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しこう
ふりがな文庫
“
嗜好
(
しこう
)” の例文
僕はあなたがあんなものに
嗜好
(
しこう
)
を持っているなんて、一度も聞いたことがない。あなたはどうして、その七宝の花瓶を買ったんです。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは西洋人の趣味
嗜好
(
しこう
)
に投じ、横浜貿易の貿易品にそっくり
適
(
はま
)
ったのでありますから、それはまことに素晴らしい勢いとなった。
幕末維新懐古談:38 象牙彫り全盛時代のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
特に花好きだの園芸好きなどという
嗜好
(
しこう
)
はないが、どういう場所に限らず、たとえば会合の食卓などでも、ふと卓上の花の香を嗅ぐと
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
したがって著作家は立派な趣味を育成したり、高尚な
嗜好
(
しこう
)
を
涵養
(
かんよう
)
したり、通俗以上の気品を修得する事が不必要になって参ります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
絵画についての
嗜好
(
しこう
)
は次第に強烈になって、絵であればどんなものでも面白がって見るようで、ある時
陸
(
くが
)
翁の娘の六ツばかりになる児が
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
▼ もっと見る
自分一個の理性の
嗜好
(
しこう
)
を犠牲にすることもできたが、それでもなお、最高の祭壇と真実にたいする至純な熱情とを捨てなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かわらけ茶などがあり、また一定の色合を
嗜好
(
しこう
)
する俳優の名から来たものには、
芝翫茶
(
しかんちゃ
)
、
璃寛茶
(
りかんちゃ
)
、
市紅茶
(
しこうちゃ
)
、
路考茶
(
ろこうちゃ
)
、
梅幸茶
(
ばいこうちゃ
)
などがあった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
如電さんの事は墨汁師の書状によって知ったが、恐らくは郷土史の
嗜好
(
しこう
)
あるがために、踏査の労をさえ
厭
(
いと
)
わなかったのであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
医者が患者の
容態
(
ようだい
)
が
判
(
わか
)
るように、料理をする者は、相手の
嗜好
(
しこう
)
を見分け、老若男女いずれにも、その要求が
叶
(
かな
)
うようでなくてはなりません。
日本料理の基礎観念
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「
独楽唫
(
どくらくぎん
)
」と題せる歌五十余首あり。歌としては秀逸ならねど彼の性質、生活、
嗜好
(
しこう
)
などを知るには
最
(
もっとも
)
便ある歌なり。その中に
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
小初は
闇
(
やみ
)
のなかでぱっちり眼を開けているうちに、いつか自分の体を両手で
撫
(
な
)
でていた。そして
嗜好
(
しこう
)
に
偏
(
かたよ
)
る自身の肉体について考え始めた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
おそらくメンデルスゾーンの貴族的な人柄と作品が、保守的でアカデミックで、粗野なものを好まない英国人の
嗜好
(
しこう
)
に投じたものであろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
そんな殺伐なことがまだ戦国時代の
血腥
(
ちなまぐさ
)
い風の脱け切らぬ江戸ッ子の
嗜好
(
しこう
)
に投じて、遂には市川流の
荒事
(
あらごと
)
という独特な芸術をすら生んだのだ。
梵雲庵漫録
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
節子は勝手口に近い小座敷に立っていて、何となく彼女に起りつつある変化が食物の
嗜好
(
しこう
)
にまであらわれて来たことを心配顔に叔父に話した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
東洋では
花卉
(
かき
)
栽培の道は非常に古いものであって、詩人の
嗜好
(
しこう
)
とその愛好する花卉はしばしば物語や歌にしるされている。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
然
(
しか
)
らば
如何
(
いか
)
にしてその目的は定むべきやといえば、まず自己の境遇と
嗜好
(
しこう
)
と、特性即ち技能とを十分に計らねばならぬ。
現代学生立身方法
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
蕎麦
(
そば
)
もこの頃は
止
(
や
)
めました、
粥
(
かゆ
)
と
野菜
(
やさい
)
少し
許
(
ばか
)
り、
牛乳
(
ぎゅうにゅう
)
二合ほどつとめて
呑
(
の
)
みます、すべて
営養上
(
えいようじょう
)
の
嗜好
(
しこう
)
はありませんと。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
私にはもっと適した相手があったであろうし、彼にもそうであったろうと思う。私と彼とは、性的
嗜好
(
しこう
)
が
反撥
(
はんぱつ
)
し合っている点が、あまりにも多い。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……それについては彼は自分のちょび髭と秘密な蘊蓄とに
莫大
(
ばくだい
)
な自信をもっていた、ことにその妻君の
嗜好
(
しこう
)
に関しては隅の隅まで熟知していたから
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自分の
嗜好
(
しこう
)
を満足せんため国法を破って外人に地図や禁制品を贈った者に贈位を請うのと似たり張ったりの弊事だが
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
人間の料理法は永い年月の経験で今日に及んだのですから、一朝にして人間の新しい
嗜好
(
しこう
)
を促すような混食や代用食が発明されようとは思われません。
婦人指導者への抗議
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
要するに彼の
嗜好
(
しこう
)
は壮大ということにあり、彼の
瑕瑾
(
かきん
)
は過度ということにある——アミエルはこういうようなことを言っているのでありますが、私は
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ドストエフスキーも借金に追われて馬車馬の如く書きまくり、読者の
嗜好
(
しこう
)
に応じてスタヴロオギンの歩き道まで変えて行くという己れを捨てた凝り方だ。
教祖の文学:――小林秀雄論――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
いつごろそんな商売をやりだしたか知らなかったが、今でも長者のような気持でいるおひろたちの母親は、口の
嗜好
(
しこう
)
などのおごったお上品なお婆さんであった。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私の主人が聞いて、もっと何かないかね、というのでしたが、人々の
嗜好
(
しこう
)
ですから仕方がありません。私はよく牛の舌を送りました。薄く切って食べるのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
彼の
嗜好
(
しこう
)
をためすため、いろいろなものを選んできて、それを全部、古い新聞紙の上に拡げたのだった。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
これは自分の趣味
嗜好
(
しこう
)
が時代に遅れたという事実を証明する以外になんらの意味もない
些事
(
さじ
)
ではあろうが、この一些事はやはりちょっと自分にものを考えさせる。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
勿論
(
もちろん
)
例の主義という手製料理は
大嫌
(
だいきらい
)
ですが、さりとて肉とか
薯
(
いも
)
とかいう
嗜好
(
しこう
)
にも従うことが出来ません
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
人だけは
嗜好
(
しこう
)
が転じてこれを食わなくなっても、御先祖には前通りのものを進めていたわけで、すなわち日本の晴の食事にも、やはり時代の変化があったのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そしていつかそれに気がついてみると、栄養や安静が彼に浸潤した、美食に対する
嗜好
(
しこう
)
や安逸や
怯懦
(
きょうだ
)
は、彼から生きていこうとする意志をだんだんに持ち去っていた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
この
故
(
ゆえ
)
にひとは瞑想を欲するのであり、その限りすべての人間はミスティシズムに対する
嗜好
(
しこう
)
をもっている。けれども瞑想は本来我々の意欲に依存するものではない。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
白釉
(
しろぐすり
)
の方は
膚
(
はだ
)
が柔かで色温く、誰もの
嗜好
(
しこう
)
に投じると見える。黒ではすまされず、白を追う心がここまで来たのだといえる。今ではそれが薩摩焼のほとんど凡てである。
苗代川の黒物
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
未組織のものへ、無際限なものへ、永遠のものへ、虚無へむかっての
嗜好
(
しこう
)
——かれの使命とは正反対の、しかもそれ故にこそ誘惑的な、禁制の嗜好から愛するのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
彼れ居常他の
嗜好
(
しこう
)
なし、酒を飲まず、
烟
(
たばこ
)
を吹かず、その烟を吹かざるは、彼が断管吟の詩に徴して知るべし。
書画
(
しょが
)
、文房、
骨董
(
こっとう
)
、武器、一として彼の愛を経るものなし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「菓子の鑑別にかけちゃ、波田君は、ブルジョア的の
嗜好
(
しこう
)
を持ってるからなあ」藤原は笑った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
時の
嗜好
(
しこう
)
に投じてか、ひところは流行を極めたものだったが、この奈良茶や五匁の
上所
(
じょうどころ
)
へ蒲鉾を納めて名を売ったのが、伊予宇和島から出て来た初代の磯屋平兵衛であった。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
女をつくるということは公然の秘密であった。宇治も女に対する
嗜好
(
しこう
)
がないではなかったが、また道徳的である訳でもなかったが、女をつくろうという気にはなれなかった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
... 人ト談論スルニ経史ニ非ザレバ言ハズ。最忠孝節義ノ事ヲ喜ブ。
娓々
(
びび
)
トシテ聴クベシ。」と。また曰く、「平素他ノ
嗜好
(
しこう
)
ナシ。終日盃ヲ手ニシ、詩集ヲ
繙
(
ひもと
)
ク。
尚古人
(
しょうこじん
)
ヲ友トス。 ...
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
特別の習慣にて養いたる
嗜好
(
しこう
)
は或る場合に有害なれども、自然に生じたる嗜好は自ら成分の不足を感ずるなり。かかる時はその好む物を害とならざる範囲内において食すべし。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
……もっともこれは曲馬団なるものの性質上止むを得ないとしても、彼等が註文する
喰物
(
くいもの
)
や酒の種類があまり上等でない。
否
(
いな
)
、
寧
(
むし
)
ろ下層社会の
嗜好
(
しこう
)
に属するものが大部分である。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この世の中を渡るに
嗜好
(
しこう
)
はなるたけ人々により
別
(
べつ
)
なるが
面白
(
おもしろ
)
けれども、善悪の
標準
(
ひょうじゅん
)
は一様でなくてはならぬと。この一様なる善悪の標準をもって好き嫌いを測るべきものでない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
少年が驚いたのは、またしてもここに、同じ
嗜好
(
しこう
)
の持主がゐたといふ事実の方である。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
それらのものが
凡
(
すべ
)
てその
根柢
(
こんてい
)
に於て男性の
嗜好
(
しこう
)
を満足するように作られているが故に、それを産出するのもまたおのずから男性の手によってなされるのを適当とするだけのことだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼等はそういう縄張を設け、自己の
嗜好
(
しこう
)
を神聖なる規則の如きものに迄祭上げ、他の世界には通用しそうもない其の特殊な狭い約束の下に於てのみ、優越を誇っているように見える。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この人達は、科学が普及した今日の時代において教育され、そして科学隆興の中に刺戟をうけ、科学というものに大きな興味をもっている。だから科学小説がその
嗜好
(
しこう
)
に投ずるのである。
『十八時の音楽浴』の作者の言葉
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
楽しみや
嗜好
(
しこう
)
もここまで下落しては行つまりで人の前へ持出す事も出来ない。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
ゆえに
年々歳々
(
ねんねんさいさい
)
日本から
断
(
た
)
えず輸入する必要があるので、この貿易は向こうの人の花の
嗜好
(
しこう
)
が変わらぬ以上いつまでも続くわけで、日本はまことにまたと得がたい良い得意先を持ったものだ。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
この二人に高木君が投じて、三人始終一緒だった。これには煙草という共通の
嗜好
(
しこう
)
があった。私はこの三人にも好く、又信者の安部君と吉田君にも親しかった。級長の立花君は
何方
(
どっち
)
にもつかない。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
時代の
嗜好
(
しこう
)
に合した意外の成功に、次から次へと手を拡げて、当りつづけ、新しく戦争成金の続出のために、むかしからの資産家のように見なされてしまうように、幸運は何日も家の
棟
(
むね
)
の上にいた。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「僕は屈辱を受けることにある
嗜好
(
しこう
)
を覚えた」と。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
“嗜好”の意味
《名詞・サ変動詞》
嗜好(しこう)
たしなみ、好むこと。
(出典:Wiktionary)
嗜
漢検1級
部首:⼝
13画
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
“嗜好”で始まる語句
嗜好品
嗜好物
嗜好者
嗜好飮料