私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかくそれは、今まで見たこともなく、想像もしたこともないような、この上もなく獰猛な、何ともいえないおそろしい顔でした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために―― (新字新仮名) / ナサニエル・ホーソーン(著)
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
獰猛な愚かな生命のあらゆる蛮行に飽きはてた後、勝利者になって何になろうぞ。作品全部が生命にたいする恐るべき迫害である。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
或いは鬼よりも獰猛な人類がいることが、空想的な頭にあるものですから、兇暴なる土人の襲撃の怖るべきことは猛獣以上である。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
野を通ると、まだ、黒く日にやけた獰猛な獣を見ることは見る。祖先と同じように、彼は終日執念深く、耕された畑の上に腰を屈めている。
ぶどう畑のぶどう作り (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
動物物語 狼の王ロボ (新字新仮名) / アーネスト・トンプソン・シートン(著)
銭形平次捕物控:078 十手の道 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
彼は非常に獰猛な性質であり、また彼の権限を犯すようなことに対しては、すこぶる敏感をもっているからである。
そいつの手に負えない獰猛さのために、帰りの航海のあいだじゅう彼はずいぶん困ったが、とうとうパリの自分の家に無事に入れてしまうことができた。
モルグ街の殺人事件 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
ことにミウーソフはこのうえなく優しい気分から、たちまちにしてこのうえなく獰猛な気分に変わってしまった。
カラマゾフの兄弟:01 上 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
たった独りになると獰猛なる強迫観念に襲われて、居ても立っても堪らなくなるのだが、不思議と今夜は神経が下駄の方へ使われて、一向恐ろしがる気が出ない。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひとびとはそこで、獰猛な野蛮人と、火の出るようなはげしい戦いをした。猛獣や、毒蛇や、ジャングルの危険をおかして、奥地を探険し、思いがけない大発見をした。
世界怪談名作集:04 妖物 (新字新仮名) / アンブローズ・ビアス(著)
彼女はそこらにさまよっている野良犬のなかで、性質の獰猛らしいのを二匹も拾いあげた。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのつぎに指揮台の上にあらわれたのは、見るからに獰猛な山犬のような顔の生徒だった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
鼠といっても、大きさはマスティフ種の犬ぐらいあって、それに、とても、すばしこくて、獰猛な奴でした。もし私が裸で寝ていたら、きっと八つ裂きにされて食べられたでしょう。
ガリバー旅行記 (新字新仮名) / ジョナサン・スウィフト(著)
殺人狂の話:(欧米犯罪実話) (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
見るからに哀れっぽい痩せた小さな犬が、見るからに獰猛な大きな肥った犬におどかされて、キャンキャンと悲鳴をあげて逃げて行くのだ。可哀そうにと、私はちっぽけな犬に同情した。
折合いの悪い継母を斬りつけたという自分の前の亭主のことが、それに繋がって始終お銀の頭に亡霊のようにこびり着いていた。新聞に出ていた兇徒の獰猛な面相も、目先を離れなかった。