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些
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ちっ
ふりがな文庫
“
些
(
ちっ
)” の例文
「ほんとうに、この汽車は何て長いんでしょうね。わたし
些
(
ちっ
)
とも眠れないのよ。せめて新聞でも買っておいて下さればよかったのに」
ペルゴレーズ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
この
久能谷
(
くのや
)
の方は、
些
(
ちっ
)
と
足場
(
あしば
)
が遠くなりますから、すべて、
見得装飾
(
みえかざり
)
を向うへ持って参って、
小松橋
(
こまつばし
)
が本宅のようになっております。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
亥「
私
(
わっち
)
の
親父
(
おやじ
)
ですか、
些
(
ちっ
)
とも知らねえ……お芽出たい処へ来て、こんな事を云っては
何
(
なん
)
ですが、親父は此の二月お
芽出度
(
めでたく
)
なりました」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
というのは、この人が芸事に凝り始めたのです。芸事も色々ありますが、清元の浄瑠璃に凝り固まってしまったのだから
些
(
ちっ
)
と困ります。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
馬鹿は最初から承知しているんだ。向うはホンの
些
(
ちっ
)
とばかりの金を出してくれただけだ。それに対してこちらは、お金で買えない天才を
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
「あなただって
些
(
ちっ
)
とも過去に煩らわされているようには見えませんよ。やっぱり
己
(
おれ
)
の世界はこれからだという所があるようですね」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そうかい、そう思っていれば間違はない。他人のなかに揉まれて、
些
(
ちっ
)
とは直ったかと思っていれば、段々
不可
(
いけな
)
くなるばかりだ」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「あなたの顔こそ面白い。何んですね、何うしたんです、あなたの
片方
(
かたっぽ
)
の眼は
些
(
ちっ
)
とも動かないじゃありませんか。硝子ですか」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「お前、何遍言ってきかせてもそんな腕の鈍いことでは駄目だよ。ボーイの腕が鈍い為めに店の収益は
些
(
ちっ
)
ともあがらねえ。」
女給
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
「オイ好男子、そう苦虫を
喰潰
(
くいつぶ
)
していずと、
些
(
ちっ
)
と
此方
(
こっち
)
を向いてのろけ
給
(
たま
)
え。コレサ丹治君。これはしたり、御返答が無い」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
楠緒さんは
些
(
ちっ
)
とも顔を
赭
(
あか
)
らめず、不愉快な表情も見せず、先生のお言葉をただそのままにうけとられたらしかったと、
懐
(
なつか
)
しいお話しがありました。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「それに阿父さんはあの児を可愛がっておいでだったので、肩車に乗せるのが
些
(
ちっ
)
とも苦にならなかったのだよ、些とも。ああ阿父さんのお帰りだ!」
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
可笑しくなくったって
些
(
ちっ
)
たあ笑わなくちゃ可かん。はは。(間)しかし何だね。君は自分で飽きっぽい男だと言ってるが、案外そうでもないようだね。
一利己主義者と友人との対話
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
あたい、おじさまに釣られてみんな言って了ったけど、まだ、おじさまは
彼
(
あ
)
の人のことは
些
(
ちっ
)
とも話さないわね、一たい、どういうお話をしていらっしったの。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「君にも解らないじゃ、仕様が無いね。で、一体君は、そうしていて
些
(
ちっ
)
とも
怖
(
こわ
)
いと思うことはないかね?」
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
斯う云う
六
(
むず
)
ヶしい事件を引受けねば
昇等
(
しょうとう
)
は出来ないぜ(大鞆)
夫
(
そ
)
りゃ
分
(
わか
)
ッて居る
盤根錯節
(
ばんこんさくせつ
)
を
切
(
きら
)
んければ以て利器を知る無しだから
六
(
むず
)
かしいは
些
(
ちっ
)
とも
厭
(
いと
)
ヤせんサ
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「そんな事は御座いませんよ。一件でも非人でも、そんな気は
些
(
ちっ
)
ともありませんから、その方は
請合
(
うけあい
)
ます」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
此辺の田舎でも、
些
(
ちっ
)
とまとまった買物を頼めば、売主は頼まれた人に、
受取
(
うけとり
)
は
幾何金
(
いくら
)
と書きましょうか、ときく。コムミッションの
天引
(
てんびき
)
は
殆
(
ほとんど
)
不文律になって居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「でも、あなたは
些
(
ちっ
)
とも嬉しそうじゃありませんよ」青年が意味ありげに云った。「それ所かひどく屈託そうに見えますよ。あなたお酒でごまかそうとして
在
(
いら
)
っしゃるのでしょう」
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今だって
些
(
ちっ
)
ともこうしていたくはないけれど、こう
草臥
(
くたびれ
)
ては
退
(
の
)
くにも
退
(
の
)
かれぬ。少し休息したらまた
旧処
(
もと
)
へ戻ろう。幸いと風を
後
(
うしろ
)
にしているから、臭気は
前方
(
むこう
)
へ持って行こうというもの。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
私は
突然
(
だしぬけ
)
に好い夢を破られた失望の感と共に、少しでも勘定が不足になるのが気になって、そうしていながらも、
些
(
ちっ
)
とも面白くなかった。私にはまだ自分で待合で勘定を借りた経験はなかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
R区は、いつもと、
些
(
ちっ
)
とも変らぬ
雑沓
(
ざっとう
)
だった。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昼席には定連が多いので、
些
(
ちっ
)
とつゞけて通っていると、自然と懇意の人が殖えて来ます。その懇意のなかに一人のお武家がありました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
婆「そうさ、此の先の山を
些
(
ちっ
)
と登ると、小滝の落ちてる処があるだ、
其処
(
そこ
)
の
蘆
(
あし
)
ッ株の中へ棄てられていたのだ、背中の疵が証拠だアシ」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
媛神
私
(
わたし
)
は
些
(
ちっ
)
とも頼みはしません。こころざしは受けますが、
三宝
(
さんぽう
)
にのったものは、あとで、食べるのは、あなた
方
(
がた
)
ではありませんか。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そいつぁ
些
(
ちっ
)
と早いな。怪しいもんだぜ」などと、鶴さんは節の
暢々
(
のびのび
)
した白い手をのばして、
莨盆
(
たばこぼん
)
を引寄せながら、お島の顔を見あげた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
代助は、それで結構だ、
確
(
しっ
)
かり
遣
(
や
)
りたまえと奨励した。すると寺尾は、いや
些
(
ちっ
)
とも結構じゃない。どうかして、真面目になりたいと思っている。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
森川さんは
些
(
ちっ
)
とも笑わない。顔が突張って笑えないんだろう。何かお父さんと
談話
(
はなし
)
をしてぷりぷりして帰って行った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
無礼者奴
(
ぶれいものめ
)
がズカズカ部屋へ入って来た、
而
(
そう
)
して雪江さんの笑いが止らないで、
些
(
ちっ
)
とも要領を得ない癖に、訳も分らずに、一緒になってゲラゲラ笑う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「着物をきてよろしい。貴方はえらい神経家ですね。だが保証します、何処も何ともない。
些
(
ちっ
)
とも悪いところはない……どうだね、これで満足しましたか」
誤診
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「娘の髪が余りキチンとしていますぜ。
些
(
ちっ
)
とも乱れていませんが、能く蘆の間で
引懸
(
ひっかか
)
らなかッたもので」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
あの人が僕達を嫌って、僕達と一緒に愉快に遊ばない結果はね、僕が考えるところでは、
些
(
ちっ
)
ともあの人の不利益にはならない快適な時間を失ったことになると云うのですよ。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「
些
(
ちっ
)
とも、ご存じがないのよ、お夕方っていうのは、誰でもだまっていたい時間なのよ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
新「私の心持はお前さん
些
(
ちっ
)
とも分らぬのだね、お園どん、本当に私は間が悪いけれどもね、お前さんに私は本当に惚れて居ますよ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
老人の歿後、わたしは滅多にこの辺へ足を向けたことがないので、こゝらの土地がいつの間にどう変ったのか
些
(
ちっ
)
ともわからない。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
些
(
ちっ
)
とでも涼しい心持に成りたくッて、其処等の木の葉の青いのを
熟
(
じっ
)
と視ていて、その目で海を見ると、
漸
(
やっ
)
と何うやら水らしい色に成ります。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
些
(
ちっ
)
とも
卑猥
(
ひわい
)
な心持を起させずに、ただ
精緻
(
せいち
)
な観察其物として、他をぐいぐい引き付けて行く処などは、
何
(
ど
)
うしても
旨
(
うま
)
いと云わなければなりません。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「フム学問々々とお言いだけれども、立身出世すればこそ学問だ。
居所
(
いど
)
立所
(
たちど
)
に
迷惑
(
まごつ
)
くようじゃア、
些
(
ちっ
)
とばかし
書物
(
ほん
)
が読めたッてねっから
難有味
(
ありがたみ
)
がない」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
僕はピックウィック・ペーパーズ見たいなものを書きたいと以前から思っているが、それには書斎にばかり引っ込んでいちゃ駄目だ。世間が
些
(
ちっ
)
とも分らないからね。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「ええ。
些
(
ちっ
)
とばかりの地面や木なんぞ
貰
(
もら
)
ったって、何になるもんですか。水島の物にだって目をくれてやしませんよ」お島は
跣足
(
はだし
)
で、井戸から
如露
(
じょろ
)
に水を汲込みながら言った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あなた方、前以てお断りして置きますが、あれで色気と云ったら
些
(
ちっ
)
ともありません。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
些
(
ちっ
)
ともそんな気振りを見せない。
誰?
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
些
(
ちっ
)
とも、知らなかったでしょう。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と
然
(
さ
)
り
気
(
げ
)
なく答えはいたしまするものゝ、その慌てゝ居ります様子は直ぐ知れます、そわ/\と致して
些
(
ちっ
)
とも
落著
(
おちつ
)
いては居ません。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「土地の繁昌は結構だが、銀山の鉱夫などが大勢
入込
(
いりこ
)
んで来たので、怪しげな料理屋などが
追々
(
おいおい
)
殖えて来るのは
些
(
ちっ
)
と困る。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
雪の上じゃ、
些
(
ちっ
)
とも怪我はありませんけれども、あなた、礼坊は、二階の欄干をかけて、もんどりを打って落ちたに違わぬ。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それでもKの
身体
(
からだ
)
は
些
(
ちっ
)
とも動きません。私はすぐ起き上って、
敷居際
(
しきいぎわ
)
まで行きました。そこから彼の室の様子を、暗い
洋燈
(
ランプ
)
の光で
見廻
(
みまわ
)
してみました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その内で、こう言やア
可笑
(
おか
)
しい様だけれども、若手でサ、原書も
些
(
ちっ
)
たア
噛
(
かじ
)
っていてサ、そうして事務を取らせて
捗
(
はか
)
の
往
(
い
)
く者と言ったら、マア我輩二三人だ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
財産なんか無くても
宜
(
よ
)
い。
乃公
(
おれ
)
は
些
(
ちっ
)
とも困らない。お父さんは金持だ。皆が
左様
(
そう
)
いっている。乃公は毎日好きな事をして遊んでいれば、それで何も不足はいわない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
又金を一つ処へ仕舞って置いて知れると悪いと思いましたから、
彼方此方
(
あっちこっち
)
へお金を片附けて仕舞って置きまして、
些
(
ちっ
)
とずつ出して使い
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
“些”を含む語句
些少
些々
些事
些細
些末
些子
些程
些中
些細事
露些
一些事
今些
些額
些許
些計
些箇
些末事
些末主義
些技
些小
...