作物さくぶつ)” の例文
つまりその作物さくぶつ背景はいけいになつてゐるものをのみこんで、しんうたなり俳句はいくなりをあぢはるといふことが、どうしても必要ひつようなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
僕は日本誌壇の近状を簡短てみじかに告げて、氏の作物さくぶつを読む者のすくなからぬ事を述べ、最近に森鴎外氏が氏の小説を紹介せられた事などを話した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その人の作物さくぶつに接し度いのなら、印刷された書物を読んだ方がよかりさうなものだが、さういふ人達に限つて余り書物など読まうとしない。
その内で自分の作物さくぶつを読んでくれる人は何人あるか知らないが、その何人かの大部分はおそらく文壇の裏通りも露路ろじのぞいた経験はあるまい。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
エヽ講談の方の読物は、多く記録、其の古書とう、多少よりどころのあるものでござりますが、浄瑠璃や落語人情噺に至っては、作物さくぶつが多いようでござります。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は先生のせんの奥さんの若い生活のある一部のさまを拝借したことを白状する前に、あの作物さくぶつがいかに先生夫婦の心をきずつけたかといふことを思つて見た。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その偽蜀に仕えていたので、杜光庭の評判はあまり好くないようですが、単に作物さくぶつとして見る時は、この『録異記』などは五代ちゅうでも屈指の作として知られています。
それをやるには誘惑を試みなければなりません、剽窃ひょうせつをも試みなければなりません。近代の芸術はそこで堕落が始まりました。かれらは作物さくぶつを模倣し、盗用することは平気です。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼の読者は、彼の小説につき纒っていた一種異様の鬼気を記憶するであろう。彼の作物さくぶつが常に、並々ならぬ猜疑心、秘密癖、残虐性を以て満たされていたことを記憶するであろう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なるほどその後の天平時代になってはこの点に関しよほど確実なる証拠も出るそうだが、それは天平以前の作物さくぶつにして誇るものは、我祖先の作物でないということを含むのではあるまいか。
民族優勢説の危険 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私の作物さくぶつには生んだ親である自分にもまさつた愛を掛けて呉れる人達がすくなくも幾人かはある。私の分身の子には厳しい父親だけよりない、さうであるからなどヽはづかしい気もありながら思ふのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
見て英国好えいこくずきの人なれば甚だ嬉しがりをり候文芸に型や主義は要らず縦横に書きまくるがしと考ふる小生は貴兄の作物さくぶつが鳥の歌ふ如く自然に流れでるのを羨ましく思をり候今後種々の方面へ筆を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此頃このごろ軟文学なんぶんがく好著こうちよふ者は世間せけんに地をはらつて無かつた、(書生気質しよせいかたぎの有つた外に)其処そこ山田やまだ清新せいしんなる作物さくぶつ金港堂きんこうどう高尚こうせう製本せいほんで出たのだから、読書社会どくしよしやくわいふるいたらうとふものです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すべて女といふものは、実世間の上にも、作物さくぶつの上にも、自分達を買被かひかぶつてゐるとか、見当違ひをしてゐるとかする人達を好くものなのだ。
もしあんなものと同等なら創作をしたって、やっぱり同等の創作しか出来ない訳だ。同等でなければこそ、立派な人格を発揮する作物さくぶつも出来る。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の作物さくぶつを読んだ一外国人が自分にむかつて印度へ旅行した事があるだらうと問ふから、いなと云つたら、其れは不思議だ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あなたがたわかこゝろには、かういふうた興味きようみはわからないかもれませんが、日本につぽん文學ぶんがくには、かういつたしづかなかすかなあぢはひが、よい作物さくぶつにはずっととほつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
わたしは従来自分の作物さくぶつの上演ということに就いては余りに敏感でない方である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いや、それは酷だ、君はまだあの作物さくぶつを通読していないか、そうでなければ読んでいながら理解するだけの頭がないのか、そうでなければ相当にわかっていながらわざとうるものだ」
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は相手の意外な言葉に、顔の筋一つ動かさないで、そればかりか、はからずも、彼の昔の作物さくぶつの愛読者を見出した、不思議な喜びをさえ感じながら、懐しく言葉を続けるのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けれどもただ念力だけでは作物さくぶつのできばえを左右する訳にはどうしたって行きっこない、いくらいものをと思っても
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仏蘭西の作家モリエエルは、自分の作物さくぶつが出来上ると、先づ婆さんの女中に読み聞かせてみて、婆さんの解らないところは幾度か書き直したといふ事だ。
其れで会費を納めぬ会員の方が多数であるけれども催促がましい事を無い。そうして会費を納める人も納めぬ人も分け隔て無く其作物さくぶつを批判し添削して遣つて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ほんとうに當人とうにん作物さくぶつか、判斷はんだんのつかぬところがあります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「まだ卒業したばかりだから、そう急に有名にはなれないさ。そのうち立派な作物さくぶつを出して、おおいに本領を発揮する時に天下は我々のものとなるんだよ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
画家ゑかきだの、詩人だのといふものは神来インスピレーシヨンといふものを持つてゐる。それを作物さくぶつの製作に使はうが、借金の言ひ訳に用ゐようが、つまりは勝手である。)
ある人は自分の作物さくぶつに東洋の思想と共通の点があると評したが君達は何と思ふか」と問はれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その言葉によると、自分の雑誌では今度著名の作家達からそれ/″\自信のある作物さくぶつを貰ひたいと思つて、手始めに女史のところに頼みに来たわけなのだ。
ぜん申した通り作家(すなわち作物さくぶつ)を取り崩してかからんと不都合が生ずるごとく、作家(すなわち作物)を本位として動かすべからざるものとすると
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
学者や芸術家といふてあひには、自分の研究や作物さくぶつに熱中し出すと、つい自分をも、世間をも忘れてしまふやうな人がよくある。して晩飯や借金の事などは。
著者の名前も作物さくぶつの名前も、一度は新聞の広告で見たようでもあり、また全く新奇のようでもあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしそれは作者が自然天然しぜんてんねんに書いたものを、他の人が見てそれに philosophical の解釈を与えたときに、その作物さくぶつの中からつかみ出されるもので
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
紐育ニユーヨーク書店ほんやでふだん宗教物ばかり出版してゐる店が、欧羅巴ヨーロツパのいろんな国から、その代表的作家の代表的作物さくぶつを選んで何々叢書といつたやうな小説集を出版しようともくろんだものだ。
もっとも不愉快なる方法によって、健全なる文芸の発達を計るとの漠然たる美名の下に、行政上に都合よき作物さくぶつのみを奨励して、その他を圧迫するは見やすき道理である。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さういふ人達がタゴオルの親友であるのは夢更ゆめさら疑ふのでは無い。だが、実をいふと、そんなに詩人と懇意なのだつたら、もつと早くタゴオルの人物と作物さくぶつとを紹介して貰ひたかつたのだ。
しかも自家に固有なる作物さくぶつと評論と見識とのもたらした価値によって、国家を代表するのではない。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婦人記者は美しい声で、この文人がボストンに来た用向きから、その最近の作物さくぶつ生活方くらしかた迄こまめにたゞした。リレエは丁寧に一々それに返辞をした。すると、最後に婦人記者は訊いた。
著者ちよしや名前なまへ作物さくぶつ名前なまへも、一新聞しんぶん廣告くわうこくやうでもあり、またまつた新奇しんきやうでもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
京都大学の新村しんむら教授は日本画家の作物さくぶつけなして、画家ゑかきはどうしても本を読まなければ駄目だと言つたさうだ。画家ゑかきに本を読めといふのは大学教授にひげれといふのと同じやうに良い事には相違ない。
その主義にかなう局部(作物さくぶつの)を排列して、この主義の実例とするが適当だろうと思います。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は自己を代表すべき作物さくぶつを転地先よりもたらし帰る代りに、より偉大なる人格論をふところにして、これをわが友中野君にいたし、中野君とその細君の好意にむくいんとするのである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
著者の心情を容赦なく学術上の作物さくぶつに冠してその序中に詳叙するは妥当を欠くに似たり。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
現代の作物さくぶつではないが沙翁さおうのオセロなどはその一例であります。事件の発展や、性格の描写は真を得ておりましょう、私も二三度講じた事があるから、その辺はよく心得ている。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
作物さくぶつの現状と文士の窮状とは既に上説の如くであって、ここに保護のために使用すべき金が若干でもあるとすれば、それを分配すべき比較的無難ぶなんな方法はただ一つあるだけである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(ある意味から云えば、今でも感服している。ここに余のいわゆるある意味を説明する事のできないのは遺憾いかんであるが、作物さくぶつの批評をおもにして書いたものでないからやむをえない。)
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてそれがたっとい文芸上の作物さくぶつを読んだあとの気分と同じものだという事に気がついた。有楽座や帝劇へ行って得意になっていた自分の過去の影法師が何となく浅ましく感ぜられた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはあなた方を奨励するためにこういうことを言っているのである。それからまた日本人は雑誌などに出るちょっとした作物さくぶつを見て、西洋のものと殆ど比較にならぬというが、それは嘘です。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして私の作物さくぶつをまためてくれた。けれども私の心はむしろそういう話題を避けたがっていた。三度目に来た時、女は何かに感激したものと見えて、たもとから手帛ハンケチを出して、しきりに涙をぬぐった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから話と云ったところで作物さくぶつの批評などではありません。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)