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饀
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あん
ふりがな文庫
“
饀
(
あん
)” の例文
「菓子は、
饀
(
あん
)
この入つた大きい打物ですよ。その裏に穴でもあけて、石見銀山を仕込んだひにや、ちよいとわかりませんよ、親分」
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いしくも
申
(
まを
)
された。……
殘
(
のこ
)
らずつけ
燒
(
やき
)
のお
誂
(
あつら
)
へは
有難
(
ありがた
)
い、と
思
(
おも
)
ふと、
此
(
こ
)
の
方
(
はう
)
目
(
め
)
のふちを
赤
(
あか
)
くしながら、
饀
(
あん
)
こばかりは
些
(
ちつ
)
と
擽
(
くすぐつた
)
い。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
水は黄色く濁った全くの泥水で、
揚子江
(
ようすこう
)
のそれによく似ている。黄色い水の中に折々
饀
(
あん
)
のような色をした黒いどろどろのものも交っている。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私はその五拾銭で、ある週刊雑誌の増刊号と
饀
(
あん
)
パンを買った。その週刊雑誌に載っていたある小説が、そのときの私の気持を随分柔げてくれた。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
我
(
お
)
れが
饀
(
あん
)
この
種
(
たね
)
なしに
成
(
な
)
つて
最
(
も
)
う
今
(
いま
)
からは
何
(
なに
)
を
賣
(
う
)
らう、
直樣
(
すぐさま
)
煮
(
に
)
かけては
置
(
お
)
いたけれど
中途
(
なかたび
)
お
客
(
きやく
)
は
斷
(
ことは
)
れない、
何
(
ど
)
うしような、と
相談
(
そうだん
)
を
懸
(
か
)
けられて
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
それから長命寺の桜餅は、——勿論今でも昔のやうに評判の
善
(
い
)
いことは確かである。しかし
饀
(
あん
)
や皮にあつた
野趣
(
やしゆ
)
だけはいつか失はれてしまつた。……
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
牛部屋のかげで、山茶花が白く咲くころに、松吉、杉作のうちでは、
饀
(
あん
)
ころ餅をつくりました。
疣
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「おつたは
本當
(
ほんたう
)
に
舅
(
しうと
)
は
善
(
よ
)
くしなかつた
相
(
さう
)
だな、
自分等
(
じぶんら
)
の
方
(
はう
)
の
饀
(
あん
)
へは
砂糖
(
さたう
)
を
入
(
い
)
れても
舅
(
しうと
)
の
方
(
はう
)
へは
砂糖
(
さたう
)
を
入
(
い
)
れなかつたなんて
暫
(
しばら
)
く
前
(
まへ
)
に
聞
(
き
)
いたつけが」
内儀
(
かみ
)
さんは
獨
(
ひとり
)
で
低聲
(
こごゑ
)
にいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
小供の食いこぼした
麺麭
(
パン
)
も食うし、餅菓子の
饀
(
あん
)
もなめる。
香
(
こう
)
の
物
(
もの
)
はすこぶるまずいが経験のため
沢庵
(
たくあん
)
を二切ばかりやった事がある。食って見ると妙なもので、大抵のものは食える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
つまりそれが
臍
(
へそ
)
なのである、束髪パンというのは、イギリス巻のまげの形をしているのに所々にやはり干葡萄が入っている、大パンというのは
饀
(
あん
)
パンの形の大きいので饀ぬきである。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
土器色
(
かわらけいろ
)
になった、お
祖母
(
ばあ
)
さんの時代に買ったのを取出してチョク/\しめるんでしょう、実に面白うげす……此の
家
(
うち
)
の
饀
(
あん
)
ころ餅が旨いから
私
(
わたくし
)
は七つ食べましたら少し
溜飲
(
りゅういん
)
に
障
(
こた
)
えました
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三日の夕食に食べた
饀
(
あん
)
ころ餅はたまらなかった。饀は甘く、餅は出来たてでやわらかく、歯で噛む
感触
(
あじ
)
はたまらなかった。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
案
(
あん
)
ずるに、
團子
(
だんご
)
は
附燒
(
つけやき
)
を
以
(
もつ
)
て
美味
(
うま
)
いとしてある。
鹽煎餅
(
しほせんべい
)
以來
(
このかた
)
、
江戸兒
(
えどつこ
)
は
餘
(
あま
)
り
甘
(
あま
)
いのを
好
(
す
)
かぬ。が、
何
(
なに
)
を
祕
(
かく
)
さう、
私
(
わたし
)
は
團子
(
だんご
)
は
饀
(
あん
)
の
方
(
はう
)
を
得意
(
とくい
)
とする。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その頃
漸
(
ようや
)
く一般に用ひられたと言つても、まだ寶玉の屑のやうに貴かつた白砂糖で作つた
打物
(
うちもの
)
で、中にある
饀
(
あん
)
はねつとりして、良い香氣が食慾をそゝります。
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
恐
(
おそ
)
ろしい
智惠者
(
ちゑしや
)
だと
賞
(
ほ
)
めるに、
何
(
なん
)
だ
此樣
(
こん
)
な
事
(
こと
)
が
智惠者
(
ちゑしや
)
な
物
(
もの
)
か、
今
(
いま
)
横町
(
よこちやう
)
の
潮吹
(
しほふ
)
きの
處
(
とこ
)
で
饀
(
あん
)
が
足
(
た
)
りないッて
此樣
(
こう
)
やつたを
見
(
み
)
て
來
(
き
)
たので
己
(
お
)
れの
發明
(
はつめい
)
では
無
(
な
)
い、と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てゝ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし
饀
(
あん
)
や皮にあった野趣だけはいつか失われてしまった。……
本所両国
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これから
土産
(
みやげ
)
に
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
く、
西片町
(
にしかたまち
)
の
友染
(
いうぜん
)
たちには、どちらが
可
(
い
)
いか
分
(
わか
)
らぬが、しかず、
己
(
おの
)
が
好
(
この
)
む
處
(
ところ
)
を
以
(
も
)
つてせんには、と
其處
(
そこ
)
で
饀
(
あん
)
のを
誂
(
あつら
)
へた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
銅と鉛の
饀
(
あん
)
こに、巧に金を着せたもので、たがねの味も眞物そつくり、裏の後藤の
花押
(
かきはん
)
も、墨色が少し惡いかと思ふだけ、素人には眞贋の見當もつきません。
銭形平次捕物控:274 贋金
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いまならば、敢て辞さないね。それにいま僕は無性に
饀
(
あん
)
パンが食べたいんだ。」
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
默
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
ろ
生意氣
(
なまいき
)
は
吐
(
つ
)
くなと
何時
(
いつ
)
になく
荒
(
あ
)
らい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて、
夫
(
そ
)
れどころでは
無
(
な
)
いとて
鬱
(
ふさ
)
ぐに、
何
(
なん
)
だ
何
(
なん
)
だ
喧嘩
(
けんくわ
)
かと
飯
(
た
)
べかけの
饀
(
あん
)
ぱんを
懷中
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢ
込
(
こ
)
んで、
相手
(
あいて
)
は
誰
(
だ
)
れだ、
龍華寺
(
りうげじ
)
か、
長吉
(
ちようきち
)
か
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
本草
(
ほんざう
)
には
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
まいが、
案
(
あん
)
ずるに
燒芋
(
やきいも
)
と
饀
(
あん
)
パンは
浮氣
(
うはき
)
をとめるものと
見
(
み
)
える……が
浮氣
(
うはき
)
がとまつたか
何
(
ど
)
うかは
沙汰
(
さた
)
なし。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「大丈夫さ、毒は菓子の
饀
(
あん
)
の中だ。これは菓子の上へ目印につけた菓子種だもの」
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
饀
部首:⾷
19画
“饀”を含む語句
饀子
漉饀
潰饀
白饀
饀入
饀餅
饀麺麭