うり)” の例文
旧字:
いわしうりは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはいりました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
うりに来る支那人にあったのです何より先に個奴こやつに問うが一番だと思いましたから明朝沢山に筆を買うから己の宿へ来て呉れと言附て置ました
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まへにもいへるごとくちゞみは手間賃てまちんろんぜざるものゆゑ、がおりたるちゞみは初市に何程なにほどうりたり、よほど手があがりたりなどいはるゝをほまれとし
どうぞなわしが貴様のうちへ来て、飴屋と話をした事だけはごく内々ない/\でいてくれ、いか、屋敷の者に……ばゞあが又かご脊負しょって、大根や菜などをうりに来た時に
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五俵、十俵と、雑穀をじえた百姓達のうりに出す米のすうは、豊作見越しの収穫まえだけに、倉庫の店先には、幾台となく、いつも売込うりこみの米は止まっていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
僕はヹネチヤが海上の一王として東洋に迄交通して居た貴族政治の昔を忍ばずに居られなかつた。絵葉書うり擬宝玉売にせだまうりとがうるさくゆき旅客りよかく附纒つきまとつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼の専門は洋画家で、風采などから考えても決して富裕な階級に属する人ではなく、彼の口ぶりでは、画をうりながら、こうして旅行をしているらしい様子です。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたくしは大正四年の十二月に、五郎作の長文の手紙がうりに出たと聞いて、大晦日おおみそか築地つきじの弘文堂へ買いに往った。手紙は罫紙けいし十二枚に細字さいじで書いたものである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
弁当べんたう、ものうりこゑひゞくと、人音ひとおとちかく、けたとおもふのに、には、なにも、ものがえない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
流石さすがにいまうりだしの、堺屋さかいやさんのおかみさんだの。江戸えど女達おんなたちかしてやりてえうれしい台詞せりふだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
世に民の窮して家屋敷をひさぎて去るをうりすえという。近頃大名のうりすえも出でたりといえり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
氷屋が彼方此方あつちこちらで大きい声を出して客を呼んで居る中へ、屋台に吊つて太鼓を叩いて菓子うりが来た辻に留つて背の高い男と、それよりも少し年の上のやうな色の黒い女房にようぼとが
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そうして時々部屋の中で立止って、脳髄の演説を初める事があるが、その演説が又、一から十まで、この教室で聞いた吾輩の受けうりだから痛快で、吾輩も時々参考のために拝聴に行く位だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見てとる主人は花主とくいを逃さずたうとううりつけてしまひまして、新聞紙へ包んだ風琴を持つて其店を出ました時は、巾着きんちやくへ納めて懐へ入れた大事の/\金貨がチヤント人手に渡つてしまつて居りました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
じっと、蕎麦屋は、顔を見ている。清麿も何気なく蕎麦うりの顔を見つめた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町へうりに行くのを、何故自分に売るのが厭だろう。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
菜の有る時は菜を抜いて持ってッたり、また茄子なす胡瓜きゅうりを切ってうりに持ってく時にゃア折々店へも行くだ、するとまア私が帰ろうと云うとあとから忰が出て来て、是は菓子の屑だから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ここに足をとどめんときょうおもいさだめつ、爽旦あさまだきかねてききしいわなというさかなうりに来たるをう、五尾十五銭。鯉もふもとなる里よりてきぬというを、一尾買いてゆうげの時までいかしおきぬ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
翌日よくじつまた正午頃しやうごゞろさとちかく、たきのあるところで、昨日きのふうまうりつた親仁おやぢかへりふた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しぬいきるかのきはにいたりて此銭を何にかせん、六百にて弁当をうり玉へといふ。
おらあ、小鳥を町へうりに行くだ。」
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人の事を云えた義理じゃないけれど、私よりか塗立って、しょろしょろ裾長すそながか何かで、びんをべったりと出して、黒い目を光らかして、おまけに腕まくりで、まるで、うりますの口上言いだわね。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しぬいきるかのきはにいたりて此銭を何にかせん、六百にて弁当をうり玉へといふ。
かの商人あきびと立寄たちより見れば、最前さいぜん焼飯やきめしうりたる農夫なりしとぞ。
かの商人あきびと立寄たちより見れば、最前さいぜん焼飯やきめしうりたる農夫なりしとぞ。