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獰猛
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どうもう
ふりがな文庫
“
獰猛
(
どうもう
)” の例文
そして、底知れぬ
獰猛
(
どうもう
)
さを雪白の毛並みにうねらせた。だのに又太郎は、われから
革足袋
(
かわたび
)
の片方を上げて、彼の鼻ヅラへ見せている。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とにかくそれは、今まで見たこともなく、想像もしたこともないような、この上もなく
獰猛
(
どうもう
)
な、何ともいえないおそろしい顔でした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
仮面をはずした目に見える悪魔どもであり、赤裸になった
獰猛
(
どうもう
)
な魂らであった。光に照らされながら、その一群はなお
闇
(
やみ
)
の中にいた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
獰猛
(
どうもう
)
な愚かな生命のあらゆる蛮行に飽きはてた後、勝利者になって何になろうぞ。作品全部が生命にたいする恐るべき迫害である。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
或いは鬼よりも
獰猛
(
どうもう
)
な人類がいることが、空想的な頭にあるものですから、兇暴なる土人の襲撃の怖るべきことは猛獣以上である。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
彼が蛇を恐れる如く、彼が
郎党
(
ろうとう
)
の犬のデカも
獰猛
(
どうもう
)
な武者振をしながら頗る蛇を恐れる。蛇を見ると
無闇
(
むやみ
)
に
吠
(
ほ
)
えるが、中々傍へは寄らぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あちらには、
獰猛
(
どうもう
)
な
獣
(
けもの
)
の、
大
(
おお
)
きい
目
(
め
)
のごとく、こうこうとした
黄色
(
きいろ
)
の
燈火
(
ともしび
)
が、
無気味
(
ぶきみ
)
な
一筋
(
ひとすじ
)
の
線
(
せん
)
を
夜
(
よる
)
の
奥深
(
おくふか
)
く
描
(
えが
)
いているのです。
雲と子守歌
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
犯罪学の書物の
挿絵
(
さしえ
)
にある様な、
獰猛
(
どうもう
)
な壮年の男子に限るものの如く、迷信している為に、幼い子供などの存在には全く不注意であった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
新之助が殺した「
蝮一
(
まむしいち
)
」は、関門北九州では、もっとも
獰猛
(
どうもう
)
な親分であったので、新之助は奇妙な名声さえ持っているといってよかった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
花のあかみには、ごまのような、跳ねた粒子形のかたまりのような逞しい蝶が、花に打突かる
獰猛
(
どうもう
)
さで飛んで来ては、また何処かへ行った。
真夏の幻覚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
鬚
(
ひげ
)
だらけの
獰猛
(
どうもう
)
な
赤面
(
あかづら
)
を仰ぎながら、厳格、森儼を極めた新任の訓示を聞いている
中
(
うち
)
にも、そのブルブルが一層烈しくなって
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
野を通ると、まだ、黒く日にやけた
獰猛
(
どうもう
)
な獣を見ることは見る。祖先と同じように、彼は終日執念深く、耕された畑の上に腰を屈めている。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
同地の新聞紙は一斉に筆を整えて
獰猛
(
どうもう
)
に彼の攻撃を開始し「
自称国賊
(
セルフコンフェッスド・ヱネミー
)
きたらんとす」「
売国奴
(
トレーター
)
ロイド・ジョージ侵入せんとす」
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
男の顔がはなはだ
獰猛
(
どうもう
)
にできている。まったく西洋の絵にある
悪魔
(
デビル
)
を模したもので、念のため、わきにちゃんとデビルと
仮名
(
かな
)
が振ってある。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
習性 気質
劇
(
はげ
)
しく愛撫すれば温順なるも、怒れば
獰猛
(
どうもう
)
なり、死闘す、未知の人に絶対に馴染まず愛玩用なれども、番犬に適す
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ところでその耳は鋭く立って居りましてその顔付の
獰猛
(
どうもう
)
にして残忍酷薄なる様子を示して居ることは一見恐るべきもので
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
白亜紀の肉食性の
獰猛
(
どうもう
)
な種類、……
禽竜
(
プテラノドン
)
とか
恐竜
(
チランノサウルス
)
とかがいるはずなのです。……向うの湿原でうろついているのは、たしかにそいつらだと思います
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そのおおかみの群れの王と見られるのは、土地の人々からロボと
呼
(
よ
)
ばれる、まことに悪がしこく
獰猛
(
どうもう
)
なやつであった。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
その
中
(
うち
)
に近づいて来たのは、三十五六の
獰猛
(
どうもう
)
な武家、私慾と争気をねり固めたような男ですが、その代りお国侍らしい単純さも、どこかに匂います。
銭形平次捕物控:078 十手の道
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は非常に
獰猛
(
どうもう
)
な性質であり、また彼の権限を犯すようなことに対しては、すこぶる敏感をもっているからである。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
幕はまるで
円頂閣
(
ドオム
)
のような、ただ一つの窓を残して、この
獰猛
(
どうもう
)
な灰色の蜘蛛を真昼の青空から
遮断
(
しゃだん
)
してしまった。
女
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そいつの手に負えない
獰猛
(
どうもう
)
さのために、帰りの航海のあいだじゅう彼はずいぶん困ったが、とうとうパリの自分の家に無事に入れてしまうことができた。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
ことにミウーソフはこのうえなく優しい気分から、たちまちにしてこのうえなく
獰猛
(
どうもう
)
な気分に変わってしまった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
シムソンはそう云いながら、机の上の
呼鈴
(
よびりん
)
を押しました。やがて、
扉
(
ドア
)
をノックして入って来たのは、背の高い、見るから
獰猛
(
どうもう
)
な
面構
(
つらがま
)
えをした外国人でした。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ソクラテスは、偉かったでしょうが、或はこの急所をきっといくらか
揶揄
(
やゆ
)
したのよ。女房というものは
獰猛
(
どうもう
)
なものだということを余りえらすぎて忘れたのよ。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は人畜に重傷を負わせる程
獰猛
(
どうもう
)
ではないが、奇妙な狙いをもって、その身近くの空気を打って、逃げまどう標的の狼狽する有様を見物するのが道楽である。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
と、蛇は
穏
(
おとな
)
しく、びくの中で眠ってしまう、蝮であろうとやまかがしであろうと、一度お仙の手にかかったら、その
獰猛
(
どうもう
)
な性質がにわかに穏しくなるのであった。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たった独りになると
獰猛
(
どうもう
)
なる強迫観念に襲われて、居ても立っても堪らなくなるのだが、不思議と今夜は神経が下駄の方へ使われて、一向恐ろしがる気が出ない。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
獰猛
(
どうもう
)
な、とどろくような思いが胸のなかに渦巻く。今夜の雪のように。雪よ降れッ。降りつもって、この街をうめつくして、ちっそくするほど降りつもるがいい。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼は随分これまで狂暴な殺人犯人にも出会ったが、いくら狂暴でも
獰猛
(
どうもう
)
でも、この怪奇なる組立て人間「蠅男」に較べると作り物の大入道ほども恐ろしくはなかった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今度こそは大丈夫とは思つたが、それでも十分ばかりは様子を窺つてゐたね。相手が頗る
獰猛
(
どうもう
)
な奴かも知れんからな。しかし今度は参つたと見えて一向頭は現はれない。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
苛刻
(
かこく
)
な現実精神をかの
獰猛
(
どうもう
)
な妖怪から、身をもって学んだわけだ、と、悟浄は
顫
(
ふる
)
えながら考えた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ひとびとはそこで、
獰猛
(
どうもう
)
な野蛮人と、火の出るようなはげしい戦いをした。猛獣や、毒蛇や、ジャングルの危険をおかして、奥地を探険し、思いがけない大発見をした。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
頬には一束の毛が
総
(
ふさ
)
のように
叢
(
むら
)
がっている。
髭
(
ひげ
)
は白く太い。——しかしその
獰猛
(
どうもう
)
さを一番に語っていそうなのは、しなやかな丸太棒とでもいいたいようなその四肢だった。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
その
弾
(
たま
)
けむりの消えやらぬうちに、われは野獣の
吼
(
ほ
)
ゆるがごとき
獰猛
(
どうもう
)
なる叫び声を高く聞けり。モルガンはその銃を地上に投げ捨てて、
跳
(
おど
)
り上がって現場より走り
退
(
の
)
きぬ。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
いったん道がひらかれた時、そのかみの彼自身が
俄
(
にわか
)
に天下をめざす
獰猛
(
どうもう
)
な野心鬼に変じた如く、家康も亦いのちを張って天下か死かテコでも動かぬ野心鬼となる怖れがある。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼女はそこらにさまよっている野良犬のなかで、性質の
獰猛
(
どうもう
)
らしいのを二匹も拾いあげた。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのつぎに指揮台の上にあらわれたのは、見るからに
獰猛
(
どうもう
)
な山犬のような顔の生徒だった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
一緒に目を射た八人の者の姿! いずれも
五分月代
(
ごぶさかやき
)
の伸び切った
獰猛
(
どうもう
)
なる浪人者です。
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
犬はもう
憤怒
(
ふんぬ
)
に熱狂した、いましも赤はその
扁平
(
へんぺい
)
な鼻を地上にたれておおかみのごとき両耳をきっと立てた、かれの
醜悪
(
しゅうあく
)
なる面はますます
獰猛
(
どうもう
)
を加えてその
前肢
(
まえあし
)
を低くしりを高く
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
これがあるので、奥さんの顔には今にも雷雨が
来
(
こ
)
ようかという夏の空の、電気に飽いた重くるしさがある。
鷙鳥
(
しちょう
)
や猛獣の物をねらう目だと云いたいが、そんなに
獰猛
(
どうもう
)
なのではない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その他吉備津の
塵輪
(
じんりん
)
も
三穂
(
さんぼ
)
太郎も、鬼とはいいながらじつは人間の最も
獰猛
(
どうもう
)
なるものに近く、護符や
修験者
(
しゅげんじゃ
)
の
呪文
(
じゅもん
)
だけでは、煙のごとく消えてしまいそうにもない鬼でありました。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
鼠といっても、大きさはマスティフ種の犬ぐらいあって、それに、とても、すばしこくて、
獰猛
(
どうもう
)
な奴でした。もし私が裸で寝ていたら、きっと八つ裂きにされて食べられたでしょう。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
これはわたくしの性の
獰猛
(
どうもう
)
なのによるか。
痴愚
(
ちぐ
)
なるによるか。自分にはわからぬが、しかし、今のわたくしは、人間の死生、ことに死刑については、ほぼ左のような考えをもっている。
死刑の前
(新字新仮名)
/
幸徳秋水
(著)
被告席に着いた彼の姿は一言で云えば、
獰猛
(
どうもう
)
な
鷲
(
わし
)
のような印象を人々に与えた。
殺人狂の話:(欧米犯罪実話)
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
岩魚の姿態は、山女魚によく似ているが、山女魚に比べると
面
(
つら
)
構えが
獰猛
(
どうもう
)
である。そして気性がはげしい。なぎさに水を求めにくる蛇をも襲わんとし、熊蜂、
蜥蜴
(
とかげ
)
をも、ひと呑みにする。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
見るからに哀れっぽい痩せた小さな犬が、見るからに
獰猛
(
どうもう
)
な大きな肥った犬におどかされて、キャンキャンと悲鳴をあげて逃げて行くのだ。可哀そうにと、私はちっぽけな犬に同情した。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
折合いの悪い継母を斬りつけたという自分の前の亭主のことが、それに繋がって始終お銀の頭に亡霊のようにこびり着いていた。新聞に出ていた兇徒の
獰猛
(
どうもう
)
な面相も、目先を離れなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
獰猛
(
どうもう
)
な顔をした人とも鬼とも判らない者が二人入ってきたところであった。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この附近の狼は非常に
獰猛
(
どうもう
)
で、冬になるとよく被害があるそうである。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
獰
漢検1級
部首:⽝
17画
猛
常用漢字
中学
部首:⽝
11画
“獰猛”で始まる語句
獰猛組
獰猛性
獰猛者