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丹
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たん
ふりがな文庫
“
丹
(
たん
)” の例文
椿岳の泥画というは絵馬や
一文人形
(
いちもんにんぎょう
)
を彩色するに用ゆる下等絵具の
紅殻
(
べにがら
)
、
黄土
(
おうど
)
、
丹
(
たん
)
、
群青
(
ぐんじょう
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
緑青
(
ろくしょう
)
等に少量の墨を交ぜて描いた画である。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
白い
腮
(
あぎと
)
、
丹
(
たん
)
の如き唇——もっと深くさし覗くと
凛
(
りん
)
とした
明眸
(
めいぼう
)
が、海をへだてた江戸の空を、じっとみつめているのであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お照、お前がおいらの娘でなくって、もしかこれが
色女
(
いろおんな
)
だったら
生命
(
いのち
)
も何もいらないな。昔だったら
丹
(
たん
)
さんという役廻りだぜ。ははははは。」
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もと倉庫か何かであつた
穢
(
むさ
)
い地下室を、すつかり白と
丹
(
たん
)
と緑の配色で美しく塗直し、舞台の電灯の装置から卓や椅子までが
凡
(
すべ
)
て新しく出来て居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
生壁色
(
なまかべいろ
)
の地へ、
焦
(
こ
)
げた
丹
(
たん
)
と、薄い
黄
(
き
)
で、絵だか、模様だか、鬼の面の模様になりかかったところか、ちょっと見当のつかないものが、べたに
描
(
か
)
いてある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
詩人
(
しじん
)
も
此
(
これ
)
では、
鍛冶屋
(
かじや
)
の
職人
(
しよくにん
)
に
宛如
(
さながら
)
だ。が、
其
(
そに
)
の
煮
(
に
)
る、
鋳
(
い
)
る、
錬
(
ね
)
りつゝあるは
何
(
なん
)
であらう。
没薬
(
もつやく
)
、
丹
(
たん
)
、
朱
(
しゆ
)
、
香
(
かう
)
、
玉
(
ぎよく
)
、
砂金
(
さきん
)
の
類
(
るゐ
)
ではない。
蝦蟇
(
がま
)
の
膏
(
あぶら
)
でもない。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
蓋
(
けだ
)
し天女ここに嘆き、
清躯
(
せいく
)
鶴のごとき
黄巾
(
こうきん
)
の道士が
来
(
きた
)
って、ひそかに
丹
(
たん
)
を練り金を練る、その
深妙境
(
しんみょうきょう
)
をしてここに夢み、
或
(
あるい
)
は
遊仙
(
ゆうせん
)
ヶ
岡
(
おか
)
と名づけられたものであろう。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すなわち半蔵門外の
貝塚
(
かいづか
)
に鎮座ましましていたのですが、時代は徳川お三代の名君家光公のご時世であり、島原以来の
切支
(
きりし
)
丹
(
たん
)
宗徒
(
しゅうと
)
も、長いこと気にかかっていた
豊臣
(
とよとみ
)
の残党も
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この声と共に
丹
(
たん
)
の
党
(
とう
)
を主に凡そ五百騎が岸に
轡
(
くつわ
)
を並べて今にも躍りこもうとした。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
あっしゃァ
質屋
(
しちや
)
の
質
(
しち
)
の
字
(
じ
)
と、
万金丹
(
まんきんたん
)
の
丹
(
たん
)
の
字
(
じ
)
だけしきゃ
書
(
か
)
けやせんが、おせんは
若旦那
(
わかだんな
)
のお
名前
(
なまえ
)
まで、ちゃァんと四
角
(
かく
)
い
字
(
じ
)
で
書
(
か
)
けようという、
水茶屋女
(
みずぢゃやおんな
)
にゃ
惜
(
お
)
しいくらいの
立派
(
りっぱ
)
な
手書
(
てが
)
き。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
長
(
たけ
)
なす髪を二つに分けて
角
(
つの
)
に作り、顔に朱をさし、身に
丹
(
たん
)
を塗り、
鉄輪
(
かなわ
)
をいただいてその三つの足に松をともし、
松明
(
たいまつ
)
をこしらえて、両方に火をつけ、口にくわえて、夜更け人定まって後
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
といいながら門の中へ這入って見ると、
木連格子
(
きつれごうし
)
に成っている庵室で、村方の者が奉納したものか、
丹
(
たん
)
で塗った提灯が幾つも掛けてあります。正面には
正観世音
(
しょうかんぜおん
)
と書いた額が掛けてあります。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
沙漠は
丹
(
たん
)
の色にして、波
漫々
(
まん/\
)
たるわだつみの
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
丹
(
たん
)
のごとき口を開いた。振り込んだ錫杖の下、白衣は
朱
(
あけ
)
と思いこんだ。ところが男は、ついと、横に移っていた。静かに腰の
戒刀
(
かいとう
)
へ手をかけて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
常に春信の色彩軟かき調和を慕ひて不透明なる
間色
(
かんしょく
)
を用ひまた時として
湖龍斎
(
こりゅうさい
)
に見るが如き淡き透明なる
丹
(
たん
)
を点ず。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「私の家は日本中サと
謂
(
い
)
えば豪気だが、どこと
定
(
さだま
)
って屋根は持たぬ。差当り
四谷
(
よつや
)
近辺の橋の下で犬と寝ている女乞食。」「え!」「
丹
(
たん
)
と申す、お転婆さ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
窓が多い
所為
(
せゐ
)
で堂内の明るいのは
難有
(
ありがた
)
さを減じる様に思はれた。塔の正面の
丹
(
たん
)
を塗つた三ヶ所の汚れた扉は薄
黒
(
ぐろ
)
く時代の附いた全体の石
造
(
づくり
)
と調和して沈静の感を与へた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「それからお前さん方、熊谷様はしの党だか、
丹
(
たん
)
の党だか御存じか」
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
沙漠は
丹
(
たん
)
の色にして、波
漫々
(
まんまん
)
たるわだつみの
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
あたりをみると、いつか
夕暮
(
ゆうぐ
)
れらしい色が、森や草にはっていた。
梢
(
こずえ
)
にすいてみえる空の色も、
丹
(
たん
)
の
刷毛
(
はけ
)
でたたいたように、まだらな
紅
(
べに
)
に
染
(
そ
)
まっている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然れども当時の板画は
悉
(
ことごと
)
く単色の
墨摺
(
すみずり
)
にして
黒色
(
こくしょく
)
と
白色
(
はくしょく
)
との対照を主とし、これに
丹
(
たん
)
及び
黄色
(
おうしょく
)
褐色
(
かっしょく
)
等を添付したれども、こは墨摺の
後
(
あと
)
に筆を以て補色したるものなるが故に
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
広額
(
こうがく
)
、
濶面
(
かつめん
)
、唇は
丹
(
たん
)
のようで、眉は
峨眉山
(
がびさん
)
の半月のごとく高くして鋭い。
熊腰
(
ゆうよう
)
にして
虎態
(
こたい
)
、いわゆる威あって
猛
(
たけ
)
からず、見るからに大人の風を備えている。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、髪は、冠をとばし、髯は
逆
(
さか
)
しまに分かれて、
丹
(
たん
)
の如き口を歯の奥まで見せた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燭
(
しょく
)
があったら、その顔は
丹
(
たん
)
のように燃えていたろう。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“丹”の意味
《名詞》
(タン、に)硫黄と水銀が化合した赤土。辰砂。
(タン)黄色がかった赤色顔料。鉛丹。
(タン)薬。特に、不老不死の薬。
(タン、異表記:短) 花札の札で、文字の書かれない赤色の短冊があしらわれたもの。
(出典:Wiktionary)
丹
常用漢字
中学
部首:⼂
4画
“丹”を含む語句
丹波
丹生
牡丹
牡丹花
甲比丹
牡丹餅
丹塗
丹羽
青丹
丹左衛門尉基康
加比丹
切支丹宗
切支丹
丹精
丹前
丹青
吉利支丹
雲丹
丹頂
宝丹
...