“胡散:うさん” の例文
“胡散:うさん”を含む作品の著者(上位)作品数
薄田泣菫7
三遊亭円朝6
吉川英治5
国枝史郎5
徳田秋声5
“胡散:うさん”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸11.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「へへへ、でもお寂しそうに見えますもの……」と胡散うさんくさい目をしながら、「何は、金之助さんは四五日見えませんね?」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「私、わたしです」というと、潜戸をそっと半分ほど開けながら母親が胡散うさんそうに外をのぞくようにして顔を出した。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「そうもいかないさ。お国だって、さしあたり行くところがないんだからね。」と新吉は胡散うさんくさい目容めつきをして
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
聴衆ききてかい。」外交官は胡散うさんさうにおとがひまはりを撫で廻した。「聴衆ききてはたつた一人だつたよ。」
突然の来訪に、受付の警官は胡散うさん臭そうに、剣もホロロな顔をしていたが、事情を説明すると渋々古い帳簿なぞを調べてくれる。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
一人の同心と脚絆きゃはん手甲てっこうの捕手が、胡散うさんくさい目を光らし、頻りと母屋おもやの内を覗いておりましたが、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ず識らずの女が夜ちゅうに人の店へあがり込もうというのは、なんだか胡散うさんらしいとも思ったが、お徳はもう三十を越している。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
考へれば考へるほど、この「松の木の根」はをかしい。あの夫に限つて、とは思ふものの、なぜか、「松の木の根」が胡散うさんである。
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「お国さんが帰って?」と小僧に訊くと、小僧は「今帰りましたよ。」と胡散うさんくさい目容めつきでお作を見た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
渠は唸る樣な聲を出して、ズキリと立止つて、胡散うさん臭く對手を見たが、それは渠がよく遊びに行く郵便局の小役人の若い細君であつた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
若くて少し道樂強さうな、金次に、越前屋の取締は出來るかどうか、同心苅田孫右衞門も胡散うさんな眉を寄せました。
山「大丈夫です、私は胡散うさんな者じゃアございませんよ、私はお前さんと後先あとさきに成って洗馬から流して来た巡礼でございますよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
胡散うさんな捨て子が三人もあっちゃ、どうやらいわくがありそうだから、とち狂っていねえで、はええところしたくをしろといってるんだよ」
有島氏がかう言つて一寸言葉を切ると、胡散うさんさうに眼を光らせてゐた西洋婦人達は、またしても鷦鷯みそさゞへのやうに鋭い音を立てた。
多分、そんなような、胡散うさんな者を、たった今眼前に於て、感得したればこそ、彼はかくも一目散いちもくさんに走り過ぎたものと思われる。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老人は近寄つて訊きました。鉄砲をさげた、眼のきよろきよろ光るこの老人を、胡散うさんさうに見返りながら、若い男はぶつきら棒にいひました。
山雀 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
就きましては手前は決して胡散うさんの者では有りませんが、姓名は仔細有って申し兼るが、お連れ下さるまいか
その間に、ふと、ぬれ鼠になって倒れているお粂に目をつけた同心は、胡散うさんくさそうに顔をのぞき込んで、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、さうなの。」女房かないは皿をとりあげて、ちらと中をあらためて見てゐたが、すぐ目をあげて胡散うさんさうに良人をつとの顔を見た。
男「わっちは斯んな胡散うさん形姿なりをしてえるから、怪しい奴だと思おうが、私は伊皿子台町にいる船頭で、荷足の仙太郎という者です」
……昔からもそういうのもなかったんじゃないが、まだまだ胡散うさんながら、地獄極楽じごくごくらく
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
将軍は胡散うさんさうな顔つきをして、書物を兵卒の手に返した。「だが、どうしてお前にそれが解るな。」
「何てまあ意地くね悪い風なんでせう、全くお察し申しますよ。」主人は胡散うさんさうな眼付をしてへやの片隅に押しやつてある客人の荷物を見た。
見なれないお方でございますれば、すぐに、誰かが、胡散うさんくさい人が通る——という風に、注意し
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
胡散うさんの者では御座らぬ。三面村へ参る者。米沢藩の御典医の一行が、薬草採りに参ったのじゃ」
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「若僧やるな! 鳥刺しといい貴様といい、愈々胡散うさん奴原やつばらじゃ。どこのどいつかッ。名を名乗らッしゃい? どこから迷って来たのじゃ!」
下宿へ入って行くと、下の方には誰もいなかったが、見馴れぬ女中が、台所の方から顔を出して胡散うさんそうにお庄を眺めた。そこらはもう薄暗くなっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
例の記載ずみの旅客はただちにそれが自分の名前であるということを告げ知らせた。車掌と、馭者と、他の二人の旅客とは、胡散うさんそうに彼をじろじろ見た。
——というのは垣の外に、胡散うさんくさい人影が、しきりに辺りをうかがっていたからであろう。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとなしく立っている女ばかり数人の私たちでさえ、いやな気がしてじっと一つところにはいられなかったほど、胡散うさんくさい背広の男たちにつきまとわれた。
メーデーに歌う (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そうして改めて土耳古トルコ美人を胡散うさんくさそうに眺めた後、レザールにそっと囁いた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仮住居かりずまい門口かどぐちに立ったガラッ八の八五郎は、あわてて弥蔵やぞうを抜くと、胡散うさんな鼻のあたりを、ブルンとで廻すのでした。
八五郎は一寸氣色ばみましたが、思ひ直した樣子で、そのまゝ外へ出るとその邊に胡散うさんな顏をして立つてゐる丁稚でつちを捕へて、わけもなく聞き出しました。
澄み渡った青空に、鵙の声が鋭かった。往来の人々が、何か胡散うさん臭い目つきでこちらを眺める気がして私は、いつまでも窓から顔を出していることも出来なかった。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
瑠璃光は、いやしい奴僕ぬぼくの風俗をした、二十はたちあまりの薄髯のある男の顔を、胡散うさんらしく見守って居たが、何心なく受け取った文の面に眼を落すと、
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
胡散うさんさうな顔でもすると、直入は急に風邪でも引いたやうにくさめをして、
「さては拙者を胡散うさんと見て、その理由お話しくだされぬそうな。やむを得ぬ事」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
早くも胡散うさんな奴と知ったゆえ、二度目に駕籠脇へ近よろうとした前、篠崎竹雲斎しのぎきちくうんさい先生せんせい直伝じきでんの兵法をちょっと小出しに致して
二人の旅人は胡散うさんそうに焚火を囲んだ一団の武士を、ジロリと横眼で睨んだが、それでもちょっと腰をかがめ会釈えしゃくを施して通り過ぎた。態度に五分の隙もない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「私です、わたしです」と自分の名をいうと、母親はそうっと、五、六寸潜戸をけて、内から胡散うさんそうに外をのぞいて見たが、そこには私が突っ立っているので、
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「ご用聞きには惜しいわね」などとお三どんは仙介のことを、仲働きへ噂したりして、仙介の評判は来た日から良かった。がしかしお菊だけは、その仙介を胡散うさんそうに見た。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その男はそう言ってきよく引受けたが、胡散うさんな目をして笑っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
昨夜連れこまれた時から、庸三は何か胡散うさんな気分をこの家に感じていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
番甲 いか胡散うさんな。そのぼうずをもめておかっしゃい。
「そうかっ。——さては夕刻チラと見かけたあの胡散うさんな男かも知れぬぞ」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ仕方がねえ。おめえはもう少しここらを流しあるいて、何かの手がかりを見つけてくれ。常磐津の師匠と雇い婆、あいつらもなんだか胡散うさんだから、出這入りに気をつけろ」
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『ぢやもう、床に就いたの?』と低めに言つて、胡散うさん臭い眼附をする。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「さようでございます、はい。」となお胡散うさんらしく薄目で見上げる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久美子はベッドの端に腰をかけ、手の中のと夜卓の上にある二つの容器をジロジロと見くらべているうちに、隆という青年のいったことに、胡散うさんくさいところがあるのに気がついた。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「なに、金が物を言ふ?……」爺さんは胡散うさんさうな眼つきで運転手の顔を見た。「成程お金は物を言ふよ。大抵の場合、さやうなら! と言つて、さつさと出てくもんだよ。」
阿母様おつかさんの女優は胡散うさんさうな顔をしてじつと娘を見た。
胡散うさんさうにいつて、駈けてゆく自動車の運転手台を見たさうだ。
「そちこそ何用あって庭わたりをしているのだ、胡散うさん臭い奴だ。」
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
鹿はじっと耳をかしげて、胡散うさん臭そうに私の言葉を聴いていた。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
この目準があるものだから、いくら老僧たちが嘲笑的な態度を執ろうとも最後には彼等の胡散うさんの誘惑からまぬがれて初一念が求むる方向へと一人とぼとぼ思念を探り入れて行った。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その相手でさえじろりと横眼でさも胡散うさんくさそうに彼を眺めて
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『ハア?』と云ふなり、渠は胡散うさん臭い目附をしてチラリと對手の顏を見た。白ツばくれてるのだとは直ぐ解つたけれど、また何處かしら、話が無いと云つて貰つたのが有難い樣な氣もする。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして胡散うさんさうにじろ/\児玉氏の荷物を覗き込んだ。
一匹の犬が豊吉の立っているすぐそばの、寒竹かんちくの生垣の間から突然現われて豊吉を見て胡散うさんそうに耳を立てたが、たちまち垣の内で口笛が一声二声高く響くや犬はまた駆け込んでしまった。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私がずん/\くと、むこうから頭巾をかぶった奴が来やアがる様子だから、はてんな林に胡散うさんな奴がおる、ことにったら盗賊かと思うたから、油断せずにすかして見ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「その晩橋場の交番の前を怪しい風体のやつが通ったので、巡査がとがめるとこそこそげ出したから、こいつ胡散うさんだと引っとらえて見ると、着ている浴衣ゆかた片袖かたそでがない」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ時々、胡散うさん臭そうにうなっている犬を制止しているようでしたが、どんなに美しくても、珍しい混血児あいのこでも、こんなに落胆した気持の時では、もう何の興味でも好奇心でもありません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
そう言うと、お宮はまた少し胡散うさんそうに、
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
厭に胡散うさんな暗闇が奥の方から蠢いてきて耳の辺りへ絡まりつくが、駄夫はフウフウそれを吹いたり深く吸ひ込むやうにしたり、それからジンと耳を澄まして、奥の気配と自分の動悸と二つ一緒に感じ初めた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
胡散うさんな奴」と、捕えてみると、百姓は、
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このプログラムを貰って演技場に這入はいって行くと、入口に突立っている巡査は古い顔馴染なじみであったが、一寸ちょっと胡散うさん臭そうな眼付きをして私を見送っただけで、横の方を向いてしまった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、また長沮が顔をあげて子路を見た。今度はあまり皮肉な顔はしていなかった。しかし、返事をする代りに、道路の方を見遣って、そこに孔子の車を見つけると、もう一度胡散うさん臭そうに子路の顔を見た。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
土彦は胡散うさんらしく後退あとじさった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
住民の中には、僕の方を胡散うさんくさそうに、ふりかえる者もあった。しかし僕は逸早いちはやく病院の寝衣を脱ぎすて、学生服に向う鉢巻という扮装になっていたので、そんなに深くとがめられずにすんだ。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次は妙に胡散うさんな顏をするのでした。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
胡散うさんくさそうにじろじろ見て居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
胡散うさんな奴ッ、ぶッ斬ってしまえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と言つて胡散うさんさうな顔をした。
ごくまれにそんな山径で行きいますと、なんだかみ上がりの僕の方を胡散うさんくさそうに見て通り過ぎましたが、それは僕に人なつかしい思いをさせるよりも、かえってへんな佗びしさをつのらせました……
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ポカリと胡散うさんな奴が突き当りましたから、はっと思ってると、わたくしの懐へ手を入れて逃げてきましたから、何をやアがると云って、あとで見ますと金が有りませんから、小僧の使つかいではなし
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
英也は胡散うさんらしく云つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
膝小僧ひざこぞうをかくす事が出来ないくらいの短い古外套ふるがいとうを着て、いつも寒そうにぶるぶる震えて、いつか汽車に乗られた時、車掌は先生を胡散うさんくさい者と見てとったらしく、だしぬけに車内の全乗客に向い
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「言うなッ。言うなッ、雑言ぞうげん申さるるなッ。いか程小理屈ぬかそうと、夜中胡散うさんな者の通行は厳禁じゃッ、戻りませいッ、戻りませいッ。この上四ノ五ノ申さるるならば、腕にかけてもからめとってお見せ申すぞッ」
『嘘なもんか。實際だよ。』と松公はひとりで笑つて、『第一おれは金さんに濟まないと云ふ、其も有るからね。が、どつちにしても行く。今夜必然きつと行く。』と胡散うさんくさい目色めつきをして、女を見下みおろす。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そしてナオミが這入って来ると、彼等は互に何かコソコソささやき合って、こう云う所でなければ見られない、一種異様な、半ば敵意を含んだような、半ば軽蔑けいべつしたような胡散うさんな眼つきで、ケバケバしい彼女の姿をさぐるように眺めるのでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此の間から何かと胡散うさんの事もあったれど、こらえ/\て是迄穏便沙汰おんびんざたに致し置き、昨晩それとなく國を責めた所、國の申すには、実は済まない事だが貧に迫ってむを得ずあの人に身を任せたと申したから、其の場において手打にしようとは思ったれども
今しがた部屋にいる時も、ふいに電話がかかって女中の取次ぎで下へおりて行ったが、やがて部屋へ来て坐ったと思うと、間もなく廊下へ出て行き、しばらく帰って来ないので、庸三が胡散うさんに思って出てみると、葉子は階段の降り口をぬすむようにして、うろうろしているのだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
千登世が行きつけの電車通りのお湯が休みなので曾つて行つたことのない菊坂のお湯に行つて隅つこで身體を洗つてゐると直ぐ前に彼女に斜に背を向けた銀杏返いてふがへしの後鬢の階下の内儀かみさんにそつくりの女が、胡散うさん臭くへんに邊に氣を配るやうにして小忙しくタオルを使つてゐた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
にやりとした藤吉、に組に首を持たしてひとまず番所へ預けにやった後、殻を払った香袋においぶくろを懐中にして、また桔梗屋へはいって行き、事納ことおさめに竿の代りに青竹を立てた仔細を胡散うさんくさ白眼にらんだらしく、それとなく訊き質してみたが、ただこの家の吉例だとのこと。
山「庵主をうのだよ…、手前どもは相州東浦賀の者でございますが、今日こんにち漂流致しまして、漸々よう/\此所迄こゝまで参ったので、決して胡散うさんな者ではないから一泊願いとうございますが、えーもしお留守でございますか、おい/\師匠少しもこたえがねえから誰も居ねえのだろう」
「アッハハハハ、まるで反対だ。錦糸堀は本所のはずれにある……貴公江戸は不案内であろう? ……云いたくなければ云わないでもよい。産まれ故郷の云えないような、そういう胡散うさんな人物には今後薬は盛らぬまでだ……ところでもう一つ訊きたいのは、十万に余る貴公の財産、いったい何をしてもうけたのか?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
という先方の声は、どこかに聞き覚えたところがありましたが、色眼鏡いろめがねをかけて顔いっぱいに鬚髯ひげをはやしていましたから、こいつ胡散うさんな奴だと思ってせにかかりますと、先方もさるもの、猛然として私をつきのけようとしましたので、次の瞬間、ドタン、バタンという格闘が始まりました。
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「申したなッ。ならばなにゆえ胡散うさんげに市中をさ迷いおった。それも疑いかかった第三の証拠じゃ。いいや、それのみではない。今のひと癖ありげな弓の手の内といい、なにからなにまでみな疑わしい所業ばかりじゃ。もうこの上は吟味無用、故なくして隠密に這入ったものは召捕り成敗勝手の掟じゃ、じたばたせずと潔ようばくに就けいッ」