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弑
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しい
ふりがな文庫
“
弑
(
しい
)” の例文
とあるのは人口に
膾炙
(
かいしゃ
)
した詩句で、秦始皇を
弑
(
しい
)
そうとして壮士
荊軻
(
けいか
)
が
燕
(
えん
)
の太子の燕丹に易水のほとりで分れた事蹟を咏じたのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
陳の霊公が
弑
(
しい
)
せられたと聞くや、楚の荘王は直ちに軍を率いて、陳の都に入った。夏徴舒は捕えられ、
栗門
(
りつもん
)
という所で車裂の刑に遭った。
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
翌承久元年正月二十七日、前夜から雪であったが、
鶴ヶ岡八幡宮
(
つるがおかはちまんぐう
)
に右大臣の拝賀の式を行う
夜更
(
よふ
)
け、帰るさを別当
公暁
(
くぎょう
)
のために
弑
(
しい
)
せられた。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
信長の本能寺に
弑
(
しい
)
せらるゝ、
光秀
(
みつひで
)
の
小栗栖
(
をぐるす
)
に刺さるゝ、
義貞
(
よしさだ
)
の敗績に於ける、義経の東走に於ける、皆罪過なくんばあらず。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
相模守として鎌倉に在つた尊氏の弟
直義
(
たゞよし
)
は、敗れて鎌倉を脱出するとき、
畏
(
おそれおほ
)
くも護良親王を
弑
(
しい
)
し奉つた。これが、足利氏の悪逆の最初である。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
主君の
紂
(
ちゅう
)
を討つ時、彼らは父が死んで
葬
(
ほうむ
)
らぬ間に
干戈
(
かんか
)
を起すは孝行でなく、臣が君を
弑
(
しい
)
するは仁でないといって武王を
諫
(
いさ
)
めたが用いられなかった。
真の愛国心
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
順逆の道さえ知らず、君を
弑
(
しい
)
し民を苦しめ、ただ、我慾あるのみな鬼畜に、なんでわが子を婿などにくれられようか。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唐の昭宗皇帝は英主であったが、晩唐の国勢振わず、この洛陽で叛臣
朱全忠
(
しゅぜんちゅう
)
のために
弑
(
しい
)
せられたのである。(同上)
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
信長が光秀に
弑
(
しい
)
された時は、光秀から
近江
(
おうみ
)
半国の利を
啗
(
くら
)
わせて誘ったけれども節を守って屈せず、明智方を引受けて城に
拠
(
よ
)
って戦わんとするに至った。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それから孔父を攻め殺してその妻を奪い、主君
殤公
(
しょうこう
)
の怒るを
懼
(
おそ
)
れついにこれを
弑
(
しい
)
したというから、二教ともに眼ほど性慾を挑発するものなしとしたのだ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
蒼
(
あお
)
ざめた、カリギュラ王は、その臣下の手に依って
弑
(
しい
)
せられるところとなり、彼には
世嗣
(
よつぎ
)
は無く全く孤独の身の上だったし、この後、誰が位にのぼるのか
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どこに将軍家を隠しているか、それとも無慚に
弑
(
しい
)
したか、これでは一向見当が付かない。……一人でもよいから銅銭会員をどうともして至急捕えたいものだ
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
悪逆無道の人は君主でない。君主は民意を得なくてはならぬ。人心を失えば
匹夫
(
ひっぷ
)
である。匹夫
紂王
(
ちゅうおう
)
を誅するを聞く、未だ君を
弑
(
しい
)
するを聞かずというものである。
平和事業の将来
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
憤
(
いきどお
)
ってこれを討ち、ために天下の民を安らかにした。これは臣の身として君を
弑
(
しい
)
したというべきではない。仁にもとり義にもとった一人の不徳者紂をころしたのである
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
世は衰え、道は微となり、邪説暴行また起こり、臣にしてその君を
弑
(
しい
)
する者これ有り、子にしてその父を弑する者これ有り、孔子
懼
(
おそ
)
れて春秋を作れり。春秋は天子の事なり。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
西班牙
(
スペイン
)
のピサロ将軍に
弑
(
しい
)
せられました当時、インカ帝国の臣民たちがこの島へ逃避したものではなかろうかと言われ、この島から時々木乃伊が……土砂の崩壊によるものか
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
……主君を
弑
(
しい
)
して城を乗取るところ……忠臣に
詰腹
(
つめばら
)
を切らして酒の
肴
(
さかな
)
に眺めているところ……奥方や若君を毒害して、自分の孫に跡目を取らせるところ……病気の夫を
乾
(
ほ
)
し殺して
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その頃の政情をかえりみるとき、この決断は
未曾有
(
みぞう
)
のことであったと
云
(
い
)
えよう。外戚の専横に由る皇位の問題は国家の大事である。蘇我馬子はそのため既に一帝二皇子を
弑
(
しい
)
している。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それにてもなお憤りが納まらずば将軍家を
弑
(
しい
)
し奉ればよいのじゃ。さるを故なき感情に激して、国家を
危
(
あや
)
うきに導くごとき
妄動
(
もうどう
)
するとは何事かっ。閣老安藤対馬守、かように申したと天下に声明せい
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一書によると、王のお
歳
(
とし
)
は十八
歳
(
さい
)
であったと云われる。また、
嘉吉
(
かきつ
)
の乱にいったん
滅亡
(
めつぼう
)
した赤松の家が再興されたのは、その時南朝の二王子を
弑
(
しい
)
して、神璽を京へ取り
戻
(
もど
)
した功績に報いたのであった。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし
政
(
まつりごと
)
をなす主権者に悪行あるときは、それを廃せし例は、わが朝のみならず、唐土にもあることで、
周武
(
しゅうぶ
)
がその主
紂王
(
ちゅうおう
)
を
弑
(
しい
)
し、諸民の困窮を救い
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十に余る大国はそれぞれ相結び相闘って
干戈
(
かんか
)
の止む時が無い。
斉侯
(
せいこう
)
の一人は臣下の妻に通じて夜ごとその
邸
(
やしき
)
に
忍
(
しの
)
んで来る中についにその夫に
弑
(
しい
)
せられてしまう。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
且つや
天
(
てん
)
一豪傑を鉄門関辺の
碣石
(
けっせき
)
に生じて、カザン(Kazan)
弑
(
しい
)
されて後の大帝国を治めしむ。これを
帖木児
(
チモル
)
(Timur)と為す。
西人
(
せいじん
)
の
所謂
(
いわゆる
)
タメルラン也。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
例えば主君信長が逆臣明智光秀のために京都本能寺で
弑
(
しい
)
せられたと知るや敵の毛利氏と和を講じ、光秀の構えの整わない先に山陽道を長駆して山崎街道に軍を進め
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いよいよ今夜か明日は義朝をたばかって
弑
(
しい
)
してやろうという前の晩に、
折節
(
おりふし
)
出来た新しい蕎麦粉を打って、新蕎麦が出来たから一つ召上らぬかと他意もなげにそれを
勧
(
すす
)
めて
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それが群臣の耳に入ったので、多年兵を動かして人臣辛苦
息
(
や
)
まざるにこの上北海を攻むるようではとても続かぬ故王を除くべしと同意し、
瘧
(
おこり
)
を病むに乗じ
蒲団蒸
(
ふとんむし
)
にして
弑
(
しい
)
した。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
京都に於て、将軍家の権力が、管領の細川氏に移り、それが亦、細川氏の家臣の三好氏に移り、それが四転して、三好氏の家来の松永久秀に移り、久秀は将軍義輝を
弑
(
しい
)
してゐる。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
且
(
かつ
)
父の為義を
弑
(
しい
)
せし
報
(
むくい
)
偪
(
せま
)
りて、
一一五
家の子に
謀
(
はか
)
られしは、
天神
(
あまつがみ
)
の
祟
(
たたり
)
を
蒙
(
かふむ
)
りしものよ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
太閤を守備よく
弑
(
しい
)
するか、そうでなかったら戦うかだ。で、お前に俺は頼む。もう一度伏見城へ忍んでくれ、太閤の寝首を掻いてくれ、やりそこなったら死んでくれ!
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この際、天子を
弑
(
しい
)
し、一挙に大事を
謀
(
はか
)
らんなど、
区々
(
まちまち
)
な暴議をそこで計っている様子だった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝我を辱めた罰としてまさに手を逢蒙に仮らんとすと、翌日逢蒙羿を
弑
(
しい
)
して位を奪うた。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
同じ年、斉の
陳恒
(
ちんこう
)
がその君を
弑
(
しい
)
した。孔子は
斎戒
(
さいかい
)
すること三日の後、哀公の前に出て、義のために斉を
伐
(
う
)
たんことを請うた。請うこと三度。斉の強さを恐れた哀公は聴こうとしない。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
殷鑒
(
いんかん
)
遠からず、現に嘉吉元年将軍
義教
(
よしのり
)
は、重臣赤松
満祐
(
みつすけ
)
に
弑
(
しい
)
されて居るのである。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
又、周の
創
(
はじめ
)
、
七七
武王
(
ぶわう
)
一たび
怒
(
いか
)
りて天下の民を安くす。臣として君を
弑
(
しい
)
すといふべからず。
仁
(
じん
)
を
賊
(
ぬす
)
み義を賊む、一
夫
(
ぷ
)
の
紂
(
ちう
)
を
誅
(
ちゆう
)
するなりといふ事、
七八
孟子
(
まうじ
)
といふ書にありと人の伝へに聞き
侍
(
はべ
)
る。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
揚広は子を以てだに父を
弑
(
しい
)
す。燕王の
傲慢
(
ごうまん
)
なる、何をか
為
(
な
)
さゞらん。敬の言、
敦厚
(
とんこう
)
を欠き、帝の意、
醇正
(
じゅんせい
)
に近しと
雖
(
いえど
)
も、世相の険悪にして、人情の陰毒なる、
悲
(
かなし
)
む
可
(
べ
)
きかな、敬の言
却
(
かえ
)
って実に切なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
弑
(
しい
)
せられる日の夕暮方、父が申しましてございます。秘密の一端明かせてやろう、室へおいで、来るがよいと……で、この室へ参りましたところ、父が申しましてございます。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この国の
先賢
(
せんけん
)
の遺書に主君を
弑
(
しい
)
してもよしなどという
辞句
(
じく
)
が、一字でもあったでしょうか
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ネロ帝はその生母を愛して後これを
弑
(
しい
)
し、臣下の妻を奪って后としたが、その后死んで追懐やまず、美少年スポルス亡后に似たればとて、これを宮し女装せしめて后と立て、民衆の眼前に
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
夭
(
よう
)
せしめ、夫を殺し、主君を
弑
(
しい
)
し、子を
戮
(
りく
)
し、二卿を
奔
(
はし
)
らしめ、陳国を
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
弑
(
しい
)
せられた。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「……お
弑
(
しい
)
し致さねばなりません。……お弑しすることは出来ません。……恨みあるお方! 恋しいお方! ……二道煩悩……迷った妾! ……お手討ちなされて下さいまし!」
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
上述の月氏国王が謀を馬に洩らして
弑
(
しい
)
に遭ったり、フリギアや蒙古の王の理髪人が穴に秘密を洩らしたりしたについて想い起すは、アラビヤ人が
屁
(
へ
)
を埋めた話で、これもその節高木君へ報じたが
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
義龍の子、
龍興
(
たつおき
)
に至っては、その暗愚を、信長は
僥倖
(
ぎょうこう
)
とはしているが、問題にはしていない。それを討つにはまた、自分には
舅
(
しゅうと
)
にあたる道三山城守を
弑
(
しい
)
したる逆子を
誅
(
ちゅう
)
す——という人道の旗がある。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
将軍
義輝
(
よしてる
)
が
弑
(
しい
)
された。三好
長慶
(
ちょうけい
)
が殺された、松永
弾正
(
だんじょう
)
も殺された。今は下克上の世の中だ。信長が義昭を将軍に立てた。しかし間もなく追って
了
(
しま
)
った。その信長も弑されるだろう。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
されば
太宰春台
(
だざいしゅんだい
)
が『
通鑑綱目
(
つがんこうもく
)
』全篇を通じて朱子の気に
叶
(
かの
)
うた人は一人もないといったごとく、第一儒者が道徳論の振り出しと定めた『春秋』や、『左伝』も、君父を
弑
(
しい
)
したとか、兄妹密通したの
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「真実! 昨夜!
弑
(
しい
)
せられ!」
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“弑”の意味
《動詞》
弑(シイ)する
臣下が主君、雇い人が雇い主、子が親を殺す等、倫理に反した殺人をおこなうこと。主に漢籍の訓読時に用いる。
(出典:Wiktionary)
弑
漢検1級
部首:⼷
12画
“弑”を含む語句
弑逆
弑虐
弑虐人
弑虐者