
メーデーに歌う
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ごく
稀
(
まれ
)
にそんな山径で行き
逢
(
あ
)
いますと、なんだか
病
(
や
)
み上がりの僕の方を
胡散
(
うさん
)
くさそうに見て通り過ぎましたが、それは僕に人なつかしい思いをさせるよりも
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
厭に
胡散
(
うさん
)
な暗闇が奥の方から蠢いてきて耳の辺りへ絡まりつくが、駄夫はフウフウそれを吹いたり深く吸ひ込むやうにしたり、それからジンと耳を澄まして
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「その晩橋場の交番の前を怪しい風体のやつが通ったので、巡査が
咎
(
とが
)
めるとこそこそ
遁
(
に
)
げ出したから、こいつ
胡散
(
うさん
)
だと引っ
捉
(
とら
)
えて見ると、着ている
浴衣
(
ゆかた
)
の
片袖
(
かたそで
)
がない」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
胡散
(
うさん
)
の者では御座らぬ。三面村へ参る者。米沢藩の御典医の一行が、薬草採りに参ったのじゃ」
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
例えばそんな話をもちかけると、その相手でさえじろりと横眼でさも
胡散
(
うさん
)
くさそうに彼を眺めて
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この目準があるものだから、いくら老僧たちが嘲笑的な態度を執ろうとも最後には彼等の
胡散
(
うさん
)
の誘惑から
免
(
まぬが
)
れて初一念が求むる方向へと一人とぼとぼ思念を探り入れて行った。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
博徒三 宵でもあることかもう夜明け近いぞ、
胡散
(
うさん
)
臭い爺め。——八丁方の
斥候
(
いぬ
)
だろう。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
飛白
(
かすり
)
の筒袖羽織、
禿
(
ち
)
びた
薩摩下駄
(
さつまげた
)
、
鬚髯
(
ひげ
)
もじゃ/\の彼が
風采
(
ふうさい
)
と、
煤竹
(
すすたけ
)
色の被布を着て痛そうに
靴
(
くつ
)
を
穿
(
は
)
いて居る白粉気も何もない女の
容子
(
ようす
)
を、
胡散
(
うさん
)
くさそうにじろじろ見て居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
胡散
(
うさん
)
くさい人が通る——という風に、注意し、後をもつけるでございましょうから。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
久美子はベッドの端に腰をかけ、手の中のと夜卓の上にある二つの容器をジロジロと見くらべているうちに、隆という青年のいったことに、
胡散
(
うさん
)
くさいところがあるのに気がついた。
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
このプログラムを貰って演技場に
這入
(
はい
)
って行くと、入口に突立っている巡査は古い顔
馴染
(
なじみ
)
であったが、
一寸
(
ちょっと
)
胡散
(
うさん
)
臭そうな眼付きをして私を見送っただけで、横の方を向いてしまった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
殻を払った
香袋
(
においぶくろ
)
を懐中にして、また桔梗屋へはいって行き、
事納
(
ことおさめ
)
に竿の代りに青竹を立てた仔細を
胡散
(
うさん
)
臭
(
くさ
)
く
白眼
(
にら
)
んだらしく、それとなく訊き質してみたが、ただこの家の吉例だとのこと。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
まだ時々、
胡散
(
うさん
)
臭そうに
唸
(
うな
)
っている犬を制止しているようでしたが、どんなに美しくても、珍しい
混血児
(
あいのこ
)
でも、こんなに落胆した気持の時では、もう何の興味でも好奇心でもありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一匹の犬が豊吉の立っているすぐそばの、
寒竹
(
かんちく
)
の生垣の間から突然現われて豊吉を見て
胡散
(
うさん
)
そうに耳を立てたが、たちまち垣の内で口笛が一声二声高く響くや犬はまた駆け込んでしまった。
河霧
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
鹿はじっと耳をかしげて、
胡散
(
うさん
)
臭そうに私の言葉を聴いていた。私が口を
噤
(
つぐ
)
むと、彼はもう
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しなかった。一陣の風に、樹々の
梢
(
こずえ
)
が互いに交差してはまた離れるように、彼の脚は動いた。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
あの夫に限つて、とは思ふものの、なぜか、「松の木の根」が
胡散
(
うさん
)
である。
荒天吉日
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
住民の中には、僕の方を
胡散
(
うさん
)
くさそうに、ふりかえる者もあった。しかし僕は
逸早
(
いちはや
)
く病院の寝衣を脱ぎすて、学生服に向う鉢巻という扮装になっていたので、そんなに深く
咎
(
とが
)
められずにすんだ。
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
胡散
(
うさん
)
臭くへんに邊に氣を配るやうにして小忙しくタオルを使つてゐた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
車掌と、馭者と、他の二人の旅客とは、
胡散
(
うさん
)
そうに彼をじろじろ見た。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「そちこそ何用あって庭わたりをしているのだ、
胡散
(
うさん
)
臭い奴だ。」
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
膝小僧
(
ひざこぞう
)
をかくす事が出来ないくらいの短い
古外套
(
ふるがいとう
)
を着て、いつも寒そうにぶるぶる震えて、いつか汽車に乗られた時、車掌は先生を
胡散
(
うさん
)
くさい者と見てとったらしく、だしぬけに車内の全乗客に向い
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
番甲
甚
(
いか
)
う
胡散
(
うさん
)
な。その
僧
(
ぼうず
)
をも
留
(
と
)
めておかっしゃい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
英也は
胡散
(
うさん
)
らしく云つた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
有島氏がかう言つて一寸言葉を切ると、
胡散
(
うさん
)
さうに眼を光らせてゐた西洋婦人達は、またしても
鷦鷯
(
みそさゞへ
)
のやうに鋭い音を立てた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
山「大丈夫です、私は
胡散
(
うさん
)
な者じゃアございませんよ、私はお前さんと
後先
(
あとさき
)
に成って洗馬から流して来た巡礼でございますよ」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「若僧やるな! 鳥刺しといい貴様といい、愈々
胡散
(
うさん
)
な
奴原
(
やつばら
)
じゃ。どこのどいつかッ。名を名乗らッしゃい? どこから迷って来たのじゃ!」
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
仮住居
(
かりずまい
)
の
門口
(
かどぐち
)
に立ったガラッ八の八五郎は、あわてて
弥蔵
(
やぞう
)
を抜くと、
胡散
(
うさん
)
な鼻のあたりを、ブルンと
撫
(
な
)
で廻すのでした。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼等は互に何かコソコソ
囁
(
ささや
)
き合って、こう云う所でなければ見られない、一種異様な、半ば敵意を含んだような、半ば
軽蔑
(
けいべつ
)
したような
胡散
(
うさん
)
な眼つきで
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
下宿へ入って行くと、下の方には誰もいなかったが、見馴れぬ女中が、台所の方から顔を出して
胡散
(
うさん
)
そうにお庄を眺めた。そこらはもう薄暗くなっていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんな所に二挺の駕籠が、ぼんやり客待ちをしていたということ、そのことがもう
胡散
(
うさん
)
であって、萩丸が普通の市井人だったら、早速疑がいを起こしただろう。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その間に、ふと、ぬれ鼠になって倒れているお粂に目をつけた同心は、
胡散
(
うさん
)
くさそうに顔をのぞき込んで
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胡
漢検準1級
部首:⾁
9画
散
常用漢字
小4
部首:⽁
12画
“胡散”で始まる語句
胡散臭
胡散気