元來もとより)” の例文
新字:元来
呼寄よびよせて相談しけるに此お粂は元來もとより生質うまれだてよからぬ者なれば唯手前勝手の事のみ言て一かう世話せわもなさゞれば母は大いに立腹りつぷくなし親の難儀なんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
元來もとより人の住處すまひとして造られたりしところなれば、こゝにてはわれらの力に餘りつゝかしこにてはわれらが爲すをうること多し 五五—五七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
げませうの約束やくそくでよこしたのなれども、元來もとよりくれられぬは横着わうちやくならで、うでもことのならぬ活地いくぢゆゑれはおもつてわたしわたしくちらすだけに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
申立よとありしに勘兵衞是は南無三と思ひしがかくせるだけ隱さんと私し事與市とひたるおぼえ之なし元來もとより勘兵衞と申候とちんずるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
元來もとより一腹一對の中に育ちて他人交ぜずの穩かなる家の内なれば、さして此兒を陰氣ものに仕立あげる種は無けれども、性來をとなしき上に我が言ふ事の用ひられねば兎角に物のおもしろからず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つめ聞居きゝゐたり斯くとも知らず元來もとよりお菊はおろかなれば小袖金子を見てたちま心迷こゝろまよひ何の思慮しりよもなく承知をぞなしたりける又長助はとくと樣子を聞濟きゝすまし早々又七に右の事故ことがら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
元來もとよりぷくつゐなかそだちて他人たにんぜずのおだやかなるいへうちなれば、さして此兒このこ陰氣いんきものに仕立したてあげるたねけれども、性來せいらいをとなしきうへこともちひられねば兎角とかくもののおもしろからず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもみちは一すぢなれと夏引なつびきの手引てびきのいとみだれぐるしきはこひなるかや優子ゆうこ元來もとよりさいはじけならず柔和をとなしけれど悧發りはつにてもの道理ことはりあきらかに分別わきまへながららきはれぬむねくもにうつ/\として
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
らすべしとのたまひしかど元來もとよりおとせしは粗忽そこつなりかれしも道理どうり破損そこねしとてうらみもあらずましてやかはりをとののぞみもなしれは亡母なきはゝ紀念かたみのなれば他人ひとたてまつるべきものならずとてひろあつめてふところにせしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せておまへさまは何故なぜそのやうに御心おこゝろよわいことおほせられるぞ八重やへ元來もとより愚鈍ぐどんなり相談はなしてからが甲斐かひなしとおぼしめしてかれぬ御使おつかひも一しんは一しん先方かなたさまどのやう御情おなさけしらずでらうともつらぬかぬといふことあるやうなしなにともしておのぞ屹度きつとかなへさせますものを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)