窓際まどぎは)” の例文
彼女は、窓際まどぎはへいつた。「彼が來ましたわ。」と彼女は云つた。「ねえ、ジョン」(身を乘り出して)「何か見えたかい?」
まちつかれた身體からだをそつと椅子いすにもたれて、しづかなしたみちをのぞこふとまどをのぞくと、窓際まどぎは川柳かはやなぎ青白あをしろほそよるまどうつくしくのびてた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
悪戯気いたづらぎのまじつた好奇心が、押へ切れず起つて来た。一蔵はいつものやうにぐに階下には降りず、新刊の小説を取り出して来て、窓際まどぎはで読みはじめた。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
あるじはこの時窓際まどぎは手合観てあはせみに呼れたれば、貫一は独り残りて、未だたもとかざしつつ、いよいよ限無く惑ひゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とまれ、十年前ねんまへあきの一乳色ちゝいろ夜靄よもやめた上海シヤンハイのあの茶館ツアコハン窓際まどぎはいた麻雀牌マアジヤンパイこのましいおといまぼく胸底きようていなつかしい支那風しなふうおもさせずにはおかない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼はげた一閑張いつかんばりの小机を、竹垣ごしに狭い通りに向いた窓際まどぎはゑた。その低い、くさつて白くかびの生えた窓庇まどびさしとすれ/\に、育ちのわるい梧桐あをぎりがひよろ/\と植つてゐる。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
うです此汽車で、神戸迄遊びに行きませんか」と勧めた。代助はたゞ難有うと答へた丈であつた。いよ/\汽車の間際まぎはに、梅子はわざと、窓際まどぎは近寄ちかよつて、とくに令嬢の名を呼んで
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その車もよく空いてゐたので眞中所の窓際まどぎはせきこしおろし、そう外にはなつた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
おもて窓際まどぎはまで立戻たちもどつて雨戸あまどの一枚をすこしばかり引きけて往来わうらいながめたけれど、向側むかうがは軒燈けんとうには酒屋らしい記号しるしのものは一ツも見えず、場末ばすゑまちよひながらにもう大方おほかたは戸をめてゐて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
くもはなれると、つきかげが、むかうの窓際まどぎはすゝけた戸袋とぶくろ一間ひとま美人びじんそで其處そこ縫留ぬひとめた蜘蛛くもに、つゆつらぬいたがゆるまで、さつ薄紙うすがみもやとほして、あきらかにらしす、とに、くもつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
アデェルは窓際まどぎはへ飛んで行つた。私もその後からいつて、窓掛の蔭になつて人に見られずに、見ることが出來るようにと注意して一方の側に立つた。
窓際まどぎは紫檀しだんたくはさんでこしおろし、おたがひつかがほでぼんやり煙草たばこをふかしてゐると、をんな型通かたどほ瓜子クワスワツアはこんでくる。一人ひとり丸顏まるがほ一人ひとり瓜實顏うりさねがほそれ口紅くちべにあかく、耳環みゝわ翡翠ひすゐあをい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
夕方など、よく彼は窓際まどぎはに坐り、机と紙を前に讀書も書きものも止めて了ひ、兩手に顎を支へて、私には想像もつかない思索に耽つてゐるのであつた。