さか)” の例文
わしは七十しちじゆうさかして、もういついのちをはるかわからぬ。いまのうちによい婿むこをとつて、心殘こゝろのこりのないようにしてきたい。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そして、勝負せうふをしながら畫談ぐわだんかせていたゞいたりするのも、わたしには一つのたのしみだつた。しかし、赤さかうつり住んでからは、まつたく先生とも會戰くわいせんない。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
八十八さか九十九折つづらおれ、木の根岩角いわかど躓き倒れ、傷つきてはまたち上がり、ち上がりてはまた傷つき、まずたゆまず泣血辛酸きゅうけつしんさん、かくして玉の緒も絶え絶えに
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
その白帝園の裏手から葉桜の土手を歩いて右へ、るいだらだらさかを少しのぼると、犬山焼いぬやまやきの同じ構えの店が並んでいる。それから廻ると、公園の広場になる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
寺院の北側をロッカ・マジョーレの方に登るさかを、一つの集団となってよろけながら、十五、六人の華車きゃしゃな青年が、声をかぎりに青春を讃美する歌をうたって行くのだった。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
土人しか/″\のむね答へしかば、そは淫祠なり馬下るべきにもあらずとてさかを上り給ひしに、如何いかがはしたまひけん馬より落ちて奥州の辺土にあへなく身を終り給ふとぞ聞えし。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
どうした拍子にかまりはあのさかの中途にある米何こめなにとか云ふやしきの門の中へ落ちたのださうです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あの時の事がございました時には、彼是もう五十のさかに、手がとゞいて居りましたらうか。見た所は唯、背の低い、骨と皮ばかりに痩せた、意地の悪さうな老人でございました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一寸目の前にちらついてゐる連中れんぢゆうを数へ立ててみても藤田組のさか仲輔氏、茨城県代議士の鈴木錠蔵氏、第百銀行の本庄重俊氏、大阪電灯の日高らう氏、大阪アルカリの上領かみりやう純一氏
これだけを心遣りに、女房は、小児こどもたちに、まだ晩の御飯にもしなかつたので、さかを駆け上がるやうにして、急いで行願寺内へ帰ると、路次口に、四つになる女の児と、五つの男の児と
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
地獄の沿道には三途さんずの川、つるぎの山、死出しでの山、おいさか賽河原さいのかわらなどがあり、地獄には叫喚きょうかん地獄、難産地獄、無間むげん地獄、妄語地獄、殺生せっしょう地獄、八万はちまん地獄、お糸地獄、清七地獄等々があって
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
ある日曜、訪ねて来た友人と市中へ出るのでいつものさかを登った。
路上 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
友人いうじん北洋ほくやう主人(蒲原郡見附の旧家、文をこのみ書をよくす)くだんの寺をたるはなしに、本堂間口まぐち十間、右に庫裏くり、左に八けんに五間の禅堂ぜんだうあり、本堂にいたるさかの左りに鐘楼しゆろうあり、禅堂のうしろに蓮池れんちあり。
公園からだらだらのさか西谷にしたにの方へ、日かげをえらみ選み小急ぎになると、桑畑の中へ折れたところで、しおらしい赤い鳳仙花ほうせんかが目についた。もう秋だなと思う。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「いゝなあ、この山毛欅ぶなぽんが、こゝでみづうみさゝへるはしらだ。」そこへ画架ぐわかてた——そのとき、このたふげみちびいて、羽織袴はおりはかまで、さかかると股立もゝだちつた観湖楼くわんころう和井内わゐないホテルの御主人ごしゆじん
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
双子ふたごは振返つて一寸ちよつとお辞儀をしたが、さかを駆けて降りやうとした。十けん程先で二人はぱつと左右に分れた。そしてわつと泣き出した。鏡子がまださかの上に立つて居た事は云ふ迄もない。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
友人いうじん北洋ほくやう主人(蒲原郡見附の旧家、文をこのみ書をよくす)くだんの寺をたるはなしに、本堂間口まぐち十間、右に庫裏くり、左に八けんに五間の禅堂ぜんだうあり、本堂にいたるさかの左りに鐘楼しゆろうあり、禅堂のうしろに蓮池れんちあり。
焼山やけやまについてやすんだところで、渋茶しぶちやむのはさだめししわくたの……ういへば、みちさか一つ、ながれちかく、がけぶちの捨石すていしに、竹杖たけづゑを、ひよろ/\と、猫背ねこぜいて、よはひ、八十にもあまんなむ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さかところまできますよ。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)