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伏目
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ふしめ
ふりがな文庫
“
伏目
(
ふしめ
)” の例文
流眄、すなわち流し目とは、
瞳
(
ひとみ
)
の運動によって、
媚
(
こび
)
を異性にむかって流し
遣
(
や
)
ることである。その様態化としては、横目、
上目
(
うわめ
)
、
伏目
(
ふしめ
)
がある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
「御縁談ですか。それとも大体にお身の上の
吉凶
(
きっきょう
)
を見ましょうか。」とわざとらしく笑顔をつくる。君江は
伏目
(
ふしめ
)
になって
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし
伏目
(
ふしめ
)
勝ちな牧野の妻が、
静
(
しずか
)
に述べ始めた言葉を聞くと、彼女の予想は根本から、間違っていた事が明かになった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「それはどういうことだったのですか」と、ジョヴァンニは教授の眼を避けるように、
伏目
(
ふしめ
)
がちに訊いた。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
件
(
くだん
)
の武士は縁台に腰を下ろしていたが、頭にいただいた
竹皮笠
(
たけかわがさ
)
は取らず、細く
胴金
(
どうがね
)
を入れた大刀を取って
傍
(
わき
)
に置き、
伏目
(
ふしめ
)
になった
面
(
かお
)
を笠の下からのぞくと、沈みきった色。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
といったが小さな声、男の腕に肩をもたせて
伏目
(
ふしめ
)
に胸に
差俯向
(
さしうつむ
)
く、お鶴はこの時立っていた。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「イイえどう致しまして」とお政は言ったぎり、
伏目
(
ふしめ
)
になって
助
(
たすく
)
の頭を
撫
(
な
)
でている。母はちょっと助を見たが、お世辞にも孫の気嫌を取ってみる母では無さそうで、実はそうで無い。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
田沼先生は
椅子
(
いす
)
に深く身をうずめ、両手を前にくみ、
伏目
(
ふしめ
)
がちになって話しだした。言葉の調子には、すこしも興奮したところがなかった。むしろ重々しい、考えぶかい調子だった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「ええ、わたしはこの通り
臆病
(
おくびょう
)
な小娘ですのよ」——すなほに
伏目
(
ふしめ
)
を作りながら、千恵は思ふぞんぶんHさんに
凱歌
(
がいか
)
を奏させてあげたのです。それがせめてものお礼ごころなのでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
始終
(
しよつちう
)
手拭
(
てぬぐひ
)
を
以
(
もつ
)
て
捲
(
ま
)
いた
右手
(
めて
)
の
肘
(
ひぢ
)
を
抱
(
かゝ
)
へるやうにして
伏目
(
ふしめ
)
に
歩
(
ある
)
いた。
道
(
みち
)
に
添
(
そ
)
うて
狹
(
せま
)
い
堀
(
ほり
)
の
淺
(
あさ
)
い
水
(
みづ
)
に
彼
(
かれ
)
の
目
(
め
)
が
放
(
はな
)
たれた。がら/\に
荒
(
すさ
)
んだ
狼把草
(
たうこぎ
)
やゑぐがぽつ/\と
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
玄関の
板間
(
いたのま
)
に晨は
伏目
(
ふしめ
)
に首を振りながら
微笑
(
ほゝゑ
)
んで立つて居た。榮子は青味の多い白眼
勝
(
がち
)
の眼で母をじろと見て、口を
曲
(
ゆが
)
めた儘障子に身を隠した。格別大きくなつて居るやうではなかつた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
映画であったら、まず予告篇とでもいったところか、見え透いていますよ、いかに
伏目
(
ふしめ
)
になって謙譲の美徳とやらを
装
(
よそお
)
って見せても、
田舎
(
いなか
)
っぺいの
図々
(
ずうずう
)
しさ、何を言い出すのかと思ったら
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
杜氏は、
恭々
(
うや/\
)
しく頭を下げて、
伏目
(
ふしめ
)
勝ちに主人の話をきいた。
砂糖泥棒
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
伏目
(
ふしめ
)
にたたすあえかさに
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
伏目
(
ふしめ
)
になって、いろいろの
下駄
(
げた
)
や靴の先が並んだ乗客の足元を見ているものもある。何万円とか書いた福引の広告ももう
一向
(
いっこう
)
に人の視線を引かぬらしい。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
伏目
(
ふしめ
)
がふつくりとする……
而
(
そ
)
して、
緋無地
(
ひむぢ
)
の
背負上
(
しよひあ
)
げを
通
(
とほ
)
して、めりんすの
打合
(
うちあ
)
はせの
帶
(
おび
)
の
間
(
あひだ
)
に、これは
又
(
また
)
よそゆきな、
紫鹽瀬
(
むらさきしほぜ
)
の
紙入
(
かみいれ
)
の
中
(
なか
)
から、
横
(
よこ
)
に
振
(
ふ
)
つて、
出
(
だ
)
して、
翁
(
おきな
)
に
與
(
あた
)
へた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
みんな神妙に、
伏目
(
ふしめ
)
になって、廊下の壁に寄りかかり、立ったりしゃがんだりして、時々、ひそひそ話を交わしたりしている。暗い気がした。ここは、敗残者の来るところではないかと思った。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蒼白い
面
(
かお
)
の色、例の切れの長い眼の
縁
(
ふち
)
には、十津川で受けた煙硝のあとがこころもち残っているけれども、
伏目
(
ふしめ
)
になっている時には、それが盲目とは思われないほどに昔の
面影
(
おもかげ
)
を伝えていました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小野
(
をの
)
や、——
伏目
(
ふしめ
)
に
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
向うも、
伏目
(
ふしめ
)
に
俯向
(
うつむ
)
いたと思うと、リンリンと
貴下
(
あなた
)
、高く響いたのは電話の
報知
(
しらせ
)
じゃ。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かえって法廷を進退する
公事
(
くじ
)
訴訟人の
風采
(
ふうさい
)
、
俤
(
おもかげ
)
、
伏目
(
ふしめ
)
に我を仰ぎ見る囚人の顔、弁護士の額、原告の鼻、検事の
髯
(
ひげ
)
、
押丁
(
おうてい
)
等の服装、傍聴席の光線の
工合
(
ぐあい
)
などが、目を遮り、胸を
蔽
(
おお
)
うて
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とフト
思出
(
おもひだ
)
したやうに
花籠
(
はなかご
)
を、ト
伏目
(
ふしめ
)
で
見
(
み
)
た、
頬
(
ほゝ
)
に
菖蒲
(
あやめ
)
が
影
(
かげ
)
さすばかり。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夫人はこれを聞くうちに、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、両方引合せた
袖口
(
そでくち
)
の、
襦袢
(
じゅばん
)
の花に
見惚
(
みと
)
れるがごとく、打傾いて
伏目
(
ふしめ
)
でいた。しばらくして、さも身に染みたように、肩を震わすと、
後毛
(
おくれげ
)
がまたはらはら。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女房は何となく、
手拭
(
てぬぐい
)
の
中
(
うち
)
に
伏目
(
ふしめ
)
になって、声の調子も沈みながら
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
横に
掠
(
かす
)
めて
後毛
(
おくれげ
)
をさらりと掛けつつ、ものうげに払いもせず……
切
(
きれ
)
の長い、
睫
(
まつげ
)
の濃いのを
伏目
(
ふしめ
)
になって、上気して乾くらしい唇に、吹矢の筒を、ちょいと含んで、片手で持添えた雪のような
肱
(
ひじ
)
を
搦
(
から
)
む
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
持
(
も
)
つた
手巾
(
ハンケチ
)
の
裏透
(
うらす
)
くばかり、
唇
(
くちびる
)
を
輕
(
かる
)
く
壓
(
おさ
)
へて
伏目
(
ふしめ
)
に
成
(
な
)
つたが
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
伏
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“伏目”で始まる語句
伏目勝
伏目遣