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竈
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へっつい
ふりがな文庫
“
竈
(
へっつい
)” の例文
侍はにこにこしながら米を洗って
竈
(
へっつい
)
にかけ、それに火を焚きつけた。それでも女は起きて来なかった。侍は絶えずにこにこしていた。
花の咲く比
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
縄暖簾の中を透かして見ると、やっぱり私の思った通り、お母さんが後向きになって
手拭
(
てぬぐい
)
を
姐
(
ねえ
)
さん
冠
(
かぶ
)
りにして
竈
(
へっつい
)
の傍にしゃがんでいる。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
猫の死んだのは実にその晩である。朝になって、下女が裏の物置に
薪
(
まき
)
を出しに行った時は、もう硬くなって、古い
竈
(
へっつい
)
の上に倒れていた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云ったがつるは、何の気もなく徳利を敷居際に置いて、土間にぴょんと飛び下りると、向う向きになって
竈
(
へっつい
)
に火を燃し初めた。
特殊部落の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
竈
(
へっつい
)
の下も風呂の下も毎日灰をかき出し、大きい灰ふるいを用意して必ずそのかきだした灰をふるい、小さな消し炭を消しつぼに入れること。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
▼ もっと見る
釜場の
竈
(
へっつい
)
の下に火が燃え、二番炊きの飯が噴きこぼれそうになっていたというこの一点だ、……これにはおれも頭をひねった。
顎十郎捕物帳:13 遠島船
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
久さんのおかみは、
詫
(
わ
)
び心に婆さん宅の
竈
(
へっつい
)
の下など
焚
(
た
)
きながら、喧嘩の
折節
(
おりふし
)
近くに居合わせながら
看過
(
みすぐ
)
した隣村の甲乙を思うさま罵って居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
賽銭箱は銭を入れる道具だ。覗いてみるとバラ銭が少し底の方にある。
竈
(
へっつい
)
や仏壇に金を隠すなら誰でも気が付くが、賽銭箱までは思いも寄らない
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「チョット待ってくれ
美鳥
(
みいちゃん
)
……イヨイヨおかしい。
美鳥
(
みいちゃん
)
は僕の留守に、
竈
(
へっつい
)
の神様へ
唾液
(
つばき
)
を吐きかけるか何かしたんだね」
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「そういうわけさ、ね、それでおしまいさ。眼玉もなくなるし、なにもかもなくなる。
竈
(
へっつい
)
のなかの
暗闇
(
くらやみ
)
ばかり……」
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「
筋違
(
すじかい
)
」「
講武所
(
こうぶしょ
)
」。現万世橋が「眼鏡橋」。「
御隠殿
(
ごいんでん
)
」「
喰違
(
くいちがい
)
」「鉄砲洲」「お玉ヶ池」「新堀端」「大根河岸」「竹河岸」「白魚河岸」「
竈
(
へっつい
)
河岸」。
昔の言葉と悪口
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
そうして、お
竈
(
へっつい
)
のそばに小さくなって奥の様子を窺っていますと、もともと狭い家ですから奥といっても鼻のさきで、ふたりの話し声はよく聞き取れます。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と十手を振上げて打って掛るやつを取って
抉
(
えぐ
)
ったから、ヒョロ/\とひょろついて台所の
竈
(
へっつい
)
でボッカリ膝を打って、裏口へ
蹌踉
(
よろけ
)
出したから、しめたと裏口の戸をしめ
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
竈
(
へっつい
)
も昔の竈、
七輪
(
しちりん
)
も昔の七輪、戸棚も昔のままの戸棚でありながら、
其処
(
そこ
)
にいる人間の変ったのを見ると、何となく、ものになじまぬようなうら淋しい心持のあるものである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
再びそれを持って台所へ行き、お勝さんのいないのを幸い、
竈
(
へっつい
)
の灰を今の大根の彫りものの面へなすりつけ、竈の側やら、板の間やらへ猫の足跡とそっくりの型をつけ、あたかも
幕末維新懐古談:17 猫と鼠のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
玉子焼鍋で工合を覚えると御飯を
炊
(
た
)
いた時火を引いた後にお釜を蒸らしながら
竈
(
へっつい
)
の中の灰へブリキの箱を入れて竈の前をブリキの蓋で塞げると竈の暖気で西洋菓子でも何でも出来ます
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
やがてそわそわと立ち上り、勝手元へ出てみると、義枝はしきりに
竈
(
へっつい
)
の下を覗いていた。新聞紙を突っ込み、突っ込み、薪をくべ、音高く燃えて、色黒い義枝の横顔に明るく映えていた。
婚期はずれ
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
まだ女と云うものが
竈
(
へっつい
)
の前にいた頃には
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
キャラコさんと梓さんたちの組は、大騒ぎをしながら、
竈
(
へっつい
)
の
周囲
(
まわり
)
でウロウロする。苗木屋のお爺さんが、提灯へ火をつける。
キャラコさん:11 新しき出発
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
婆さんは
袖無
(
そでな
)
しの上から、
襷
(
たすき
)
をかけて、
竈
(
へっつい
)
の前へうずくまる。余は
懐
(
ふところ
)
から写生帖を取り出して、婆さんの横顔を写しながら、話しをしかける。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女は小半時も其処に坐ってから、やっと夕飯の
準備
(
したく
)
にかかった。微暗くなった
竈
(
へっつい
)
の下には、火がちょろちょろと燃えた。
地獄の使
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
八十近くなって
眼液
(
めしる
)
たらして
竈
(
へっつい
)
の下を
焚
(
た
)
いたり、
海老
(
えび
)
の様な腰をしてホウ/\云いながら庭を
掃
(
は
)
いたり、杖にすがって
媳
(
よめ
)
の命のまに/\
使
(
つか
)
いあるきをしたり
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ルピック夫人——その
水溜
(
みずたま
)
りはなにさ。
竈
(
へっつい
)
がびしょびしょじゃないか。これで、
綺麗
(
きれい
)
になるこったろう。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
また
竈
(
へっつい
)
なり、七輪なりにしたがって多すぎてもまた少なすぎても、お湯のわき加減、煮物のでき加減もわるくなり、薪でも炭でもまたそのもやし具合、おこし具合で
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
炭の荷を揚げるにも
極
(
ごく
)
都合の好い事で、それから
直段
(
ねだん
)
を聞いて見たら二十五両だと申しやすが、尤も畳建具残らずで、
竈
(
へっつい
)
はありやせんが、それは
後
(
あと
)
で買っても好いが
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
少し
汚点
(
しみ
)
になった跡が今でも判りますが、押入にも、
納戸
(
なんど
)
にも、床下にも、天井裏にも、
須弥壇
(
しゅみだん
)
の下にも、
位牌堂
(
いはいどう
)
にも、
竈
(
へっつい
)
の下にも、千両箱などは影も形もありません。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ハイ。その掛金の穴へ、あの
竈
(
へっつい
)
の長い
鉄火箸
(
ひばし
)
を一本刺しておくだけです」
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
竈
(
へっつい
)
の隅に
打
(
ぶ
)
っ附かり
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
昔し島田は
藤田東湖
(
ふじたとうこ
)
の偽筆に時代を着けるのだといって、
白髪蒼顔万死余云々
(
はくはつそうがんばんしのようんぬん
)
と書いた
半切
(
はんせつ
)
の
唐紙
(
とうし
)
を、台所の
竈
(
へっつい
)
の上に釣るしていた事があった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
老人は
伯父
(
おじ
)
で巌丈な男と女は兄弟であるらしい。女が
艫
(
とも
)
の
間
(
ま
)
の
竈
(
へっつい
)
で
焚
(
た
)
く火の煙がうっすらと空にあがるのが見られた。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何
(
なん
)
にも構わずに
竈
(
へっつい
)
の
前
(
めえ
)
にぶっ
坐
(
つわ
)
ってゝ宜えと思わしゃるか、
汝
(
われ
)
が曲った心に識別するから
然
(
そ
)
ういう間違った事をいうだ、コレよく
考
(
かんげ
)
えて見ろよ、汝は粂どんを憎むから
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それで、
竈
(
へっつい
)
の前で用をしてる母さんに、ちゃんとわかるんだ。父さんが出て行く。母さんは
後
(
うし
)
ろを振り向く。お金をかき集める。毎月毎月、そのとおりのことをするんだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
乾き切った
藁葺
(
わらぶき
)
の家は、
此
(
この
)
上
(
うえ
)
も無い火事の燃料、それに
竈
(
へっつい
)
も風呂も藁屑をぼう/\燃すのだからたまらぬ。火事の少ないのが
寧
(
むしろ
)
不思議である。村々字々に消防はあるが、無論間に合う事じゃない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
七輪に火をおこすのにも、
竈
(
へっつい
)
に火をたくのにでも、炭や薪をぎしぎし詰めこんでは、押しつけられている薪は、ただくすぶるばかり、炭は自然に流れるばかりで、ほんとうの火力は出ないものです。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
竈
(
へっつい
)
の上に、ダラリと下った引窓の綱。
銭形平次捕物控:227 怪盗系図
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竈
(
へっつい
)
の広さだけ
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
惜し気もなく散る
彼岸桜
(
ひがんざくら
)
を誘うて、
颯
(
さっ
)
と吹き込む風に驚ろいて眼を
覚
(
さ
)
ますと、
朧月
(
おぼろづき
)
さえいつの
間
(
ま
)
に差してか、
竈
(
へっつい
)
の影は斜めに
揚板
(
あげいた
)
の上にかかる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、庭の方を向いて、「来い来い」と云うと、庭の片隅の
竈
(
へっつい
)
にかけてあった鍋と、水を汲んである手桶がふらふらと歩くように旅僧の傍へ来た。
怪しき旅僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と
鏝
(
こて
)
で以て
竈
(
へっつい
)
の
繕
(
つくろ
)
い直しをするようにさん/″\殴ってこれから立派に
止
(
とゞ
)
めを刺す。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
竈
(
へっつい
)
の中から飛出したようだせ」
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竈
(
へっつい
)
の前に坐った婆さんが、六七寸ばかりある木の人形を
二個
(
ふたつ
)
前に置いて、それに向って両手の指を胸の処で組み合せてまじないでもするようにしていた。
蕎麦餅
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
宜道が
竈
(
へっつい
)
の火を消して飯をむらしている間に、宗助は台所から下りて庭の
井戸端
(
いどばた
)
へ出て顔を洗った。鼻の先にはすぐ
雑木山
(
ぞうきやま
)
が見えた。その
裾
(
すそ
)
の少し
平
(
たいら
)
な所を
拓
(
ひら
)
いて、菜園が
拵
(
こしら
)
えてあった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云っている内におくのは
絶命
(
ことき
)
れましたから、茂之助は只
呆然
(
ぼんやり
)
して暫く考えて居ましたが、ふら/\ッと
起上
(
たちあが
)
って、自分の帯を解いて
竈
(
へっつい
)
の
角
(
かど
)
から釜の蓋へ足を掛けて、
梁
(
はり
)
へ二つ三つ巻きつけ
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「私がいたしましょう」と云って、無理に
竈
(
へっつい
)
の前に据わって茶の火を焚いた。
花の咲く比
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
老婆はあがって餅の椀を持って次の室へ往き、其処の仏壇に供えて、
庖厨
(
かって
)
の
竈
(
へっつい
)
の前へ戻り、肥った体を横坐りにして、茶釜から冷たい茶を汲んで飲んだ。腓の張りは何時の間にか忘れていた。
地獄の使
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
すると釜はひょこひょことおりて来て、
原
(
もと
)
の
竈
(
へっつい
)
へかかった。
唖の妖女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“竈(かまど)”の解説
かまど(竈)は、穀物や食料品などを加熱調理する際に火を囲うための調理設備。
(出典:Wikipedia)
竈
漢検準1級
部首:⽳
21画
“竈”を含む語句
土竈
竈馬
焼竈
竈辺
塩竈
病竈
竈山
瓦斯竈
竈場
大竈
石竈
竈神
庭竈
炭焼竈
泥竈
竈河岸
炭竈
土泥竈
七竈
竈屋
...