トップ
>
為方
>
しかた
ふりがな文庫
“
為方
(
しかた
)” の例文
旧字:
爲方
九月
朔日
(
ついたち
)
の朝は、
南風
(
みなみ
)
が
真当面
(
まとも
)
に吹きつけて、縁側の
硝子
(
ガラス
)
戸を閉めると蒸暑く、あけると部屋の中のものが舞上って
為方
(
しかた
)
がなかった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
それを温和に過ぐる性質の安は
諌
(
いさ
)
めようともしないので、五百は姉を訪うてこの様子を見る度にもどかしく思ったが
為方
(
しかた
)
がなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
成らうことなら、批評も聞かず、批評もせずにゐたいものだが、何うもそれではこの世の中が成り立つて行かないから
為方
(
しかた
)
がない。
批評
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
だけども、徴兵で
為方
(
しかた
)
がなしになった軍人よ。月給を貰って妻子を養ってる、軍人とは違うんでしょう。貴方は家の相続人ですわ。
昇降場
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
店の主人は子供に物を言って聞かせるように、引金や、弾丸を込める所や、筒や、照尺をいちいち見せて、射撃の
為方
(
しかた
)
を教えた。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
店の主人は子供に物を言って聞かせるように、引金や、弾丸を込める所や、筒や、照尺を一々見せて、射撃の
為方
(
しかた
)
を教えた。
女の決闘
(新字新仮名)
/
ヘルベルト・オイレンベルク
(著)
かれは
為方
(
しかた
)
なしに舟をもと来た水脈の上にしずかに戻した。かれの顔容は寂しい
歪
(
ゆがみ
)
をもちながら、目は桃花村の方にそそがれていたのである。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
上官は
為方
(
しかた
)
がないので、規則上の責任者に罪を帰した。それは組長とその助手とであつた。二人共その日の内に調べられた。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
朝早く彼を
訪
(
たづ
)
ねようと思つたが、宿はどこも一杯で、それに一人旅だと聞いて素気なく断わられたので、
為方
(
しかた
)
なしいきなり訪ねることにした。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
昨日もお見舞にお出で下すつたお方に変な事を申掛けまして、何も病気の事で
為方
(
しかた
)
もございませんけれど、私弱りきりましたのでございます。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「
六月
(
みなつき
)
の
地
(
つち
)
さへ
割
(
さ
)
けて照る日にも吾が袖
乾
(
ひ
)
めや君に逢はずして」(巻十・一九九五)等は、同じような発想の
為方
(
しかた
)
の歌として味うことが出来る。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
だが、世の中を知らない二人だけでは、すべてのことがいよいよ思うにまかせなくなって来ることは
為方
(
しかた
)
がなかった。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
穿鑿といえど
為方
(
しかた
)
に両様あり。一は智識を以て理会する学問上の穿鑿、一は感情を以て感得する美術上の穿鑿是なり。
小説総論
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
去年秋銃猟の
途次
(
みちすがら
)
、渋茶を呑みに立寄って以来、婆や、
家
(
うち
)
は窮屈で
為方
(
しかた
)
がねえ、と言っては、夜昼
寛
(
くつろ
)
ぎに来るので、里の乳母のように心安くなった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物を言ったって聞えないほどやかましい馬車の中では、黙っているより外
為方
(
しかた
)
が無いと云うことになりますからね。
辻馬車
(新字新仮名)
/
フェレンツ・モルナール
(著)
これは神ばかりでなく、人も行うた
為方
(
しかた
)
であった。どこから来るとも名のらず、ひどいのになると、顔や姿さへ暗闇まぎれに一度も見せないのがある。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「そんならどこかそこらへ腰を掛け給へ。なんにもないなら、
為方
(
しかた
)
がないから、地の上にでも坐り給へ。そしてこつちの云ふ事を注意して聞き給へ。」
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
為方
(
しかた
)
がないからそのおでかい奴を、どしこと拾って帰った。明日喰べる積りである。人の話によると
不味
(
まず
)
い相である、するめを喰べるようだ相である。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
でも御覧のやうな目に逢ひましたのですから、
為方
(
しかた
)
がございません。実は町から橇に乗つて遊山に出ましたの。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「君はひどいよ。手紙なんというものは書かない流義と見えるね。まあ、
為方
(
しかた
)
がない。さあ、出て来
給
(
たま
)
えよ。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
……もう
為方
(
しかた
)
がないから、では此処で腹を切ってくれ、私が
介錯
(
かいしゃく
)
するからと云うと、それでは、近藤殿から、斬れと云われたお前の役目が立つまいと云うのだ。
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
僕は別段君に注意してゐたわけでもないが、どうもこの頃物を観察するのが癖になつてゐるもんだから
為方
(
しかた
)
がない。そこで見てゐると、君は下を向いて歩いてゐる。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
『何と申して可いか……ナンですけれども、お決めになつてあるのだば
為方
(
しかた
)
がない訳でごあんす。』
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
自分なども自画像を描く度にまだだなあと思う。顔の事を考えると神様の前へ立つようで恐ろしくもあり又一切自分を投出してしまうより
為方
(
しかた
)
のない心安さも感じられる。
顔
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
まアまア
何
(
なに
)
しろ
斯
(
こ
)
う
歇
(
や
)
みなしに雪が
降
(
ふ
)
つては
為方
(
しかた
)
がない、
此家
(
こ
)
の
檐下
(
のきした
)
を
拝借
(
はいしやく
)
しようか……エー
最
(
も
)
う日が
暮
(
く
)
れたからな、
尚
(
な
)
ほ
一倍
(
いちばい
)
北風
(
きたかぜ
)
が身に
染
(
し
)
むやうだ、
坊
(
ばう
)
は寒くはないか。
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
嬶
(
かか
)
や、自分の子なら、
為方
(
しかた
)
もないが、ほんの
床几
(
しょうぎ
)
に休んだ旅の者でな、災難でござりますわ」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
興哥は女がなすがままになるより他に
為方
(
しかた
)
がなかった。彼は女の
詞
(
ことば
)
のままに次の室へ往った。
金鳳釵記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何という素晴しい日曜日を兵隊は見つけたものであろう!——兵隊は街へ活動写真を見に行く小遣銭を持っていなかったので、
為方
(
しかた
)
がなく初めてこの原っぱへ来てみたのだった。
兵隊の死
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
子供は
為方
(
しかた
)
なしに、泣く泣く空から下がっている綱を猿のように登り始めました。子供の姿は段々高くなると一緒に段々小さくなりました。とうとう雲の中に隠れてしまいました。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
「
為方
(
しかた
)
がないから借金だけ払つてやらうかと、おつしやつていらつしやいました。」
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
余計な事を訊きやがると思つたが、
為方
(
しかた
)
がない。「日本から。」と簡単に答へた。
幼少の思ひ出
(新字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
こういう
酩酊
(
めいてい
)
の
為方
(
しかた
)
も
好
(
い
)
いなあ、と思いかけていましたが、便所に立った
虎
(
とら
)
さんが帰って来て、「オイ表に出てみろよ、大変な
貼出
(
はりだ
)
しが出ているぜ、ハッハッハ」と
豪傑
(
ごうけつ
)
笑いをするので
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
あの人はこうなれば
為方
(
しかた
)
がないという風でキスをする。その時のお前さんの様子ってなかったわ。まあ、度を失ったというような風ね。それがその時はわたしには気が付かなかったのだわ。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
「
為方
(
しかた
)
がないさ、まア
緩
(
ゆつく
)
り探す事です。」と湯村は鷹揚に云つた。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
自分のために面白い事が出来なければ
為方
(
しかた
)
がないじゃないか。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
力を添えて下さるのだから、いつも浄い
為方
(
しかた
)
で、11920
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
主人が幾ら厭な顔をしても
為方
(
しかた
)
がないのである。
薔薇
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
為方
(
しかた
)
なくなく
穴
(
あな
)
へと
逃
(
に
)
げる。
とんぼの眼玉
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その頃は申告の
為方
(
しかた
)
なんぞは
極
(
き
)
まっていなかったが、
廉
(
かど
)
あって上官に
謁
(
えっ
)
する時というので、着任の挨拶は正装ですることになっていた。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そんなことを気にして見たとて
為方
(
しかた
)
がないとも思つたけれども、しかもかれは磯から磯へ、松原から松原へと行つて見ずにはゐられなかつた。
波の音
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
この貧しげな在所から入って来ると、着いた当時は
鈍
(
のろ
)
くさくて
為方
(
しかた
)
のなかった寂しい町の
状
(
さま
)
が、可也
賑
(
にぎや
)
かで、豊かなもののように見えて来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
実はこんな土地へ、運命の手に
弄
(
もてあそ
)
ばれて来たものは、補助でも受けなくては、飢ゑ凍えて死ぬるか、盗賊になるかより外に
為方
(
しかた
)
がないのである。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「その縁の尽きないのが、
究竟
(
つまり
)
彼我
(
ふたり
)
の身の
窮迫
(
つまり
)
なのだ。
俺
(
おれ
)
もかう云ふ事に成らうとは思はなかつたが、成程、悪縁と云ふ者は
為方
(
しかた
)
の無いものだ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それでも
為方
(
しかた
)
がないから
又
(
また
)
言葉
(
ことば
)
をかけたが
少
(
すこ
)
しも
通
(
つう
)
ぜず、ばたりといふと
僅
(
わづか
)
に
首
(
くび
)
の
位置
(
ゐち
)
をかへて
今度
(
こんど
)
は
左
(
ひだり
)
の
肩
(
かた
)
を
枕
(
まくら
)
にした、
口
(
くち
)
の
開
(
あ
)
いてること
旧
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
し。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「子供って
為方
(
しかた
)
のないものですねえ。あたしがそれは渋柿だから、取ったって喰べられやしないって云ったんですけれど、がりがりかじって見せたりして。」
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
とうとうあきらめて、自然にとり沙汰の消えるのを待つより
為方
(
しかた
)
がない、と思うようになったと言う。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
こんなに胸が燃えて苦しくて
為方
(
しかた
)
ないのは、あの春の大野を焼く人達が焼き足りないで、私の心までもこんなに焼くのか知らん、というので、譬喩的にいったから
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
河を隔てゝ
向河岸
(
むかうがし
)
にゐる百姓と話をする百姓の真似をする物真似である。その
為方
(
しかた
)
は隣の室に隠れて、口の前に布団をあてゝ、精一ぱい大声を出して
饒舌
(
しやべ
)
るのである。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
どうも
為方
(
しかた
)
がないからお前がそういう考えに慣れてくれるより外はないよ。死ぬるといえば変なようだが、一年立てば別れるのだと思えば、それまでの事ではないか。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「とう/\わたしが賭に負けましたね。どうも
為方
(
しかた
)
がありません。どつちの方にお掛けですか。」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
為
常用漢字
中学
部首:⽕
9画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“為方”で始まる語句
為方無
為方話