久米くめ)” の例文
そしてその妻は今の三輪田女学校長の真佐子である。この綱一郎は松山城下を少し離れた久米くめ村の日尾八幡ひおはちまんの神官の子であった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
でなければ日本に於ては元亨釈書げんこうしゃくしょの記す時代にさかのぼって、大和の国久米くめの仙人あたりにしか許されなかった実演、でなければそれよりさき
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また庶妹間人の穴太部あなほべの王に娶ひて、生みませる御子、うへの宮の厩戸うまやど豐聰耳とよとみみの命、次に久米くめの王、次に植栗ゑくりの王、次に茨田うまらたの王四柱。
かつて私は西南の島々に、幾つかの古見こみまたは久米くめと呼ばれる地域があり、いずれも稲作の古く行われた痕跡こんせきらしいと説いておいたことがある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
動坂どうざかから電車に乗って、上野うえので乗換えて、ついで琳琅閣りんろうかくへよって、古本をひやかして、やっと本郷ほんごう久米くめの所へ行った。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
観音の地内は、仁王門から右へ弁天山へ曲がる角に久米くめ平内へいないいかめしい石像がある(今日でもこれは人の知るところ)。久米は平内妻の姓であるとか。
女のふくらはぎを見て雲の上から落っこったという久米くめの仙人の墜落ぶりにくらべて、小林の墜落は何という相違だろう。これはただもう物体の落下にすぎん。
時事新報に出た匿名とくめいの月評にこの作を非常に悪口言って、久米くめもこんな浅薄な物に満足している男だからだめだというようなことが書いてあったので、じつは
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「祖母さん、この長火鉢ながひばちの置いてあるところをあなたの部屋としましょう。今に久米くめさんも来てくれましょうから、あの人には隣の部屋の方を宛行あてがいましょう」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一方では玉のさかずきに底あることを望んだり、久米くめの仙人に同情したり、恋愛生活を讃美したりしているが
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なんのことはねえ、久米くめ仙人せんにんがせんたく娘の白いはぎを見て、つい雲を踏みはずしたというやつよ。
元の座頭久米くめせん八の女房で、女の曲藝師としてその美しさを鳴らしましたが、亭主の仙八の死んだ後は、進んで樂屋の雜用を引うけ、近頃ぐん/\人氣の出て來た
橿原宮の御即位の式には、大伴おほとも氏、久米くめ氏、物部もののべ氏の祖は、ほこを執つて、儀衛に任じ、斎部いむべ氏、中臣なかとみ氏の祖は、恭々しく御前に進み出て、祝詞を言上し奉つてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
美にして艶なりと、たちまち鼠色のよだれを垂らし、久米くめ仙人を現じて車よりち掛ったに異ならず。
もっとくわしくいうと真壁の大あむしられは島尻地方および久米くめ、両先島の百人余ののろくもいを支配し、首里の大あむしられは中頭地方の六十人余ののろくもいを支配し
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
若い女が真昼に酒を飲むなぞとは妙な事でございましょうか? それにはそれなりの事情があるのでございます。久米くめ平内へいない様は縁切りのかみさんじゃなかったかしら……。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
久米くめの仙人でもあるまいし、隕石が路考贔屓の娘ばかり選んで隕ちかかるというわけはなかろうじゃないか。だから、これは、隕石などの仕業じゃない。何か、もっと他のことだ」
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けッ、ふざけやがってよ! 羅真人か糞羅漢くそらかんか知らねえが、オツに取り澄ましゃアがって、教え子も聞いて呆れら。——久米くめの仙人だって赤いものを見りゃ雲から落ッこちたっていうじゃねえか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友人久米くめ君から突然有馬の屋敷跡には名高い猫騒動の古塚ふるづかが今だに残っているという事だから尋ねて見たらばと注意されて、私は慶応義塾けいおうぎじゅくの帰りがけ始めて久米君とこの閑地へ日和下駄を踏入ふみいれた。
久米くめの仙人に至って、映画もニコニコものを出すに至った。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
芥川あくたがわ我鬼がき久米くめ三汀さんてい等来り共に句作。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
誰ならず、日の御裔みすゑ久米くめ大伴おほとものち
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
森におとしけむ久米くめの子が
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
そこで大伴おおとも連等むらじら祖先そせんのミチノオミの命、久米くめ直等あたえらの祖先のオホクメの命二人がエウカシを呼んでののしつて言うには
(ロ)畝方うねかた・谷方 これも土地の高低によって分けたので、その例は美作みまさかにある。久米くめ鶴田たづた村大字角石畝ついしうね及び角石谷。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
久米くめはかういふ予測を下した。なんだかさう云はれて見れば、僕も一円五十銭は払つてもらはれさうな心もちになつた。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
法然上人は美作みまさかの国、久米くめ南条稲岡庄なんじょういなおかのしょうの人である。父は久米の押領使おうりょうしうるま時国ときくに、母は秦氏はたしである。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
肩の丸味などはやはり三角で久米くめ平内へいないの肩のよう……これには閉口しました。
久米くめ氏の虎です、五月の文章世界に出た」
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
久米くめ仙人せんにんがまた雲を
およそこの倭建の命、國けに𢌞りでましし時、久米くめあたへが祖、名は七拳脛つかはぎつね膳夫かしはでとして御伴仕へまつりき。
けれども今読み返して見ると、僕もまた偶然この文章の中に二人の友だちの名を挙げてゐた。福間先生にからかはれたのはかならずしも久米くめに限つたことではない。
二人の友 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
少なくとも大和島根やまとしまねの方では、南北両面の海辺うみべづたいに、久米くめという氏族の次々と移住していった昔の痕跡をとどめているに対して、奄美大島にも沖縄の主島にも
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここに大伴おほともむらじ等が祖みちおみの命、久米くめあたへ等が祖大久米おほくめの命二人、兄宇迦斯えうかしびて、りていはく
久米くめが、皆をふり返ってこう言った。そこで、皆ひなたへ出た。僕はやはり帽子をあげて立っている。僕のとなりには、ジョオンズが、怪しげなパナマをふっている。
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(作陽誌。岡山県久米くめ大倭やまと村南方中)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「この曲禄を、書斎の椅子いすにしたら、おもしろいぜ」——僕は久米くめにこんなことを言った。久米は、曲禄の足をなでながら、うんとかなんとかいいかげんな返事をしていた。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このアメノオシヒの命は大伴おおとも連等むらじらの祖先、アマツクメの命は久米くめ直等あたえらの祖先であります。
ホウシ 美作久米くめ郡等
丁度ちやうど、その砂山の上に来た時、久米くめは何か叫ぶが早いか一目散いちもくさんに砂山をりて行つた。
微笑 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
威勢のよい久米くめの人々が
久米くめの島あつる
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一游亭いちいうていと鎌倉より帰る。久米くめ田中たなかすが成瀬なるせ武川むかはなど停車場へ見送りにきたる。一時ごろ新橋しんばし着。直ちに一游亭とタクシイをり、聖路加せいろか病院に入院中の遠藤古原草ゑんどうこげんさうを見舞ふ。
僕の後ろに久米くめがいるのを、僕は前から知っていた。だからその方を見たら、どうかなるかもしれない。——こんなあいまいな、救助を請うような心もちで、僕は後ろをふりむいた。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南町で晩飯の御馳走ごちそうになって、久米くめ謎々なぞなぞ論をやっていたら、たちまち九時になった。帰りに矢来やらいから江戸川の終点へ出ると、き地にアセチリン瓦斯ガスをともして、催眠術の本を売っている男がある。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
久米くめと云う男のは、あるでしょうか。」
Mensura Zoili (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
久米くめさんに野村のむらさん。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)