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ふりがな文庫
“
娯
(
たのし
)” の例文
美術骨董は多くの場合、
富豪
(
かねもち
)
の眼を
娯
(
たのし
)
ませる外に、財産として子や孫に残す事が出来るからである。次ぎにはそろ/\音楽を始める。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ある者は湖面に花を咲かせていたし、ある者は根となって人眼に触れぬ水底に隠れていた。魚は平和を
娯
(
たのし
)
み、鳥は波上に歓びを
謳
(
うた
)
った。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
若い武家の無条件で
娯
(
たのし
)
めるのは、幸若舞であつた。舞役者の若衆の外出の服装や姿態が、変生男子風の優美を標準とした男色の傾向を一変した。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
倹約を
宗
(
むね
)
として
一〇
家の
掟
(
おきて
)
をせしほどに、年を
畳
(
つ
)
みて富み
昌
(
さか
)
えけり。かつ
一一
軍
(
いくさ
)
を
調練
(
たなら
)
す
間
(
いとま
)
には、
一二
茶味
(
さみ
)
翫香
(
ぐわんかう
)
を
娯
(
たのし
)
まず。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
足利将軍家が亡んだので、
禄
(
ろく
)
はもう清十郎の代になってからはなかったが、身に
娯
(
たのし
)
みをしなかった拳法の一代に、財産は知らないまにできていた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
彼ら二人が始めたる俳諧は、彼らの自ら作りて自ら
娯
(
たのし
)
みしに過ぎずして、一人の弟子もなく、かつ彼らの死後
暫
(
しば
)
しは彼の遺志を継ぐべき人も世に出でざりき。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
抽斎は大名の行列を
観
(
み
)
ることを喜んだ。そして家々の
鹵簿
(
ろぼ
)
を記憶して忘れなかった。「新武鑑」を買って、その図に着色して自ら
娯
(
たのし
)
んだのも、これがためである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
第二十一条 文芸の
嗜
(
たしなみ
)
は、人の品性を高くし精神を
娯
(
たのし
)
ましめ、之を大にすれば、社会の平和を助け人生の幸福を増すものなれば、亦
是
(
こ
)
れ人間要務の一なりと知る可し。
修身要領
(新字旧仮名)
/
福沢諭吉
、
慶應義塾
(著)
両岸の岩壁は
反
(
かえっ
)
て高くなる程であるが、何等の危険も困難もなく、或は滝を賞し或は淵を眺め、行く行く壮麗な景色に眼を
娯
(
たのし
)
ませながら、河の中を右に左に徒渉して
渓三題
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
其処が『浮雲』の作者の真面目と違つてゐる処で、かれは『芸術は人を
娯
(
たのし
)
ましめざるべからず』
尾崎紅葉とその作品
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「きっと焼物でございましょう。——殿方はお
娯
(
たのし
)
みも多くてお仕合わせでございますことねえ」
伊太利亜の古陶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
今でも時々やっているが、若い時にはことに好んで腰折れを
詠
(
よ
)
んでみずから
娯
(
たのし
)
んでいた。
私の父と母
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
娘は自分の家に使っている黄銅の
湯沸
(
ゆわかし
)
や、青い錆の出た昔の鏡や、その他、
総
(
すべ
)
て古くから伝わっていた器物以外に眼を
娯
(
たのし
)
ましたような、鮮かな緑、
活々
(
いきいき
)
とした紅、冴え冴えしい青
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
今日その人はなお
矍鑠
(
かくしゃく
)
としておられるが、その人の日夜見て
娯
(
たのし
)
みとなした風景は既に亡びて存在していない。先生の名著『
讕言
(
らんげん
)
長語』の二巻は明治三十二、三年の頃に公刊せられた。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今もジャワで虎や犀を闘わす由(ラッツェル『人類史』二)、『管子』に桀王の時女楽三万人虎を市に放ってその驚駭を見て
娯
(
たのし
)
んだとあるから、支那にも古くから帝王が畜ったのだろう。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
だから乗客は
殖
(
ふ
)
える。キセル乗りをよして、
娯
(
たのし
)
みだからちゃんと全線の切符を
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
お
娯
(
たのし
)
みと云って
引
(
ひき
)
ずり出してお
遣
(
やり
)
なさい、貴方は人が
好
(
い
)
いからいけません
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
むろん彼も自分の妻子がどこにいるかは知っていた。しかし彼の気持はそういう私情を
娯
(
たのし
)
んでいる暇がなかった。一しょに喜ぶことだ。気がつくと、そこには阿賀妻の姿も見えなくなっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
冷し人の心を
寒
(
さむか
)
らしむる等実に奇々怪々として読者の心裡を
娯
(
たのし
)
ましむ此書や涙香君事情ありて予に賜う予印刷して以て発布せしむ世評尤も涙香君の奇筆を喜び之を慕いて其著書
訳述
(
やくじゅつ
)
に係る小説とを
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「
確乎
(
しつかり
)
しなはらんかいな。……今夜のお
娯
(
たのし
)
みで、心こゝにあらずや。」
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
手提蓄音器
(
ポータブル
)
を奏でて
娯
(
たのし
)
んだとしても、何の不思議があろうとね。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
すべて此樣な調子で自ら
娯
(
たのし
)
んでゐたのが、氏の面目で有つた。
淡島寒月氏
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「來さして頂戴。とても面白い
娯
(
たのし
)
みになるでせう。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼はその日も映画で
娯
(
たのし
)
んだ。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
郊外生活の地続き、猫の額ほどな
空地
(
あきち
)
に十歩の春を
娯
(
たのし
)
まうとする花いぢりも、かういふ
輩
(
てあひ
)
に
遭
(
あ
)
つては
何
(
なに
)
も
角
(
か
)
も滅茶苦茶に荒されてしまふ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
寿詞が次第に壊れて、外の要素をとり込み、段々叙事詩化して行つて、人の目や耳を
娯
(
たのし
)
ませる真意義の工夫が、自然の間に変化を急にしたであらう。
国文学の発生(第二稿)
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
梅田屋は胴巻を納めて、「盗人をする
娯
(
たのし
)
みはなあ三次、仕事をした後味をじっくり噛締めるところにあるんだぜ」
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうした牢人たちのために、木辻あたりには、いかがわしい飲食店や
白粉
(
おしろい
)
の女が急激にふえているが、
不逞
(
ふてい
)
な牢人たちは、そんなところではほんとに
娯
(
たのし
)
まない。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
病人を見て疲れると、この
髯
(
ひげ
)
の長い
翁
(
おきな
)
は、目を棚の上の盆栽に移して、
私
(
ひそ
)
かに自ら
娯
(
たのし
)
むのであった。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
飄然トシテ都下ニ入リ、
帷
(
い
)
ヲ本街ニ下シ講経ノ余マタ唯書画ヲ以テ自ラ
娯
(
たのし
)
ム。当時ノ名士
蒋塘鼎斎
(
しょうとうていさい
)
見テ
大
(
おおい
)
ニコレヲ異トス。人〻マタ
此
(
ここ
)
ヲ以テ
倍
(
ますます
)
ソノ蹟ヲ珍トス矣。都ニ居ルコト四年。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
講道館の嘉納治五郎氏は、書画を
娯
(
たのし
)
み
度
(
た
)
いが、
正真物
(
しやうしんもの
)
の書画は値段が張つて
迚
(
とて
)
も買へないからといつて、書画代用の妙案を実行してゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
(——わしが老後を
娯
(
たのし
)
んだ後で、おまえが又、一生住める
邸
(
やしき
)
だ。思いきって、金をかけて置こうよ)
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平野氏は
平常
(
へいぜい
)
から馬が好きで、アラブ種の
駿馬
(
しゅんめ
)
を三頭持っている。交通が不便な場所だし、軽馬車を一台造らせて、この馬をつけては折々のドライブを
娯
(
たのし
)
みにしていた。
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鉢の土は袂屑のような塵に
掩
(
おお
)
われているが、その青々とした色を見れば、無情な主人も折々水位遣らずにはいられない。これは目を
娯
(
たのし
)
ましめようとする Egoismus であろうか。
サフラン
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
されば守るにその人なき家の内何となく物淋しく先生独り令息
俊郎
(
としお
)
和郎
(
かずお
)
の両君と静に小鳥を飼ひて
娯
(
たのし
)
みとせられしさまいかにも文学者らしく見えて
一際
(
ひときわ
)
われをして
景仰
(
けいこう
)
の念を深からしめしなり。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
良人
(
をつと
)
は三高の語学教授で京都に住み、
細君
(
かない
)
は音楽学校のヴイオロニストで東京に居るのでは、
恰
(
まる
)
で七夕様のやうに夏休みを
娯
(
たのし
)
む他には、いい機会もあるまい。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
月は
濁池
(
だくち
)
にやどるとも汚れず、心
浄
(
きよ
)
ければ、身に
塵
(
ちり
)
なしじゃ、そして、
娯
(
たのし
)
みなきところにも、娯み得るのが、風流の徳というもの、
誹
(
そし
)
るものには、誹らせておけばよい
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中年より禅に参し、また
幸若
(
こうわか
)
の
謡
(
うたい
)
を
娯
(
たのし
)
みとなした。明治以後幸若の謡を知るものは川辺御楯、西田春耕の二人のみであったという。明治二十年春耕は『
嗜口
(
しこう
)
小史』を著して名士聞人の
嗜口
(
しこう
)
を列挙した。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どうやら今まで独り指しを
娯
(
たのし
)
んでいたらしい。
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『いや、不沙汰はお互い。……何か、折角、お
娯
(
たのし
)
みのところをお邪魔したようだが』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といふのが何よりも
娯
(
たのし
)
みなものなのだ。もしかそれ以上の娯みがあるとしたら、それは日当りのいゝ縁先で、禿げ上つた
前額
(
ひたひ
)
一面に生え残りの髪を几帳面に一本一本
列
(
なら
)
べる位のものだらう。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
放課の後毅堂は
独
(
ひとり
)
茶を煑て閑坐読書することを
娯
(
たのし
)
んだ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(水戸どのには、よいお
娯
(
たのし
)
みがあってよい。なかなかご財力はかかろうが)
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父親
(
てゝおや
)
は
毀
(
こは
)
れかけた目覚し時計を扱ふやうに
懶
(
だ
)
らけた頭に
矢鱈
(
やたら
)
に
螺旋
(
ねぢ
)
をかけてみたが、その一刹那花は酒や音楽と同じやうに神様が人間を
娯
(
たのし
)
ませるために拵へられたものだといふ事に気が
注
(
つ
)
いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
毎朝目を
娯
(
たのし
)
ませてくれた門口の紅梅を見あげながら、
袂
(
たもと
)
を
絞
(
しぼ
)
って呟く。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「案じるな、わしは、身の在るところに
娯
(
たのし
)
み得る人間じゃよ、風流の余徳というもの。——いや、風流の罪か、ははは」玄関のほうには、しきりと、訪客の声や、取次の
跫音
(
あしおと
)
が客殿との間をかよう。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
聞くだけでも耳が
娯
(
たのし
)
むように、お杉は眼をほそめて
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
娯
常用漢字
中学
部首:⼥
10画
“娯”を含む語句
娯楽
娯樂
娯楽会
娯楽場
娯楽室
娯楽機関
娯楽街
娯楽遊戯
御娯
手娯
清娯
自娯集
遊娯