しょう)” の例文
しかるにその年の九月初旬しょうが一室を借り受けたる家の主人は、朝未明あさまだきに二階下より妾を呼びて、景山かげやまさん景山さんといとあわただし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
玄機が李のしょうになって、いくばくもなく李と別れ、咸宜観に入って女道士になった顛末てんまつは、ことごとく李の口から温の耳に入っていたのである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
妻を離別するも可なり、しょうやしなうも可なり、一妾にして足らざれば二妾も可なり、二妾三妾随時随意にこれを取替え引替うるもまた可なり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しょうとしてか、情人としての御待遇があるかと世間で見ていた八の宮の姫君はこうしてにわかに兵部卿親王の夫人に定まってしまったのを見て
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
泥まぶれのきたない姿をしていたが、その容貌きりょうは目立って美しいので、主人の鄭は自分の家へ引き取ってしょうにしようと思った。
武士の賢い道は、ろくから禄の多きへつき、金を蓄え、しょうをかぞえ、遊芸三昧ざんまい、人あたりよく、綺羅きらの小袖で送るのが一番じゃという風ではござらぬか。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しょうはなて、そうすれば、うおし、波をひらいて去らん、というのを微吟びぎんして、思わず、えりにはらはらと涙が落ちる。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とうしょうさいというて、盗み食いする味は、また別じゃというほどに、人の女房とても捨てたものではない。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
地方から来る代議士が議会の開期間東京でしょうかかえるというような事は今は何人なんぴとも見て怪まないほどになった。
鏡心灯語 抄 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
匈奴の国の不文律として、前代の単于のしょうなるものは、次代の単于の妾となって、仕えることになっていた。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風流たるたこ公子。また春潮に浮かれ来る。手を握つてしょうが心かなしむ。君が疣何ぞ太甚だひややかなる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここにおいてかさらにしょうを求む。もし社会の人みな富人ならんにはその求めに応ずるものなかるべし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
良人はうちしょうを置き外に花柳の遊びに浸り今年の春離縁となりしが、ついこのごろ病死したりと聞く。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
此の園八郎もしょうのお村も斬罪に処せられ、吉田監物は半地はんちに残したはお上の慈悲でございます。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
絶縁状が相手に落ちないうちに発表され、自分が独立しないで多くの人に依頼したこと、自らしょうを夫に与えていた事、非難の点多し。これは外面的な、従属的なことである。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たとヘバ児ヲ喪ヒしょううしなフガ如ク、痴心イマダ婉惜えんせきヲ免レズ。一夜灯前旧製ヲ追憶シ、漫然コレヲ録シテ三十余首ヲ得タリ。爾後じご十数日ノ間相続イテコレヲ得ル者マタ一百余首。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
のみならず家康のしょうまんかたも彼女の生んだ頼宣よりのぶのために一時は彼に年ごとに二百両の金を合力ごうりょくしていた。最後に直之は武芸のほかにも大竜和尚だいりゅうおしょう会下えかに参じて一字不立いちじふりゅうの道を修めていた。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家名大事と思いまする夫は、しょうを置くことに心をきめまして、このことをわたくしに相談致しましたが、聞くところでは、夫はもう以前から、そうした女を他に置いてあるのだそうでございます。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
尋常の大津絵ぶしと異なり、人々民権論にきょうせる時なりければ、しょう月琴げっきんに和してこれをうたうを喜び、その演奏を望まるる事しばしばなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
自家の御堂みどうとか、かつらの院とかへ行って定まった食事はして、貴人の体面はくずさないが、そうかといって並み並みのしょうの家らしくはして見せず
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
竜池はついで三十間堀住の十人衆三村清左衛門の分家、竹川町の鳥羽屋三村清吉の姉すみをれて後妻とし、同時に山王町に別宅を構えてしょうを置いた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
武士の賢いという道は、ろくから禄の多きにつき、金をたくわえ、しょうをかぞえ、遊芸三昧、人あたりよく、綺羅きらでその日を送るのが、あれは聡明な男だと云われる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家の内外にしょうなどを飼うて、多妻の罪を犯しながら恥かしいとも思わず、その悪事を隠そうともせずに横風おうふうな顔をして居るのは、一方に西洋文明の新事業を行い
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
妻は昔にこの世を去り、爾来じらいしょうさえ蓄えずやもめ暮らしの気楽さは邸内に女の数も少ない。足手纏いのないということは、今度のような事件の場合に彼の行動を自由にさせた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お雪は相馬氏の孤児みなしごで、父はかつて地方裁判所に、明決、快断のほまれある名士であったが、かつて死刑を宣告した罪囚のむすめを、心着かず入れてしょうとして、それがために暗殺された。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしはもうこの先二度と妻を持ちしょうを蓄え奴婢ぬひを使い家畜を飼い庭には花窓には小鳥縁先えんさきには金魚を飼いなぞした装飾に富んだ生活を繰返くりかえす事は出来ないであろう。時代は変った。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平林という奴は誠に横着おうちゃくな奴で、平生罪人の内女の眉目みめき者がありますと、役柄をもはゞからずしょうにするという、現に只今でも一人ひとり囲い者にして男児を設けたということでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「実はしょうを置いています」
その様子に胸先ず安く、ついに調金の事を申し出でしに、はからざりき感嘆の体と見えしはしょう胆太きもふとさをあきれたる顔ならんとは。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ある時は支度金を取って諸侯のしょうに住み込み、故意に臥所ふしどいばりして暇になった。そしてその姿態は妖艶ようえんであった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大将のしょうのようにもなっていた木工もくの君や中将の君なども、それ相応に大将を恨めしく思っていたが、夫人は普通な精神状態になっている時で、なつかしいふうを見せて泣いていた。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一藩のかみに立って、高禄をむさぼり居った身でありながら、仇もむくわず、家にはしょうを蓄え、出でてはだだら遊び、武士とは、こうしたものかと、世間のわらい声が、その耳に入りおらぬかっ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにおいてかしょうやしなうの風を成したるものの如し。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
宗兵衛は分家して、近習小姓倉田小十郎こじゅうろうむすめみつをめとった。岡野は順承附の中臈ちゅうろうになった。実はしょうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
空手からてで美濃一国をわが物とした男だけに、最初に仕えた主人土岐政頼ときまさよりを殺し、次の主人頼芸よりなりをまた、国外へ追って、そのしょうを奪ったりなど——残忍酷薄な数々の経歴は、挙げて語ったらりもない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多年渋江氏に寄食していた山内豊覚やまのうちほうかくしょうまきは、この年七十七歳を以て、五百の介抱を受けて死んだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
第一夫人、第二夫人、それと、いわゆるしょうとよぶ婦人と。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五百の兄広瀬栄次郎がこの年四月十八日に病死して、その父のしょう牧は抽斎のもと寄寓きぐうした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しょうの腹か、妻女の子か」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)