疼痛いたみ)” の例文
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
三十九度内外の熱が少し静まると、胸の疼痛いたみが来たり、または激しい咳に襲われたりした。咳が少しいいと思うとまた高い熱に悩まされた。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
腐ってしまいそうだとよく岸本の嘆いていた身体からだが、ひょっとすると持病に成るかとまで疼痛いたみを恐ろしく感じていた身体が
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにみぎかたのあたりでこはばつたやうでうごかしやうによつてはきや/\と疼痛いたみおぼえた。かれ病氣びやうき其處そこあつまつたのではないかとおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さるほどに愛吉はなまずの伝六一輩に突転ばされて、身体五六ヶ所に擦疵すりきず、打たれ疵など、殊に斬られも破られもしないが、背中の疼痛いたみが容易でない。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磐石ばんじやくを曳くより苦く貫一は膝の疼痛いたみこらへ怺へて、とにもかくにも塀外へいそとよろぼひ出づれば、宮はいまだ遠くも行かず、有明ありあけ月冷つきひややかに夜は水のごとしらみて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
地図によれば此処ここらはだ越中の領分で、足腰の疼痛いたみに泣く旅人も無し、山霧に酔う女もあるまいが、更に進んで雲をしの庵峠いおりとうげを越え、川をいだいたる片掛村かたかけむらを過ぎて
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
月日つきひともきず疼痛いたみうすらぎ、また傷痕きずあとえてく。しかしそれとともくゐまたるものゝやうにおもつたのは間違まちがひであつた。彼女かのぢよいまはじめてまことくゐあぢはつたやうながした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
が、疼痛いたみは容易に收まらなくつて、唸き聲は自然に高くなつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
ある温泉は胸や脚の疼痛いたみに利くことになっている。
手先てさき火傷やけど横頬よこほゝのやうな疼痛いたみ瘡痍きずもなかつたが醫者いしや其處そこにもざつと繃帶ほうたいをした。與吉よきちばかりして大袈裟おほげさ姿すがたつてかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
憂鬱ゆううつな眼付をして、三吉が昼寝からめた時は、あぶにでも刺されたらしい疼痛いたみを覚えた。お俊は髪に塗る油を持って来て、それを叔父に勧めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……貴方あんた、その疵、ほんとにもう疼痛いたみはないか。こないした嬉しさに、ずきずきしたかて忘らりょう。けど、疵は刻んで消えまいな。私がそばに居たものを。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旦那様だんなさま、誠にまア結構けつこうくすりでございます、有難ありがたぞんじます、疼痛いたみがバツタリりましてございます。主「それはるよ、くすりだもの……はおまへかえ。 ...
横さまにひざまずいて倒れたので、左の膝を少しく痛めたが、差したることでも無いらしい。彼は疼痛いたみを忍んですぐに起きあがった。その片手には消えた蝋燭を後生大事に握っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、疼痛いたみは容易に収まらなくって、呻き声は自然に高くなった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
頼んで置いた針医が小さな手箱をげて楼梯を上って来た。過ぐる年の寒さから岸本は腰の疼痛いたみを引出されて、それが持病にでも成ることを恐れていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
與吉よきち繃帶ほうたいをしてから疼痛いたみもとれた。繃帶ほうたいまた直接ちよくせつものとの摩擦まさつふせいで、かれこゝろよく村落むらうち彷徨さまよはせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人形使 何の貴女様、この疼痛いたみは、酔った顔をそよりそよりと春風に吹かれますも、観音様に柳の枝から甘露を含めて頂きますも、同じ嬉しさでござります。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんなことを云っているうちに、市郎は漸次しだいに足の疼痛いたみを感じた。今までは気が張っていたので、何もも殆ど夢中であったが、さきに岩の上へ転げちた時に彼は左の膝を痛めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勝代は疼痛いたみやはらぐのにつれてこんなことを云つて涙を浮べた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
木登りの惡戲いたづらから脚に大きなとげなどが差さつても親達に見つかる迄はそれを隱して居るといふ方でしたが、私はひとの身體の疼痛いたみを想像するにも堪へませんでした。
やがて、唇にふくまれた時は、かえって稚児おさなごが乳を吸うような思いがしたが、あとの疼痛いたみは鋭かった。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
医者の薬礼を恐れる彼は、なるべく買い薬で間にあわせて置きたかったのであるが、夜のふけるに連れて疼痛いたみはいよいよ強くなって、彼はもう慾にもとくにも我慢が出来なくなった。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれ先刻さきに泰助の後を跟け来りて、この座敷の縁の下に潜みており、散々藪蚊やぶかに責められながら、疼痛いたみこらうる天晴あっぱれ豪傑、かくてあるうち黄昏たそがれて、森の中暗うなりつる頃、白衣を着けたる一人の婦人
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は針医に頼んで、思うさま腰の疼痛いたみを打たせた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)