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手巾
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ハンケチ
ふりがな文庫
“
手巾
(
ハンケチ
)” の例文
男でも日曜は新しい青いワイシャツの胸に真白な
手巾
(
ハンケチ
)
を
覗
(
のぞ
)
かせている。教会は彼らにとって誠に楽しい
倶楽部
(
クラブ
)
、ないし演芸場である。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
(
手巾
(
ハンケチ
)
が落ちました、)と知らせたそうでありますが、
件
(
くだん
)
の
土器殿
(
かわらけどの
)
も、
餌
(
えさ
)
は
振舞
(
ふるま
)
う気で、
粋
(
いき
)
な後姿を見送っていたものと見えますよ。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小さい
手巾
(
ハンケチ
)
とか、婦人用の襟飾、絹のブラウズと云うようなものは、皆、家で洗い、それが、乾くまで、必要な箇所を訪問します。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その顔を隠した人は、
手巾
(
ハンケチ
)
で傷を結えながら、あべこべに赤帽にあやまって——その間も、神戸行の急行に目を離さなかったんですって
身代りの花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いくら然るべき事情があったって、ちょいと
国府津
(
こうづ
)
まで行くだけなら、何も
手巾
(
ハンケチ
)
まで振らなくったって好さそうなもんじゃないか。」
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
白い砂埃が濛濛としてゐるのと、いろいろの物から混成された一種の臭気とが、
手巾
(
ハンケチ
)
で顔を掩うて私達の早足に去る事を促した。
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
路が横堀に出ると、爺さんは後に手を伸ばして
手巾
(
ハンケチ
)
の包を取り上げるなり、堀の水を目がけてぽいとそれを投げおろしました。
黒猫
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
手を引くときに、自分でカフスの奥を腕まで
覗
(
のぞ
)
いて見る。やがて
背広
(
せびろ
)
の
表隠袋
(
おもてかくし
)
から、真白な
手巾
(
ハンケチ
)
を
撮
(
つま
)
み出して丁寧に
指頭
(
ゆびさき
)
の油を拭き取った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
数番の舞踏済みて、
額
(
ひたひ
)
に加ふる白
手巾
(
ハンケチ
)
、胸のあたりに
閃
(
ひらめ
)
く扇、出でゝラムネを飲むあれば、彼方此方と
巡廻
(
へめぐ
)
りて、次の番組の相手を求むあり。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
愚図々している場合でないので、悲壮な決心をして立ち上り、ズボンに手を突込んで
手巾
(
ハンケチ
)
を出そうとした拍子に、ぱらりと落ちた紙片があった。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
手巾
(
ハンケチ
)
で覆面をした労働者風の背の高い男に襲われて、この時は、奪われるものを奪われた丈けで生命には別条なかった。
双面獣
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
季吉さんはあの日の風邪はとうに治りましたよと、新しい
手巾
(
ハンケチ
)
で口元を拭かれた。この前のときの手巾も真白であった。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私は恐ろしさに、
踵
(
きびす
)
を返して逃げ出そうとしたが、その時彼女は顔をあげて、私の方を見ながら別に驚いた様子もなく、
手巾
(
ハンケチ
)
で口を拭って言った。
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
わたくしはおろおろ声で、「そうばかりでもないんだけれど、今度の場合は」と言って、なおも
手巾
(
ハンケチ
)
を眼に運んでいた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と無口な學士にしては、滅多と無い叮嚀な説明をして、ガチヤン、
肉叉
(
フオーク
)
と
刀
(
ナイフ
)
を皿の上に投出し、カナキンの
手巾
(
ハンケチ
)
で
慌
(
あわただ
)
しく口の
周
(
まはり
)
を拭くのであツた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「いいわねそんなこと……私は叔父さんにまた拵えてもらうから。」お庄は日焼けのしたような顔を
手巾
(
ハンケチ
)
で拭いた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
千代子は小さい薬瓶を
手巾
(
ハンケチ
)
に包んでそれに大槻の描いた水彩画であろう半紙を巻いたものを
提
(
さ
)
げている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
それから
手巾
(
ハンケチ
)
で鼻をかんだ。それから手提かばんの中を何か音させていたが、しまいにそれを閉じた。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
富江が不平を言ひ出して、三人に更めて附けようと騷いだが、それは信吾が
宥
(
なだ
)
めた。そして富江は遂に消さなかつた。森川は上衣の
釦
(
ボタン
)
をかけて、乾いた
手巾
(
ハンケチ
)
で顏を拭いた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お葉は汚れた手を
手巾
(
ハンケチ
)
で拭いて、天風の飲みさしのビールを飲んだ。そこへ婢が入って来た。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
アメリア嬢は眼の赤くなるほど、
手巾
(
ハンケチ
)
でこすると、黙って姉のいる部屋から出て行きました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
岸でも船でも長い間互ひに
手巾
(
ハンケチ
)
を振つてゐたが、それもいつか遠く小さくなつて行つた。
犬
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
劇
(
はげ
)
しくゆすり
搖
(
うご
)
かし、靜にせずば
打擲
(
ちやうちやく
)
せむ、といひしが、急に
手巾
(
ハンケチ
)
を引き出して、我腕を縛りて、しかと其端を取り、さて俯してあまたゝび我に接吻し、かはゆき子なり、そちも聖母に願へ
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
実枝はさう云ひながら平たい石の腰かけを
手巾
(
ハンケチ
)
ではたいた。
曠日
(新字旧仮名)
/
佐佐木茂索
(著)
失った妻子のことをいう指先が
手巾
(
ハンケチ
)
をさぐって
顫
(
ふる
)
えていた
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
旅客は
洋杖
(
ステッキ
)
を持った手を拡げて、案外、と
瞻
(
みまも
)
ったが、露に濡れたら清めてやろう、と心で支度をする
体
(
てい
)
に、片手を
衣兜
(
かくし
)
に、
手巾
(
ハンケチ
)
を。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
するとそこへ通りかかったのは髪の長い詩人のトックです。トックは僕らの顔を見ると、腹の袋から
手巾
(
ハンケチ
)
を出し、何度も額をぬぐいました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
佐伯博士は、立って、安楽椅子の上に楽々と掛けた形になって居る、小粟桂三郎の死体の顔から、
手巾
(
ハンケチ
)
を取って見せました。
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
答のない口元が結んだまましゃくんで、見るうちにまた
二雫
(
ふたしずく
)
落ちた。宗近君は親譲の
背広
(
せびろ
)
の
隠袋
(
かくし
)
から、くちゃくちゃの
手巾
(
ハンケチ
)
をするりと出した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母親の優しい小さい目にも、一時に涙が
湧
(
わ
)
き立った。そして何にも言わずに、
手巾
(
ハンケチ
)
で面を
抑
(
おさ
)
えた。お庄も傍で目を
曇
(
うる
)
ませながら、
擽
(
くすぐ
)
ッたいような気がした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この時、留守にして居た色眼鏡の人が
手巾
(
ハンケチ
)
で手を拭き拭き帰って来て、車掌の姿を見るなり
怪訝
(
けげん
)
な顔をして立ちどまった。車掌は早くもその人の足に眼を注ぎ
猫と村正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
わたくしは逸作のこんなに泣いたのを見るのは始めてだった。わたくしは
袖
(
そで
)
から
手巾
(
ハンケチ
)
を出してやりながら
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
婦人はやがて腰を
屈
(
かが
)
めて、取り出した
手巾
(
ハンケチ
)
のなかに小さな黒猫の死骸を包みました。そして
側
(
そば
)
に立つて不思議さうにそれに見とれてゐる三、四人の子供たちに呼びかけました。
黒猫
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
思いなしか千代子は小走りに急ぐ、「高谷さん!」と呼ぶと、こんどは中壇に立ち止って私の方を向いたが、
怪訝
(
けげん
)
な顔をして口もとを
手巾
(
ハンケチ
)
でおおいながら、鮮やかな眉根をちょいと
顰
(
ひそ
)
めている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
鞄の隅には小さな箱があり、その中に小さな
手巾
(
ハンケチ
)
が一
打
(
ダース
)
入っていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
また暫らくして、リグレイ印のチュウイング・ガムの包み紙一枚と、男持ちの血染めの
手巾
(
ハンケチ
)
が、附近の残雪にまみれて発見された。ハンケチは、白地に青い線で縁取った大版の、木綿の安物だった。
双面獣
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
医看徽章の
白羽箭
(
しろいはね
)
を後ろにはねた制帽と、白衣に白い靴にいたるまで凡て白ずくめの彼女らは、唯一つの装飾である
手巾
(
ハンケチ
)
だけが胸のポケットにたたまれ、うすい藍や、うすい黄色を見せているだけで
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
女教師は
慌
(
あわて
)
て首を
縮
(
すく
)
めて、
手巾
(
ハンケチ
)
で口を抑へた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
手水鉢
(
ちょうずばち
)
で、
蔽
(
おおい
)
の下を、
柄杓
(
ひしゃく
)
を
捜
(
さぐ
)
りながら、
雫
(
しずく
)
を払うと、さきへ手を
浄
(
きよ
)
めて、
紅
(
べに
)
の口に
啣
(
くわ
)
えつつ待った、
手巾
(
ハンケチ
)
の
真中
(
まんなか
)
をお絹が貸す……
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが
今朝
(
けさ
)
、宿直室の
寝台
(
ベッド
)
の上で、クロロホルム臭い
手巾
(
ハンケチ
)
を顔へ当てられて、死んだ
鮪
(
まぐろ
)
のようになって眠りこけて居たんだ。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それと共に、頭の中の大井の姿は、いよいよその振っている
手巾
(
ハンケチ
)
から、濃厚に若い女性の
匀
(
におい
)
を放散せずにはすまさなかった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ええ好いのを一人周旋しましょう」と小野さんは、
手巾
(
ハンケチ
)
を出して、薄い
口髭
(
くちひげ
)
をちょっと
撫
(
な
)
でる。
幽
(
かす
)
かな
香
(
におい
)
がぷんとする。強いのは下品だと云う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
親たちが横浜の叔父の方へ引き寄せられて、そこで
襯衣
(
シャツ
)
や
手巾
(
ハンケチ
)
ショールのような物を商うことになってから、東京にはお庄の帰って行くところもなくなった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は一時ぼんやりしたように立って居たが、やがて気を取りなおしてとりあえず、ポケットから
手巾
(
ハンケチ
)
を取り出して、傷口を
繃帯
(
ほうたい
)
し、びっこをひき乍ら家に帰った。
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
婦人は強ひて気を落ちつけようとして、
袂
(
たもと
)
から
手巾
(
ハンケチ
)
を取り出して鼻先の汗を拭きました。
黒猫
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
アアミンガアドは丸々とした背を向けて、
手巾
(
ハンケチ
)
で
面
(
おもて
)
をかくしました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
盆の上の
代物
(
しろもの
)
に私は
手巾
(
ハンケチ
)
をかぶせて視界から遠ざけた。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
お信たちのいうのでは、玉子色の絹の
手巾
(
ハンケチ
)
で顔を隠した、その手巾が、もう
附着
(
くッつ
)
いていて離れないんですって。……帯をしめるのにも。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「焼け焦のある
手巾
(
ハンケチ
)
などは、持って居なかったでしょう、——あの通り直ぐ警官が来て、部屋も
身体
(
からだ
)
も
検
(
しら
)
べたが——」
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「おい、君はまだ覚えているだろう、僕があの七時の急行の窓で、女の見送り人に
手巾
(
ハンケチ
)
を振っていた事があるのを。」
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“手巾”の意味
《名詞》
手拭い。ハンカチ。
「手巾帯」の略。
(出典:Wiktionary)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
巾
常用漢字
中学
部首:⼱
3画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭
手段