平野へいや)” の例文
おとこは、その汽車きしゃのゆくえをさびしそうに見送みおくっていましたが、やがてとぼとぼと平野へいや一人ひとりであてなくあるいていったのであります。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
数丈すうじょう樹上じゅじょうから目をひらけば、甲斐かい秩父ちちぶ上毛じょうもう平野へいやかんしゅう、雲の上から見る気がして、目がくらむかもわからない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エステルイエートランドは、大きな平野へいやですが、北と南にむかって、こんもりとした森のしげっている山がのびています。
その時は日がもうよほど傾いて肥後の平野へいやを立てこめている霧靄もやが焦げて赤くなってちょうどそこに見える旧噴火口の断崖と同じような色に染まった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
曳馬野ひくまの——萬葉集まんにようしゆうなどにえてゐる土地とちで、濱松はまゝつからきたへかけての平野へいや地方ちほう——のあたらしくてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
勿論もちろんかゝる構造かうざうで、きわめて重量じゆうりようのある鐵車てつしやことだから、速力そくりよくてんおいてはあま迅速じんそくにはかぬ、平野へいやならば、一時間いちじかん平均へいきんマイル以上いじやう進行しんかうすること出來できるであらうが、勾配かうばいはげしい坂道さかみちでは
どこにも平野へいやらしいところはなく、見渡みわたすかぎりやままたやまたかいのもひくいのも、またいろいのもうすいのも、いろいろありますが、どれもみな樹木じゅもくしげったやまばかり、とがった岩山いわやまなどはただのひとつもえません。
ゆめからさめた平三へいぞうは、ぼんやりとして、そとをながめました。めずらしく、よくそられて、夕焼ゆうやけが赤々あかあかゆき平野へいやをそめていました。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なぜなら、人間は、この湖がえたゆたかな平野へいやの大きな部分ぶぶんに、ひろがっていることを忘れてはいないからです。
そして、トーケルン湖のまわりには、大きなエステルイエータ平野へいやがひろびろとひろがっています。
「しかし、わたしたちは、このやまからどこへゆくのでしょう。もううみることもできません。あちらの平野へいや見下みおろすこともできません。たいへんなことになりました。」
葉と幹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この北方ほっぽうしま真夜中まよなかに、しろゆき平野へいやで、すばらしい舞踏会ぶとうかいがひらかれたのです。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜さくや叔父おじさんが、荷物にもつって、停車場ていしゃじょうまでおくってくれました。けると、汽車きしゃは、広々ひろびろとした平野へいやなかはしっていました。車中しゃちゅうには、ねむそうなかおをしたおとこおんなっていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
助手じょしゅ小田おださんが、かがみあたらしい木箱きばこにおさめて、北国ほっこく旅立たびだったのは、なつもなかばすぎたのことで、烏帽子岳えぼしだけのいただきから、奇怪きかい姿すがたをした入道雲にゅうどうぐもが、平野へいやおろしながら、うみほうへと
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろくもは、南方なんぽうたかやまから、うごきはじめて、きたうみのほうへながれていたのであるが、途中とちゅう、ゆらゆらと平野へいやをいったとき、そこここに、百しょうのすむわらぶきやがあったり、はたけをたがやす男女だんじょ
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)