神仏かみほとけ)” の例文
お前が神仏かみほとけを念ずるにも、まず第一に拝むと云った、その言葉が嘘でなければ、言わずとも分るだろう。そのお方のいいつけなんだ。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうでしょう。神仏かみほとけは分からぬものです。実はわたしはもう今までしたような事をめて、わたしの勝手にしようかと思っています」
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これぎりむなしく相成候が、あまり口惜くちをし存候故ぞんじさふらふゆゑ、一生に一度の神仏かみほとけにもすがり候て、此文には私一念を巻込め、御許おんもと差出さしいだしまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私も神仏かみほとけに心のうちでお詫ばっかり致して居りました、何卒どうぞ堪忍してお呉んなさい、お父様を怨まずに私を悪い者と恨んでお呉んなさいまし
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その恐ろしさというものは、まったくの生命いのちがけで、月明りをタヨリに、神仏かみほとけ御名おんなを唱えながら見ておりましたが……
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人々は皆神仏かみほとけのように畏敬し、深く前の軽薄を悔いて気を失うばかり……自分の襤褸ぼろ屋敷の門内を賃借りする雑姓を追い出し——追い出すどころか
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
正に其通り、与右衛門さんは神仏かみほとけなんか信ずる様な事はせぬ、徹頭徹尾自力宗じりきしゅうの信者である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
不意の救いに驚いたのであろう、阿濃あこぎはあわてて、一二けんいのいたが、老人のしりえへ倒れたのを見ると、神仏かみほとけをおがむように、太郎の前へ手を合わせて、震えながら頭を下げた。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
されば人はつね神仏かみほとけ信心しん/″\して悪事あくじ災難さいなんまぬかれん事をいのるべし。神仏かみほとけしんずる心のうちより悪心はいでぬもの也。悪心のなき災難さいなんをのがるゝ第一也とをしへられき。今もなほみゝに残れり。
兄の蘿月らげつに依頼しては見たものゝ矢張やつぱり安心が出来できない。なにも昔の道楽者だうらくものだからとわけではない。長吉ちやうきちこゝろざしを立てさせるのは到底たうてい人間業にんげんわざではおよばぬ事、神仏かみほとけの力に頼らねばならぬと思ひ出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そうして、あの人が生きているに違いないと思ったり、もう、うに死んでしまったように思えたり、どうも気になってたまらないものですから、神仏かみほとけにお願い申すよりほかはないと思いました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
康頼 それは神仏かみほとけの力でなくてはとてもできることではありません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あゝ神仏かみほとけわしの様な悪人をなに助けて置こうぞ、此の鎌で自殺しろと云わぬばかりのこらしめかあゝ恐ろしい事だと思い詰めて居りましたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昔より信仰厚き人達は、うつつ神仏かみほとけ御姿おんすがたをもをがみ候やうに申候へば、私とても此の一念の力ならば、決してかなはぬ願にも無御座ござなく存参ぞんじまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一晩と附切って介抱することのならなかった蝶吉の気はどんなであった? 人が神仏かみほとけうらむのは正にそういう時である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前はこれから思いきって、この土地を逃げ延びて、どうぞ都へ登っておくれ。神仏かみほとけのお導きで、よい人にさえ出逢ったら、筑紫へお下りになったお父うさまのお身の上も知れよう。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兄の蘿月に依頼しては見たもののやっぱり安心が出来ない。なにも昔の道楽者だからという訳ではない。長吉に志を立てさせるのは到底人間業にんげんわざではおよばぬ事、神仏かみほとけの力に頼らねばならぬと思い出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小野の小町 神仏かみほとけ悪口わるぐちはおよしなさい。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
神仏かみほとけを祈って御座ったいじらしさ。
なんたる因果のことか、此の貧乏の中へ眼病とは実に神仏かみほとけにも見放されたことかと、たゞわしの困る事よりお前に気の毒でならない
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どの道、妙に惚れてる奴だから、その真実愛しているものの云うことは、娘に取っては、神仏かみほとけ御託宣おつげ同一おんなじです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文のぬしはかかれと祈るばかりに、命を捧げて神仏かみほとけをも驚かししと書けるにあらずや。貫一は又、自ら何のゆゑとも知らで、ひとりこれのみひらくべくもあらぬ者を披き見たるにあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「うん。それは分からん。分からんのが神仏かみほとけだ」
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
又親父がのこしてまいりました遺物かたみ同様の大事な品でございますから、是を取られては神仏かみほとけにも見離されたかと申して泣き倒れて居りまして
詮方せんかたなさに信心をはじめた。世に人にたすけのない時、源氏も平家も、取縋とりすがるのは神仏かみほとけである。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しや貴方にお目にかゝられる事もありましょうかと、神仏かみほとけを信じて居りました甲斐があって、お目にかゝる事が出来ました
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母はもとより天道の大御心おおみこころにはかなわぬ生立おいたち、自分の体をにえにして、そして神仏かみほとけの手で、つまり幽冥ゆうめいの間に蝶吉の身を救ってやろう、いずれ母娘おやこが、揃って泥水稼業というは
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ実にお前に会うのもみんな神仏かみほとけのお叱りだと思うと、身を切られる程つらいと云う事を此の頃始めて覚えました、云わない事は解りますまいが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
推量して下さいまし、愛想尽あいそづかしと思うがままよ、鬼だかじゃだか知らない男と一つ処……せめて、神仏かみほとけの前で輝いた、あの、光一ツやみに無うては恐怖こわくて死んでしまうのですもの。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
善「多助それというのもお前の心掛にある、神仏かみほとけのお恵みにあるから、これを貰わないと云う訳はない、貰え/\/\」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まあね、……まるでお見えなさらないと言うじゃあないの。しまった、と思ったわ。半分夢中で、それでも私がここへ来たのは神仏かみほとけのお助けです。秦さん、私が助けるんだと思っちゃあ不可いけない。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音「何も心配は有りませんが、なんにしても若旦那が眼が悪いんざますから、私は神仏かみほとけに願って御全快を祈りましょう」
そら、幻にでも神仏かみほとけを見たいでしょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此方こなたのお町はすみの方にうずくまり、両手を合せて一心に神仏かみほとけを念じて居りますと、何か落ちて手の甲に当りました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実は姉と私と神仏かみほとけに信心をして、行方を捜したのだが、今に死んだか生きたか生死しょうしの程も分らずに居るが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云うので此方こちらも見送る、右内は見返りながら、金の出来よう筈はないが、神仏かみほとけめぐみで、何うか才覚したいものだと考えながら、うか/\と大原村という処へ掛りました所が
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
急がれる程おおじ/\致しますが、一生懸命に心の内に神仏かみほとけを念じて粗相のないようにと元のように皿を箱に入れてしまい、是れから白菊の方の紐を解いて、漸々だん/″\三重箱迄開け
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お金の抵当ていとう此処こゝの伯母さんに此の観音様を取られましたから、母は神仏かみほとけにも見離されたかと申して泣き続けて居りますから、どうか母の気を休めようと思い、旦那を取ると申しまして
もう国を出ましてから十九年で、私がいまだ生れぬ前に、江戸屋敷詰に成りまして、それから江戸屋敷から行方知れずに成りましたので、段々姉と両人ふたり神仏かみほとけに祈念して行方を捜しましたが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此の鎌は女房のお累が自害をし、わっちが人をあやめた草苅鎌だが、廻り廻ってわっちの手へ来たのは此の鎌で死ねという神仏かみほとけこらしめでございまするから、其のいましめを背かないで自害致しまする
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
えゝ命から次の大事なものでもよんどころない、ういう切迫詰せっぱつまりになって、人の手に観音様が入ってしまうのは、親子三人神仏かみほとけにも見離されたと諦めて、お上げ申さなければ話が落着おちつかねえではないか
混雑の中だからどんな怪我がないものでもない、さすれば却って不孝になりますよ、神仏かみほとけと云うものはうちにいて拝んでも利益りやくのあるものだから、夜中に来てお百度を踏むのは止したほうがよろしい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
早くナ婿むこでも貰い、楽隠居がしたいと思い、日頃信心のないわたくしなれども、娘の病気を治そうと思い、夏とは云いながら此の老人が水をあびて神仏かみほとけへ祈るくらいな訳で、ところが昨夜娘のいうには
祖「あゝ有難い、神仏かみほとけのお引合せで、はからず親のかたきめぐり逢った」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)